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理性がほんの少しだけ強かっただけ

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俺の腹の中をじっくりと調べていたネメシスは時折に俺にはよく分からない呟きをした。神性の属性が判断出来ないだとか、胃から出た後の痕跡が見つからないだとか、不安になる言葉ばかりだった。

「お腹、閉じるよ」

切られた腹にとぷとぷと樹液をかけられ、起き上がると腹には傷一つなかった。縫う必要がないなんて魔物は素晴らしいな。

「よく頑張ったね」

金髪ボブの中性的な美人に微笑みを向けられながら頭を撫でられては頬が緩んでしまう。気を許してきたのもあって浮かれた気持ちに任せて満面の笑みで「ありがとう」と言ってみた。するとネメシスは俺の頭を撫でる手を止めた。

「…………ネメシス?」

「……いや、君、お兄ちゃん……ネメスィとはどんな関係だったかな」

「え? えっと……仲間、かな」

「ヤった?」

身も蓋もない言い方に苛立ちを覚えつつも頷く。

「そう……ねぇ、僕が君を調査したのは確かに僕の仕事だったけど、ありがとうって思ったならちゃんとお礼をしてくれないかな?」

「ぁ、うん、何すればいい?」

「淫魔が出来ることなんか決まってるだろ? ヤらせろ。ネメスィにもさせたんだからいいよね、襲われまくったって言ってたし、僕だけを嫌がったりしないだろ?」

俺のバブみを返せ。他の男と同じじゃないか、結局スキルの影響を受けて俺とヤりたがるんだ。俺が勝手に信頼しただけだが、裏切られた気分だ。

「…………好きにしろよ」

ネメシスはローブを脱いでベッドに上がると俺の隣に座って俺の腰に腕を回した。押し倒さないのかと不思議に思っていると頭を撫でられる。

「……しないのか?」

「するよ?」

なら早くしろと視線に込めて睨むと額にキスをされた。

「……こういうことは初めてでね。本能なんて僕にはないし……なのに君とシたくて仕方ない」

「はぁ……なんだよ母性系かと思ったのに、真逆じゃん。もうさっさと脱げよ、んで仰向けになって」

俺がリード出来るのは珍しい、優位に立てる貴重な経験を積ませてもらおう。甘えるのは別の奴にしよう。

「これでいい?」

「うん、じゃあ早速……って勃ってないのかよ」

今まで俺を見た男は大抵その時点で勃たせていたから、ヤりたいと言い出したくせに勃っていない彼は意外だった。軽く手で扱いてみたが柔らかいまま、口に含んでも少しも大きくならない。

「……何なの、不感症なの」

インキュバスとしてのプライドなんてないはずなのに、それが傷付いた気分だ。

「…………あっ、ごめん。見た目揃えてるだけで中身違うんだよ、海綿体とか作ってないから興奮しても変わらなくて……えっと、これでいいかな」

ネメシスは俺の性器を見て真似たのかたった今まで萎えていた性器を硬く大きく膨らませた。

「調子狂うなー……前に俺襲ったスライムは手練だったぞ……」

人間の平均より少し大きい程度、多分ネメスィと同じ大きさだ。アルマやシャルと違って慎重になる必要はない。俺はすぐにネメシスの上にまたがり、一気に根元まで挿入させた。

「んっ……お前はこれ、何か感じんの? ちゃんと敏感にしとけよ、じゃないとセックスの意味ないぞ。インキュバスのナカは最高らしいからさ、ちゃんと堪能しろよ? 童貞」

優位に立てるのが嬉しくて少し意地悪な言い方をしてしまった。だが、ネメシスは話し方がムカつくので五分五分だ。

「腰、振るから。射精出来るようになってるだろ?」

「普通の精液とは違うかもしれないけど、ちゃんと魔力を流し込むよ」

インキュバスの腹が満たされるのは精液に含まれるタンパク質だとかではなく、魔力だ。だから多分それで問題ない。

「……腰、振るからな」

ネメシスの腹に手をつく。ネメスィと違って筋肉はあまりない、だがシャルよりは頼りがいがある。押しても大丈夫かどうかを気にしつつネメシスの腹についた手を支えに腰を持ち上げ、ぞりぞりと腸壁を擦られる快感に喘ぐ。

「ぁ……あっ、ぁあっ……ぁんっ!」

一気に腰を下ろし、ごつっと奥を突かれてピンと尻尾を伸ばす。

「ぁ、ひぁっ……んんっ! んっ、ん……ぁんっ! はっ、はっ……お前、マグロかよっ……なんか、反応しろよっ……!」

性器の触覚を敏感にするとかの工夫をしてないんじゃないか、コイツ。本当に射精してくれるかどうかも怪しい。やはり人間の体を再現しなければダメなんだな。

「あぁ、ごめんね……君の気持ちよさそうな顔を見ていたくて。もっと色んな声聞かせて欲しいな」

「お前っ、が……ぁんっ! 何もっ、しないんじゃ……これ以上は、無理っ……ん、んんっ、ぅ……クソ、これじゃオナニーじゃん……」

「……うん、何となく君の気持ちいいところは分かったし、淫魔の身体の仕組みは知ってる。分かった、やってみるよ、僕が君を気持ちよくさせる」

ネメシスは俺の背に腕を回して上体を起こした。対面座位とか言うんだっけ。

「…………抱き締め過ぎだろ。どうやって腰振るんだよ」

「何て言うか……本当に可愛いよね、君。安心して、お兄ちゃんよりも気持ちよくしてみせるからさ」

「ネメスィより? ネメスィは結構上手いんだぞ。まぁ、やってみればいいけど……ひっ!? お、お前っ……まさかっ、あぁあっ!?」

挿入されたままだった性器が男根の形ではなくなっている。俺の中で体積を増やして、伸びて、割れて、俺の腸壁を這い回っている。

「触手っ、とか……ふざけんなぁっ! ひぁあっ……らめっ、らめっ、そこ擦っちゃ、すぐっ……!」

更に強く抱き締められて身体の前面が密着したかと思えば、ネメシスの腹に押し付けていた俺の陰茎がずぷっと何かに沈んだ。下を見ればネメシスの腹部が黒っぽくなっており、そこに飲み込まれていた。

「インキュバスの射精は命を削ることになるからね、ちゃんと放出した魔力は君に返すよ」

これは俺もようやく童貞卒業と考えていいのだろうか。臍の少し上の穴なんてないはずのところが液状化して、そこに挿入して、射精までしてしまった。俺の童貞は失われたことになるのか? いや、前にスライムに襲われた時にも似たようなことがあったし……俺は多分生涯童貞だ。

「僕の体内で君の性感帯を全て刺激してあげる。僕が見落としてるところがあったら言ってね」

ネメシスの腹から黒い粘液がどろどろと漏れ出し、粘性を高めながら俺の身体をラバースーツのように包んでいく。その内側にはブラシのような短い触手があり、俺の体を覆いながら愛撫していく。

「ぁ…………あっ、だめっ、こんなの、こんなのっ……!」

「顔は見ていたいから出しておこうかな、締め付け過ぎて苦しかったら言ってね」

全身を包むこの生温かさはまさに体内だ。ジャンルで言えばこれは触手ではなく、丸呑みだ。溶かされることのない平和な丸呑みプレイ……知能が高い分前のスライムよりも気持ちよくさせられるだろう、自分の精液を戻されるなら媚薬効果も出るかもしれない。
今度こそ本当に狂うかもしれない。
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