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何も考えられなくなっていく

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馬車の扉を開けてそこから顔を出す。アルマは無表情で俺を見つめ、小脇に抱えていたネメスィを下ろした。ネメスィはふらつきながらも馬車につかまり立ち、苦しそうな呼吸を無理矢理整えて小さな声で俺の名を紡いだ。

「……サク、怪我は」

「…………治った」

「そうか……すまない、オーガが起きるまで守りきるつもりだったんだが」

自己嫌悪を感じさせる深いため息をついて、馬車に背を預けたままずるずると座り込む。馬車に引っ張り上げた方がいいとは思うが、俺の力では不可能だしアルマに頼む雰囲気でもない。

「……そこに座ってるネメスィは勇者。馬車で寝てるのはカタラ、精霊使い」

二人とも眠っている。二人とも俺のために頑張ってくれて、それで疲れて眠ってしまった。

「俺、生まれた後は弟と一緒に居たんだけど、はぐれちゃって……森で困ってたらこいつらに助けられてさ。その後、王都に攫われて……まぁ色々あって、王都でも助けられたんだ」

アルマの目を見られない。

「…………アルマに会う前も、アルマに会った後も、何回も寝た。無理矢理じゃない、俺から求めたことも多いし、好きだって甘えたりもした」

カタラに三回も出させたくせに俺はまだ空腹だった。女神はどれだけ俺の魔力を消費するつもりなのだろう、この調子だとアルマだけでは満足できない。

「……俺はアルマが好きだよ、ちゃんと愛してる。自分がアルマの番だってことも、他の男と寝ちゃダメだってことも分かってる。アルマ……信じて。アルマが嫌いになったんじゃない、寂しかった訳でも、刺激が欲しかった訳でもない…………お腹、空いたんだ。本当に……ただ、お腹が空いて」

大きな手がゆっくりと伸びてくる。赤い肌、太い指、鋭い爪、普段は頼り甲斐を感じる強靭さが今は怖かった。
アルマは俺を容易に絞め殺せるだろう腕を二本使って俺を抱き上げた。馬車から出され、抱き締められ、自分の体重を支えているのがアルマの腕だけだとよく分かる。

「………………ごめんなさい」

言い訳はある。インキュバスなんだから仕方ないとか、女神が魔力を勝手に使うからダメなんだだとか、食事なんだから浮気じゃないとか、淫魔を娶っておいて貞淑さを求めるなとか──でも、それを一つでも口に出せば終わりだ。

「ごめんなさい、アルマぁ……ごめんなさい、ごめんなさいぃっ……」

俺が今述べていいのは謝罪の言葉だけだ。「違う」や「でも……」なんて絶対に使ってはいけない。
心のどこかでアルマを侮っていた。彼は俺のことが大好きだから許してくれる、彼は優しいから怒鳴ることすらしない、彼は俺を責めることすらしない──そう考えていた。

「ア、アルマ……? 苦しい……」

しかし抱き締める力がどんどんと強くなってきて、僅かにあった恐怖が膨らみ始めた。密着し過ぎてアルマの顔は見えない。だが、早くなっていく呼吸音からまともな精神状態でないのは分かる。

「あるっ、まぁっ……潰れ、るっ……! アルマっ、やだ、離して……怖いっ、ゃあっ……死んじゃう……!」

肋骨が軋み始めてもアルマの腕から力は抜けない。ようやく緩んだのは骨が砕ける寸前だった。まともに吸えていなかった空気を取り込むために大きく口を開け──アルマの舌に喉まで塞がれた。

「んぅゔっ!? ぅうっ、んぅーっ!」

アルマの大きな口は俺の口を完全に覆い、大きな舌は口内どころか喉の内壁まで撫で回した。呼吸をさせてくれとも伝えられず、顔や胸を押したりしたが、無意味だ。
彼は片腕を俺の胴に巻いて俺を支えたまま、もう片方の手で尻肉を揉みしだき、二本の指で割れ目をこじ開けた。ついさっきまでカタラのものを咥えていた穴は処女同然の状態に戻っていたが、ねじ込まれる巨根を淫魔らしく受け入れた。

「んゔぅううっ! ぅ、ぶっ……んぐっ……!」

口を塞がれ呼吸を禁じられたまま両手で腹を掴まれ、オナホのように無理矢理上下させられ、俺の手足には次第に力が入らなくなっていった。

「んぐっ! んぅっ、ぅゔっ、んゔぅっ! んぶっ……んぐぅうっ!」

呼吸困難という命の危機に生物の本能は繁殖と食料を求め、腸壁を抉るように擦って抜き挿しを繰り返す陰茎に勝手に媚び始めた。

「…………っ! ぅ…………んっ……!?」

馬並み、いや、それ以上の肉棒に何度も何度も串刺しにされる。長く、太く、熱く、固く、それらの特徴全てを腸壁に覚えさせるようにごりゅごりゅ擦られる。

「……っ! ん、ぅ……っ! ふ、ぅっ……! うぅっ……」

痙攣を押さえ込む手は大きく、今掴まれている俺の胴は彼が少し力を入れればぐしゃりと潰れる。鋭い爪は簡単に俺の皮膚を裂いて体内に到達する。
そんな手に加減をして握られる腹が気持ちよくて仕方ない。

「ぅ、うっ、んんっ……ん、ぎゅぅっ……!」

酸素不足で霧がかかった脳に快楽による星が弾けて俺の知性は完璧に失われた。どぷどぷと精液を流し込まれて、力の抜けた手と半分ほどの足を痙攣させて悦んだ。

「はぁっ、はぁっ……サク……」

口を塞いでいた大きな口が離れ、新鮮な酸素が供給される。しかしアルマが息継ぎを終えるとすぐにまた塞がれ、すぐに勃起した性器に再び犯される。

「ゃ、あ……んゔぅっ!? んぅっ、んぅうっ、んぅーっ!」

自分の絶頂を理解することも出来ず肢体を痙攣させ、悦び以外の感情も霧の向こうに隠れてしまう。もう自分が何なのか分からない、自力で動けないし陰茎を挿入されているし掴んで上下させられているし……俺オナホだっけ?

「んぐっ、んゔっ、ん、んゅっ、んぅぅっ……!」

なんでもいいや。もう気持ちいいしか考えられない。人間だろうがオナホだろうが魔物だろうが今は快楽しか感じていない。

「……っ、ん…………く、ぅっ……んんーっ!」

連続で五発ほど流し込まれ、吸収が間に合わず口まで逆流するとアルマは俺の口を塞ぐのをやめ、腰も止めた。しかし勃起したままの性器は俺の穴を塞いでおり、バランスを取るだけとなった腕の代わりに俺の全体重を支えていた。

「…………愛しているよ、サク」

「ぁ……りゅ、ま?」

「好きだ……大好きだよ、サク、愛している」

「…………ぇへ、へへ……うれ、し……あるまぁ」

見上げると優しく微笑むアルマの顔が視界を埋め尽くした。酸素不足と連続絶頂で何もかもが分からなくなった俺は、何故アルマにこんなにも激しく抱かれたのかも考えられず、愛情を実感して喜んだ。
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