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夢精は命取りなんですやめてください

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小鳥の囀りとカーテンの隙間から射し込む陽光で目を覚ます。朝の空気の爽やかさとは正反対な身体を起こし、ため息をつく。カタラもネメスィも自分のベッドで眠っている、張形や本は片付けられて毛布までかけられているのは流石カタラと言える。しかし、シーツも毛布も大量の白濁液で汚れている。カタラに抱かれた時に出したものなら多少は掃除してくれていそうなので、これはきっと夢精だ。

「…………最悪」

くぅ、と腹が鳴る。少年達から搾り取った分も、ネメスィとカタラから貰った分も、寝ている間にほとんど出してしまった。淫魔の生命そのものなんだろう? どうして夢精なんかするんだ、人間に置き換えれば寝ている間に手首を切ったり舌を噛んだりするようなものだろ?

何より嫌なのは夢の相手が弟だということだ。ネメスィやカタラならまだいい、なんならスライムでもいい、そいつらなら経験の焼き増しで納得できる。けれど弟に抱かれたことはないし、あんな快感も味わったことがない。だからあの夢は「弟の巨大なもので貫かれてみたい」という俺の淫らな願望の表れと、その脳内シミュレーション。自分の淫乱さを自覚させられることほど嫌なことはない。

性器を見せられたり精液の匂いを嗅がされてスイッチが入ってしまうのは淫魔だから仕方ないと言い訳が出来ても、夢は身体の問題ではなく頭の問題だ。身体だけでなく思考まで淫らに染まっている証だ。

「…………サク?」

パタパタと揺らしていた頭羽を掴まれる。いつの間にかネメスィが起きていたようだ、昨晩から咥えていたパンを齧っている。

「どうした?」

「……ちょっと、夢見が悪くて」

「夢見? インキュバスなら夢は操れるだろ、しっかりしろ」

「うん……」

襲おうとした人間にも上手く見せられないのに、自分に対してその力を使えるとは思えない。

「お前が深い夢を見せて魔物を眠らせてくれるなら実力以上の魔物を倒すこともできる」

「……俺、役に立てる?」

「夢の扱いが上手くなったらな。今晩は俺で練習していい、早く上達しろ」

「…………うん」

「俺は稼ぎに行ってくる。帰ったらたっぷり食わせてやるから大人しく待ってろ」

ネメスィは俺の頭を優しく撫でて部屋を出ていった。従順にしていれば割と丁寧に扱ってくれるようだ。
帰ったら、たっぷり……か。

「……っ、はぁっ……」

身体が疼く。早く、早く抱かれたい。腹が減った。早く精液が欲しい。

「カタラっ……カタラぁっ、起きて……」

「んぅ……昼まで……」

「寝ないで、起きてっ、抱いてぇ……お腹空いた」

顔を隠す腕を引き剥がし、虚ろな青い瞳をじっと見つめる。

「ぁー……サクか、おはよ」

瞳が少しずつ明瞭になり、カタラは灰色の髪に大量の寝癖をつけて起き上がった。

「カタラぁっ、抱いて、お願い、お腹減った」

起こされた上体に抱き着き、毛布の下で朝勃ちしている性器を握った。

「お、おぉ……朝から大胆だな。ありがたいし是非とも抱きたいんだけど、稼ぎに行く前にヤると体力と魔力がなぁ……早めに帰ってくるから待っててくれよ」

「そんなっ、お腹減った……」

「昨晩したばっかだろー? インキュバスってそんな燃費悪いのか? 何にもしなきゃ一発で何日か持つはずだろ。ネメスィにも抱かれてんだろ? 常にお腹いっぱいってのはどんな生き物でもむーり、我慢しろ」

諭すように頭を優しく叩かれながら言われ、羞恥心が湧き出る。あんな夢さえ見なければ、夢精さえなければこんなに腹が減ることはないのに、こんなふうに迫ることもなかったのに、子供扱いなんてされなかったのに!

「ネメスィは? もう出た? じゃあ俺もそろそろ行くから、今日は部屋で待ってろよ。そんな状態で外出たらヤバいだろ」

「……早く帰ってきてくれる?」

「……っ、あ、あぁ……もちろん……帰ったら速攻で抱いてやるよ」

「帰ったら……速攻……」

身体が──下腹が疼く。腹が減って仕方ない。期待させるようなことを言わないで欲しい。

「そんなとろけた顔すんなよ……じゃあな! いつもよりエロい顔してるんだから絶対部屋から出るなよ! 襲われるぞ!」

勢いよく閉じられた扉に鍵をかけ、ベッドに戻る。
精液をこびりつかせたまま洗濯を頼むのは厳しい。カタラとネメスィの分はそのまま頼んでもいいだろうけど、俺のはダメだ。先に洗わなければ。

洗濯物を下に落とすダスターのようなところにカタラとネメスィが寝ていたベッドのシーツを落とし、風呂場に放置されていたタオルなども入れる。俺が居るから片付けずに出ていったのか、俺が居なくても片付けずに出ていく奴らなのか……

「……ん?」

自分のベッドのシーツを剥がしていると、扉が叩かれる。宿屋の主人のようだ。料金のことで相談があるとか……勇者だから割引いてくれるとか……これは聞かなければ。

「すいません、えっと、ちょっと着替えてて……待っててくれませんか?」

「はい、では一階でお待ちしております。カウンター裏にお越しください」

「すいません……ありがとうございます」

服は馬車に積んであると言っていた。取りに行くとか言って取りに行ってくれていなかった。カタラの服なら露出は少ないし、予備の帽子とマントも借りれば羽根も尻尾も隠せるか……?

「……いけそうだな。よし、借りるぞカタラ」

羽根と尻尾が見えないことを確認し、魔法使いのコスプレ気分で若干高揚しつつ、指定された場所に向かった。
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