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おなかいっぱい

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ネメスィが腰を止めるとカタラも手を止める。カタラと同量の精液が流し込まれ、熱く粘っこい液体が吸収されていく幸福感にトリップする。

「……あ、ネメスィ、終わってもしばらく入れておけよ。精液吸収するのにちょっとかかるみたいだから」

「まだ終わってないぞ?」

中にあるネメスィの陰茎は萎えていない。ネメスィは俺の中から陰茎を乱暴に引き抜き、俺を引っくり返してまた挿入する。今度はバックか……それはどうでもいいが一々乱暴だな。

「え、お、おい……サク? もう一回ヤるとか言ってるけど、大丈夫か?」

「んっ……! まだ、入るっ……から、ぁんっ、ぁっ……!」

「いや、腹何分目とかの問題じゃなくて……」

ずちゅ、ずちゅ、とまだ吸収出来ていない精液がネメスィの腰の動きに合わせて水音を鳴らす。猫が伸びをするような体勢で抱かれて、顔をカタラの太腿に押し付けていたが、不意に美味しそうな匂いに気付いた。

「ぁんっ! はっ、ぁあんっ……! カタラっ、カタラぁ……」

「あ、ま、また尻尾やるか? 大丈夫か?」

「カタラ、勃ってる……」

無理だなんて言ったくせに、勃っているじゃないか。カタラの性器を服の外に引っ張り出し、きゅっと握る。

「ちょっ、ちょっ……サっ、サク?」

「ぁんっ、あぁっ……カタラのもっ、ちょうだいっ……? いっぱい飲ませて、カタラぁっ……」

首を限界まで曲げてようやく見上げられたカタラの顔は欲情に支配されていた。何もしていないのに熱い吐息を漏らして、手を微かに震わせていた。
俺は取り出した陰茎を咥えて淫魔の本能の赴くままに口を動かした。唇を窄めて吸って、舌で裏筋をなぞる。カタラの手が頭に添えられているのには何故か興奮した。

「んっ、ふぅっ、ふぶっ……んっ、む……んゔぅ……」

何枚も布を重ねて蒸れているのか雄の匂いが濃い。本来なら顔を背けるべき匂いだろうに、俺は食欲と性欲を煽られている。
腰を持ち上げられて後ろから乱暴に突かれて、そんな俺を心配してくれた男のものまで欲しがって……これも淫魔の本能のせいだ。自分が淫乱になっているとは考えたくない。

「……サク、俺のしゃぶってても可愛いな……めちゃくちゃ、上手いし……」

頭に添えられていたカタラの手が髪を撫でる。好かれている実感に何故か安堵しつつ、上下を陰茎で塞がれて悦んでいる自身の状況への疑問が薄まっていくのに危機感を覚えていた。

「サクっ……そろそろ、出るかも」

「ん……ふ、んんっ……!」

カタラの腰にしがみついて根元まで咥え込み、一滴も逃さないようにと必死に吸い上げる。放たれた精液は残らず喉の奥に流れて、陰茎の中に残っていた分も吸い出した。ほどなくして後ろにも精液が流し込まれて、零れないように無意識に腰を持ち上げていた。

「ふぅ……スッキリした! よし、今日中に森を抜けるぞ!」

「お前連続で二回もやってよくそんな元気あるな……ぁ、待てネメスィ! 慌ててたから修理してなかったけど車輪が外れかけてて──」

服を整えた二人は揃って馬車を出ていき、しばらくするとカタラだけが帰ってきた。外からネメスィの雄叫びが聞こえて馬車が走り出す。

「サク? 起きてるか?」

「起きてる……身体ダルい、腰重い……振動、ちょっとヤバい」

街道とは名ばかりで木が生えておらず草に完全には覆われていないだけで舗装されている訳ではない。馬車はガタガタと揺れて俺の身体に振動を伝え、それが下腹に響いて興奮がなかなか冷めない。

「……ホンット珍しいよなこの黒髪……根元から毛先まで真っ黒。インキュバスなのに……」

頭皮に手のひらを触れさせてかき上げるように撫でられ、髪の生え際まで観察される。

「…………インキュバスって黒髪珍しいのか?」

「サキュバスとインキュバスは基本赤系だな。ピンクっぽいのが多いぞ」

そういえば俺を虐めてきたサキュバスもピンク髪だったな。やはり淫魔はピンクなのか。

「紫系もかなり珍しいけど、白と黒はまず居ない。アルビノ、メラニズムだ。でもお前は肌黒くないし、目の色は薄いからメラニズムじゃねぇと思う。学術的に相当価値が高いぜお前」

「……俺、売るのか?」

「いやいや売らねぇよ。こんなエロ可愛い子売る奴インポだろ」

自分で楽しみたいので売らないと、そういう訳か。
複雑な気分だが安心だ。性的な意味でなくても奴隷を買う富豪と言ったら醜く肥えているイメージがある。どうせ抱かれるのなら整った見た目の若者がいい。あくまでも「どうせなら」だ。若いイケメンなら抱かれたいなんて思ってない。全然思ってないってば。

「…………なぁ、カタラ。俺……弟居るんだよ」

「弟? サクは魔樹産まれだろ?」

「同じ木からほぼ同時に産まれて……」

弟は木の根に挟まっていたし、正確にはどっちが早く産まれたのかは分からない。俺の方が弟だったならもう少し素直に守られていられたかもしれない。

「魔樹から同日に!? すげぇ……弟の髪と目は何色だった?」

「えっと、紫色……」

「へー! 紫系は溜める魔力に上限がない遺伝子らしいぞ? 赤系のサキュバスインキュバスは限界来ると吐いちまったりするらしいんだけど、紫系の奴はヤればヤるほど強くなるんだ……って前何かの本で見た」

不確定な情報だが、弟は二人分の食事を果たしていたし、現場は見ていないがサキュバス数人を一方的に撲殺した、通常より強い心当たりはある。

「で、弟が何?」

「……喧嘩して、森に逃げたんだよ、俺」

「それでスライムに襲われて……って? あー、喧嘩別れか……そりゃキツいな」

「…………本当に酷いこと言ったから、もう絶縁でおかしくないんだけど、一言だけでも謝りたかったなーって……」

カタラに聞かせて何かが変わる訳でもない。アドバイスをもらえる訳でも、じゃあ弟を探そうと言ってくれる訳でもない、ただの暇潰し。
弟のこと以外にも話は結構弾んで、森を抜けるまでの時間は潰せた。
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