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ちょっと変な子でもいい子
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俺が縛られている真正面に窓がある。雨戸が閉まっているから外から見られる心配はないが、鏡のように室内を映している。
窓にぼんやりと浮かぶ俺の姿。性感帯を全て露出して、後ろ手に縛られ柱に縛り付けられ、それでも快楽を求めて肢体をくねらせる淫猥な姿。前世の姿のままなら吐き気を催すだろう仕草も、ファンタジー世界に準ずる美貌によってしっかりとエロくなっている、一応男なのに、自分なのに。
「兄さん、僕は傍に居ますから、何かして欲しいことがあったら遠慮なく言ってくださいね」
「はぁっ……ぁ、窓、窓何とかしてくれ。自分が、映って……」
どうしてカーテンすらないんだ。そう叫びたい。
「え? 窓……あぁ、えっと……どうしましょう……何か探してきます」
弟が視界から外れて、より窓に映った俺に目が行ってしまう。目を閉じていればいいのに、床でも見ていればいいのに、窓を見てしまう。
弄りたい、扱きたい、もうあのおぞましいコボルトでもいいから俺を……ダメだ何を考えている。あんな化け物に犯されるくらいなら死んだ方がマシだ。
あぁ、なら……弟なら? 弟ならいい? いや、ダメだ、ダメ……弟も嫌だろうし。でも、遠慮なく言えと言っていたし──
「兄さん、あの……目隠し、巻きますか?」
戻ってきた弟は手拭いらしき物を持っていた。窓を隠す物は見つからなかったのだろう。局部を露出して縛られている今、目隠しまでしたら俺はもうただの変態だろう。SMプレイの真っ只中だ。だが、その姿は俺には見えない。
「…………頼む」
弟はこんな俺の姿を見ても馬鹿にして笑わないし、欲情して触ってきたりもしない。本当にいい子だ。彼の視線からは不安と心配しか伝わってこない、あの美しい紫の双眸になら映っていてもいい。
「……っ、目、見えないの……結構、怖いな……身動き取れないし……」
「大丈夫です、兄さん。僕はここに居ます、ずっと傍に居ますから、安心して、落ち着いて、僕の精液の効果が抜けるのを待ってください」
「うん……本当、いい子だな……お前は。お前が居てよかった、お前と兄弟になれて良かったよ、お前が居なけりゃ何回死んでたか……」
弟は目隠しの上から俺のこめかみ辺りを撫でている。決して肌には触れないのは敏感になってしまっている俺を気遣ってのことだろうか、頬程度なら大丈夫だと思いたいが。
「ところで兄さん、服はどうしたんですか? 人間の家に置いてきたんですか?」
「あぁ……その、情けない話なんだけど、昨日食事出来なかったことでサキュバス達にバカにされて……エスカレートして、服、破られて……」
「……破られて、何かされましたか? ぁ、身体に……身体にたくさん傷があります、兄さんっ……兄さんの身体に傷が……!」
「…………踏まれたり、蹴られたりした」
サキュバス好きを名乗るのはもうやめだ。嫌いだ、というかトラウマだ。
「………………おい?」
弟の手がしばらく止まっていた。声をかけるとまた目隠しの布の上から撫でられる……別に撫でられたい訳ではないけれど、顔が見えないのに急に黙られては不安になる。
「兄さん、ごめんなさい……僕が離れなければ、そんなことには……ごめんなさい、ごめんなさいっ……」
「い、いやいやいや……俺が情けないだけだって。謝るなよ、お前はいいことしかしてないんだから。でも、昼間どこ行ってたんだ?」
「兄さんがまたお腹空かせるかと思って、いっぱい食べてきました」
昼間からヤりまくってたと? なんて羨ましい……いやいや弟は俺のために危険を犯して昼間に人里に下りたのだ、彼に向けていいのは感謝だけだ。
「……怪我したり、撃たれたりするんですから、兄さんはもう人間には近付かないでください……僕が二人分食べてきますから……」
養ってくれるのか? ダメだ、淫魔の食事のリスクは分かっている。襲うのに成功しても他の者に見つかったら撃ち殺される。そのリスクを二倍背負わせるなんて、こんないい子にさせていいはずがない。
「頑張って自分で生きるよ。迷惑かけて本当にごめん。でも、ちゃんと独り立ちするから」
「………………僕が嫌いですか?」
「え?」
「兄さん、キスも嫌がってたし……僕の精液飲むのも嫌そうだったし、そんな嫌なこと無理矢理されて! こんなふうに縛られてっ……僕が嫌いじゃないわけない! 兄さんは僕が嫌いで、嫌いだから僕から離れたいんだ! 僕が兄さんのためって言ってること、全部兄さんは嫌なんだ、僕が鬱陶しいんだ! 兄さんは僕が嫌いなんだ! 僕なんかいなくなればいいって思ってるんだ!」
「ちっ、違う違う違う!」
どうしてそうなるんだ、言い方が悪かったのか?
「お前に感謝してるから! お前にあんまり負担かけたくないんだよ! ほら、銃持ってる奴とかいて危ないし……もしお前が俺のせいで怪我とかしたら、罪悪感すごいし」
「…………本当ですか? 僕、兄さんに、嫌われて……」
「ないないないないお前みたいないい子嫌いになるかよ! むしろ好きだわ! な、泣いてる……のか? ごめんって、言い方悪かった。独り立ちするって言っても、その……えっと、一人で食事出来るようになりたいって意味で、お前と二度と会いたくないとかそういうんじゃないから」
弟は言葉が出なくなってしまったようで、俺に抱き着いて嗚咽を漏らして泣いている。泣くようなことか? どうして俺をそんなに慕っているんだ? 訳が分からない。
俺の肩を掴む手は震えていて、素肌にぴったりと引っ付いた服の派手な装飾は少し痛くて、勃起した性器に触れる彼のベルトの留め具が冷たくて硬くて気持ち良くて──俺は弟が泣いている前で欲情を深めていった。
窓にぼんやりと浮かぶ俺の姿。性感帯を全て露出して、後ろ手に縛られ柱に縛り付けられ、それでも快楽を求めて肢体をくねらせる淫猥な姿。前世の姿のままなら吐き気を催すだろう仕草も、ファンタジー世界に準ずる美貌によってしっかりとエロくなっている、一応男なのに、自分なのに。
「兄さん、僕は傍に居ますから、何かして欲しいことがあったら遠慮なく言ってくださいね」
「はぁっ……ぁ、窓、窓何とかしてくれ。自分が、映って……」
どうしてカーテンすらないんだ。そう叫びたい。
「え? 窓……あぁ、えっと……どうしましょう……何か探してきます」
弟が視界から外れて、より窓に映った俺に目が行ってしまう。目を閉じていればいいのに、床でも見ていればいいのに、窓を見てしまう。
弄りたい、扱きたい、もうあのおぞましいコボルトでもいいから俺を……ダメだ何を考えている。あんな化け物に犯されるくらいなら死んだ方がマシだ。
あぁ、なら……弟なら? 弟ならいい? いや、ダメだ、ダメ……弟も嫌だろうし。でも、遠慮なく言えと言っていたし──
「兄さん、あの……目隠し、巻きますか?」
戻ってきた弟は手拭いらしき物を持っていた。窓を隠す物は見つからなかったのだろう。局部を露出して縛られている今、目隠しまでしたら俺はもうただの変態だろう。SMプレイの真っ只中だ。だが、その姿は俺には見えない。
「…………頼む」
弟はこんな俺の姿を見ても馬鹿にして笑わないし、欲情して触ってきたりもしない。本当にいい子だ。彼の視線からは不安と心配しか伝わってこない、あの美しい紫の双眸になら映っていてもいい。
「……っ、目、見えないの……結構、怖いな……身動き取れないし……」
「大丈夫です、兄さん。僕はここに居ます、ずっと傍に居ますから、安心して、落ち着いて、僕の精液の効果が抜けるのを待ってください」
「うん……本当、いい子だな……お前は。お前が居てよかった、お前と兄弟になれて良かったよ、お前が居なけりゃ何回死んでたか……」
弟は目隠しの上から俺のこめかみ辺りを撫でている。決して肌には触れないのは敏感になってしまっている俺を気遣ってのことだろうか、頬程度なら大丈夫だと思いたいが。
「ところで兄さん、服はどうしたんですか? 人間の家に置いてきたんですか?」
「あぁ……その、情けない話なんだけど、昨日食事出来なかったことでサキュバス達にバカにされて……エスカレートして、服、破られて……」
「……破られて、何かされましたか? ぁ、身体に……身体にたくさん傷があります、兄さんっ……兄さんの身体に傷が……!」
「…………踏まれたり、蹴られたりした」
サキュバス好きを名乗るのはもうやめだ。嫌いだ、というかトラウマだ。
「………………おい?」
弟の手がしばらく止まっていた。声をかけるとまた目隠しの布の上から撫でられる……別に撫でられたい訳ではないけれど、顔が見えないのに急に黙られては不安になる。
「兄さん、ごめんなさい……僕が離れなければ、そんなことには……ごめんなさい、ごめんなさいっ……」
「い、いやいやいや……俺が情けないだけだって。謝るなよ、お前はいいことしかしてないんだから。でも、昼間どこ行ってたんだ?」
「兄さんがまたお腹空かせるかと思って、いっぱい食べてきました」
昼間からヤりまくってたと? なんて羨ましい……いやいや弟は俺のために危険を犯して昼間に人里に下りたのだ、彼に向けていいのは感謝だけだ。
「……怪我したり、撃たれたりするんですから、兄さんはもう人間には近付かないでください……僕が二人分食べてきますから……」
養ってくれるのか? ダメだ、淫魔の食事のリスクは分かっている。襲うのに成功しても他の者に見つかったら撃ち殺される。そのリスクを二倍背負わせるなんて、こんないい子にさせていいはずがない。
「頑張って自分で生きるよ。迷惑かけて本当にごめん。でも、ちゃんと独り立ちするから」
「………………僕が嫌いですか?」
「え?」
「兄さん、キスも嫌がってたし……僕の精液飲むのも嫌そうだったし、そんな嫌なこと無理矢理されて! こんなふうに縛られてっ……僕が嫌いじゃないわけない! 兄さんは僕が嫌いで、嫌いだから僕から離れたいんだ! 僕が兄さんのためって言ってること、全部兄さんは嫌なんだ、僕が鬱陶しいんだ! 兄さんは僕が嫌いなんだ! 僕なんかいなくなればいいって思ってるんだ!」
「ちっ、違う違う違う!」
どうしてそうなるんだ、言い方が悪かったのか?
「お前に感謝してるから! お前にあんまり負担かけたくないんだよ! ほら、銃持ってる奴とかいて危ないし……もしお前が俺のせいで怪我とかしたら、罪悪感すごいし」
「…………本当ですか? 僕、兄さんに、嫌われて……」
「ないないないないお前みたいないい子嫌いになるかよ! むしろ好きだわ! な、泣いてる……のか? ごめんって、言い方悪かった。独り立ちするって言っても、その……えっと、一人で食事出来るようになりたいって意味で、お前と二度と会いたくないとかそういうんじゃないから」
弟は言葉が出なくなってしまったようで、俺に抱き着いて嗚咽を漏らして泣いている。泣くようなことか? どうして俺をそんなに慕っているんだ? 訳が分からない。
俺の肩を掴む手は震えていて、素肌にぴったりと引っ付いた服の派手な装飾は少し痛くて、勃起した性器に触れる彼のベルトの留め具が冷たくて硬くて気持ち良くて──俺は弟が泣いている前で欲情を深めていった。
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