いわくつきの首塚を壊したら霊姦体質になりまして、周囲の男共の性奴隷に堕ちました

ムーン

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後輩と霊対策の準備してみた

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このリゾート地に巣食う怪異、その討伐のため俺達はビーチに出た。怪異がどんなモノなのか──溺死者の霊なのか、海洋生物型の妖怪なのか、はたまた俺が想像も付かないような怪物なのか──何も分かっていない。

「怪異が出てくるのは早くても夕方からですよね?」

「そうだね、黄昏時……此岸と彼岸、陸と海の境界が曖昧になる。早くてもじゃなく、その時だろう」

「何時間もありますけど何するんです? 俺夜まで寝溜めするもんだと思ってましたよ」

レンと社長が話している中、従兄はテントを立てている。センパイもそれを手伝い、俺はミチとパラソルを立てた。

「準備。結界張るから手伝え、いつもの簡易結界じゃなく本格的なのだから、ちゃんと測ってね」

スポーツチャンバラ用のスポンジ剣をテントの中に置いたレンは社長に指示されるまま木の杭を砂浜に打ち込んでいる。社長は紙垂が付いた縄を持っている。

「…………ノゾム」

「はっ、はい! 何……ですか? パラソルなら立て終わりましたけど」

「……緊張しているように見える」

大きな手に頭や頬を撫でられて、まだ見ぬ怪異を想像して膨らんでいた恐怖が少しずつ和らいでいった。

「センパイ……ありがとうございます、怖いのちょっとなくなってきました」

「…………今度こそ守ってみせる」

今まで何度かセンパイによって、もしくはセンパイに恨みを持つ者によって怪我を負わされてきた。彼は強い負い目を感じているようで、特に俺の側頭部を念入りに撫でた。以前センパイに殴られた場所だ、確か頭蓋骨にヒビが入ったっけな。

「……必ず、怪我一つ……負わせはしない」

「センパイも怪我しないでくださいね」

「…………善処はしよう」

「怪我したら治るまでキスもしませんよ」

センパイから自分への愛情を確信していなければ言えないセリフだ。言ってから自惚れに気付き、顔がじんわりと熱くなっていく。

「……………………あんまりだ」

酷く落ち込んだ様子のセンパイを見て、自惚れではなかったのだと分かって先程とは別の感情から顔が一気に熱くなった。

「えへへっ……お互い気を付けましょうね」

「……あぁ」

「もちぃー! ちょっと来てくれ」

「あっ、何ー?」

レンに呼ばれて向かうと大きなメジャーを持たされた。運動場でこれを使って何らかの競技の線を引いていたのを見た覚えがある。

「結界の杭打つんだけど、ちゃんと測らないと結界出来ないらしくてさ、一人で測んのムズいから手伝ってくんない? あ、形州、形州ー! お前も手伝ってくれ」

「…………手伝ってください形州先輩」

「てつだってくらさーいかたすせんぱーい」

「……いいだろう」

もっと仲良くして欲しいのだが、俺の取り合いや嫉妬が不仲の原因なのだから、俺がそう願うのもおかしな話だ。

「センパイ本体持ってください」

「……あぁ」

「この杭の根元に引っ付けてくれ。んで、もちは向こうに真っ直ぐ……角度は、えーっと……」

三人で協力して杭を打ち終えると社長は紙垂の付いた縄を杭に結び、テントを入れたバスケットボールのコート程度の広さを囲んだ。

「これで完成……ですよね?」

結界の中からレンが声をかけると社長は縄を跨いで中に入り、縄に触れて何かを唱えた。唱え終わった瞬間だけ縄がぼんやりと光った気がした。

「ね、ね、レン……今光ったよね?」

「張れたってことだろ」

「…………?」

まだメガネをかけていないセンパイには見えていなかったようだ、俺を見つめて不思議そうな顔をしている。

「結界は完成、他の対策は正体を見破ってからにしようか。パソコン、椅子」

従兄はテントの中に置いた鞄からノートパソコンを取り出して社長に渡し、パラソルの日陰で四つん這いになった。社長は躊躇なく従兄に腰掛け、足を組んで太腿にパソコンを載せ、起動させた。

「……っ、アンタなぁっ!」

「センパイ落ち着いて落ち着いてせんぱぁいっ!」

センパイの右腕に抱きついて踏ん張る。社長はこちらに見向きもせずパソコンを操作し、ミチは意味もなく慌て、レンはため息をつく。

「ししょ~、形州の前でくらいそういうのは控えません?」

社長は社長でセンパイを敵視しているようだから、センパイの目の前で従兄を虐めるのは多分わざとなのだろう。幼い見た目に似合った大人げのない人だ。

「電話中、黙ってて」

わざわざパソコンを使うということはビデオ通話だろうか。拳を開いたセンパイの腕を離し、レンと共に社長の背後に回ってパソコン画面を覗いた。そこにはもう一人社長が──いや、違う、よく似ているけれど社長より大人っぽく、髪型も違う、別人だ。兄弟か何かか?

「送った資料読んでくれた? 霊視を頼みたい」

『読んだし済んでる、ったく親遣いの荒いヤツだ。いいか、その海に居る怪異は大きく分けて二種類、まず──』
『だっこー』『だっこ』

画面の下の方に紅葉のような小さな手が四つ、ぴょこぴょこ揺れている。社長によく似た男性はその手の主を、とても幼い子供を二人抱き上げて膝に乗せ、コホンと咳払いをした。

『二種類居るんだ。そのうちの一つは』
『ぱぱ!』『ぱぱー!』

社長にも男性にもよく似た幼子達はパソコンに向かって手を伸ばし、画面やキーボードを触るなと男性に注意されている。

『抱っこしてやっただろうが大人しくしろ! あーっ! 痛い痛い太腿に立つな跳ぶな痛い!』

「……雪風、早く霊視の報告して」

『分かってる! 海で死んだ霊の……痛い顔掴むな! 下ろすぞ、いいな下ろすぞ!』

幼児達の姿が見えなくなった。男性は再び咳払いをし、何かを説明しようとしたが、幼児達の泣き叫ぶ声に掻き消された。

『だっこぉー!』『ぁっこ、だっこぉ!』
『霊の集……後でな後で!』
『うわぁあああん!』『だっこ、だっこぉ!』

男性は再び幼児達を膝に乗せ、しゃくり上げる彼らの背を優しく叩きながら疲れた顔で説明を始めた。

『一つは海で死んだ霊、その集団だ。群体って訳じゃなく、ただ群れてるだけ……お前が一番苦手な相手だな。現地調達したって言う助手共に頑張ってもらえ』

社長よりも赤みの濃い瞳は俺とレンを交互に見た。

『もう一つは生きている人間の念が凝り固まり形を生したモノ……つまり都市伝説的な怪異だ』

「海の都市伝説……? 色々あるけど、どれ?」

『分からん。お前、コイツに関する資料送ってきてないだろ。浜辺の霊的痕跡は全部集団霊のもんだし、被害者もそう。コイツの被害者か痕跡の一つでもねぇと視えねぇよ。近辺にもう一個何か居るって気付いただけでも奇跡だぜ? 俺を褒めろ』

霊視は警察犬が匂いを辿るように、縁のようなものを辿るような技術らしく、元となる情報がなければ霊視は不可能らしい。もしそれが出来るとしたら、千里眼とでも呼び方を変えるのだそうだ。

「被害者出てないってことですか?」

レンが小さく手を挙げた。

『おっ、君が鬼の末裔か。そうだな、俺のところに送られてきた分だけで言えば、被害者は居ない』

「じゃあいいんじゃないですか? 除霊とかしなくても」

「本当に無害ならね。霊障に遭った被害者と見て集めさせた情報は全て海難事故に遭ったものだ、この辺りで出た死者全てを霊視した訳じゃない、途方もない作業量になるからね」

「えっと……海難事故以外で被害者を出すタイプの怪異だったらまずいってことですか?」

『君は霊媒体質の子だっけ?』

「あっ、はい」

『そのタイプの怪異である可能性はまずない、海の怪異が海難事故以外で人を襲う都市伝説、知ってるか? 海の怪異って言ったら泳いでる人間の足を引くとか、船を沈めるとか、そういうのだろ』

「そう……ですね」

『俺は標的が人間じゃないと見た。漁船を襲って魚だとかを奪う怪異の昔話はたまにあるからな、そんな感じのヤツが魚食ってるだけだろ。漁業にサメとかアシカくらいのダメージ出るから船襲わないうちに除霊しといて悪いこたねぇがな』

「僕の仕事じゃないね。僕の仕事は海難事故を起こす怪異の討伐だ。集団霊か……厄介だな。罠でも張るか。霊視どうも、じゃあね」

『あぁ待て待て、いい子でお留守番してる息子達に何か一言頼むぜ』
『ぱぱ』『ぱぱー』

泣き止んだ幼児達は男性にしっかりと抱き締められたまま、パソコンに手を伸ばしている。

「仕事が済んだらすぐ帰る。おじいちゃんを困らせちゃダメだよ」

『はーい!』『はい、ぱぱ』
『ん、これでまたしばらくはいい子にしてるだろ。じゃあな、早めに帰ってこいよ』

ビデオ通話を終え、パソコンを閉じた社長は従兄から降りて「帰りたい……」と小さく呟いた。
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