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幼馴染と友達とフードコートに行ってみた

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休憩と掃除を終え、手のついでに顔も洗い、後孔に幸せな違和感を覚えたまま男子トイレを出て自販機でジュースを買う。

「ふぅ……涼しくなってきた。ほらよ、もち」

ペットボトルの半分ほど飲み、俺に差し出す。挿入されていた俺の方が暑いのはレンも分かっているだろう。

「飲まねぇのか?」

だから、俺が間接キスに照れてすぐに受け取れないでいると訝しげな顔になった。

「う、ううん……飲む」

ドキドキしながらペットボトルを受け取り、オレンジの香りを嗅ぐ。果汁80%のオレンジジュースを飲む。レンとの間接キスというのもあって味わって飲みたかったのに、喉が乾いていてすぐに飲み干してしまった。

「お、全部飲んじまったか。ゴミ箱そこだぜ」

「うん、あのさ……間接キス、だったな」

「……なんか変だと思ってたらんなこと考えてたのかよ。間接キスってお前……さっきまでどこ繋がってたか言ってみ?」

狭く、声も出せない状況でのセックスを思い出して顔が熱くなる。

「あっは、顔真っ赤。かーわいぃ」

「からかわないでくれよ……」

「別にからかってねぇよ。今更間接キスで照れるのはちょっとズレてるし、可愛いだろ。もっと真面目に言って欲しかったのか? 可愛いぜ、もち」

「ぅ……なんで、そう……男前なんだよぉ、好きぃ……」

空になったペットボトルを捨て、美容院へ向かうレンに着いていく。お嫁さんはレンなのだから、可愛い服を着ているのもレンなのだから、俺がもっとレンに「可愛い」と言ってやらなきゃいけないのにな……なんて考えている間にすぐに美容院に着いた。

「みっちー終わったかな? まだっぽいな、ここでちょっと待つか」

「うん。あー……俺もそろそろ髪切らないとかな」

「お前オールバックなんだから長さとか関係なくね?」

俺は外出の際はワックスを使ってオールバックにしている。最近は前髪を下ろすと目にかかる長さになってきた、セットをしている間は問題ないがワックスを落とした後で邪魔くさくなる。

「後ろもそろそろ切らないと」

「ははっ、不良は襟足伸ばすもんだぜ?」

「もう今更不良っぽさなんかどうでもいいよ……レンは髪、それでいいのか?」

「伸ばせるんなら行くけどな」

レンは耳の上あたりで結んだ髪をピンッと弾いた。茶色い短い尾のような髪が揺れる。

「伸ばしたいのか?」

「伸びてた方が色んな髪型試せるだろ?」

「でも……本当に可愛い子はショートがいいって言うぞ?」

「ショートだと誤魔化し効かねぇから本当に可愛い子が判別しやすいってだけだ、男の都合」

「そっか……なんかごめん」

レンの長髪を想像しようとすると異形化していった霊体の姿を思い出してしまい、多様な髪型が見られるかもしれない期待よりも怪物らしさによる怖さが勝る。

「謝んなよ。俺のことマジで可愛い子って思ってくれてるんだろ? それは嬉しい。つーか、お前の好み知りたい。ショートが好きだから遠回しに言ってた感じか?」

「そんな計算はしてないけど……レンはもうその長さでイメージ固定されちゃってるからなぁ」

「好きな髪型ねぇの? 彼氏の好きな髪型にするくらい何でもないぞ」

「俺そういうの疎くて……レンならどんなのでも似合うと思うし。あ、でも、坊主とかモヒカンとかはやだぞ、頼むからやらないでくれ」

優しげなタレ目を丸くして驚いたレンはくすくすと笑い、俺に抱きついてきた。

「もー……お前はサラッとキュンとすること言ってくれんなぁ。好きだぞもち、大好き。お前がどんな俺でも可愛いって言ってくれるとしても、お前のために誰よりも可愛くなりたい」

男らしい真っ直ぐな目で乙女のような願望を話すから混乱してしまう。けれど破綻はしていない。

「おっ……ミチ終わったみたいだな、行こうぜもっちっちー」

手を引かれてミチの元へ。メカクレヘアは相変わらずだが、口の横まで垂れていた前髪は頬骨の辺りで自然に切り揃えられ、バラバラの長さだった後ろ髪はミチの魅力である頭の丸みを強調するように上手くカットされていた。

「おぉ……! すごい、綺麗になってる」

「はい、さっきまでの汚らしさがなくなってますね!」

突然高い声で話し始めたレンに驚いてしまったが、店員の前だからとすぐに気付いて表情を整える。

「き、きき、汚らしさ……!? ひっ、ひ、ひどいよぉっ!」

「もう綺麗ですって」

「ま、前まで汚いって思ってたこと!?」

「いえ、汚く見えるなと思っていただけで、本当は汚くはないと知っていましたから」

何度言い直したとしても印象がよくなることはないだろう。

「あの……」

「はい?」

女子のように戯れるレンとミチを横目に店員が俺に話しかける。

「資格のない者の散髪行為は傷害にあたりますので、然るべきところへ相談なさった方がよいかと……」

「え? あ……は、はい。それは……もちろん」

「守ってあげてくださいね」

スカートではないが、ホットパンツにタイツ、そもそも地声が高いミチは女の子に見られているようだ。俺の彼女とでも思っているのだろう、レンはどう見られているのだろう。

「じゃあ……ありがとうございました」

代金を支払って美容院を後にする。食事のためにフードコートに行くと相談なく決まり、エスカレーターへ向かいながらミチの話を聞く。

「や、や、やっぱりさ、一人にしないで欲しかったなっ。はは、話すの、やだった」

「話すの? 店員さんとか? 一人にすんなっつっても切ってる最中ずっと隣に居る訳じゃねぇんだし、俺が店に居たって店員と話すのはお前だけだぜ」

「そそ、そんなっ、隣居てよぉっ」

「店員さんの邪魔だろ、無理だって」

ミチと話すのはレンばかりだ。二人の恋人は俺のはずなのに、どうして俺ばかり疎外感を覚えるのだろう。まぁ、俺が二人のどちらかに構いすぎてもう一人が妬んだりなんてことが起こらなくていいのだが。

「んで、お前ら昼飯何にする?」

「ぼ、ぼ、僕っ、うどん」

「俺は……見てから決める。レンは?」

「俺ハンバーグ~」

一階のフードコートに到着。レンとミチはそれぞれの決めた店に向かい、俺は好みの店を探してウロウロ歩き回る。

「なんか甘いの……あれにしよ」

有名なドーナツのチェーン店を見つけ、そこに向かった。三つほど購入して席を探しているとレンが手を振った。

「レン、席取っといてくれたのか」

「おぅ、俺のまだだしな。お前何買ったの、ドーナツぅ?」

ドーナツの種類を説明しているとミチがうどんを持ってよろよろと戻ってきた。

「た、ただっ、ただいまっ」

「おぅおかえり……んー、やっぱ前髪鬱陶しいなぁ。な、飯食ってる時だけ分けておいたらどうだ?」

「ぇ、で、で、でもっ……」

「ヘアクリップ貸してやるよ。ちょっと待ってな」

レンがポーチを開くと同時にミチがポケットから銀色の何かを取り出した。

「か、かか、髪留めっ……持ってる」

「マジ? おぉ、可愛いじゃん」

ミチは当然のような顔をして星型の飾りが付いた銀色の髪留めをレンに渡し、レンの方を向いて待った。レンはくすくすと笑いながらミチの前髪を分けて留めてやった。

「こ、ここ、これねっ、ノノノ、ノゾムくんがくれたのっ」

「あぁ、水族館のお土産だな。これ星じゃなくてヒトデか。よく見りゃ変な模様あるわ」

「お土産……」

ミチはうどんの前に座ることなく俺の前にやってきて丸っこい瞳を輝かせ、何かを期待しているような表情のまま黙った。

「……あっ!? やばっ、センパイにお土産渡すの忘れてる! やばいどうしよ、リビングに置きっぱ……うわぁどうしよやばいやばい」

「もち……」

「どうしよレン、リゾート行く日で大丈夫かな。その前に渡しに行く方がいいかな」

「……この四股クソ野郎」

突然の罵倒に混乱する俺の耳にピピピ……と電子音が届く。レンが持った呼び出し札からだ。レンはため息をついて店に向かい、おどおどしているミチと呆然とした俺が残されて静かな時が過ぎていった。
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