いわくつきの首塚を壊したら霊姦体質になりまして、周囲の男共の性奴隷に堕ちました

ムーン

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弟子に忠告しに行ってみた

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従兄とセンパイは三白眼と褐色の肌という目立つ特徴が同じだから似ていると思いがちだが、顔をじっと見てみるとそんなに似ていない。従兄の方が僅かに顔の幅が狭く、顎もシャープ……つまりセンパイの方が男らしい形をしているということだ。恋人の欲目もあるかもしれないけれど。

センパイは表情筋の動きが鈍く、俺以外には感情が読み取れないことが多い。顔に出やすい人ではあるから、細かな変化を見逃さなければセンパイの感情を察するのは容易い。
従兄は表情筋の動きがハッキリとしていて分かりやすいが、その表情のほとんどは作り物である。目が常に死んでいて、彼の本心を察するのは難しい。

けれど二人とも優しくて愛情深い人なのは確かだ。不器用なところが似ているし、慈しむような表情は似た形になることが多い。今従兄が浮かべた表情だって、センパイにそっくりだった。

「俺全っ然何も覚えてないんですけど、その怪我……俺がやったんですよね」

センパイと似ている表情を見て俺はほっこりしていたが、レンは膝に置いた手に力を込め、ズボンに爪を立ててギリギリと音を立てていた。

「具体的に……どんな感じなんですか?」

「気にしなくていいですよ、意識なかったんですから。心神喪失で責任能力がないってヤツです」

それはあの時あの場でセンパイが言っていたことだ。従兄はあの時激怒してレンを殺そうとしていたのに、今は笑顔でセンパイの言葉を使って赦している。
不気味……違う、自分を大切に思っていないんだ。あの時はレンがセンパイの首を絞めていたから怒っていただけで、センパイに後遺症はないしセンパイが赦しているから今は何とも思っていないんだ。彼は自分のことで他者を恨むことはないんだ。

「頭部裂傷、頭蓋骨まで削れてる」

従兄の代わりに社長が具体的な説明を始めた。ヘラヘラ笑っている従兄とは違い、彼は苛立っているようだ。

「爪の跡みたいな等間隔の傷は治りが遅いんだ、それなのに頭に四本もついてる。如月の手首を掴んだせいで手のひらを中心として霊的な火傷を負ってる、ドライアイスセンセーションに似た感覚異常を起こしてふとしたことで悲鳴を上げる。情けない声は好きだけど僕が原因じゃないからイライラする」

「見てください月乃宮様、手に巻いてる包帯実は模様あるんですよ」

従兄が見せてきた包帯には御札に書かれているような漢字らしき謎の文字があった。霊的な火傷と言っていたから、治療にもオカルト的なものを使うのだろう。

「なんか……カッコイイですね。黒龍波打てそうで」

「ですよね~! 巻いてもらってから何回ごっこ遊びしたことか! 巻き方を忘れちまったからな……とか何回言ったか!」

「僕がこんなにイライラしてるのにっ、当人が楽しそうなのも気に入らないっ!」

ダンッと机を叩いた社長がコップを掴み、はしゃぐ従兄の手に冷たい麦茶をかけた。その瞬間従兄は目を見開き、文字化不可能の悲鳴を上げて椅子から転げ落ちた。

「これが症状だよ。自分の手との温度差を実際よりも大きく感じて激痛になってるみたいだ。水が一番顕著かな。僕が一番困ってるのは内臓の損傷だ。如月、君の蹴りはかなり効いたみたいだね。しばらくは流動食だし、激しいセックスも出来ない……特に中出し禁止が一番堪えるよ」

「お、お兄さんっ、お兄さん大丈夫ですか!? なんてことするんですか!」

「犬がさっき言った通り、現行法に当て嵌めた場合君に責任能力はない……けど君は怪異だ、もう人間じゃない、君に人権はない、君に適応される人間の法律はない。怪異に対する決まりは一つ、人間の命令を聞いて人間に有益なら生存を許可する……それだけだ。分かるかな如月、君が今回起こした停電や周囲の家々への破壊行為などの騒ぎは怪異堕ちした瞬間のものだから見逃されているだけで……今後もう一度同じことをすれば君を処分する許可が降りる」

「え……」

「そして、怪異堕ちした瞬間のことだろうとも本来人間に危害を加えれば即座に処分対象だ。この犬が僕の身内でなければ、僕がこの犬の傷を別の任務中のものだと情報を改竄しなければ、君は今頃恋人への最期の挨拶も許されず死んでいた」

怪異堕ちした人間に対する厳しい現実を説明しながら、社長は手の痛みに蹲っている従兄を足蹴にする。

「如月、僕は君をとても気に入っている。君に今までかけた手間と金を働きで返す前に処分対象になんてならないで欲しい」

「は、い……」

「今回の一件で君が気に病むことは何もない。けど次はない、それは肝に銘じておけ」

「はい……数珠、絶対に外しませんっ……嫉妬も、しないように気を付けます」

感情を表に出さないことなら努力でどうにかなっても、感情を抱くことなんて心構えではどうにもならない。レンに嫉妬させないように気を付けるべきなのは俺だ。

「少し違うよ、如月。霊力の生産を止めてしまっては君は強くなれない、容量を増やして強くなって欲しいんだよ。危険な仕事も安心して任せられるようになって欲しい。僕の犬に怪我を負わせたんだ、将来的には僕の犬が請け負う仕事を減らしてもらわないと割に合わない」

「分かりました……修行、頑張ります」

「それでいい。駄犬、いつまで寝転がってるつもり? 早く零したお茶片付けて」

社長が席に戻ると従兄はゆっくりと起き上がり、床に転がった氷を拾おうとした。社長が従兄の手にかけた麦茶に入っていた氷だ。

「痛ぅっ……!」

氷水をかけられただけで叫んで蹲った従兄が氷なんて触れる訳がない。

「お兄さん…………上司だからって! やっていいことと悪いことがあるだろっ、このパワハラサド野郎! 症状分かっててお茶かけたり掃除させたりなんてっ、人間の所業じゃない!」

我慢出来ずに文句を言いながら社長に向かっていくと、立ち上がった従兄に胸ぐらを掴まれた。

「社長への侮辱は許さない、撤回しろクソガキ」

「……っ、お兄さん……俺は、あなたが酷いことされてるからっ……! どうして、なんでこんな人にっ…………この人はあなたのこと愛してなんてない! 前まではちゃんと愛し合ってるんだって思ってたけど、今回のは酷過ぎる!」

「きさんに何が分かる……撤回しろちゃ! くらすぞクソガキャア!」

「……っ、ぅ……あっ、あのお茶はレンが沸かしたんだ! 飲むために作ったんだ、人を虐めるために作ったんじゃない! 分かったよもうアンタらの関係にはケチつけないっ、搾取されて虐待されて、それで満足ならそうしてろ! でも謝れ、レンに謝れっ、お茶一杯分は謝れよぉっ!」

「…………駄犬、引け」

従兄は無言で俺の胸ぐらを離し、キッチンから雑巾を取ってきて掃除を始めた。

「月乃宮、君の言うことはもっともだ。軽率な行いを謝罪しよう、悪かったね如月」

「あ……い、いえ」

「運がいい。そこの駄犬が昨日ガチャガチャを回しまくったから小銭がある。一杯分にはなるはずだよ」

社長はレンの手に500mmペットボトルのお茶が買えるだろう量の小銭を落とした。

「……金払えばいいと思って」

「金銭のない謝罪にこそ誠意がないだろう。ねぇ如月」

「ゃ……俺は別に、怒ってもいませんし……元を辿れば、俺が暴れたせいだし」

「違う! お兄さんの怪我はレンが暴れたからでも、お茶ぶっかけたのはコイツの性格が悪いからだ! そもそもレンが鬼になっちゃったのも、暴れたのも、全部の原因は俺だしっ……! でもコイツの性悪だけは違う! コイツ一人の責任だ」

「…………コイツ? 誰に向かって言ってるの」

赤紫の瞳が不愉快そうに歪む。だが、今不愉快なのは俺の方だ。

「お前に向かって言ってんだよ!」

「……お前」

「そうだよっ、このサド野郎っ……! お兄さんはお前のために頑張ってるのに、なんで優しく褒めてやれないんだよっ、なんで虐めるんだよ……お兄さんが可哀想だ!」

社長はじっと俺の言葉を聞いていたが、俺が話し終わると鼻で笑った。

「駄犬、掃除終わった?」

「はい!」

酷い扱いを受けているのに従兄はとても幸せそうな笑顔を浮かべている。

「……もちぃ、師匠と秘書さんのことに首突っ込むのやめとけよ。優しく丁寧に扱うことだけが愛じゃねーんだよ、多分」

「………………俺は、レンのことすっごく大事にする」

「……ふふふ、そっかぁ、嬉しいなぁ。よろしく頼むぜ、旦那様」

最近めっきり見なくなっていたレンの幸せそうな笑顔。昨日から今日にかけて復活したこの表情を、俺は二度と損なわない。絶対にだ。
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