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後輩の彼氏達とカラオケで遊んでみた
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彼氏三人と楽しくボウリングなんて、改めて考えると一体全体どういう状況なんだ。そんな困惑を胸に残しつつ、遊び切った。
「はぁー……楽しかった」
「結果は散々だったけどな」
「別にプロボウラー目指してるわけじゃねぇし」
俺が一度に倒せた最高ピン数は五本、レンは四本、ミチは二本、センパイは──
「…………すまない、弁償はする……出禁は勘弁してくれ、もう遊べるところがなくなる……」
──天井。現在店長と大切なお話中だ。ちなみに先輩方は三人全員パーフェクト、恐れ入る
「はしゃいで力んじゃったねークニちゃん」
「最初の方上手くいってたのに惜しいなー」
「あの……センパイ大丈夫ですかね? 出禁とか警察沙汰とか」
「あー大丈夫大丈夫、天井割ったってそうそう出禁にゃならねーよ」
「前の時はねー、クニちゃんの態度が悪かったのよ。俺らもだけど」
「めっちゃネチネチ言ってきたからクニちゃん逆ギレしちゃってさー」
最近のセンパイには温厚なイメージを持っているから、その状況の想像すら出来ない。センパイが本気で怒るのなんて従兄をバカにされたり俺が傷付けられたりした時くらいじゃないか? って自分で言ってて恥ずかしいな。
「次カラオケがいいんだけど……形州どこ?」
「センパイはしょっぴかれちゃった」
「…………言い方」
コツン、と頭に拳が乗せられた。どうやら店長との話し合いは上手くいったようだ。
「おぅ形州、次カラオケ行こうぜ」
「……スケートはいいのか?」
「体動かして疲れたしさ、スケートはカラオケの次にしようぜ」
「…………ノゾム、それでいいか?」
特に反対する理由はない、頷くとセンパイは施設内のカラオケへ向かってくれた。
「ありがとうございます、センパイ」
ふと思う、俺は好きな人達に囲まれて嬉し恥ずかし楽し……と言った具合だが、恋敵と遊ばされている三人はどう思っているのだろう。
「レン、楽しいか?」
「おぅ、ボウリング初めてだけど楽しかったぜ。上手くやれる気はしねぇけど、またやりてぇな。なぁミチ」
「ぅ、うぅ、うんっ、おぉおっ、思ってたより面白かった!」
そういう意味で楽しかったかどうか聞いた訳ではないのだが……まぁ、嫉妬心を表に出すほど抱いていないなら大丈夫かな。
「お前は楽しんでんのか?」
「え? あぁ、そりゃもちろん」
「お前俺らに気ぃ遣いすぎて自分が楽しむの後回しにすんなよ? お前が楽しそうにしてんのがイイんだから。な、ミチ」
こくこくと頷いているミチもレンも俺を見つめて笑ってくれている。恋敵同士で遊んでいることへの心配なんてただの杞憂だったようだ。
「……受付終わったぞ、102だ」
「ありがとうございます、すいません任せちゃって」
「一階か、ラッキーだな。ドリンクバー行きやすいじゃん」
各々透明のグラスにジュースを注ぎ、センパイが取ってくれた部屋へ向かう。
「ひっろ、パーティルームじゃん」
教室の半分程度の広さはありそうな部屋だ、壁に沿ったソファには詰めれば十数人で座れるだろう。
「そりゃ七人ならパーティルームじゃなきゃっしょ」
「山盛りポテト頼もーぜ、ディップ何にする?」
「俺明太マヨがいいー!」
「……お前らはもう帰っていいんだぞ」
「カラオケは人多い方が楽しいっしょクニちゃん!」
「カルテットしようぜクニちゃん!」
「俺お嬢とデュエットしたぃ……ジョウダンデス」
三人組の先輩方にはぜひ居て欲しい、賑やかしとして最適なのだ。家でまったりしている時ならまだしも、こういう場で遊ぶには俺達四人だけではどうしてもバランスよく談笑出来ない。
「ぼぼ、僕最近、最近の歌勉強してるからっ、いぃ、色々歌えるよっ!」
「お、マジ? じゃあ盛り上げはミチに任せて俺らは懐かしのアニソンメドレーでもやろうかもっちー」
「みんなが知らないアニメ映像流れてシラケる中で歌い切る自信はないかな……」
レンの持ち歌はだいたい分かっているつもりだし、ミチも今言ってくれた。一緒にカラオケに行ったことはもちろん、音楽を聴いているところも見たことがないセンパイの歌う曲が気になる。
「センパイっ、センパイは何歌うんですか? センパイの歌声知らないので早く聞きたいです」
「…………俺自身はあまり音楽に興味はないんだが」
「だが?」
「……兄ちゃんに歌って欲しいと頼まれた曲がいくつかある、最近歌っていないが……多分歌えるはずだ」
「それお願いします!」
従兄ならセンパイの声質だとかを考えて最高の選曲をしてくれるだろう。従兄のセンパイへの愛情だけは絶対に信頼出来る部分だ。
「……俺からでいいのか?」
「はい。いいよな、レン」
「おぅ、俺まだ決まんねぇし」
センパイがデンモクを操作し、センパイが選んだ歌が始まる。見覚えのない英字タイトルだ、知らない歌だろうか。
「えっ、ホルモンじゃん」
「フ、フ、フライドチキンだよ?」
「いやそうじゃなくて」
デンモクは二つしかないので、ミチとレンは軽食のメニュー表を見ている。早く曲を入れてレンに回さなければとデンモクに視線を落とすと、センパイが立ち上がった。
「あ、センパイ立って歌うタイプなんで、すっ……!?」
咳払いをし、軽く背を曲げたセンパイはがなるように濁った声を上げた。唸り声のような、吼えるようなこの発声法の名は確か──
「えーデスボうっま、すげぇじゃん形洲、やるぅ」
──そう、デスボイスだ。ド忘れしていたがレンのおかげで思い出せた。
「こ、ここ、怖いんだけど」
「カッケぇ……デスボ出せる男っていいよな」
後でセンパイに習おうかな。
「この後にポップソング入れんのアレだな。もちぃ、メタル系入れろよ」
「アニソンとボカロ以外聞かないし音楽の系統とか分かんないよ」
あまりアニソン感の強くないアニソンを入れ、レンに回した。
「OPだなこれ、じゃあ俺ED歌お」
「な、な、なんかいいなぁそういうの……」
センパイが歌い終えたので拍手をし、疲れた様子の彼にジュースを渡す。
「お疲れ様ですセンパイっ、カッコよかったです。八十点ですって、すごいですよ」
「……あぁ、次はお前か」
「はい、アニソンなんでセンパイは知らないかもですけど」
「…………今俺が歌ったのもアニソンだぞ」
「あ、そうなんですか? 知らなかったなぁ……そっか、お兄さんもアニメとかゲーム結構好きでしたもんね、昔のなのかな」
漫画なら昔のものでも関係なく読んでいることはあるが、アニメは配信でもしてくれていないと見る機会がない。有名どころでもOPやEDを知らないアニメは多いものだ。
「じゃ、俺とお前でデュエットな」
「はぁ!? 俺のけもんにすんなっつーの!」
「俺その歌知らねぇんだけど」
「……ノゾムが歌う、静かにしないなら追い出すぞ」
「話してていいですよ先輩、黙られるとプレッシャーすごいです」
歌が始まった。あまり自信はないが、俺に集中してくれている人が多い、頑張らなければ。
「もち、チキン好きだよな」
「そ、そ、そうなの? フライドチキン頼む?」
「お前バンド名見ろよ」
八十六点、そこそこだな。この歌は得意とは言えないからこんなものだろう。
「よっしゃ、じゃあ次俺だな」
以前レンとカラオケに行った時、彼は女の子の声を作って歌っていた。男の声で歌ってくれるのは久しぶりで、逆に新鮮な気がして、ついつい聞き入ってしまった。
「はぁー……楽しかった」
「結果は散々だったけどな」
「別にプロボウラー目指してるわけじゃねぇし」
俺が一度に倒せた最高ピン数は五本、レンは四本、ミチは二本、センパイは──
「…………すまない、弁償はする……出禁は勘弁してくれ、もう遊べるところがなくなる……」
──天井。現在店長と大切なお話中だ。ちなみに先輩方は三人全員パーフェクト、恐れ入る
「はしゃいで力んじゃったねークニちゃん」
「最初の方上手くいってたのに惜しいなー」
「あの……センパイ大丈夫ですかね? 出禁とか警察沙汰とか」
「あー大丈夫大丈夫、天井割ったってそうそう出禁にゃならねーよ」
「前の時はねー、クニちゃんの態度が悪かったのよ。俺らもだけど」
「めっちゃネチネチ言ってきたからクニちゃん逆ギレしちゃってさー」
最近のセンパイには温厚なイメージを持っているから、その状況の想像すら出来ない。センパイが本気で怒るのなんて従兄をバカにされたり俺が傷付けられたりした時くらいじゃないか? って自分で言ってて恥ずかしいな。
「次カラオケがいいんだけど……形州どこ?」
「センパイはしょっぴかれちゃった」
「…………言い方」
コツン、と頭に拳が乗せられた。どうやら店長との話し合いは上手くいったようだ。
「おぅ形州、次カラオケ行こうぜ」
「……スケートはいいのか?」
「体動かして疲れたしさ、スケートはカラオケの次にしようぜ」
「…………ノゾム、それでいいか?」
特に反対する理由はない、頷くとセンパイは施設内のカラオケへ向かってくれた。
「ありがとうございます、センパイ」
ふと思う、俺は好きな人達に囲まれて嬉し恥ずかし楽し……と言った具合だが、恋敵と遊ばされている三人はどう思っているのだろう。
「レン、楽しいか?」
「おぅ、ボウリング初めてだけど楽しかったぜ。上手くやれる気はしねぇけど、またやりてぇな。なぁミチ」
「ぅ、うぅ、うんっ、おぉおっ、思ってたより面白かった!」
そういう意味で楽しかったかどうか聞いた訳ではないのだが……まぁ、嫉妬心を表に出すほど抱いていないなら大丈夫かな。
「お前は楽しんでんのか?」
「え? あぁ、そりゃもちろん」
「お前俺らに気ぃ遣いすぎて自分が楽しむの後回しにすんなよ? お前が楽しそうにしてんのがイイんだから。な、ミチ」
こくこくと頷いているミチもレンも俺を見つめて笑ってくれている。恋敵同士で遊んでいることへの心配なんてただの杞憂だったようだ。
「……受付終わったぞ、102だ」
「ありがとうございます、すいません任せちゃって」
「一階か、ラッキーだな。ドリンクバー行きやすいじゃん」
各々透明のグラスにジュースを注ぎ、センパイが取ってくれた部屋へ向かう。
「ひっろ、パーティルームじゃん」
教室の半分程度の広さはありそうな部屋だ、壁に沿ったソファには詰めれば十数人で座れるだろう。
「そりゃ七人ならパーティルームじゃなきゃっしょ」
「山盛りポテト頼もーぜ、ディップ何にする?」
「俺明太マヨがいいー!」
「……お前らはもう帰っていいんだぞ」
「カラオケは人多い方が楽しいっしょクニちゃん!」
「カルテットしようぜクニちゃん!」
「俺お嬢とデュエットしたぃ……ジョウダンデス」
三人組の先輩方にはぜひ居て欲しい、賑やかしとして最適なのだ。家でまったりしている時ならまだしも、こういう場で遊ぶには俺達四人だけではどうしてもバランスよく談笑出来ない。
「ぼぼ、僕最近、最近の歌勉強してるからっ、いぃ、色々歌えるよっ!」
「お、マジ? じゃあ盛り上げはミチに任せて俺らは懐かしのアニソンメドレーでもやろうかもっちー」
「みんなが知らないアニメ映像流れてシラケる中で歌い切る自信はないかな……」
レンの持ち歌はだいたい分かっているつもりだし、ミチも今言ってくれた。一緒にカラオケに行ったことはもちろん、音楽を聴いているところも見たことがないセンパイの歌う曲が気になる。
「センパイっ、センパイは何歌うんですか? センパイの歌声知らないので早く聞きたいです」
「…………俺自身はあまり音楽に興味はないんだが」
「だが?」
「……兄ちゃんに歌って欲しいと頼まれた曲がいくつかある、最近歌っていないが……多分歌えるはずだ」
「それお願いします!」
従兄ならセンパイの声質だとかを考えて最高の選曲をしてくれるだろう。従兄のセンパイへの愛情だけは絶対に信頼出来る部分だ。
「……俺からでいいのか?」
「はい。いいよな、レン」
「おぅ、俺まだ決まんねぇし」
センパイがデンモクを操作し、センパイが選んだ歌が始まる。見覚えのない英字タイトルだ、知らない歌だろうか。
「えっ、ホルモンじゃん」
「フ、フ、フライドチキンだよ?」
「いやそうじゃなくて」
デンモクは二つしかないので、ミチとレンは軽食のメニュー表を見ている。早く曲を入れてレンに回さなければとデンモクに視線を落とすと、センパイが立ち上がった。
「あ、センパイ立って歌うタイプなんで、すっ……!?」
咳払いをし、軽く背を曲げたセンパイはがなるように濁った声を上げた。唸り声のような、吼えるようなこの発声法の名は確か──
「えーデスボうっま、すげぇじゃん形洲、やるぅ」
──そう、デスボイスだ。ド忘れしていたがレンのおかげで思い出せた。
「こ、ここ、怖いんだけど」
「カッケぇ……デスボ出せる男っていいよな」
後でセンパイに習おうかな。
「この後にポップソング入れんのアレだな。もちぃ、メタル系入れろよ」
「アニソンとボカロ以外聞かないし音楽の系統とか分かんないよ」
あまりアニソン感の強くないアニソンを入れ、レンに回した。
「OPだなこれ、じゃあ俺ED歌お」
「な、な、なんかいいなぁそういうの……」
センパイが歌い終えたので拍手をし、疲れた様子の彼にジュースを渡す。
「お疲れ様ですセンパイっ、カッコよかったです。八十点ですって、すごいですよ」
「……あぁ、次はお前か」
「はい、アニソンなんでセンパイは知らないかもですけど」
「…………今俺が歌ったのもアニソンだぞ」
「あ、そうなんですか? 知らなかったなぁ……そっか、お兄さんもアニメとかゲーム結構好きでしたもんね、昔のなのかな」
漫画なら昔のものでも関係なく読んでいることはあるが、アニメは配信でもしてくれていないと見る機会がない。有名どころでもOPやEDを知らないアニメは多いものだ。
「じゃ、俺とお前でデュエットな」
「はぁ!? 俺のけもんにすんなっつーの!」
「俺その歌知らねぇんだけど」
「……ノゾムが歌う、静かにしないなら追い出すぞ」
「話してていいですよ先輩、黙られるとプレッシャーすごいです」
歌が始まった。あまり自信はないが、俺に集中してくれている人が多い、頑張らなければ。
「もち、チキン好きだよな」
「そ、そ、そうなの? フライドチキン頼む?」
「お前バンド名見ろよ」
八十六点、そこそこだな。この歌は得意とは言えないからこんなものだろう。
「よっしゃ、じゃあ次俺だな」
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