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後輩の彼氏達と遊んでみた
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大規模なアミューズメント施設に到着した。ここには何度か不良グループとの付き合いで来たことがある、いい思い出はない。
「く、くくっ、靴のサイズっ? えとっ……今は、えと、21.5を無理矢理履いててちょっと痛いから……えっと、えっと……」
「俺25~」
「えっ、俺24.5なんだけど……レン、俺より身長10センチは低いのに」
「ぁんだよ俺が足デカいってか! 悪かったな!」
「悪いとは言ってないよ!」
「足は小さい方が可愛いだろ……ムカつく」
あんなことがあったばかりだしレンには楽しんで欲しかったのに、機嫌を損ねてしまった。俺はどうしてこう余計なことを言ってしまうのだろう。
「……33センチ。ないのか? 分かった……自分の物を持ってこさせる。ノゾム、如月、ミチ、先に始めておけ」
「おー……店員が平謝りしてら」
「よ、よよ、用意ない方が悪いよっ」
「33を想定する国内企業はまずねぇのよ」
三人だけで受付の奥へと進み、靴を履き替える。相変わらずボウリング場の靴はカラフルで、履くのは少し恥ずかしい。
「知ってるかレン、ボウリング場の靴がクソダサいのは」
「盗難防止、って言ってるテレビ一緒に見たなぁ?」
「覚えてたか……」
雑学披露は失敗したが、レンは笑ってくれたので実質成功だ。
「ぼ、ぼぼ、僕、ボーリング初めてだからっ、ふ、ふ、二人どっちか先投げてね」
「お、そうだミチ、知ってるか? ボーリングは地質調査とかで穴を掘ること、今からやるのはボウリングって言うんだぞ」
「え……? い、いい、一緒じゃないの?」
「うるせぇヤツだな、ピザのことはピザって言うくせに」
「ピピッ、ピザ……? なんで今ピザ?」
雑学披露は成功したが、カッコつかなかったしレンには呆れられたし、今度は実質失敗だ。難しいな。
「じゃあミチ、ボウリングの発祥国は知ってるか?」
「ア、アア、アメリカ?」
「ドイツだ。ケーゲル倒しが原形って話があるぜ」
「へー! き、きき、如月くん物知りだねっ」
キラキラと尊敬の眼差しを向けられたレンは照れくさそうに緩んだ微笑みを見せている。俺には呆れた顔ばかり見せるくせに。
「ミチミチミチミチ俺俺俺! 俺が言おうとしてたのそれ!」
「ノノ、ノゾムくんも物知りだねっ」
「へへへ……」
キラキラと輝く尊敬の眼差しと、にっこりという擬態語が似合う可愛い笑顔。そんなもの向けられたら顔がデレ~っと緩んでしまう。
「ニヤついてねぇで行くぞ」
「レンだってニヤついてたじゃん!」
「ミチにあんな顔されたらニヤつくだろ!」
「レン俺のこと好きなんだよね!?」
なんてふざけ半分の痴話喧嘩をしつつボウリング場へ。
「俺達のレーンここか?」
「うん。じゃ、やろっか。一番手は俺……あ、ミチ、自分に合ったボール選べよ。穴空いてるだろ? そこに指入るヤツな」
「ミチの指ならどれでも入るだろ」
紫色のボールを取り、まずは勘を取り戻すための第一投……ガーターだ。そもそも俺には取り戻す勘がない。
「ナイッシュー」
「煽るなよレン!」
「フォ、フォ、フォームは分かったよ! つつっ、次僕でいい?」
レンに視線をやると頷いたのでミチに二番手を任せた。ミチはそれっぽいフォームを取ろうとしたようだが、くねっとしてしまって不格好だった。
「ははっ、上手い上手い。なんかくねくねしてたけど」
「お前もよれっとしてたぜ」
「マジ?」
「う、ぅ、うんっ、ああ、あのしなやかさが重要なんじゃないの?」
俺が手本ではミチはいつまで経っても上達しなさそうだ。レンに任せられるだろうか? レンは何だかんだ陰キャで出不精だからボウリングの経験なんてあるわけがないけれど、器用だから未経験でもそれなりには出来そうだ。
「よし、じゃあミチ、俺の見とけよ。ボウリング場でのモテテクを教えてやる。まずはボールを持つ……」
レンはボールの穴に指を入れようとしてやめた。
「ここで一言。やだー、ネイル割れちゃーう。指入れなくていいよねこれ~」
「ネ、ネネ、ネイル……?」
「投げ方は両手で挟むように持って……えいっ! と可愛い声を出す! この時勢いを殺し、ボウリングの玉がギリギリピンに届く程度の力で投げる! そしてここでまた一言、やーん力弱すぎた~……非力アピール!」
「鬱陶しい女講座やめろぉ! ちゃんとしたボウリング教えてやってくれよレン!」
「やったことねぇもん。お前が経験者だっつーから俺はボウリング場までの道のりで一切ボウリングについて調べず、このボケを練ったんだぜ」
マニキュアすら塗られていない桜貝のような爪を見せつけるように眼前でビシッと指を差される。
「はぁー……センパイ、マイシューズ持ってるくらい通ってるみたいだから……もうセンパイに頼ろう」
なんて話しているとセンパイがやってきた。その後ろにはいつもの三人組の姿がある。
「……お前らは帰っていいんだぞ」
「いいじゃん別でレーン借りたし。隣だけど」
「可愛い子ばっかじゃん、クニちゃんのハーレムみてぇ」
「お嬢の逆ハーなんだよなこれが。ウケる」
マイシューズらしいセンパイのボウリング用シューズは施設で借りられるものと違いシックな色合いで羨ましい。三人組の先輩方は全員マイシューズにマイボールな上に指ぬきグローブまではめているし、相当な上級者と見受けられる。頼もしい。
「センパイっ、俺達ほとんど初心者でピン一本も倒せないんです。手取り足取り教えてくれませんか……? まずはお手本見せてください!」
センパイの腕に絡み付いて上目遣いでねだってみると、すぐにやる気を出してくれた。多分ヤる気も。
「……任せろ」
「ちょい待ちちょい待ちクニちゃん!」
「前に天井に穴空けた前科あるっしょ」
「力加減気ぃ付けて!」
力加減に気を取られたのかセンパイが投げたボールはへろへろとみっともなく転がり、ピンを一本だけ倒した。
「センパイ、そんなに気を付けなくても大丈夫ですよ。センパイそんな怪力じゃないですって、俺に触る時はすっごく優しいんですし、イケますイケます」
「………………そう思うか?」
落ち込みかけていたようだが、何とかカバー出来た。さて、上級者っぽい先輩方のお手並みを拝見……三人連続ストライク、だと?
「ミチ、あっちの先輩に教えてもらいに行こうぜ」
「べ、べ、別に上手くなりたい訳じゃないけど……」
レン達が隣のレーンに夢中になる傍ら、俺は満を持して二投目を投げた。上手い人を見た後だと何だか出来る気がしてしまうのだ。結果は三本、さっきよりはマシかな。
「センパイっ、次センパイの番ですよ」
「……あぁ」
「センパイが思ってるよりは力入れていいですよ」
「…………分かった」
先程よりも力を込めて投げたボールはレーンの中間地点を超えてようやく床に触れ、隣のレーンのボールとは比べ物にならない速さでピンに突進していった。
「……ストライクだ」
第一投で倒さなければストライクとは言わない。さてはセンパイ初心者だな? いや、一応先輩達と経験はありそうだったな。じゃあ素人童貞か。
「センパイ……ボウリングは、ソフトボールじゃないんです」
ピンは全て倒れたが、今のはボウリングとは呼び難い。俺はピンを倒せてご満悦なセンパイの服の裾を引っ張った。
「……知っているが」
「転がすんです、下投げするんじゃありません」
「…………転がしているつもりだが」
「力加減は、一回目と二回目の中間を意識しましょう!」
「……? 分かった」
コツを教えてもらったらしいレンとミチが戻ってきたので順番を譲り、見事半分ずつピンを倒した彼らに教えを乞うた。
「く、くくっ、靴のサイズっ? えとっ……今は、えと、21.5を無理矢理履いててちょっと痛いから……えっと、えっと……」
「俺25~」
「えっ、俺24.5なんだけど……レン、俺より身長10センチは低いのに」
「ぁんだよ俺が足デカいってか! 悪かったな!」
「悪いとは言ってないよ!」
「足は小さい方が可愛いだろ……ムカつく」
あんなことがあったばかりだしレンには楽しんで欲しかったのに、機嫌を損ねてしまった。俺はどうしてこう余計なことを言ってしまうのだろう。
「……33センチ。ないのか? 分かった……自分の物を持ってこさせる。ノゾム、如月、ミチ、先に始めておけ」
「おー……店員が平謝りしてら」
「よ、よよ、用意ない方が悪いよっ」
「33を想定する国内企業はまずねぇのよ」
三人だけで受付の奥へと進み、靴を履き替える。相変わらずボウリング場の靴はカラフルで、履くのは少し恥ずかしい。
「知ってるかレン、ボウリング場の靴がクソダサいのは」
「盗難防止、って言ってるテレビ一緒に見たなぁ?」
「覚えてたか……」
雑学披露は失敗したが、レンは笑ってくれたので実質成功だ。
「ぼ、ぼぼ、僕、ボーリング初めてだからっ、ふ、ふ、二人どっちか先投げてね」
「お、そうだミチ、知ってるか? ボーリングは地質調査とかで穴を掘ること、今からやるのはボウリングって言うんだぞ」
「え……? い、いい、一緒じゃないの?」
「うるせぇヤツだな、ピザのことはピザって言うくせに」
「ピピッ、ピザ……? なんで今ピザ?」
雑学披露は成功したが、カッコつかなかったしレンには呆れられたし、今度は実質失敗だ。難しいな。
「じゃあミチ、ボウリングの発祥国は知ってるか?」
「ア、アア、アメリカ?」
「ドイツだ。ケーゲル倒しが原形って話があるぜ」
「へー! き、きき、如月くん物知りだねっ」
キラキラと尊敬の眼差しを向けられたレンは照れくさそうに緩んだ微笑みを見せている。俺には呆れた顔ばかり見せるくせに。
「ミチミチミチミチ俺俺俺! 俺が言おうとしてたのそれ!」
「ノノ、ノゾムくんも物知りだねっ」
「へへへ……」
キラキラと輝く尊敬の眼差しと、にっこりという擬態語が似合う可愛い笑顔。そんなもの向けられたら顔がデレ~っと緩んでしまう。
「ニヤついてねぇで行くぞ」
「レンだってニヤついてたじゃん!」
「ミチにあんな顔されたらニヤつくだろ!」
「レン俺のこと好きなんだよね!?」
なんてふざけ半分の痴話喧嘩をしつつボウリング場へ。
「俺達のレーンここか?」
「うん。じゃ、やろっか。一番手は俺……あ、ミチ、自分に合ったボール選べよ。穴空いてるだろ? そこに指入るヤツな」
「ミチの指ならどれでも入るだろ」
紫色のボールを取り、まずは勘を取り戻すための第一投……ガーターだ。そもそも俺には取り戻す勘がない。
「ナイッシュー」
「煽るなよレン!」
「フォ、フォ、フォームは分かったよ! つつっ、次僕でいい?」
レンに視線をやると頷いたのでミチに二番手を任せた。ミチはそれっぽいフォームを取ろうとしたようだが、くねっとしてしまって不格好だった。
「ははっ、上手い上手い。なんかくねくねしてたけど」
「お前もよれっとしてたぜ」
「マジ?」
「う、ぅ、うんっ、ああ、あのしなやかさが重要なんじゃないの?」
俺が手本ではミチはいつまで経っても上達しなさそうだ。レンに任せられるだろうか? レンは何だかんだ陰キャで出不精だからボウリングの経験なんてあるわけがないけれど、器用だから未経験でもそれなりには出来そうだ。
「よし、じゃあミチ、俺の見とけよ。ボウリング場でのモテテクを教えてやる。まずはボールを持つ……」
レンはボールの穴に指を入れようとしてやめた。
「ここで一言。やだー、ネイル割れちゃーう。指入れなくていいよねこれ~」
「ネ、ネネ、ネイル……?」
「投げ方は両手で挟むように持って……えいっ! と可愛い声を出す! この時勢いを殺し、ボウリングの玉がギリギリピンに届く程度の力で投げる! そしてここでまた一言、やーん力弱すぎた~……非力アピール!」
「鬱陶しい女講座やめろぉ! ちゃんとしたボウリング教えてやってくれよレン!」
「やったことねぇもん。お前が経験者だっつーから俺はボウリング場までの道のりで一切ボウリングについて調べず、このボケを練ったんだぜ」
マニキュアすら塗られていない桜貝のような爪を見せつけるように眼前でビシッと指を差される。
「はぁー……センパイ、マイシューズ持ってるくらい通ってるみたいだから……もうセンパイに頼ろう」
なんて話しているとセンパイがやってきた。その後ろにはいつもの三人組の姿がある。
「……お前らは帰っていいんだぞ」
「いいじゃん別でレーン借りたし。隣だけど」
「可愛い子ばっかじゃん、クニちゃんのハーレムみてぇ」
「お嬢の逆ハーなんだよなこれが。ウケる」
マイシューズらしいセンパイのボウリング用シューズは施設で借りられるものと違いシックな色合いで羨ましい。三人組の先輩方は全員マイシューズにマイボールな上に指ぬきグローブまではめているし、相当な上級者と見受けられる。頼もしい。
「センパイっ、俺達ほとんど初心者でピン一本も倒せないんです。手取り足取り教えてくれませんか……? まずはお手本見せてください!」
センパイの腕に絡み付いて上目遣いでねだってみると、すぐにやる気を出してくれた。多分ヤる気も。
「……任せろ」
「ちょい待ちちょい待ちクニちゃん!」
「前に天井に穴空けた前科あるっしょ」
「力加減気ぃ付けて!」
力加減に気を取られたのかセンパイが投げたボールはへろへろとみっともなく転がり、ピンを一本だけ倒した。
「センパイ、そんなに気を付けなくても大丈夫ですよ。センパイそんな怪力じゃないですって、俺に触る時はすっごく優しいんですし、イケますイケます」
「………………そう思うか?」
落ち込みかけていたようだが、何とかカバー出来た。さて、上級者っぽい先輩方のお手並みを拝見……三人連続ストライク、だと?
「ミチ、あっちの先輩に教えてもらいに行こうぜ」
「べ、べ、別に上手くなりたい訳じゃないけど……」
レン達が隣のレーンに夢中になる傍ら、俺は満を持して二投目を投げた。上手い人を見た後だと何だか出来る気がしてしまうのだ。結果は三本、さっきよりはマシかな。
「センパイっ、次センパイの番ですよ」
「……あぁ」
「センパイが思ってるよりは力入れていいですよ」
「…………分かった」
先程よりも力を込めて投げたボールはレーンの中間地点を超えてようやく床に触れ、隣のレーンのボールとは比べ物にならない速さでピンに突進していった。
「……ストライクだ」
第一投で倒さなければストライクとは言わない。さてはセンパイ初心者だな? いや、一応先輩達と経験はありそうだったな。じゃあ素人童貞か。
「センパイ……ボウリングは、ソフトボールじゃないんです」
ピンは全て倒れたが、今のはボウリングとは呼び難い。俺はピンを倒せてご満悦なセンパイの服の裾を引っ張った。
「……知っているが」
「転がすんです、下投げするんじゃありません」
「…………転がしているつもりだが」
「力加減は、一回目と二回目の中間を意識しましょう!」
「……? 分かった」
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