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後輩を探すため全力を尽くしてみた
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俺の血を舐めたレンが突然幽霊を食べ始めた。混乱する俺を放ってレンは幽霊をバリバリと食べ進め、終え、浮遊して俺の目の前にすぅーっと移動してきた。
「レン……お、お腹、大丈夫か?」
レンの方が背が低いから俺はいつもレンに見上げられているのに、浮かんでいるレンは俺を見下ろしている。爛々と輝く瞳は俺を捕食対象として見ているように感じるが、気のせいだよな……?
「変なもん食うなよな。はははっ」
恐怖を押し殺して笑顔を見せると、レンは目を見開いた。そして俺に伸ばしかけていた手を引っ込め、また壁をすり抜けてどこかへ飛んで行ってしまった。
「レンっ!? レン! ちょっと待って! 外行かないでよ、俺裸なのに!」
全裸のままでは外に出られない。俺は急いで破られた服を拾い、着た。シャツは袖や裾が破れていたりボタンが取れていたりしてあまり外に出たくない有様だ、ズボンの方はファスナーが壊されていて掴んでいなければズリ落ちてきてしまう。
「ま、まぁ……ギリ犯罪者にはならないよな」
下着は履ける状態ではなかったのでズボンをそのまま履いたが、掴んでいなければ履いていられないファスナーが壊れたズボンはとても怖い。手を滑らせれば猥褻物陳列罪まっしぐらだ、法律よく知らないけど。
「レン……どこ行ったんだろ」
服を着ている間に見失ってしまった。身体に戻ったのならいいのだが。
「とりあえずスマホ……あった」
廃墟の敷地ギリギリに落としてしまっていたスマホを拾い、土埃を払う。レンからの複数の通知はミチがかけてきたものだろう、その後で自分のスマホも使ったのかミチからの通知もある。
「心配かけちゃったな……」
十中八九戻っていないとは思うけれど、レンが身体に戻ったのならいいなと考えながらミチに電話をかけた。しかし、出ない。心配し疲れて寝たのか、電話を掛け過ぎて充電がなくなってしまったのか、手元に置いていないのか──とにかく出ない。
「俺のも充電少ないのに……」
電話を掛けられまくった俺のスマホの充電もかなり減っている。ミチに何度も掛け直すのは難しいだろう、連絡せずに帰ろうかな。
「服、ちょっと不安だな……ま、イケるか」
怪異にボタンを引きちぎられたせいでシャツの前は閉じないし、同じく怪異がファスナーを壊したせいでズボンも前が閉まらず掴んでいないと落ちてくるし、下着は破られて履ける状態ではないので現在ノーパン。なるべく人に見つかりたくないので裏道を選んだ。
「ここ通り抜けられたっけ……」
周囲の店や家の窓なども気にしつつ、連続絶頂のせいか覚束無い足取りでレンの家へと急ぐ。
「信号……やば、ここめっちゃ見通しいいじゃん」
女幽霊に殺されかけた横断歩道まで戻ってきた。幅広の車道を横断する横断歩道はここ以外には見当たらない、探せばあるのだろうがかなりの遠回りになるだろう。車にも他の歩行者にもボロボロの格好を見られてしまうが、仕方ない。
「ぅう……」
青信号になるまでは物陰に隠れ、信号が変わった瞬間に踏み出した。目立たないように身体を縮こまらせていたのに、車道側で信号を待っていたバイクの不良学生らしき男に話しかけられた。
「あっ……! お前! お前月乃宮だろ!」
しかも名前を呼ばれた、俺は彼を知らないのに。違いますと小さく答えて通り過ぎようとしたが、男はバイクを降りて俺の腕を掴んだ。
「わっ! ちょっ、ズボン落ちちゃう! 手ぇ引っ張らないでください!」
「大人しくしろって! 月乃宮だよな? 月乃宮ノゾム! 俺らお前探すの頼まれてんだよ!」
俺ら? 複数人居るのか? 一緒ではないようだが……
「ほらこれ! お前だろ?」
男はスマホを取り出すとメッセージアプリを開き、俺の画像が複数送られていることを教えた。またセンパイに恨みを持つモノだろうか? 怪異に襲われた帰りなんだからもうやめて欲しい、センパイをまた落ち込ませてしまうし……不意をついて逃げようか? 逃げられるとは思えないけれど。
「俺ですけど……誰に探せって言われたんですか?」
「俺らのガッコじゃねぇんだけど、クソデカい形州ってボスの手下にフッ軽イカれ三人組が居るんだよ、そいつらがお前連れてきたらタバコ1カートン出すって御触れ出してよ。なんで探されてるか知らねぇけど、着いてきてもらうぞ」
先輩三人組が? 本当だろうか。逃げることなんて出来ないだろうし、下手に抵抗して殴られても嫌だし、ここは賭けるか。
「じゃあ……えっと、後ろ乗っていいんですか?」
「えー……ぁー…………あぁ、乗れよ」
霊体だったレンのものはともかく、俺が漏らした精液の匂いはするだろう。服の破損から見ても俺が強姦された後のように見えるのは聞かなくても分かる。気乗りはしないようだったがバイクに二人乗りをさせてもらい、遠慮しつつ男に掴まった。
結論から言うと俺は賭けに勝った。どこかの廃墟に連れ込まれて暴行……なんてことにはならず、レンの家の前まで送ってもらえた。
「よっし確かに本物のお嬢だ。ほいタバコ」
「せんきゅ。じゃ」
てっきりセンパイに恨みを持つ他校の不良だと思っていたが、とうにセンパイの傘下に下った他校の不良だったようだ。お礼を言う暇もなく排気音を鳴らして走り去ってしまった。
「さ、て……どったのお嬢! またどっかのクソ野郎に襲われたの!? ボロッボロじゃん、怪我は?」
「あ、えっと……ぉ、お久しぶりです」
「久しぶり! そうでもないけどね! ってそんな場合じゃないっしょ!」
センパイの友人である先輩三人組のうちの一人だ。センパイと他の二人は俺の捜索に出ていて、彼はここで司令塔役をこなしていたらしい。
「襲われたのは襲われたんだけど……その、お化けで……」
「あー、そっちぃ?」
先輩三人組は一緒にお化け屋敷に閉じ込められたこともある怪異の理解者だ。
「はい、だからその、センパイには言わないで欲しくて……俺からいい感じに説明するので」
「んー……おっけ、分かった。見つかったって連絡したから、もうすぐにこっち来ると思うよ。シャワーでも浴びときな」
「ありがとうございます……」
着替えを持って浴室に向かう途中、ミチの様子をチラリと見た。彼はソファの上でレンに覆い被さるように眠っていた。
「泣き疲れちゃったみたいだねー。この子すごかったんだよ、わんわん泣いてさ。クニちゃんに電話かけてきた時もずっと泣いてて」
「そうですか……」
「あんまりクニちゃんもこの子も心配させないであげなよ? って言っても、別にお嬢が悪いわけじゃないんだけどね」
いや、今回も俺が迂闊なのが悪かった。そんな自虐をせっかく慰めてくれた先輩には言えず、ただ礼を言って浴室に急いだ。
確かに体内に大量に注がれたはずの精液は、行為の直後は腹の重たさも足を伝う感覚もあったレンの精液は、溢れてこなかった。
「消えてる……別に、穴も拡がってないし、切れてもない……絶対ガバガバになったと思ったのに」
不思議だなと自分の腰をさすり、腰についた爪の跡以外にレンの痕跡がないことに寂しさを覚える。
廃墟での汚れを落とし、髪もついでに洗っておこうとシャンプーに手を伸ばしたその時、浴室の扉の磨りガラスを軽く叩く音がした。
「はい!」
「……俺だ、開けるぞ」
返事を待たず引き戸を開けたのはセンパイだった。二メートル越えの彼がぬっと姿を現したのには一瞬怯えてしまったけれど、久しぶりに見たセンパイの姿に胸が温かくなった。
「こんにちはセンパイ、なんか久しぶりな気がしますね」
「…………怪我は?」
「廃墟に引っ張り込まれちゃったんで、ちょっと擦り傷はあるんですけど……大したことはないですよ」
センパイは無言で屈み、俺の腰の傷を確認した。
「……擦り傷じゃないだろう。誰かに掴まれた傷だ。怪異か? 人じゃないんだな?」
「は、はい……今回は、お化けです」
「…………俺が出来ることはないな」
「そのお化けはレンが退治してくれたので! 大丈夫、です……あの、レン……まだ起きてませんよね?」
「……あぁ、寝ているようだが」
まだ霊体が戻ってきていないのだろう。裸のままでも追いかけるべきだったのか? いや、俺の足で追いつけるとは思えない。
「センパイ、ゆっくり話したいです。お風呂上がってからでいいですか?」
「…………そうだな」
濡れた髪を撫で、センパイは浴室から出ていった。心地いい愛撫を再現したくて、俺は思わずセンパイの跡を辿るように自分の頭を撫でた。
「レン……お、お腹、大丈夫か?」
レンの方が背が低いから俺はいつもレンに見上げられているのに、浮かんでいるレンは俺を見下ろしている。爛々と輝く瞳は俺を捕食対象として見ているように感じるが、気のせいだよな……?
「変なもん食うなよな。はははっ」
恐怖を押し殺して笑顔を見せると、レンは目を見開いた。そして俺に伸ばしかけていた手を引っ込め、また壁をすり抜けてどこかへ飛んで行ってしまった。
「レンっ!? レン! ちょっと待って! 外行かないでよ、俺裸なのに!」
全裸のままでは外に出られない。俺は急いで破られた服を拾い、着た。シャツは袖や裾が破れていたりボタンが取れていたりしてあまり外に出たくない有様だ、ズボンの方はファスナーが壊されていて掴んでいなければズリ落ちてきてしまう。
「ま、まぁ……ギリ犯罪者にはならないよな」
下着は履ける状態ではなかったのでズボンをそのまま履いたが、掴んでいなければ履いていられないファスナーが壊れたズボンはとても怖い。手を滑らせれば猥褻物陳列罪まっしぐらだ、法律よく知らないけど。
「レン……どこ行ったんだろ」
服を着ている間に見失ってしまった。身体に戻ったのならいいのだが。
「とりあえずスマホ……あった」
廃墟の敷地ギリギリに落としてしまっていたスマホを拾い、土埃を払う。レンからの複数の通知はミチがかけてきたものだろう、その後で自分のスマホも使ったのかミチからの通知もある。
「心配かけちゃったな……」
十中八九戻っていないとは思うけれど、レンが身体に戻ったのならいいなと考えながらミチに電話をかけた。しかし、出ない。心配し疲れて寝たのか、電話を掛け過ぎて充電がなくなってしまったのか、手元に置いていないのか──とにかく出ない。
「俺のも充電少ないのに……」
電話を掛けられまくった俺のスマホの充電もかなり減っている。ミチに何度も掛け直すのは難しいだろう、連絡せずに帰ろうかな。
「服、ちょっと不安だな……ま、イケるか」
怪異にボタンを引きちぎられたせいでシャツの前は閉じないし、同じく怪異がファスナーを壊したせいでズボンも前が閉まらず掴んでいないと落ちてくるし、下着は破られて履ける状態ではないので現在ノーパン。なるべく人に見つかりたくないので裏道を選んだ。
「ここ通り抜けられたっけ……」
周囲の店や家の窓なども気にしつつ、連続絶頂のせいか覚束無い足取りでレンの家へと急ぐ。
「信号……やば、ここめっちゃ見通しいいじゃん」
女幽霊に殺されかけた横断歩道まで戻ってきた。幅広の車道を横断する横断歩道はここ以外には見当たらない、探せばあるのだろうがかなりの遠回りになるだろう。車にも他の歩行者にもボロボロの格好を見られてしまうが、仕方ない。
「ぅう……」
青信号になるまでは物陰に隠れ、信号が変わった瞬間に踏み出した。目立たないように身体を縮こまらせていたのに、車道側で信号を待っていたバイクの不良学生らしき男に話しかけられた。
「あっ……! お前! お前月乃宮だろ!」
しかも名前を呼ばれた、俺は彼を知らないのに。違いますと小さく答えて通り過ぎようとしたが、男はバイクを降りて俺の腕を掴んだ。
「わっ! ちょっ、ズボン落ちちゃう! 手ぇ引っ張らないでください!」
「大人しくしろって! 月乃宮だよな? 月乃宮ノゾム! 俺らお前探すの頼まれてんだよ!」
俺ら? 複数人居るのか? 一緒ではないようだが……
「ほらこれ! お前だろ?」
男はスマホを取り出すとメッセージアプリを開き、俺の画像が複数送られていることを教えた。またセンパイに恨みを持つモノだろうか? 怪異に襲われた帰りなんだからもうやめて欲しい、センパイをまた落ち込ませてしまうし……不意をついて逃げようか? 逃げられるとは思えないけれど。
「俺ですけど……誰に探せって言われたんですか?」
「俺らのガッコじゃねぇんだけど、クソデカい形州ってボスの手下にフッ軽イカれ三人組が居るんだよ、そいつらがお前連れてきたらタバコ1カートン出すって御触れ出してよ。なんで探されてるか知らねぇけど、着いてきてもらうぞ」
先輩三人組が? 本当だろうか。逃げることなんて出来ないだろうし、下手に抵抗して殴られても嫌だし、ここは賭けるか。
「じゃあ……えっと、後ろ乗っていいんですか?」
「えー……ぁー…………あぁ、乗れよ」
霊体だったレンのものはともかく、俺が漏らした精液の匂いはするだろう。服の破損から見ても俺が強姦された後のように見えるのは聞かなくても分かる。気乗りはしないようだったがバイクに二人乗りをさせてもらい、遠慮しつつ男に掴まった。
結論から言うと俺は賭けに勝った。どこかの廃墟に連れ込まれて暴行……なんてことにはならず、レンの家の前まで送ってもらえた。
「よっし確かに本物のお嬢だ。ほいタバコ」
「せんきゅ。じゃ」
てっきりセンパイに恨みを持つ他校の不良だと思っていたが、とうにセンパイの傘下に下った他校の不良だったようだ。お礼を言う暇もなく排気音を鳴らして走り去ってしまった。
「さ、て……どったのお嬢! またどっかのクソ野郎に襲われたの!? ボロッボロじゃん、怪我は?」
「あ、えっと……ぉ、お久しぶりです」
「久しぶり! そうでもないけどね! ってそんな場合じゃないっしょ!」
センパイの友人である先輩三人組のうちの一人だ。センパイと他の二人は俺の捜索に出ていて、彼はここで司令塔役をこなしていたらしい。
「襲われたのは襲われたんだけど……その、お化けで……」
「あー、そっちぃ?」
先輩三人組は一緒にお化け屋敷に閉じ込められたこともある怪異の理解者だ。
「はい、だからその、センパイには言わないで欲しくて……俺からいい感じに説明するので」
「んー……おっけ、分かった。見つかったって連絡したから、もうすぐにこっち来ると思うよ。シャワーでも浴びときな」
「ありがとうございます……」
着替えを持って浴室に向かう途中、ミチの様子をチラリと見た。彼はソファの上でレンに覆い被さるように眠っていた。
「泣き疲れちゃったみたいだねー。この子すごかったんだよ、わんわん泣いてさ。クニちゃんに電話かけてきた時もずっと泣いてて」
「そうですか……」
「あんまりクニちゃんもこの子も心配させないであげなよ? って言っても、別にお嬢が悪いわけじゃないんだけどね」
いや、今回も俺が迂闊なのが悪かった。そんな自虐をせっかく慰めてくれた先輩には言えず、ただ礼を言って浴室に急いだ。
確かに体内に大量に注がれたはずの精液は、行為の直後は腹の重たさも足を伝う感覚もあったレンの精液は、溢れてこなかった。
「消えてる……別に、穴も拡がってないし、切れてもない……絶対ガバガバになったと思ったのに」
不思議だなと自分の腰をさすり、腰についた爪の跡以外にレンの痕跡がないことに寂しさを覚える。
廃墟での汚れを落とし、髪もついでに洗っておこうとシャンプーに手を伸ばしたその時、浴室の扉の磨りガラスを軽く叩く音がした。
「はい!」
「……俺だ、開けるぞ」
返事を待たず引き戸を開けたのはセンパイだった。二メートル越えの彼がぬっと姿を現したのには一瞬怯えてしまったけれど、久しぶりに見たセンパイの姿に胸が温かくなった。
「こんにちはセンパイ、なんか久しぶりな気がしますね」
「…………怪我は?」
「廃墟に引っ張り込まれちゃったんで、ちょっと擦り傷はあるんですけど……大したことはないですよ」
センパイは無言で屈み、俺の腰の傷を確認した。
「……擦り傷じゃないだろう。誰かに掴まれた傷だ。怪異か? 人じゃないんだな?」
「は、はい……今回は、お化けです」
「…………俺が出来ることはないな」
「そのお化けはレンが退治してくれたので! 大丈夫、です……あの、レン……まだ起きてませんよね?」
「……あぁ、寝ているようだが」
まだ霊体が戻ってきていないのだろう。裸のままでも追いかけるべきだったのか? いや、俺の足で追いつけるとは思えない。
「センパイ、ゆっくり話したいです。お風呂上がってからでいいですか?」
「…………そうだな」
濡れた髪を撫で、センパイは浴室から出ていった。心地いい愛撫を再現したくて、俺は思わずセンパイの跡を辿るように自分の頭を撫でた。
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