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後輩の病室で眠ってしまった

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空腹で目を覚ます。窓の外は暗くなっていたが、夕飯が運ばれた形跡はない。いつも夕焼けを見ながら食べているのになと不思議に思いつつ起き上がる──重い。センパイの腕が胸に乗っている。

「センパイ、重いです……センパイ?」

腕をどかして上体を起こし、隣を見れば幼い寝顔のセンパイが居た。毛布をめくればはだけた服から飛び出た萎えた陰茎と、俺の太腿が白濁液にまみれているのが分かる。俺は眠っている間に素股をさせられたようだ。

「センパイ、起きてください。もう夜ですよ、センパイ」

軽く頬を叩いてみるが、表情すら変わらない。

「服……服……あった」

精液などで汚れてカピカピしているが、裸よりマシだ。俺はベッドから降りて入院着を着直し、床に折り重なっている先輩達を眺めた。

「せんぱーい、もう夜ですけど……」

以前センパイが起きない時、先輩の一人が乱暴に起こしていた。アレをやってもらおうと先輩達を起こそうとするも、彼らも熟睡中だ。

「身体痛くなるのに……お兄さんは、お兄さん……うわっ、ホントにベッドの下で寝てる」

どいつもこいつも寝る場所を選ばないにもほどがある。俺は嫌々床に手と膝をつき、ベッドの下に手を伸ばした。

「お兄さん、お兄さん起きてください」

肩を叩いてみるも、やはり起きない。寝起きが悪いのは血筋か?

「どうしよう……誰が一番起きやすいのかな」

先輩達を激しく叩くのは抵抗がある、そんなことをしていい仲ではない。従兄はベッドの下に居るから手も声も届きにくい。となるとやはりセンパイだ。

「センパイ、起きてください! セーンーパーイー!」

頬をベチベチと叩くと不愉快そうに顔を顰めた。再びベッドに乗り、センパイの腹に飛び乗る。

「センパイ! 起きてください、もう夜ですよ!」

「…………ん」

胸ぐらを掴まれて引きずり下ろされ、あっという間に眠っていた時と同じ体勢にされてしまった。しばらくは強く抱き締められていたが、また腕の力が抜けてきたのを見計らって再びセンパイの腕の中から抜け出した。

「はぁ……どうしよ。お腹減ったし……」

買ってきてくれたシュークリームだとかを食べて誤魔化そうか? そもそも何故夕飯が届けられていないんだ、この有様を見て帰ったのか?

「先輩……センパイ起こしてくださいよぉ。お兄さん、出てきてくださいよ………………わぁああー! センパイ助けてー! 助けてセンパーイ!」

「……っ!? ノゾム! ノゾム、どこだっ……ノゾム?」

飛び起きたセンパイはまだ隣に俺が居ると思っていたようで、まずベッドをぼふぼふと叩いた。それから周りを見回して俺を見つけ、はだけた格好のままベッドを降りた。

「…………ノゾム」

「おはようございますセンパイ」

「……お前が、助けてと言ってた気がしたんだが……大丈夫そうだな。夢か……?」

「ごめんなさいセンパイ、センパイほっぺた叩いても何しても起きないから……えへへ、俺が叫んだら起きるなんて、なんか嬉しいです」

呼び掛けには反応しないくせに、助けを求めたら反応するなんて、カッコイイにもほどがある。

「もう夜ですよ、センパイ」

「……あぁ、寝過ぎたな」

「お兄さんと先輩達も起こしてください。特にお兄さん。シャワー浴びたいんです」

「…………あぁ」

センパイは従兄をベッドの下から引きずり出して無理矢理座らせ、先輩達にはビンタを一発ずつ与えた。

「お兄さん、お兄さん……起きてますか?」

従兄は座ったまま眠っている。

「センパイ、お兄さんまだ起きてませんよ」

「……あぁ、悪い……一服させてくれ。起き抜けは吸わないと調子が出ない……頭が痛い」

センパイは窓を開けてタバコを吸い始めた。窓の外には鉄柵がある、あそこで吸ってもあまり爽快感はないだろうな。

「ふわぁ……おはよ、お嬢。兄さんまだ寝てんの?」

「あ、おはようございます先輩。そうなんですよ、起こしてくれませんか?」

俺と同じように従兄の近くに屈んだ先輩は唇に人差し指を立てて当てた、静かにしろと言いたいのだろう。

「先輩……? ちょっ、何してるんですか」

先輩は従兄のシャツを掴み、ゆっくりとめくり始めた。

「しー……ちょっとだけ、ちょっとだけだから」

「ちょっととかそういう問題じゃ……」

「兄さんが和服着てないの珍しいし、しかも寝てるのなんて超激レア、この機会を逃すバカは居ないっしょ。クニちゃんも見てないし今だけなんだって」

割れた腹筋が見えると俺も興味と欲が湧いて、常識的な考えが引っ込んだ。鎖骨までめくり終えると先輩と一緒に「おぉ」とため息をついてしまった。

「これはまたクニちゃんとは違ったイイ筋肉……クッソエロい、ヤバい」

「セクシー……! なんでだろ、何がセンパイよりセクシーに感じるんだろ、なんなんだよこの色気……!」

「さ、触っていいかな。お嬢、大丈夫だと思う?」

「こんなにエロい身体してる方が悪いですよ!」

悪友と遊んでいるような楽しさと従兄の色気にあてられて、俺は人として最低な発言を笑顔でしてしまった。

「よっしゃ…………おわっ、柔らか……! すげぇ、これはマジ最高の雄っぱい」

「えー俺も触ろうかな」

先輩が従兄の左胸を鷲掴みにすると、脱力した胸筋は先輩の指に抵抗なく歪んだ。感触が想像出来る柔らかそうな形の変化に触りたいという欲求が膨らんだ。

「お嬢にはクニちゃんが居るじゃんよー……ぉ? あっ」

調子に乗った先輩がむにむにと胸を揉み始めると、眠っていたはずの従兄がその手首を掴んだ。

「何しよんのやきさん」

「ゃ、あの、ははっ……」

「くらすぞ」

「マジすいませんっしたぁっ!」

従兄は寝起きだ、触る寸前だった俺のことには気付いていないだろう。そう判断した俺は先輩を見捨ててセンパイの傍に寄った。

「……吸ってる時は寄るな。一応外に吐いてはいるが……」

「ごめんなさい、でもセンパイに引っ付きたくて」

「…………仕方ないな」

制裁を受けている先輩から目を逸らし、センパイの胸に顔を押し付ける。むにっと柔らかい感触に昂り、両手で左右の胸を鷲掴みにする。当然、身体の大きなセンパイの屈強な胸筋は俺程度の手では包みきれない。

「……お前は本当に俺の胸が好きだな。男の胸を揉んで楽しいか? 好きにするといい…………兄ちゃん? どうした」

「いや、ちょっと月乃宮様に聞きたいことがあって」

「……聞きたいこと? ノゾム、兄ちゃんが話があるって……ノゾム? ほら、顔を上げろ」

俺が共犯だということはしっかりバレていた。恐怖からセンパイの胸に顔を押し付けていたが、彼の力に勝てるわけもなく引き剥がされた。

「あ、あの……お兄さん」

従兄はにっこりと微笑んでいるが、その笑顔こそ怖い。怯えつつ引き攣った笑顔を返してみると、拳で頭を挟まれグリグリと痛めつけられた。

「痛い痛い痛い痛いっ!?」

「……っ、兄ちゃん!? ノゾムに何をする! やめろ!」

すぐにセンパイに助けてもらえたが、こめかみのズキズキとした痛みはなかなか引かない。

「エロガキ共に制裁を……人のものに勝手に触っちゃいけないって習いませんでした? 月乃宮様」

「ごめんなさいぃ……」

「腹減ったろ國行、焼肉連れてってやるからさっさとシャワー浴びてこい」

「…………ノゾムの隣には座らせないからな。ノゾム、行こう」

センパイと先輩達と俺、五人で病室を出てシャワーへ向かう。道中センパイは無口だったが、先輩達がワイワイ騒いで賑やかだった。

「お嬢も頭グリグリやられた? まだ痛ぇよ」

「まぁ自業自得ですよ……どうせやられるなら触っときゃよかったです」

「お嬢にはクニちゃん居るじゃん。あっそうだクニちゃんの胸触ればいいじゃん!」

先輩はセンパイの背後に回り、素早く脇に手を差し込んで胸を鷲掴みにし、脳天に肘を叩き込まれてその場に崩れ落ちた。

「…………行くぞ、ノゾム」

「は、はい……」

「……ノゾムはいつでも俺の身体に触れて構わない」

「はいっ! あ、病院のシャワーって個室が何個も並んでる感じなんですけど、二人で一緒に使いましょうよ」

「…………あぁ」

センパイと先輩達と俺、四人でシャワールームに到着。そういえば着替えはどうするんだなんて話になったが、ベタベタする身体が気持ち悪かったのでひとまず個室に入った。もちろん俺はセンパイと一緒。狭いけれど、その分幸せだ。
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