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後輩のためにいたぶられてやった

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きっと、大男の正真正銘の悲鳴なんて聞いたことがある人間は少数派だろう。俺は今日、その少数派の仲間入りをした。

「はっ……はははっ、やっと痛がってくれたな」

汚い床に少量の血、その赤色の中に白っぽく薄い硬そうなものが落ちている。

「ん? お、おい、妙な動きを……ぅわあっ!? コイツ吐きやがった!」

「ミ、ミチ!? ミチ、大丈夫か!?」

恐怖かストレスか、そのどちらもなのか、少量ではあるがミチが嘔吐してしまった。

「汚ねぇ……服にはついてないか……」

「もうそいつ気絶させとけば?」

「だな」

「ぅう……ん? ゃ、ややっ、やだ、それやだぁっ!」

バチバチッと恐怖を煽る音、青白い閃光、それらが終わるとミチはぐったりと身体から力を抜いた。

「ミチっ……ミチ? 気ぃ失っちゃったのか……?」

拷問まがいの復讐を見ずにいられるのは心の弱いミチにはいいことだろう。しかし、一日にそう何度もスタンガンを受けて大丈夫なのだろうか? どこかに異常が出たりしないのだろうか。

「何してんだ……? まぁいい」

リーダー格の男はこちらを向いていたが、人質管理役の男達の行動に文句はないようでセンパイに向き直った。

「おい顔上げろよ、顔見せろ」

右手を左手で掴んでセンパイは小さく蹲っていたが、肩を蹴られると震えながら顔を上げた。その目には涙が滲んでいたが、確かにリーダー格の男を睨んでいる。

「んだよその目。もっと情けない顔しろよ。おい、手……右手、床につけ」

男を睨みながらも命令通りにしたセンパイの指先を、男は容赦なく踏み躙った。当然のように靴を履いたまま、当然のように爪を失った人差し指の先端を、ぐりぐりぐりぐり粘着質に。

「いい加減にしろよっ! クソっ……もう一枚剥いでやろうか? あぁ?」

呻き声を上げても睨む目の力は緩まない。そんなセンパイの態度が気に入らないらしい男はまたペンチを構えた。

「……はぁ、はぁっ……はぁ…………剥がせばいい、一枚でも……十枚でも、二十枚でもな」

「なんで煽っちゃうんですかセンパイっ!」

つい叫んでしまった。振り返ったリーダー格の男は苛立ちに満ちた表情をしており、しかし俺をしばらく見つめるとニヤリと笑った。

「……っ!? お、おいっ! 待て、ノゾムに近寄るな! ノゾムには手出ししない約束だろ!」

「んな約束してねぇよ! お前が大人しく復讐されてくれたら解放するってだけだ」

リーダー格の男がスタスタとこちらに向かってくる。怯えて後ずさるも、真後ろに立った人間に捕まっていてどこへも行けない。

「おい、お前さっきヤるっつってたよな。ヤれよ、今、形州の前で」

「無茶言うなよ勃たねぇよ」

「……大人しくしてやった、復讐させてやっただろ! 悲鳴も聞かせてやった、何が不満なんだ、何故ノゾムを解放しない!」

「はぁ……? んなの俺の気がまだ済んでねぇからに決まってんだろ」

コイツは今の自分の所業よりも酷いことをセンパイにされたのか? そんなわけない。殴られて一発で倒れたくらいだろう、集団リンチからの爪剥ぎなんてセンパイは絶対にしない。

「センパイはお前にそこまでされるようなことしてねぇだろ!」

「アイツにグループ潰されたせいで俺の人生めちゃくちゃなんだよ!」

「そんなグループずっと入ってる方が人生狂うに決まってる、むしろ感謝しろよクソ野郎っ!」

「……ノゾムっ、おいノゾム! 煽るな!」

センパイにだけは言われたくない。それに俺に後悔はない、言いたいことを言ってやったんだから。

「おいお前ら! コイツに勃つヤツ居ないか? 形州の目の前でマワしてやろうぜ!」

「……ふざけるなっ! そんなこと俺が許すと思うな!」

「落ち着けよ形州! マワされるより殺される方が嫌だろ?」

俺の首と気絶しているミチの首、それぞれにナイフが押し当てられる。首に冷たい金属の感覚がある。

「……ふざ、けるなっ」

「お……? ははっ、やっとイイ顔したな」

血が滴る手で拳を作ってぶるぶると震わせるセンパイの頬に一筋の涙が流れた。それに喜んだリーダー格の男は俺の前までスキップで歩み、醜悪な笑みを見せつけた。

「しっかり喘げよ? 多分その方が形州は嫌がる」

「お前らみたいな短小相手じゃ演技も無理だよ」

男は笑みを絶やさず、黒いメガネケースのようなものをポケットから取り出した。念の為買っておいてよかったなんて言いながら開いたケースの中には一本の注射器が入っていた。中身はキラキラと光を反射する極小の破片が混じった透明の液体だ。

「な、なんだよ、それ……」

男は一旦振り返り、センパイが失意に飲まれてこちらを見ることも出来ないでいるのを確認すると、俺の手首を掴んだ。

「えーっと……ここでいいや」

手の甲にくっきりと浮かんでいた血管に何かが注入された。怖くて仕方ない、俺は死ぬのかもしれない、クリーチャー化の恐怖まで浮かぶのはゲームのやり過ぎだろうか。

「何打ったんだよぉっ……」

「秘密。形州になんか注射されたって言ったら、そこの寝てるガキの首かっ捌く。いいな」

「分かった……」

高校生の小遣いで麻薬なんて買えるわけがないから、その類ではないだろう。もしかしたらただの水で、俺が色々と考えた結果のプラシーボ効果を狙っているのかもしれない。

「おい、形州の前まで運べ」

「えぇ……怖ぇよ、二メートルはあるぜアイツ」

「じゃあナイフ貸せ! ったく」

ナイフを受け取ったリーダー格の男の腕が首に絡められる。ナイフを突きつけられたままセンパイの目の前まで歩かされた。

「センパイ……」

一歩歩く度に、その振動が脳まで突き抜ける。ゾワゾワと皮膚の上を何かが駆け巡るような、毛穴が開き切ったような、不気味な敏感さが俺の身体を包んでいた。

「……ノゾムっ、ノゾム……すまない。何をされたんだ? 痛かったか? ノゾム……ノゾムっ」

「動くな! 刺すぞ」

土下座の名残か正座の姿勢のまま、センパイはじっとリーダー格の男を睨んだ。センパイが手を伸ばしても俺にはギリギリ届かないだろう距離だ。

「センパイ、爪っ……! ごめんなさい俺が捕まるなんてヘマしたから!」

「…………俺がまいた種だ」

真っ赤になった指先は痛々しくてとても見ていられない。いや、違う、目が閉じられない。呼吸もどんどん荒くなってきた。

「……ノゾム? 気にするな、大丈夫だ……落ち着いてゆっくり呼吸するんだ」

ふぅふぅと呼吸を荒らげる俺にセンパイは優しく声をかけてくれた、いつもなら落ち着いたかもしれない。でも、今はダメだ、イイ声が脳を揺さぶって気持ちよくなってしまう。

「で、誰がヤるんだ?」

「俺ら~」

さっき俺を犯したヤツらに、数人が追加されている。今からあの十人近くの男に輪姦されると思うと、後孔が疼いた。

「は、はやくっ……すま、せてっ」

「……ノゾム、待て、大丈夫だ……助けてやるから、殴られない程度に抵抗しておけ。クソ、遅いなアイツら……どこで油売ってるんだ」

ジャンケンをしていた男達の中から一人、俺の方へ歩み出る。

「よっし、じゃあ最初は俺ね。寝転がってー」

汚い床に仰向けに寝させられても何も思えない、足は自分から開いてしまったし、ベルトを外す音には「早くしろよ」と苛立った。

「めっちゃヒクヒクしてる。よっ……と」

ずぷぷっ……と大したことのないサイズの陰茎が根元まで一気に挿入された。

「ひぁあぁんっ!?」

挿入されてすぐに精液を吹いてしまった。さっき犯された時とは明らかに感覚が違う。これは本当に俺の身体か? 分厚い服を着たまま抱き合うのと、裸で抱き合うのくらい違う。神経が剥き出しになっている気分だ。

「うお、もうイった」

「……ノゾム?」

「んっ、んんんっ……! ぁ、あっ、あぁああっ!」

「うわ、めっちゃ締め付けてきたっ……!」

まだ男は動いていないのに、中に入ったままの陰茎を締め付けて二度目の絶頂を迎えてしまった。目を見開いて見上げた天井、高い位置の窓から射し込んだ光は、いつもと違って七色に見えた。
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