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後輩の方から誘ってくれた

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ミチとは昨日したばかりだし、レンは今から稽古をつけてもらうらしい。順番なんて考えるまでもなくセンパイしか空いていないのだ、ちょうど彼にして欲しいことがあったからタイミングがよかった。

「……それでノゾム、俺に何をして欲しいんだ?」

「あ……と、とりあえず俺の家に来てくれませんか?」

「……二人きりがいいのか? もちろん構わない」

冷やかし混じりながらも見送ってくれた従兄と社長に会釈をし、隣家に二人で入る。玄関で母の不在を確認し、安堵のため息をつく。

「…………ノゾム」

背後から頬を撫でられ、身体がビクンと跳ねる。自分でも分かる過剰反応だ、二人きりの緊張感が俺を変えている。

「……乱れるところを見られるのは恥ずかしかったか? 兄ちゃんの目の前で何度もヤっただろうに……社長に見られたくなかったのか?」

「そ、そういうんじゃなくて……」

「…………愛しの幼馴染に喘ぎ声を聞かれたくなかったか?」

「違いますっ、道具……家に置きっばなしなので」

センパイは背後から俺を抱き締め、掻き分けるように髪に触れながら話す。

「……道具? 自分から道具を使いたいと言い出すなんてな…………お前髪が伸びるの早くないか? また黒が見えてきてる」

「え……すいません、染め直しましょうか?」

鏡で正面から見た感じは大丈夫だった、真上から髪を掻き分けたりしたら染めた翌日だって元の色は見つかるだろう。センパイは金髪に関しては理不尽だから困る。

「……まぁまだいい、それで? 何を使いたいんだ? ほんの一ヶ月前まで初心だったお前がここまで淫らになるとはな、複雑だが……今は嬉しい」

「そ、そんなに期待されるのは困ります……ちょっと不躾なお願いですし」

「……構わない。お前に頼られるだけで嬉しい」

「センパイ……じゃあ、ちょっと来てください」

太い腕の抱擁から逃れて自室の扉を開ける。センパイを部屋に入れるのは何日ぶりだろう、いや俺自身が部屋に入るのすら何日ぶりだろう。レンの家も居心地はいいが、やはり自分の部屋には特有の安心感がある。

「…………前に来た時は気付かなかったが、お前……作文のトロフィーなんて獲っていたんだな、文才があるのか」

センパイは棚を漁る俺の隣で棚の上のトロフィーを持ち上げ、眺めている。小学三年生の時にもらった作文大会のトロフィーだ、前にアレで母に頭を殴られた。

「父さんが居ないこと書いただけです。忖度トロフィーですよ」

母に言われたことをそのまま口にする自分に嫌悪した。嫌悪したのは母に似てしまったから──だとかではなく、センパイが「それは違う」と慰めてくれることを期待している甘えた性格だ。

「…………俺も似たようなことを書いたが選考にすら残らなかったぞ、お前には文才があるんだ」

思ってたのと慰め方違うな。まぁ、父親が居ないことを母親が蒸発したセンパイに憐れんでもらおうと一瞬でも思った俺がバカだったんだ。

「……お前はたまに鋭い一言を言うしな」

「ロマンチストな口説き方してくるセンパイの方が文才ありそうですよ、作文より詩の方で」

「…………ん? このトロフィー錆びてないか?」

「えぇ? 錆びるようなもんですかそれ」

センパイが指した部分は少し凹んでおり、黒い汚れが付着していた。

「あぁ、これ母さんが俺のこと殴った時のヤツですね」

あの時は血が出たことにすら気付かなかった。俺はセンパイからトロフィーを受け取り、こびりついた血を爪で引っ掻いた。

「剥がせそ……わっ!? な、なんですかセンパイ……」

突然抱き締められた。少し息苦しいが、肋骨は痛くない。ちゃんと力加減してくれている。

「…………お前はもう、幼馴染の家に住め。あの家なら大丈夫だ、この家はダメだ……俺の家じゃダメなのが悔しい」

「センパイ……まぁ、俺今割とそんな感じですけど」

「……そうか? ならいい、それで道具は見つかったか?」

「あ、はい……これです」

前にセンパイから贈られた物だ。自分ではあまり使えていないそれを彼に渡した。

「自分でやろうとしたんですけど、気持ちよくて手が震えたり力が抜けたりしちゃって……他の人にさせるのも怖いですし。やっぱり詳しく分かってるセンパイがいいなって」

「………………あぁ、俺に任せろ」

ピアスホールを掃除するためのフロスを渡されたセンパイは嬉しそうに微笑んでくれた。

「お、お風呂の準備してきますっ……センパイは適当にくつろいでてくださいっ!」

適当に風呂場を片付け、湯船に湯を張って部屋に戻った。センパイはシャツとズボンを脱ぎ、タンクトップと下着姿になっていた。

「あ……」

分厚い褐色に浮いた筋肉の形、黒いタンクトップの脇からはみ出た胸筋に、シャツを脱いで始めて見える谷間、顕になった首筋や鎖骨──彼の見た目の全てが俺の腹に痛みにも似た疼きを覚えさせる。

「……おかえり。どうした? 腹……痛いのか?」

「きゅ、きゅんきゅん……して、なんか、変になりそうでっ……怖いです」

下腹を押さえていた両手をどかされ、センパイの大きな手に腹をさすられる。興奮して呼吸が乱れる、落ち着こうと目を閉じるとセンパイのもう片方の手が頬に触れ、顔の熱さを確かめられた。

「…………どうして発情してる?」

「センパイ、が……えっちなカッコするから」

「……あぁ、お前はタンクトップが好きなんだったな。ほら」

頬に触れていた手が後頭部に回り、分厚い胸筋に顔を押し付けられた。力を抜いている筋肉は非常に柔らかく、温かく、眠りたくなるような代物だ。

「ふぁっ……あぁ……あぁあ……おっぱいしゅごいぃ……せんぱいちょーきょにゅー……」

「……乳呼ばわりはやめろ、筋肉だ」

「ぁうっ、ごめんなさい……もう言わないからもっとぱふぱふぅ……」

「……風呂の準備は終わったんだろ? 行くぞ」

調子に乗り過ぎて引き剥がされてしまった。センパイを追って風呂へ向かい、脱衣所で全裸になる。まだお湯張りは終わっていないが、入っている間に終わるだろう。

「センパイっ、ピアス全部外してください」

「……今日はよく甘えるな、嬉しい、いつもそうしろ」

「ひぁっ……!」

まず耳のピアスから外されていく。軟骨を貫いたピアスも、耳の端の三連ピアスも、耳たぶの基本のピアスも、カチッ……という小さな音と共にセンパイの指先に奪われる。

「ぁ、あっ……耳っ……ひぅっ……」

「…………ピアスを外すだけでそれだけ喘ぐのか。心配になるな」

「センパイだけです……ひぁっ!」

「……お前の「だけ」ほど信用出来ない言葉はない。耳は全部外れたな、次は」

俺は黙って舌を突き出した。イミテーションの宝石が輝く舌ピアスは脱衣所の照明で輝いているだろうか?

「…………舌ピアスは洗う必要はない。むしろ眠る時以外は外さない方がいい」

「へっ? ずっとつけっぱなんですけど」

「……誤飲を防ぐためだ。寝てる間に外れるかもしれないだろ」

「そ、そうですね……気を付けます」

「…………引っ掛けたり、無意識に引っ張ったり、その他様々な事故の危険があるから……基本、眠る時は全て外せ」

「はい……すいません」

怒られてしまった。舌ピアスも外してくれなかったし、やらなきゃよかったし言わなきゃよかった。

「……ノゾム、口を開けろ」

「はい……?」

言われるがままにするとセンパイは俺の口に舌をねじ込んだ。まず上顎や頬の内側をぐるんと舐め回し、舌先で俺のピアスをつつく。

「んっ、んぅうっ……!」

ピアスと舌の隙間に潜り込むような愛撫をされ、思わず足がビクビクと震える。

「はぅっ、ぅ、んんんぅ……!」

舌をぢゅうっと吸われ、舌の裏側まで舌で愛撫される。ピアスの留め具を弾くようにされると舌全体に振動が伝わり、俺の口は快楽で痺れた。

「…………要はピアスやピアスホールを弄って気持ちよくして欲しいだけだろ?」

俺の欲求を理解していたセンパイに向けた俺の笑顔は、ただ口への快感に喜んだだけだったのか、正解を祝うものなのか、俺自身にも分からない。
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