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従弟の恋人に取り憑いてた怪異に身体明け渡してみた
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俺の罪を説く修験者の霊に対し、従兄はバールを構えながらぶっきらぼうに言い放った。
「……うだうだと鬱陶しいなぁクソ坊主」
『何……!? 貴様とて退魔の者なら分かるだろう! この者の浅はかな行為のせいでどれだけの人間に被害が出るはずだったか! それをこの者のみに抑えた私の手腕は貴様が讃えるべきものだ!』
修験者の霊が錫杖を揺らすと風が起こり、砂を巻き上げた。
「はいはい、すごーい。実際助かったよ坊さん。ありがとな。もういいから封印解いてくれ、大人しく解くならお前は成仏させてやるよ」
『何を言う。その者を新たな塚にするのだ。生きたままここに埋め、清めた石を置け。さすれば私がまた封印とその監視を行おう』
「……お前話聞いてたか? 封印解けって言ってんだけど」
修験者の霊は無言のまま錫杖で地面を突き、シャリシャリと軽い金属音を鳴らす。
「…………首塚を壊した罰、怪異の仮封印、お前はこの二つを言い訳にして歳頃の男の子が弄ばれるのを見て楽しんでたんだろ」
修験者の霊は何も言わずに従兄を睨みつける。
「生き埋めにして封印の基礎にしたら、月乃宮様の霊体はこの地に縛られる……思う存分犯せるなぁ? この生臭坊主」
『黙れ! 俺は何百年もこの封印を守ってきた、それをこの頭の悪い異国の子供が台無しにした! それをまた封印してやろうと言うのだ、多少の報酬くらいあって然るべきだろう!』
「おーおーエロ坊主の本性剥き出しだ、月乃宮様は稚児にするにゃデカいだろ。あと金髪だけど純日本人だぜ、こいつ」
修験者の霊が錫杖を振るう。従兄はそれをバールで軽々と受け止めた。
『その者に正当な罰が必要なのは同意見だろうな、現代の退魔の者よ』
「さぁ? 俺、正当な罰だの裁きだの興味ないから」
『何……!? き、貴様、己の正義も持たずして何故退魔を!』
「命令だから」
ギャリギャリと音を立てて少しずつバールをズラし、先端に引っ掛けて錫杖を弾き飛ばす。修験者の霊はすぐに距離を取って錫杖を構え直し、二人の距離はまたジリジリと縮まっていく。
『その者の封印を解き、自分に封じ直すと言ったな、素晴らしき自己犠牲精神かと感服したが……』
「こんなガキのために自分を犠牲になんてするかよ、俺は社長の命令通りに動くだけだっ!」
言い終わるが早いか従兄が仕掛ける。ガキィンッ! と月夜に響き渡る金属音、火花を散らすのは御札まみれのバールと半透明の錫杖。
『命令、命令と……貴様に自分というものはないのか!』
激しい打ち合いの末、従兄の側頭部を錫杖が見事に打った。数歩吹き飛ばされた従兄は殴られた箇所から血を垂らしながらも口角を吊り上げた。
「社長こそがこの世の法! 俺はその執行人! ショバ代が払えねぇなら強制退去だ坊さんよぉ!」
再び打ち合いが始まる。修験者の霊は卑怯にも砂を蹴り上げて目潰しとし、従兄の腹を錫杖の先端で思い切り突いた。
『飼い慣らされた犬がっ!』
「その通り! タイマンで犬に人間が勝てるか? どう思うよ月乃宮様」
「へっ? い、犬? 柴犬以上のサイズなら無理です! それよりお兄さん、俺をその人の言う通り封印に使ってください!」
「だとよ坊さん、俺は何犬だと思う? お前が勝てる犬だと思うか?」
従兄の笑顔はいつも以上に不気味だ。俺の話をあまり聞いてくれないし、興奮剤も何本か打っているのかもしれない。
『何犬か……だと? 決まっている、命令を守ることしか知らぬ犬など駄犬よ!』
「俺ぁ忠犬だ生臭坊主っ!」
剣道でもない、棒術とも違う、錫杖とバールの不可思議な打ち合いが再開する。従兄は先程よりも重心を低くして錫杖を避け、修験者の霊の懐に潜り込んで彼の顎をバールで突き上げた。
「強制執行だ、消えてもらおうか」
尻もちをついた修験者の霊の頭部目掛けてバールが振り下ろされる──寸前、錫杖が振られた。瞬く間に風が巻き起こり、風に飛ばされた近所の店の看板が従兄に直撃した。
「お、お兄さんっ!」
看板に吹っ飛ばされた従兄は結界の前まで転がってきた。
『……貴様のせいでまた他人が傷付いたな』
「やったのはお前だろっ……!」
『いいや、今のは風の仕業……この地の意思だ。犬、まだ立つか?』
従兄はゆっくりと立ち上がった。何度も錫杖に打たれた頭からは血が流れており、白く変わった髪は当然褐色のはずの顔までもが赤く染まっている。
「へ、へへ、ふふ……はははっ」
『…………狂ったか?』
「……ぬるいんだよクソ坊主っ!」
従兄はバールに引っ掛けた看板を修験者の霊に投げつける。しかし、御札も貼っていない看板は霊体のをすり抜ける。
「全っ然気持ちよくない、もっと強くぶってみろよ生臭坊主っ! あんまりぬるいからちょっと寝ちまったじゃねぇか、もっと痛いの寄越して俺を萌えさせてみろよ!」
修験者の霊が錫杖を振る。従兄はバールで防ぐことなく左肩を打たれ、鈍い嫌な音が鳴った。
『……もはや防ぐことも出来んか、口だけだな、哀れな犬め』
「は、ぁあぁっ……! イイ、イイね、今のだよ、今のくらいやってくれねぇと感じねぇよ」
左腕はもはや上がらないのか、従兄は右手だけでバールを握る。
『強がりおって……』
「……俺は社長に命令されてここに居る」
声色を変えて呟く。
「……クソ坊主からの打撲が痛ぇのも、喚いてるバカガキの声で頭が痛いのも、全部全部社長が俺に課したこと」
『その社長とやらに恨み節か? とうとう犬ですらないな』
「…………つまり社長が俺を痛めつけてくださっている!」
右手もとうとうバールを離した。
『何……?』
従兄はふらふらと歩み、不審がった修験者の霊の眼前で笑う。
「社長に与えられる全てが俺の悦び」
修験者の眼前で高く跳び、振るわれた錫杖を踏みつけ、従兄は修験者の霊の頭と肩を掴み、喉笛を食いちぎった。音にならない断末魔と共に修験者の霊の姿が薄れ、錫杖が地に落ち、シャリンと音を立てて消えた。
「き、消えた? 倒しちゃったんですか?」
従兄はふらふらと歩いて結界の前で何かを呟き、結界内に入ってくるとどさりと膝から崩れ落ちた。
「これで、あなたに怪異を閉じ込めていた封印は解けた……今から、俺に移ってもらいます」
「お、お兄さん……酷い怪我です。お兄さん、もういいですから……! 俺幸せでしたから! 俺の身代わりなんてやめてください!」
正座のような姿勢でチョーカーを外す。赤い首輪を模したチョーカーの内側には解読不可能の細かな文字が書かれていた。
「黙れ、時間がない」
赤く汚れた白髪と褐色肌の隙間、三白眼が俺を睨む。その迫力に黙り込むと従兄は静かに呟いた。
「……犬鳴塚 真尋、この身を明け渡します。その者は私の可愛い従弟の恋人。どうぞ解放してください、代わりに私の身体をお使いくださいませ」
従兄は膝の前に手を付き、深々と頭を下げる。俺の中から無数の手首が溢れ、従兄の身体へと吸い込まれた。
「ま、待てっ、俺の体使ってろよ! 行くな!」
従兄の背中を引っ掻いても無駄だ、怪異は全て従兄に入ってしまった。従兄は身体を起こしながら首輪を巻き、虚ろな三白眼で俺を見つめた。
「お兄さん……?」
従兄は着けたばかりの首輪を外したいのか両手で引っ張ったり留め具を弄ったりしたが、上手くいかなかったらしく舌打ちをした。
「この首輪、封印か……また移動できなくなっちまった。まぁ、いいか」
「お、お兄さん? お兄さん……ですよね?」
「オレ達が分からないのか? 何度もよくしてやっただろ? 首塚の怪異だの手首の怪異だの好き勝手呼んでくれたオレ達だよ、オレ達」
「か、怪異……!? どうして、お兄さんは……」
「この体の持ち主の魂なら眠ってるが、じきに消える。名前言いやがったしこの体はもうオレ達のものだからな。また封印されちまったのは迂闊だったが……まぁ、こんないい身体出る気はねぇよ。逃げ足早そうだし、男も女も抱き放題っつー顔と身体だ」
怪異に身体を乗っ取らせた従兄の手が肩に乗る。
「……手始めに小僧か? 今度は手だけじゃねぇぜ、口も棒もある。脱ぎな」
従兄の身体から発せられているとは思えないほど下品な声で、下劣な要求をしてきた。
「ふ、ふざけるなっ……! お兄さんが何回俺の誘い断ったと思ってるんだ! それなのに意識のない間になんて、そんなの!」
手足に枷をはめられたままでは抵抗なんてろくに出来ず、押し倒した俺に跨ると怪異は従兄の着物を脱がし、陰茎を露出させた。
「ん……? 何だこれ!? これじゃ抱けねぇじゃねぇか……!」
従兄の陰茎は金属製の何かでキツく締められており、射精どころか勃起も出来そうになかった。まさかアレは貞操帯か? 物理的に俺を抱けないと言っていたのはそういう意味なのか?
「ふざけやがって……ん? なんだ……?」
真っ白く変色していた従兄の髪が元の黒に戻っていく。生え際から毛先へと色が変わり切ると同時に彼は、いや正確には彼の身体を乗っ取っている怪異は悲鳴を上げた。
「痛いっ! 痛っ、ぁああっ!? ひぃっ!? な、なんだ、なんなんだ!」
激痛にのたうち回りながら何かに怯えているような──そうか、髄液から作った薬品の副作用とやらか。激痛だの目眩だの幻覚だのと、ふざけたラインナップだったと記憶している。
「ざ、ざまぁみろっ……」
激痛に叫ぶ従兄の姿は心が痛いが、本当に副作用に襲われているのが怪異だと思うと少しだけスカッとした気分になった。
「……うだうだと鬱陶しいなぁクソ坊主」
『何……!? 貴様とて退魔の者なら分かるだろう! この者の浅はかな行為のせいでどれだけの人間に被害が出るはずだったか! それをこの者のみに抑えた私の手腕は貴様が讃えるべきものだ!』
修験者の霊が錫杖を揺らすと風が起こり、砂を巻き上げた。
「はいはい、すごーい。実際助かったよ坊さん。ありがとな。もういいから封印解いてくれ、大人しく解くならお前は成仏させてやるよ」
『何を言う。その者を新たな塚にするのだ。生きたままここに埋め、清めた石を置け。さすれば私がまた封印とその監視を行おう』
「……お前話聞いてたか? 封印解けって言ってんだけど」
修験者の霊は無言のまま錫杖で地面を突き、シャリシャリと軽い金属音を鳴らす。
「…………首塚を壊した罰、怪異の仮封印、お前はこの二つを言い訳にして歳頃の男の子が弄ばれるのを見て楽しんでたんだろ」
修験者の霊は何も言わずに従兄を睨みつける。
「生き埋めにして封印の基礎にしたら、月乃宮様の霊体はこの地に縛られる……思う存分犯せるなぁ? この生臭坊主」
『黙れ! 俺は何百年もこの封印を守ってきた、それをこの頭の悪い異国の子供が台無しにした! それをまた封印してやろうと言うのだ、多少の報酬くらいあって然るべきだろう!』
「おーおーエロ坊主の本性剥き出しだ、月乃宮様は稚児にするにゃデカいだろ。あと金髪だけど純日本人だぜ、こいつ」
修験者の霊が錫杖を振るう。従兄はそれをバールで軽々と受け止めた。
『その者に正当な罰が必要なのは同意見だろうな、現代の退魔の者よ』
「さぁ? 俺、正当な罰だの裁きだの興味ないから」
『何……!? き、貴様、己の正義も持たずして何故退魔を!』
「命令だから」
ギャリギャリと音を立てて少しずつバールをズラし、先端に引っ掛けて錫杖を弾き飛ばす。修験者の霊はすぐに距離を取って錫杖を構え直し、二人の距離はまたジリジリと縮まっていく。
『その者の封印を解き、自分に封じ直すと言ったな、素晴らしき自己犠牲精神かと感服したが……』
「こんなガキのために自分を犠牲になんてするかよ、俺は社長の命令通りに動くだけだっ!」
言い終わるが早いか従兄が仕掛ける。ガキィンッ! と月夜に響き渡る金属音、火花を散らすのは御札まみれのバールと半透明の錫杖。
『命令、命令と……貴様に自分というものはないのか!』
激しい打ち合いの末、従兄の側頭部を錫杖が見事に打った。数歩吹き飛ばされた従兄は殴られた箇所から血を垂らしながらも口角を吊り上げた。
「社長こそがこの世の法! 俺はその執行人! ショバ代が払えねぇなら強制退去だ坊さんよぉ!」
再び打ち合いが始まる。修験者の霊は卑怯にも砂を蹴り上げて目潰しとし、従兄の腹を錫杖の先端で思い切り突いた。
『飼い慣らされた犬がっ!』
「その通り! タイマンで犬に人間が勝てるか? どう思うよ月乃宮様」
「へっ? い、犬? 柴犬以上のサイズなら無理です! それよりお兄さん、俺をその人の言う通り封印に使ってください!」
「だとよ坊さん、俺は何犬だと思う? お前が勝てる犬だと思うか?」
従兄の笑顔はいつも以上に不気味だ。俺の話をあまり聞いてくれないし、興奮剤も何本か打っているのかもしれない。
『何犬か……だと? 決まっている、命令を守ることしか知らぬ犬など駄犬よ!』
「俺ぁ忠犬だ生臭坊主っ!」
剣道でもない、棒術とも違う、錫杖とバールの不可思議な打ち合いが再開する。従兄は先程よりも重心を低くして錫杖を避け、修験者の霊の懐に潜り込んで彼の顎をバールで突き上げた。
「強制執行だ、消えてもらおうか」
尻もちをついた修験者の霊の頭部目掛けてバールが振り下ろされる──寸前、錫杖が振られた。瞬く間に風が巻き起こり、風に飛ばされた近所の店の看板が従兄に直撃した。
「お、お兄さんっ!」
看板に吹っ飛ばされた従兄は結界の前まで転がってきた。
『……貴様のせいでまた他人が傷付いたな』
「やったのはお前だろっ……!」
『いいや、今のは風の仕業……この地の意思だ。犬、まだ立つか?』
従兄はゆっくりと立ち上がった。何度も錫杖に打たれた頭からは血が流れており、白く変わった髪は当然褐色のはずの顔までもが赤く染まっている。
「へ、へへ、ふふ……はははっ」
『…………狂ったか?』
「……ぬるいんだよクソ坊主っ!」
従兄はバールに引っ掛けた看板を修験者の霊に投げつける。しかし、御札も貼っていない看板は霊体のをすり抜ける。
「全っ然気持ちよくない、もっと強くぶってみろよ生臭坊主っ! あんまりぬるいからちょっと寝ちまったじゃねぇか、もっと痛いの寄越して俺を萌えさせてみろよ!」
修験者の霊が錫杖を振る。従兄はバールで防ぐことなく左肩を打たれ、鈍い嫌な音が鳴った。
『……もはや防ぐことも出来んか、口だけだな、哀れな犬め』
「は、ぁあぁっ……! イイ、イイね、今のだよ、今のくらいやってくれねぇと感じねぇよ」
左腕はもはや上がらないのか、従兄は右手だけでバールを握る。
『強がりおって……』
「……俺は社長に命令されてここに居る」
声色を変えて呟く。
「……クソ坊主からの打撲が痛ぇのも、喚いてるバカガキの声で頭が痛いのも、全部全部社長が俺に課したこと」
『その社長とやらに恨み節か? とうとう犬ですらないな』
「…………つまり社長が俺を痛めつけてくださっている!」
右手もとうとうバールを離した。
『何……?』
従兄はふらふらと歩み、不審がった修験者の霊の眼前で笑う。
「社長に与えられる全てが俺の悦び」
修験者の眼前で高く跳び、振るわれた錫杖を踏みつけ、従兄は修験者の霊の頭と肩を掴み、喉笛を食いちぎった。音にならない断末魔と共に修験者の霊の姿が薄れ、錫杖が地に落ち、シャリンと音を立てて消えた。
「き、消えた? 倒しちゃったんですか?」
従兄はふらふらと歩いて結界の前で何かを呟き、結界内に入ってくるとどさりと膝から崩れ落ちた。
「これで、あなたに怪異を閉じ込めていた封印は解けた……今から、俺に移ってもらいます」
「お、お兄さん……酷い怪我です。お兄さん、もういいですから……! 俺幸せでしたから! 俺の身代わりなんてやめてください!」
正座のような姿勢でチョーカーを外す。赤い首輪を模したチョーカーの内側には解読不可能の細かな文字が書かれていた。
「黙れ、時間がない」
赤く汚れた白髪と褐色肌の隙間、三白眼が俺を睨む。その迫力に黙り込むと従兄は静かに呟いた。
「……犬鳴塚 真尋、この身を明け渡します。その者は私の可愛い従弟の恋人。どうぞ解放してください、代わりに私の身体をお使いくださいませ」
従兄は膝の前に手を付き、深々と頭を下げる。俺の中から無数の手首が溢れ、従兄の身体へと吸い込まれた。
「ま、待てっ、俺の体使ってろよ! 行くな!」
従兄の背中を引っ掻いても無駄だ、怪異は全て従兄に入ってしまった。従兄は身体を起こしながら首輪を巻き、虚ろな三白眼で俺を見つめた。
「お兄さん……?」
従兄は着けたばかりの首輪を外したいのか両手で引っ張ったり留め具を弄ったりしたが、上手くいかなかったらしく舌打ちをした。
「この首輪、封印か……また移動できなくなっちまった。まぁ、いいか」
「お、お兄さん? お兄さん……ですよね?」
「オレ達が分からないのか? 何度もよくしてやっただろ? 首塚の怪異だの手首の怪異だの好き勝手呼んでくれたオレ達だよ、オレ達」
「か、怪異……!? どうして、お兄さんは……」
「この体の持ち主の魂なら眠ってるが、じきに消える。名前言いやがったしこの体はもうオレ達のものだからな。また封印されちまったのは迂闊だったが……まぁ、こんないい身体出る気はねぇよ。逃げ足早そうだし、男も女も抱き放題っつー顔と身体だ」
怪異に身体を乗っ取らせた従兄の手が肩に乗る。
「……手始めに小僧か? 今度は手だけじゃねぇぜ、口も棒もある。脱ぎな」
従兄の身体から発せられているとは思えないほど下品な声で、下劣な要求をしてきた。
「ふ、ふざけるなっ……! お兄さんが何回俺の誘い断ったと思ってるんだ! それなのに意識のない間になんて、そんなの!」
手足に枷をはめられたままでは抵抗なんてろくに出来ず、押し倒した俺に跨ると怪異は従兄の着物を脱がし、陰茎を露出させた。
「ん……? 何だこれ!? これじゃ抱けねぇじゃねぇか……!」
従兄の陰茎は金属製の何かでキツく締められており、射精どころか勃起も出来そうになかった。まさかアレは貞操帯か? 物理的に俺を抱けないと言っていたのはそういう意味なのか?
「ふざけやがって……ん? なんだ……?」
真っ白く変色していた従兄の髪が元の黒に戻っていく。生え際から毛先へと色が変わり切ると同時に彼は、いや正確には彼の身体を乗っ取っている怪異は悲鳴を上げた。
「痛いっ! 痛っ、ぁああっ!? ひぃっ!? な、なんだ、なんなんだ!」
激痛にのたうち回りながら何かに怯えているような──そうか、髄液から作った薬品の副作用とやらか。激痛だの目眩だの幻覚だのと、ふざけたラインナップだったと記憶している。
「ざ、ざまぁみろっ……」
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