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彼氏と一緒に友達の家に泊まることにした

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俺が気絶している間にさっさとシャワーを浴びたミチは一人で部屋の片付けをしている。俺は当然、一人で風呂に入っている。

「……今日は満足だろ」

浴室の姿見に映る、俺の身体にまとわりつく大量の手首。彼らは油断しているのか最近何もしない、祓われる日が近いなんて知らないから仕方ない。
手首だけの怪異を唯一祓える社長という人物、レンいわく彼の帰国の日は近い。俺は笑ってしまわないよう気を付けながら浴室に屈み、気張った。

「んっ……!」

ぼたぼたとミチの精液が浴室の床に落ちる。和式便器を使う時のような姿勢は屈辱的だったが、精液を腹に溜めたまま生活する訳にもいかない。

「はぁ……全部は出てないよな、これ……」

気張るのに疲れて床に尻をつき、壁にもたれて休む。

「……精液入れたまんまじゃお腹痛くなっちゃうのに」

生中出しの快感と幸福感は後処理の手間と腹痛のリスクを背負ってもいいと思えるほど素晴らしいものだ。だが、後処理中は大抵憂鬱で「次からは絶対ゴム付ける」なんて考えてしまう。

「なぁー、お前らぁ、宿主様が腹痛の危機なんだぞ、何とかしろよー……なんて言っても無駄だよな」

ごん、と後頭部を壁にぶつけて無意味に憂鬱を表現する。

「ん……? ぁっ!?」

ぐちゅ、と結腸付近に触れられる感覚があった。見えない手が俺の身体をすり抜けて直接腸壁に触れ、精液を掻き出してくれているのだ。

「ひぃっ!? イっ、んんんっ! んぁ、あっ……!」

いくつもの手が腸壁を撫で回し、拡げられた穴から精液がドロドロと零れていく。

「んっ、んん……ぅ、あっ……ぁ……? 終わり、か? あぁ……うん、一応、ありがと……」

またぽっかりと開いてしまった穴にシャワーをかけ、軽く喘ぎ、少し休んでから身体を洗った。



風呂上がり、バスタオルに身を包みながら「怪異にもいいところはあるんだな」なんて考える。俺の腹痛なんて怪異には関係ないだろうに頼みを聞いてくれる。意外と優しいのかもしれないな、なんてとち狂ってみる。

「……なぁ、ドライヤー持って乾かしてくんない? それは嫌な感じ……? なんなんだよ」

頼みを聞く基準はよく分からない。悩みながらも用意しておいた着替えを着てレンの部屋に戻った。

「ぁ、おっ、ぉおっ、おか、おかかっ」

「おかか? おにぎりか。俺はクリームパン派だ」

「お! か! え! り! って言いたかったのぉっ、わわわ、わ、分かっててふざけただろぉっ、いじわるぅ!」

「はは……ごめんごめん。お前、俺抱きまくったらどもらなくなるとか言ってなかったか?」

「そそっ、そ、そんなことで吃音が治るならっ、く、く、苦労してないよっ!」

俺を気絶させたくせに、今も足腰が怪しいというのに、そんなこと呼ばわりはムカつく。

「そそそ、それより、月乃宮くんも如月くんの服着てるの? にしては……サ、ササイズぴったりだね」

「あぁ、いや、これは俺の服だよ。ちっちゃい頃からよく泊まってるからさ、互いの家に部屋着くらいはあるんだよ」

「へぇ……」

「……そういう関係だったって訳じゃないからな?」

「そそそっ、そんな想像してないよっ!」

顔を真っ赤にして必死に否定する。ミチの反応はいちいち可愛らしいからついからかってしまう。

「…………はぁっ」

一瞬前まで楽しそうだったのに、ミチは突然深いため息をついた。

「どうしたんだ?」

「……夏休みだろ? 学校も嫌だったけどさ、家も嫌だなぁって。登下校だけが安息日って感じでさぁ」

「お、どもってないぞ」

「えっ? ほほっ、ほんとっ?」

意識させない方がいいみたいだな。

「家……帰らなくていいじゃん、ここ泊まってろよ。おじさんも多分いいって言ってくれるよ。母さん居る時間隠れてくれるなら俺の家でもいいし」

「……一ヶ月も他人の家にお世話になれないよ」

いくら放置気味とはいえ一ヶ月も帰らなければミチの母親が何かしらの届けを出すかもしれない。今のは俺らしいバカな案だったな。

「そろそろ晩飯だよな。また何か出前頼むか、何がいい?」

「エ、エエ、エ、エビドりゃー!」

「さっき食ったじゃん……ふふ、かーわいいなぁミチはぁ!」

「わっ!」

スマホを放り投げてミチに抱きつく。

「あ、ミチは可愛いって言われんの嫌なんだっけ?」

「へっ? ゃ、ややっ、やじゃ、ないっ! よ……?」

「そっか、なんかそんな感じのこと聞いた気がしたんだけど……まぁイきまくってたし、聞き間違いかな」

「…………ぅ、うん……かか、可愛いって言われるのは、好きだよ……なな、な、なんかバカにされてるって思っちゃうことあって、でででも月乃宮くんがそんなこと考えてるわけないからっ!」

「あぁ、本心から可愛いって思ってるだけだよ」

小学生の頃に少し助けただけなのに、再会してからずっと虐めていたのに、俺を慕い続けてくれた愛情深さにまず惹かれた。浮気性な俺を受け入れてくれた寛大さに甘えたくなった。嗜虐的な一面に夢中になった。

「……愛してるよ、ミチ」

小柄な身体を守りたい。暴力のない家庭にしてあげたい。俺には不相応な願いだろうか?

「ぼぼぼっ、僕も、僕も、ああぁ、あっ、あい、あいあい……あ、あいしてっ……!」

玄関が開く音がした。

「……ふぇ? ななな、ななに、きき如月くんは今いないはずなのにぃっ!」

「おじさん……レンのお父さんだろ。一応挨拶行こうぜ」

ミチの手を引いてレンの部屋を出る。玄関へ向かうとやはり、仕事帰りでスーツを着たレンの父親が居た。

「……こんばんは、ノゾム、ミチちゃん」

「こ、ここっ、こん、こ、こんばんは!」

「こんばんは、お義父さん」

父親は明らかにムッとした顔になったが、何も言わずにパンパンのビニール袋を二つ持ってダイニングへ向かった。俺達は何となくその後を追ってしまう。

「二人とも、夕飯はまだか? あぁ、そうか、よかった、お前らの分も買ってきたからな。支度を手伝ってくれるか?」

「ぁ、はっ、はは、はい!」

「はい」

ビニール袋の中身を見たところ、今日の夕飯はカレーだ。

「お義父さん、俺甘口じゃなきゃ食べられません」

「そんな情けない男に息子はやらん」

「ぁ、あぁ、あのっ、ピーラーで……ゆ、ゆ、指剥いちゃいました」

「慣れてないなら先に言いなさい! ノゾム、救急箱!」

アクシデントも何度か起こったが、カレーは無事に完成した。苦手な辛口カレーに水を飲む手が止まらない。

「お、おお、美味しい、ですっ!」

「ミチちゃんは辛口もイケるんだな」

「は、はは、はい! ぁ、ぁ、あの……ささ、ささしで、がましく……存じますが? えっと……もう少し、欲しいです」

「おかわり欲しいんだな、そんな緊張しなくていいぞ」

ミチの方が父親に気に入られている気がする。彼の義理の息子になるのは俺だ、ミチにレンの夫の座を奪われる訳にはいかない。辛口カレーが何だ、たくさん食べてやる。

「そうだ、ノゾム。レンからメッセージがあったんだけどな」

既に食事を終えている父親はスマホを取り出し、レンから送られたというメッセージを省略して読んだ。

「えーっと……レンは明後日には帰ってくるらしいんだ。それでな、ノゾム、お前に伝えておけって部分があって……誤字だとは思うんだが、明後日には除霊出来るだろうから安心しろって」

カレーを食べる手も、水を飲む手も止まる。

「除霊……じょれい、なぁ……何と打ち間違えたんだと思う?」

ピシッ……と持っていたコップにヒビが入り、灯りが消えた。
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