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深夜に幼馴染に逢いに来てみた
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夕飯後、スマホを弄っているとセンパイが腰に腕を回し、頭に顎を置いてきた。
「……ゲームか? 何をやっているんだ?」
「ロケットを背負ったサメでスペースコロニーの住人を食べてます」
「……何やってるんだ」
「宇宙イベント中なんですよ、普段は海で海水浴客食べてます」
サメを操作して人間や他のサメを食べる育成アクションゲームだと丁寧に説明したが、センパイは妙な顔をしていた。
「…………どういうゲームかは分かったが、なんで宇宙でサメが生きてられるんだ? ゲームだからか?」
「何言ってるんですかセンパイ。サメは宇宙空間でも縦横無尽、竜巻にも乗るし砂の中も泳ぐ、すごい生き物ですよ」
「……そうかー、すごいなー」
「あんまり引っ付かないでくださいよ、操作しにくい……ひゃんっ!?」
肘でセンパイを押したが彼はビクともせず、俺の耳を甘噛みしてきた。
「…………俺にも構ってくれ」
「このイベントっ、明日の昼までなんですよぉっ……もうちょいポイント集めたらっ、宇宙服着たサメがもらえるんですっ……」
「……宇宙空間でも縦横無尽ならいらないだろ、サメより俺に構え。俺とサメどっちが大事なんだ」
そこはゲームと言うべきじゃないかな。
「んぁっ……あ、ずる、いぃっ……ひぁっ!? あっ! ぁあっ! んぁああっ、ピアスびちびちしちゃらめぇえっ!」
三連ピアスの真ん中を舌先で揺らされ、前後のピアスにぶつけてカチカチという音を聞かされる。ゾワゾワと背中を這う冷たい快感に負けてスマホを落とし、耳の内側のピアスも弄ってとねだる。
「なかもっ、しぇんぱいなかもぉっ……んぁああっ!」
大声で喘いだその時、病室の扉が開いた。センパイは慌てて俺から手と口を離し、俺は赤い顔と荒い呼吸を知られないようそっぽを向いた。
「消灯の時間です。加えて、形州様には若神子製薬の社長秘書様より拘束具をつけるよう承っておりますので、ご協力お願いします」
消灯を知らせに来た看護師は黒革の拘束具をセンパイに見せた。
「…………そんなもんいらんと兄ちゃんに伝えろ」
「センパイ、お兄さん多分心配してるんですよ。センパイが……手首切ったから、きっと怖いんです。センパイ寝相いいですしつけてても寝れますって。俺が横で子守唄歌ってあげますから」
嫌そうな顔をしながらも頷いたセンパイに拘束具を着せる。まず太腿にベルトを巻き、そのベルトと繋がった腰のベルトも巻く。腰のベルトにサスペンダーのような部分を装着し、そこから伸びたベルトで腕を組んだ状態で固定。
「………………刑務所の拘束衣みたいだな」
「似合いますよ」
「……どういう意味だ」
犯罪者ヅラだという意味だとは言わず、拘束されたセンパイの横に寝転がり、胸──は腕が邪魔で叩けなかったので肩をポンポンと叩く。
「月乃宮様には部屋を用意してありますので、こちらへ」
「へっ? い、いや……俺はセンパイと一緒に寝ますけど……」
「…………それも兄ちゃんの指示か?」
「病院側の都合です」
「……ここで寝るのとそっちで寝るの、どう違うんだ?」
看護師は軽いため息をつき、拘束されたまま威嚇するセンパイへの説明を考えている。困らせてしまったと感じた俺は起き上がった。
「センパイ、俺そっちで寝ます。色々あるんですよ、困らせちゃダメですよ」
「…………俺と寝て何の不都合があると言うんだ、用意したベッドが無駄になるだけだろ。後日の洗濯が必要なくて結構じゃないか」
俺もそう思うけれど、看護師を困らせるのはよくない。それに、本当に夜にレンが来てくれるならセンパイの隣では寝ない方がいい。
「困らせちゃダメですって。看護師さん、俺はどこで寝ればいいんですか?」
「こちらです」
看護師の案内に従うと入院患者家族用の宿泊部屋に着いた、安いホテルって感じの部屋だ。
「それでは」
「あ、はい。ありがとうございましたー……」
とりあえずベッドに腰掛け、ゲームを再開。病院の無料WiFiは弱く、操作画面がカクカクする。
「今日中にポイント溜めなきゃ……」
この通信の遅さでは夜更かしすることになりそうだ。そう憂鬱になっていると部屋の外から足音が聞こえ始めた。ぺたっ、ぺたっ、と……そう大きな音ではないのに何故かよく聞こえる。部屋の電灯が明滅する。
「ひ……レン、レンっ、早くぅ……」
ゲームをするのをやめて扉を睨む。あの爪の長い手がドアノブに触れているのか金属を引っ掻く嫌な音が聞こえ、無常にもあっさりとドアノブが回り、扉が開く。
「い、いるのか……?」
僅かに開いた扉が閉まると、ぺたっ、ぺたっ、と足音がベッドに近付いてくる。
『来たよ、もち』
「レン……? レ、レンなのか!? なんだよ、浮けるくせに紛らわしい足音立てて! もぉっ……怖かったんだからなぁっ!」
目の前に立っているだろうレンに抱きつく。
「あったかい……レン、顔見せてくれよ、なんでずっと見えないままにしてるんだ?」
『もち……幽霊が近しい人間の声真似をするって階段は昔からよくあるんだぞ。顔も見えないのに俺だって確信して……お前は本当に可愛いな』
「えへへ……可愛い可愛いって言うなよぉ、俺が旦那さんなんだからな! それと怖いこと言うな、ぎゅーってした感触も体温もレンだぞ? 形とかも真似るのか?」
レンは無言で俺の背をぽんぽんと撫で、俺にベッドに座るよう言った。
『ん? ゲームしてたのか?』
「うん、このイベント明日の昼までだからポイント溜めたいんだ。なのにカクカクしててさ」
『ふーん……なるほど、任せな』
何を? そう聞く暇もなく部屋の電灯の明滅がまた始まる。しかしすぐに収まり、ホッとして視線を下げると通信が早くなっていた。
「あれっ、ぬるぬる動く」
『霊体と電波電磁波は相性いいからなぁ』
「レンがしてくれたのか!? すごいなぁ! 流石レン! これならポイント集めすぐ終わるよ」
『喜んでくれてよかったよ』
ぽんぽんと頭を撫でた後、レンは隣に座ったが俺に何もしてこなかった。手を繋ごうともせず、肩を組んでくることもなく、腰に腕を回しもせず、ただ会話を交わしてくれた。
『アレはクソの中でもクソだったな、下手くそな役者が適当に言い争ってるシーンで尺稼いでさ』
「分かる……サメの発想はよかったのにサメ五分くらいしか出てこなかったもん」
『水バシャバシャするだけで襲われてる感じ出せるのに、下手に陸に上げるからCG予算が足りねぇんだよ』
「うん……しかも散弾銃の跡が穴一個なのは萎えた。散弾つってんだろって」
ゲームの邪魔をせず俺の好きな話をしてくれるレンとの時間は快適だ。夜更かしを覚悟していたのに数十分でポイント集めが終わり、俺は改めてレンに感謝しながら熱を持ったスマホをベッドの端に投げた。
「ほんとにありがとうな、レン。ところでさ、レンって電波なくても来れるようになったのか? さっきのエレベーターとかそんな感じじゃなかった?」
レンは相変わらず姿を現してくれず、俺は気配のする方へ話すしかなかった。あの綺麗な茶色の瞳を見たいのに、どこに目があるのか分からない。
『お前が……俺だけのものになれないって電話してきた時に来たんだよ。形州とイチャついてんの見てイラついてた。形州には手ぇ出すなって言われてるから口も挟めねぇでさ……イライラして、イライラして、仕方なくて』
「レン……?」
そっと膝に手を置かれ、すぐにレンの手を両手で包んだ。大好きなレンの柔らかい手、細い指、長い爪──長い爪?
『脅かしてごめんな、もち。ちょっとイタズラするだけのつもりだったのに、お前が俺嫌がったり祓おうとしたり形州呼んだりするからっ! 止まんなくなって……』
レンの声が涙混じりになっている。エレベーターで俺を襲ったのは悪霊ではなくレンだったことなんてどうでもいい、レンが泣いている。
「レ、レン……泣かないで、レン」
レンが俺の前で泣くことなんて滅多にない、これはとんでもないことだ、早く慰めてやりたい。
『でもお前が俺に助けてって言ってくれたから……ちょっと、落ち着いた。よかった、もち、俺がいらなくなったりしてないよな? 形州だけでよくなったりしてないよな……』
「レンがいらないなんてありえないよ! ごめん、レン……約束破って」
『なぁ、俺のこと好きだよな? 俺が必要だよな? 俺がママなんだよな? 親離れなんてしないよな? 俺をお嫁さんにしてくれるんだよな?』
「うん……大好きだよ、ごめんねレン、不安にさせてごめん……」
抱き締めて背を撫でてやるとレンはすぐに泣き止んだ。いつもと反対だななんて感慨深く思いながら、抱き締めるのをやめて両肩を掴んだ。
「レン、顔見せてくれ。ちゃんと見たい」
『やだ……』
「なんで?」
『可愛く、ないから』
「可愛いよ……レンは可愛い、誰よりも可愛いよ」
濡れた頬を撫でる。
『嫉妬……おししょーさまに、もうしちゃダメって言われてただろ? すると、異形化進むって……進んじゃった。形州にめちゃくちゃ嫉妬してたからっ、俺どんどん化け物にっ……』
「レン、そんなことないよ。抱き合った感じいつもと同じだったし、ほっぺたもいつも通りふにふにしてる。角は……なんか伸びた? けど、角は萌え要素だから大丈夫! 後は爪伸びたくらいだろ? 平気だって」
可愛くないから見られたくないと駄々をこねるレンの頬を包むようにして、おそらく目があるだろう空間を見つめて必死に可愛いと言い続け、説得する。
『ほんとに……ほんとに、可愛い? 俺、ちゃんと可愛い? お嫁さんなれる?』
「なれるよ、する、大丈夫……可愛い」
『ほんと……? じゃあ、見せる……』
すぅっと少しずつ透明度が下がり、レンの姿が現れた。
「……ゲームか? 何をやっているんだ?」
「ロケットを背負ったサメでスペースコロニーの住人を食べてます」
「……何やってるんだ」
「宇宙イベント中なんですよ、普段は海で海水浴客食べてます」
サメを操作して人間や他のサメを食べる育成アクションゲームだと丁寧に説明したが、センパイは妙な顔をしていた。
「…………どういうゲームかは分かったが、なんで宇宙でサメが生きてられるんだ? ゲームだからか?」
「何言ってるんですかセンパイ。サメは宇宙空間でも縦横無尽、竜巻にも乗るし砂の中も泳ぐ、すごい生き物ですよ」
「……そうかー、すごいなー」
「あんまり引っ付かないでくださいよ、操作しにくい……ひゃんっ!?」
肘でセンパイを押したが彼はビクともせず、俺の耳を甘噛みしてきた。
「…………俺にも構ってくれ」
「このイベントっ、明日の昼までなんですよぉっ……もうちょいポイント集めたらっ、宇宙服着たサメがもらえるんですっ……」
「……宇宙空間でも縦横無尽ならいらないだろ、サメより俺に構え。俺とサメどっちが大事なんだ」
そこはゲームと言うべきじゃないかな。
「んぁっ……あ、ずる、いぃっ……ひぁっ!? あっ! ぁあっ! んぁああっ、ピアスびちびちしちゃらめぇえっ!」
三連ピアスの真ん中を舌先で揺らされ、前後のピアスにぶつけてカチカチという音を聞かされる。ゾワゾワと背中を這う冷たい快感に負けてスマホを落とし、耳の内側のピアスも弄ってとねだる。
「なかもっ、しぇんぱいなかもぉっ……んぁああっ!」
大声で喘いだその時、病室の扉が開いた。センパイは慌てて俺から手と口を離し、俺は赤い顔と荒い呼吸を知られないようそっぽを向いた。
「消灯の時間です。加えて、形州様には若神子製薬の社長秘書様より拘束具をつけるよう承っておりますので、ご協力お願いします」
消灯を知らせに来た看護師は黒革の拘束具をセンパイに見せた。
「…………そんなもんいらんと兄ちゃんに伝えろ」
「センパイ、お兄さん多分心配してるんですよ。センパイが……手首切ったから、きっと怖いんです。センパイ寝相いいですしつけてても寝れますって。俺が横で子守唄歌ってあげますから」
嫌そうな顔をしながらも頷いたセンパイに拘束具を着せる。まず太腿にベルトを巻き、そのベルトと繋がった腰のベルトも巻く。腰のベルトにサスペンダーのような部分を装着し、そこから伸びたベルトで腕を組んだ状態で固定。
「………………刑務所の拘束衣みたいだな」
「似合いますよ」
「……どういう意味だ」
犯罪者ヅラだという意味だとは言わず、拘束されたセンパイの横に寝転がり、胸──は腕が邪魔で叩けなかったので肩をポンポンと叩く。
「月乃宮様には部屋を用意してありますので、こちらへ」
「へっ? い、いや……俺はセンパイと一緒に寝ますけど……」
「…………それも兄ちゃんの指示か?」
「病院側の都合です」
「……ここで寝るのとそっちで寝るの、どう違うんだ?」
看護師は軽いため息をつき、拘束されたまま威嚇するセンパイへの説明を考えている。困らせてしまったと感じた俺は起き上がった。
「センパイ、俺そっちで寝ます。色々あるんですよ、困らせちゃダメですよ」
「…………俺と寝て何の不都合があると言うんだ、用意したベッドが無駄になるだけだろ。後日の洗濯が必要なくて結構じゃないか」
俺もそう思うけれど、看護師を困らせるのはよくない。それに、本当に夜にレンが来てくれるならセンパイの隣では寝ない方がいい。
「困らせちゃダメですって。看護師さん、俺はどこで寝ればいいんですか?」
「こちらです」
看護師の案内に従うと入院患者家族用の宿泊部屋に着いた、安いホテルって感じの部屋だ。
「それでは」
「あ、はい。ありがとうございましたー……」
とりあえずベッドに腰掛け、ゲームを再開。病院の無料WiFiは弱く、操作画面がカクカクする。
「今日中にポイント溜めなきゃ……」
この通信の遅さでは夜更かしすることになりそうだ。そう憂鬱になっていると部屋の外から足音が聞こえ始めた。ぺたっ、ぺたっ、と……そう大きな音ではないのに何故かよく聞こえる。部屋の電灯が明滅する。
「ひ……レン、レンっ、早くぅ……」
ゲームをするのをやめて扉を睨む。あの爪の長い手がドアノブに触れているのか金属を引っ掻く嫌な音が聞こえ、無常にもあっさりとドアノブが回り、扉が開く。
「い、いるのか……?」
僅かに開いた扉が閉まると、ぺたっ、ぺたっ、と足音がベッドに近付いてくる。
『来たよ、もち』
「レン……? レ、レンなのか!? なんだよ、浮けるくせに紛らわしい足音立てて! もぉっ……怖かったんだからなぁっ!」
目の前に立っているだろうレンに抱きつく。
「あったかい……レン、顔見せてくれよ、なんでずっと見えないままにしてるんだ?」
『もち……幽霊が近しい人間の声真似をするって階段は昔からよくあるんだぞ。顔も見えないのに俺だって確信して……お前は本当に可愛いな』
「えへへ……可愛い可愛いって言うなよぉ、俺が旦那さんなんだからな! それと怖いこと言うな、ぎゅーってした感触も体温もレンだぞ? 形とかも真似るのか?」
レンは無言で俺の背をぽんぽんと撫で、俺にベッドに座るよう言った。
『ん? ゲームしてたのか?』
「うん、このイベント明日の昼までだからポイント溜めたいんだ。なのにカクカクしててさ」
『ふーん……なるほど、任せな』
何を? そう聞く暇もなく部屋の電灯の明滅がまた始まる。しかしすぐに収まり、ホッとして視線を下げると通信が早くなっていた。
「あれっ、ぬるぬる動く」
『霊体と電波電磁波は相性いいからなぁ』
「レンがしてくれたのか!? すごいなぁ! 流石レン! これならポイント集めすぐ終わるよ」
『喜んでくれてよかったよ』
ぽんぽんと頭を撫でた後、レンは隣に座ったが俺に何もしてこなかった。手を繋ごうともせず、肩を組んでくることもなく、腰に腕を回しもせず、ただ会話を交わしてくれた。
『アレはクソの中でもクソだったな、下手くそな役者が適当に言い争ってるシーンで尺稼いでさ』
「分かる……サメの発想はよかったのにサメ五分くらいしか出てこなかったもん」
『水バシャバシャするだけで襲われてる感じ出せるのに、下手に陸に上げるからCG予算が足りねぇんだよ』
「うん……しかも散弾銃の跡が穴一個なのは萎えた。散弾つってんだろって」
ゲームの邪魔をせず俺の好きな話をしてくれるレンとの時間は快適だ。夜更かしを覚悟していたのに数十分でポイント集めが終わり、俺は改めてレンに感謝しながら熱を持ったスマホをベッドの端に投げた。
「ほんとにありがとうな、レン。ところでさ、レンって電波なくても来れるようになったのか? さっきのエレベーターとかそんな感じじゃなかった?」
レンは相変わらず姿を現してくれず、俺は気配のする方へ話すしかなかった。あの綺麗な茶色の瞳を見たいのに、どこに目があるのか分からない。
『お前が……俺だけのものになれないって電話してきた時に来たんだよ。形州とイチャついてんの見てイラついてた。形州には手ぇ出すなって言われてるから口も挟めねぇでさ……イライラして、イライラして、仕方なくて』
「レン……?」
そっと膝に手を置かれ、すぐにレンの手を両手で包んだ。大好きなレンの柔らかい手、細い指、長い爪──長い爪?
『脅かしてごめんな、もち。ちょっとイタズラするだけのつもりだったのに、お前が俺嫌がったり祓おうとしたり形州呼んだりするからっ! 止まんなくなって……』
レンの声が涙混じりになっている。エレベーターで俺を襲ったのは悪霊ではなくレンだったことなんてどうでもいい、レンが泣いている。
「レ、レン……泣かないで、レン」
レンが俺の前で泣くことなんて滅多にない、これはとんでもないことだ、早く慰めてやりたい。
『でもお前が俺に助けてって言ってくれたから……ちょっと、落ち着いた。よかった、もち、俺がいらなくなったりしてないよな? 形州だけでよくなったりしてないよな……』
「レンがいらないなんてありえないよ! ごめん、レン……約束破って」
『なぁ、俺のこと好きだよな? 俺が必要だよな? 俺がママなんだよな? 親離れなんてしないよな? 俺をお嫁さんにしてくれるんだよな?』
「うん……大好きだよ、ごめんねレン、不安にさせてごめん……」
抱き締めて背を撫でてやるとレンはすぐに泣き止んだ。いつもと反対だななんて感慨深く思いながら、抱き締めるのをやめて両肩を掴んだ。
「レン、顔見せてくれ。ちゃんと見たい」
『やだ……』
「なんで?」
『可愛く、ないから』
「可愛いよ……レンは可愛い、誰よりも可愛いよ」
濡れた頬を撫でる。
『嫉妬……おししょーさまに、もうしちゃダメって言われてただろ? すると、異形化進むって……進んじゃった。形州にめちゃくちゃ嫉妬してたからっ、俺どんどん化け物にっ……』
「レン、そんなことないよ。抱き合った感じいつもと同じだったし、ほっぺたもいつも通りふにふにしてる。角は……なんか伸びた? けど、角は萌え要素だから大丈夫! 後は爪伸びたくらいだろ? 平気だって」
可愛くないから見られたくないと駄々をこねるレンの頬を包むようにして、おそらく目があるだろう空間を見つめて必死に可愛いと言い続け、説得する。
『ほんとに……ほんとに、可愛い? 俺、ちゃんと可愛い? お嫁さんなれる?』
「なれるよ、する、大丈夫……可愛い」
『ほんと……? じゃあ、見せる……』
すぅっと少しずつ透明度が下がり、レンの姿が現れた。
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