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後輩に病院に泊まってもらった
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病院では、電話をしてもよい場所は限られている。俺は待合室で電話をかけた。
「もしもし、レン?」
待合室の窓から見える空は青く美しい。
「ごめん、俺やっぱりレンだけのものにはなれない」
返事を聞かずに電源を切り、俺は駆け足で病室に向かった。
真っ白い病室、際立つ褐色肌。
「……ノゾム」
俺を見ただけで頬を緩めるのは、意識が戻ってすぐに病室を抜け出して待合室に来て、俺に声をかけた直後にぶっ倒れたセンパイ。
「センパイっ、ジュース買ってきましたよ」
「……ありがとう」
蓋を開けて渡し、伏し目がちな彼に笑顔で渡す。
「お兄さんはレモンソーダでしたね」
「どーも」
従兄にはそのまま投げ渡し、自分のものは当然自分で蓋を開ける。
「…………ノゾム、あの茶髪は本当にいいのか?」
「レンは……多分、俺が居なくても平気ですから」
いつも何となく感じていた、レンの負担になっているのではないかという漠然とした不安。それはセンパイにはない、彼には俺が必要だ。
「もう高校生ですし、少しは親離れしないと」
「…………親?」
「こっちの話です。俺のことはいいんですよセンパイ、今はセンパイのことです。ジュースも買ってきましたし……その髪について、教えてください」
勢いでレンに電話してしまった後悔、レンを求めて泣き喚く恋心、レンに会いたがる心の中の幼い俺、全て押し殺してセンパイだけを見つめる。彼の髪は三分の一ほどまだらに白く染まっていた。
「…………気持ち悪いか?」
「いや、パンクな感じでカッコイイとは思いますけど……なんでそうなったんでしょう、ストレスで白くなるとか聞いたことありますけど……」
「俺が血清入れたからですよ。若神子印の血清は多量に投与すると頭髪が白く、虹彩が赤っぽくなるんです」
センパイの瞳をじっと見つめると、縁が赤茶けているのに気付いた。まさか……センパイの虹彩、これだけしかないのか?
「……血清?」
「治癒力を高めるもんだ。幽霊屋敷でも打ったぞ。これなきゃお前、手動かなくなってたんだからな」
「それ……霊とかに付けられた傷専用じゃないんですか?」
「加工の過程で霊的なものに対する効果上げてますけど、単純な怪我にも効きますよ」
「万能薬じゃないですか! それ売りましょうよ」
「数作れないんですよ、持ってる分全部國行に打ってもまだ入院要るレベルなんですよ? 副作用派手だし商品化なんて出来ません」
副作用と聞いてセンパイが一瞬怯えるが、すぐに髪のことだと気付いて落ち着いた。
「…………髪、伸びるまで待たないといけないのか?」
「いや、一週間くらいで色抜けると思う」
「……色が抜ける? 色素が抜けて白くなってるんじゃないのか?」
「違う、白い色素が乗ってるんだ」
「白い色素なんてあるんですね」
「血清は特別なもんだって言ってんでしょ、このバカ。見た目通りのバカ、ダボ」
当たりが強い。仕方ないけれど。
「…………そうか、よかった。いや……ノゾムはこれを気に入ってるんだったか」
「ぁ、いえいえ、いつものセンパイが一番です。センパイならどんな髪でも似合うなって、それだけですよ」
「……可愛いことを言う。おいで、ノゾム」
スリッパを脱いでベッドに上がる。センパイの隣に座ると腰に腕を回された。二度と味わえないと思っていた体温、筋肉質な太い腕、そして優しい眼差し──自然と涙が零れた。
「…………ノゾム? やはり……茶髪が恋しいか」
「センパイが生きてるのが嬉しいのっ……」
肩に頭を預けて目を閉じる。センパイの言葉で思い出してしまったレンの姿が浮かぶ。レンに会いたい、あの綺麗な瞳をまた間近で見つめたい、声を聞きたい、身体に触れたい──欲望は止まらない。
「……自殺をほのめかして引き止めるような真似、しないと言ったのにな。すまない」
「なんでセンパイが謝るんですか! 悪いのは俺です……ごめんなさい、センパイ。もうセンパイの気持ち裏切ったりしません、センパイに頼りきったりもしません、俺がセンパイを幸せにしてみせます!」
「…………ふ、いい度胸だな」
「はいっ! 俺も成人間近の男として、幸せにしてやるとか言われたり、幸せにしてもらえなんて言われたり、そんなのばかりじゃダメだと思って。さ、センパイ、センパイは何をしたら幸せですか?」
成人まで何年あると思ってるんだと笑う従兄には目も向けず、優しく微笑んでいるセンパイを見上げる。
「……お前が腕の中に居るんだ、これ以上望むことはない」
「そんな……」
「…………それじゃあ、ワガママを一つ」
照れと困惑を見せているとセンパイはクスッと笑って絞り出したワガママを言ってくれた。
「……入院している間、泊まってくれ」
「はい!」
「許可取っときまーす」
呆れている従兄に礼をいい、センパイの首に腕を絡めて頬にキスをする。
「俺、ずっとここに居ますね、センパイ」
「俺もう帰るよ、何かあったら呼べよ。じゃ、また!」
当てつけのように帰っていく従兄に二人で手を振った。それからセンパイに従兄が大泣きしていたことを知らせると、一通り笑った後に申し訳なさそうに俯いた。
「…………ノゾム、俺はな、母親に捨てられた後……誰も俺を愛するわけがないと思っていたんだ。父親にも殴られていたし、学校ではイジメられてたしな。鍛えたらそれはなくなったが……その代わり孤独になった」
「センパイ、友達いるじゃないですか」
「……あんなの、俺の強さを利用しようとしているだけだ」
少なくともあの三人組はそうではないと思うけれど、センパイはそんなふうに感じているのか。
「…………兄ちゃんも、あまり顔を見に来てくれなかったしな……ずっと寂しかったんだ」
「センパイ……大丈夫ですよセンパイ、俺はここに居ますからね」
「……俺はきっと、人の善意を正直に受け取れるようになっていくだろう。全てお前のおかげだ、お前がいるから俺は幸せになれるんだ。お前がいなきゃダメなんだ」
「はい……センパイには、俺が居なきゃダメです」
あの遺書を呼んで、というか聞いて確信した。
ミチは「居なきゃ泣く」で、レンは「居て欲しい」くらいだと俺は思っている。三人への俺の愛情はレンへのものが少し大きめなくらいでほとんど同じなので、必須レベルのセンパイの元に入り浸るのは仕方ないことだ。
「………………眠くなってきた」
「はい、ゆっくり休んでください」
「…………どこにも行かないよな?」
「はい、トイレにも行きません」
「……それは行け」
笑ってくれた。よかった。センパイはきっとリラックスした状態でベッドに身を横たえ、眠りについた。その隣に寝転がる俺もそろそろ眠るだろう。
「おやすみなさい、センパイ」
意識があるうちに挨拶をし、目を閉じた。
目を覚ましたのは骨張った手に身体をまさぐられたからだ。その手はガサガサとしていて、乱暴で、たくさんあって身体中を這い回っている。明らかにセンパイのものではない。
「ん、ぁっ……はぁっ、ん、んんっ……」
脇腹を撫でられ、絆創膏の存在を思い出す。足の裏をくすぐられ、ガラス片を踏んだ傷を思い出す。臍の周りを押されて下腹が疼く。
「ん、んん……んぁっ!」
左右の尻肉を鷲掴みにされ、ぴっちりと閉じていた割れ目を開かれる。別の手が後孔の縁に触れる、指先でこね回している。
「ゃん……ん、ぁっ……ゃ、だっ……ぃや、ぁんっ……」
全身をくまなく撫で回す無数の手、ガサガサとしてゴツゴツとした男の手、不快なそれらが俺に快感を与える。
「…………ノゾム? ノゾム、どうした」
俺の声か身悶えでセンパイが目を覚ましてしまった。申し訳なく思っていると毛布を捲られ、服の下を這い回る手に気付かれる。
「……ノゾムっ、これは……霊、か」
センパイは俺の服の中を覗き、何もいないのに布だけが蠢いているのだと知って顔色を悪くした。
「…………俺はどうすればいい? 祓い方は知らないし……やはり、アレか」
「ふっ、ふぅっ……ぅうんっ……! ん、んっ……」
「……あぁ、ノゾム……そんな悩ましげな声を出して。ノゾムに勝手に触れて、そんな顔をさせるなんて……腹立たしいな」
右手の袖を噛んで声を押さえる俺を見てセンパイは目付きを鋭くした。痴漢よりも卑劣な怪異に対し怒っているようだ。
「…………おい、今からノゾムを抱く。精液ならやるからノゾムから離れろ」
怪異が引いた。突然絶妙な快楽から開放された俺はその熱を発散するように熱い吐息を激しく吐いた。
「……ノゾム、動けるか? この間傷が開いてしまったし、手がまだ痛くてな。お前を抱えてやれない」
「は、いっ……」
こういう時は手を貸してくれてもいいのにと思いながら自力で起き上がり、センパイの足の上に跨った。
「…………悪いな、もう少しちゃんと話してからにしたいんだが」
「いえ……セックスしなきゃいけないのは、俺が取り憑かれちゃったせいですし」
「………………ノゾム、何でも自分のせいにするな。たまには他人のせいにして愚痴ってみろ」
そうは言われても、何が悪いと言われればあらゆる悩みは俺の自業自得だという結論が出る。しかも他人を巻き込んでいるからタチが悪いと自分が自分を罵り始める。
「……手始めにほら、何か俺のせいにしてみろ。俺の自殺未遂のせいで浮気する羽目になった、とかでもいいぞ」
そんなこと思っていないし、言えやしない。
「センパイの、せい……」
「……俺のせいで?」
センパイのせいになるようなこと、一つもない。
「センパイの、せいで」
「……あぁ」
「お腹の疼き、増してきちゃいました……センパイがそんな鎖骨丸見えなエロ衣装着るからですよ」
病院着のはだけた胸元は非常に扇情的だ。
「何度えっちすぎ罪を犯せば気が済むんですか」
「……なら、罰を与えるか? 騎乗位で責められなりなんかしたら大変だな」
俺はセンパイの要求を察し、下を脱いで生の肌を足に擦り付けた。
「もしもし、レン?」
待合室の窓から見える空は青く美しい。
「ごめん、俺やっぱりレンだけのものにはなれない」
返事を聞かずに電源を切り、俺は駆け足で病室に向かった。
真っ白い病室、際立つ褐色肌。
「……ノゾム」
俺を見ただけで頬を緩めるのは、意識が戻ってすぐに病室を抜け出して待合室に来て、俺に声をかけた直後にぶっ倒れたセンパイ。
「センパイっ、ジュース買ってきましたよ」
「……ありがとう」
蓋を開けて渡し、伏し目がちな彼に笑顔で渡す。
「お兄さんはレモンソーダでしたね」
「どーも」
従兄にはそのまま投げ渡し、自分のものは当然自分で蓋を開ける。
「…………ノゾム、あの茶髪は本当にいいのか?」
「レンは……多分、俺が居なくても平気ですから」
いつも何となく感じていた、レンの負担になっているのではないかという漠然とした不安。それはセンパイにはない、彼には俺が必要だ。
「もう高校生ですし、少しは親離れしないと」
「…………親?」
「こっちの話です。俺のことはいいんですよセンパイ、今はセンパイのことです。ジュースも買ってきましたし……その髪について、教えてください」
勢いでレンに電話してしまった後悔、レンを求めて泣き喚く恋心、レンに会いたがる心の中の幼い俺、全て押し殺してセンパイだけを見つめる。彼の髪は三分の一ほどまだらに白く染まっていた。
「…………気持ち悪いか?」
「いや、パンクな感じでカッコイイとは思いますけど……なんでそうなったんでしょう、ストレスで白くなるとか聞いたことありますけど……」
「俺が血清入れたからですよ。若神子印の血清は多量に投与すると頭髪が白く、虹彩が赤っぽくなるんです」
センパイの瞳をじっと見つめると、縁が赤茶けているのに気付いた。まさか……センパイの虹彩、これだけしかないのか?
「……血清?」
「治癒力を高めるもんだ。幽霊屋敷でも打ったぞ。これなきゃお前、手動かなくなってたんだからな」
「それ……霊とかに付けられた傷専用じゃないんですか?」
「加工の過程で霊的なものに対する効果上げてますけど、単純な怪我にも効きますよ」
「万能薬じゃないですか! それ売りましょうよ」
「数作れないんですよ、持ってる分全部國行に打ってもまだ入院要るレベルなんですよ? 副作用派手だし商品化なんて出来ません」
副作用と聞いてセンパイが一瞬怯えるが、すぐに髪のことだと気付いて落ち着いた。
「…………髪、伸びるまで待たないといけないのか?」
「いや、一週間くらいで色抜けると思う」
「……色が抜ける? 色素が抜けて白くなってるんじゃないのか?」
「違う、白い色素が乗ってるんだ」
「白い色素なんてあるんですね」
「血清は特別なもんだって言ってんでしょ、このバカ。見た目通りのバカ、ダボ」
当たりが強い。仕方ないけれど。
「…………そうか、よかった。いや……ノゾムはこれを気に入ってるんだったか」
「ぁ、いえいえ、いつものセンパイが一番です。センパイならどんな髪でも似合うなって、それだけですよ」
「……可愛いことを言う。おいで、ノゾム」
スリッパを脱いでベッドに上がる。センパイの隣に座ると腰に腕を回された。二度と味わえないと思っていた体温、筋肉質な太い腕、そして優しい眼差し──自然と涙が零れた。
「…………ノゾム? やはり……茶髪が恋しいか」
「センパイが生きてるのが嬉しいのっ……」
肩に頭を預けて目を閉じる。センパイの言葉で思い出してしまったレンの姿が浮かぶ。レンに会いたい、あの綺麗な瞳をまた間近で見つめたい、声を聞きたい、身体に触れたい──欲望は止まらない。
「……自殺をほのめかして引き止めるような真似、しないと言ったのにな。すまない」
「なんでセンパイが謝るんですか! 悪いのは俺です……ごめんなさい、センパイ。もうセンパイの気持ち裏切ったりしません、センパイに頼りきったりもしません、俺がセンパイを幸せにしてみせます!」
「…………ふ、いい度胸だな」
「はいっ! 俺も成人間近の男として、幸せにしてやるとか言われたり、幸せにしてもらえなんて言われたり、そんなのばかりじゃダメだと思って。さ、センパイ、センパイは何をしたら幸せですか?」
成人まで何年あると思ってるんだと笑う従兄には目も向けず、優しく微笑んでいるセンパイを見上げる。
「……お前が腕の中に居るんだ、これ以上望むことはない」
「そんな……」
「…………それじゃあ、ワガママを一つ」
照れと困惑を見せているとセンパイはクスッと笑って絞り出したワガママを言ってくれた。
「……入院している間、泊まってくれ」
「はい!」
「許可取っときまーす」
呆れている従兄に礼をいい、センパイの首に腕を絡めて頬にキスをする。
「俺、ずっとここに居ますね、センパイ」
「俺もう帰るよ、何かあったら呼べよ。じゃ、また!」
当てつけのように帰っていく従兄に二人で手を振った。それからセンパイに従兄が大泣きしていたことを知らせると、一通り笑った後に申し訳なさそうに俯いた。
「…………ノゾム、俺はな、母親に捨てられた後……誰も俺を愛するわけがないと思っていたんだ。父親にも殴られていたし、学校ではイジメられてたしな。鍛えたらそれはなくなったが……その代わり孤独になった」
「センパイ、友達いるじゃないですか」
「……あんなの、俺の強さを利用しようとしているだけだ」
少なくともあの三人組はそうではないと思うけれど、センパイはそんなふうに感じているのか。
「…………兄ちゃんも、あまり顔を見に来てくれなかったしな……ずっと寂しかったんだ」
「センパイ……大丈夫ですよセンパイ、俺はここに居ますからね」
「……俺はきっと、人の善意を正直に受け取れるようになっていくだろう。全てお前のおかげだ、お前がいるから俺は幸せになれるんだ。お前がいなきゃダメなんだ」
「はい……センパイには、俺が居なきゃダメです」
あの遺書を呼んで、というか聞いて確信した。
ミチは「居なきゃ泣く」で、レンは「居て欲しい」くらいだと俺は思っている。三人への俺の愛情はレンへのものが少し大きめなくらいでほとんど同じなので、必須レベルのセンパイの元に入り浸るのは仕方ないことだ。
「………………眠くなってきた」
「はい、ゆっくり休んでください」
「…………どこにも行かないよな?」
「はい、トイレにも行きません」
「……それは行け」
笑ってくれた。よかった。センパイはきっとリラックスした状態でベッドに身を横たえ、眠りについた。その隣に寝転がる俺もそろそろ眠るだろう。
「おやすみなさい、センパイ」
意識があるうちに挨拶をし、目を閉じた。
目を覚ましたのは骨張った手に身体をまさぐられたからだ。その手はガサガサとしていて、乱暴で、たくさんあって身体中を這い回っている。明らかにセンパイのものではない。
「ん、ぁっ……はぁっ、ん、んんっ……」
脇腹を撫でられ、絆創膏の存在を思い出す。足の裏をくすぐられ、ガラス片を踏んだ傷を思い出す。臍の周りを押されて下腹が疼く。
「ん、んん……んぁっ!」
左右の尻肉を鷲掴みにされ、ぴっちりと閉じていた割れ目を開かれる。別の手が後孔の縁に触れる、指先でこね回している。
「ゃん……ん、ぁっ……ゃ、だっ……ぃや、ぁんっ……」
全身をくまなく撫で回す無数の手、ガサガサとしてゴツゴツとした男の手、不快なそれらが俺に快感を与える。
「…………ノゾム? ノゾム、どうした」
俺の声か身悶えでセンパイが目を覚ましてしまった。申し訳なく思っていると毛布を捲られ、服の下を這い回る手に気付かれる。
「……ノゾムっ、これは……霊、か」
センパイは俺の服の中を覗き、何もいないのに布だけが蠢いているのだと知って顔色を悪くした。
「…………俺はどうすればいい? 祓い方は知らないし……やはり、アレか」
「ふっ、ふぅっ……ぅうんっ……! ん、んっ……」
「……あぁ、ノゾム……そんな悩ましげな声を出して。ノゾムに勝手に触れて、そんな顔をさせるなんて……腹立たしいな」
右手の袖を噛んで声を押さえる俺を見てセンパイは目付きを鋭くした。痴漢よりも卑劣な怪異に対し怒っているようだ。
「…………おい、今からノゾムを抱く。精液ならやるからノゾムから離れろ」
怪異が引いた。突然絶妙な快楽から開放された俺はその熱を発散するように熱い吐息を激しく吐いた。
「……ノゾム、動けるか? この間傷が開いてしまったし、手がまだ痛くてな。お前を抱えてやれない」
「は、いっ……」
こういう時は手を貸してくれてもいいのにと思いながら自力で起き上がり、センパイの足の上に跨った。
「…………悪いな、もう少しちゃんと話してからにしたいんだが」
「いえ……セックスしなきゃいけないのは、俺が取り憑かれちゃったせいですし」
「………………ノゾム、何でも自分のせいにするな。たまには他人のせいにして愚痴ってみろ」
そうは言われても、何が悪いと言われればあらゆる悩みは俺の自業自得だという結論が出る。しかも他人を巻き込んでいるからタチが悪いと自分が自分を罵り始める。
「……手始めにほら、何か俺のせいにしてみろ。俺の自殺未遂のせいで浮気する羽目になった、とかでもいいぞ」
そんなこと思っていないし、言えやしない。
「センパイの、せい……」
「……俺のせいで?」
センパイのせいになるようなこと、一つもない。
「センパイの、せいで」
「……あぁ」
「お腹の疼き、増してきちゃいました……センパイがそんな鎖骨丸見えなエロ衣装着るからですよ」
病院着のはだけた胸元は非常に扇情的だ。
「何度えっちすぎ罪を犯せば気が済むんですか」
「……なら、罰を与えるか? 騎乗位で責められなりなんかしたら大変だな」
俺はセンパイの要求を察し、下を脱いで生の肌を足に擦り付けた。
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