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幼馴染と二人きりの時間のはずだった

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俺は学校を出た後の修羅場について出来る限り詳しく話した。レンはうんうんと頷きながら聞いてくれた。

『なるほどなぁー、お前めんどくせぇのばっかと付き合ってんな』

「第一声がそれかよ……」

俺が面倒臭い奴なんだから仕方ない。類は友を呼ぶ、いや、恋人を呼ぶ。

『まぁ、ミチは多分大丈夫だろ。死んでやるっつってホントに死んだ奴知らねーもん。死ぬ奴は悟らせずに死ぬよ』

「うーん……まぁ、ミチはそういうとこありそうだけどさ…………新しい恋人紹介してやったら元気出すかなぁ」

『はは……未練タラタラの元彼からの紹介とか、それこそ死ぬわ。すげぇな、流石だぜ天然拷問官様』

拷問と言われるほど酷いのだろうか。センパイも俺の言葉で傷付いていた気もするし──もう、話さない方がいいのかもな。

『ま、ミチはほっとけ。一番の薬は時間ってよく言うだろ? 形州だが……まぁ、暴れなさそうならよかったじゃん。割と大人だな、ちゃんと諦めてくれんだろ』

「サメサメ……」

『おいどうした急に』

「いや、なんか……話すと人を傷付けるみたいだから、サメで返事しようかなって」

『流石に解読出来ねぇよ』

「解読しちゃダメだよ、傷付くから」

『クトゥルフ神話に出てくる本みたいなこと言うじゃん』

「心傷つくのと発狂するのは違うもん……」

やはりレンと話しているのが一番気が楽だな、趣味も何もかも分かり合っているからだろう。レンならきっとサメ語も理解してくれる。

「サメサメシャーク」

『急に人語忘れんな。いやそれサメ語でもねぇけど。まぁ、アレだな。俺的にはお前が俺庇ってくれたのが嬉しいな』

レンの不幸を願うのを撤回させた話か、自分で話したのは武勇伝を語ったみたいで今思うと恥ずかしいな。

「フカヒレスープ……」

『調理済みも出んのね、んで調理された悲哀でも込めてんのか悲しそうね。えーっと……悲しいのか? まぁ、彼氏一気にいなくなったら寂しいよな。その分俺が可愛がってやるからなぁー、色んな意味で』

色んな意味に性的なことを感じてしまい、顔が熱くなる。

「チェーンソー……!」

『チェーンソーは木とか切るやつで、どっちかって言うと山のもんだからな? サメとは本来無関係だからな?』

「ネコザメネコザメ……サメ、サメ」

『やれやれ素人めみたいな顔すんな! 山にサメが居るみたいな顔すんな! そんな映画もそういやお前と見に行ったなぁ逆に金欲しいレベルのクソだったよ!』

本当に通じてるじゃん、怖。

「レン、なんで俺の言いたいこと分かるんだよ」

『……顔? かなぁ。お前、分かりやすいんだよ。もし嘘ついても俺には分かるからな、嘘つくなよ?』

真剣な顔で言われ、気圧されてサメ語なんておふざけが出来なくなる。

「色んな人に迷惑かけてるし、恋人めちゃくちゃ傷付けたし……俺、本当に最低だよな」

『人間生きてる限り他人に迷惑かけ続けるし、恋愛すりゃ深く傷付くことだってあるよ。みんなそんなもんだ、気に済んな。お前も傷付いたことはあるだろ?』

「うん……でも、みんなと比べたら全然。レンなんて、小学校の時からずっと……俺に女ならよかったとか言われてっ、めちゃくちゃ傷付いてたよな……?」

『気に済んな、大丈夫だ。もち、あのな? 体の痛みも心の痛みも、他の人と比べちゃダメだ。お前の辛さはお前だけのもんだからな』

励ましてもらっても気にしないことなんて出来ない。センパイもミチも、根野だって俺との未来を思い描いていた。俺はそれを乱雑に壊したのだ、彼らの尊い愛情と一緒に。

「……俺、他の人の心踏みにじって生きてるんだ」

『みんなそんなもんだよ。お前もそうされたことあるだろ?』

俺をイジめてきた連中の顔を思い出し、同時に俺を庇ったレンが酷い目に遭ったことも思い出す。

「レンが守ってくれた」

『当たり前だろ。どんな動物だってママは子供を守るんだよ』

「タツノオトシゴ」

『哺乳類の話しようぜ』

残念ながら、俺は哺乳類にはあまり興味がない。

「なぁ……レン。俺、レンのこと本気でママだと思ってるけどさ」

『おぅ、それ俺以外には言うなよ』

「レンは……俺のママ、嫌じゃない?」

『何言ってんだよ、めちゃくちゃ嬉しいに決まってんだろ? 俺、お前に甘えられるのすっごい好きなんだ』

俺を甘やかすレンの顔はいつも笑顔だった。あの笑顔が演技でないことくらい俺にも分かる。

「ごめん、変なこと聞いて」

『いやいや、いいよ、大丈夫。なぁもち、俺がお前庇って蹴られたり彫刻刀刺されたりしたの……アレは、出産の代わりだ。腹痛めて産んでねぇから、後から痛いこと味わってんだよ』

「……レン、無痛分娩否定派?」

『いや賛成派だ……ってややこしい話すんな、いいこと言おうと思ってんだから』

その気概は何となく感じている。

「…………腹痛めて産んだって、可愛くはならないよ。お前のせいで痛かったんだって恨まれるんだ。母さんが俺のことあんなに嫌う理由は多分っ!」

両頬にパンっと軽く手のひらがぶつけられた。

『もち、母さんって誰だ? お前の母親はレンママだけだぞ? 俺はお前のこと大好きだ!』

「…………まま」

『あぁ、俺がお前のママだぞ』

「……ままぁっ! まま、ままっ……大好き、大好きっ、ままもずっと大好きでいてね、ままっ、まま、ままぁ……」

半透明だけどすり抜けない霊体を抱き締め、通行人から変質者を見る目で見られる。

『俺の家おいで、もち。お前は俺の子なんだから俺の部屋で暮らすのが当然なんだぞ』

「うん、ありがとう、まま」

俺が家に帰りたくないのを察してくれたのだろう、レンは本当に良い奴だ。レンの不幸なんて絶対に誰にも願わせてはいけない。



自宅を通り過ぎて如月宅に入る。レンの父親は一般的なサラリーマンた。平日の昼間である今は仕事中だろう。

『さ、俺の部屋俺の部屋~』

レンに手を引かれるがままにレンの部屋へ入り、促されるままにベッドに座った。

「……なぁレン、制服のままベッドってちょっと汚くないか?」

『お前今までそんなこと気にしたことないくせに……さては、脱がして欲しいんだな? このえろもち』

「レン……本当に俺の考えてること何でも分かるんだな」

レンは得意げな顔をしてふわふわ浮かんでいたが、不意に目付きを鋭くした。とはいえタレ目で中性的な童顔だから怖くはない。

『さて、脱がせって言われたから脱がす……なんてバカ正直はつまんねぇよな。脱げよ、もち。ストリップショーだ、俺を興奮させるように色気出しながら脱ぎな』

「……いじわる」

そう言いながらも俺の胸はときめいていた。そのときめきの証拠として胸を見せるためにシャツのボタンを外す。

『もーちっ、俺を興奮させる気あるか? 色気出しながら脱げってば』

「え? ぁ、あぁ……うん」

まだシャツのボタンを外しているだけなのにそんなこと言われても困る。とりあえずシャツは脱いでしまおう。

『色気ねぇぞー、それはそれで無防備感あって萌えるけど』

「色気色気って……脱ぐまで待てよ」

『脱ぎ方で色気出せっつってんだけどな』

よく分からない。とりあえずズボンも脱いでしまおう。後は肌着とパンツと靴下だ、靴下は邪魔だから足で踏んで脱いでしまおう。

『靴下の使い方がもったいねぇなぁ』

「えぇ……?」

困惑しながらも脱衣を続ける。肌着とパンツか、肌着が先だな。

『二択で外すか? 普通』

「えっ……パンツ先なの?」

『パンイチは逆に色気ねぇよ』

肌着は後だったのか、レンの趣味は難しいな。とりあえずパンツ一枚では色気がないらしいのでパンツも脱ごう。

「脱いだけど……レン、興奮しなかったか?」

呆れた目で俺を見つめるレンに、分かりきっていることを聞きながら首を傾げた。

『色気は全く。萌え度はバカ高ぇな』

ふわりふわりとレンは俺の前に漂い、俺の肩をしっかりと掴んだ。

『可愛かったぞ』

肩を押されてベッドに仰向けになる。レンに押し倒されたのだ、半透明のレン越しに天井が見える。

「レン……ひぁんっ!」

ピンッと指先で乳首を弾かれて喘ぐ。そんな俺を見下ろすレンの綺麗な瞳は欲情に染まっていた。

「ぁ……レン、レン、俺で興奮してくれてる……嬉しいっ、レン、もっと……ゃんっ! んっ、んぁっ、ゃ、乳首、ばっかりぃ……!」

「相変わらず敏感な体しやがって。まずはここでイっとけ」

薄紅色の突起を指一本でぷるぷると揺らされ、喘ぎ、自然と身体が反っていく。早速絶頂が近付いてきたその時、着信音が鳴り響いた。
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