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教え子を家に置いて指輪を買いに行ってみた

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腹の中で暴れるバイブにより、まるで腸に別の生き物が入り込んでしまったかのような感覚を味わう。

「ぁ、おっ……ぅ、ううっ! うぅうぅぅーっ!」

リングギャグというらしい輪の口枷。口を閉じることと言葉を封じるその輪によって唾液が垂れ流しになる。枕に敷かれたタオルはもうぐしょ濡れだ、枕まで浸透しているかもしれない。

「ゔうっ! んぐぅっ、うゔぅうっ……!」

肘から下を黒革で包んでしまうアームバインダー、そこに繋がれた足枷、俺を海老反りの姿勢で拘束するそれらは頑丈で、俺がいくら暴れても俺の身体が痛むだけだった。

「イっ、んゔぅっ、んゔぅうんっ! え、ぅ、ぇえっ……!」

ピアスと一体化したローターも震えっぱなしで、もう乳首がおかしくなりそうだ。俺の唸り声をBGMにぐっすり眠っている担任にもはや殺意が湧く。

「ふぅっ、ふゔぅっ……ゔぅうっ、ぅうーっ!」

悲しい過去がありそうなのも、精神が不安定なのも、もう知るか。チャンスが来たらすぐに逃げ出して、二度と関わらないようにしよう。

「ん、ぐっ……ふぅっ、ぅううっ……」

でも、俺が逃げたせいで自殺でもしたらどうしよう?

「ん、ぅぅ、んんぅっ……!」

そんなの知らない。自殺でも何でも好きにすればいい、俺が傍に居たってきっと俺の死体が増えるだけだ。自分勝手に俺を弄んで、妊娠しろなんて無茶苦茶なことを言う彼にはもう付き合っていられない。

「んっ……ゔぅんっ!」

快感が強過ぎて気絶することも出来ないまま時間が過ぎ、日が落ちた頃だろうか、ぐっすり眠った担任が目を覚まして俺の拘束を外し、玩具の振動も止めた。

「……おはよう、ノゾム。気持ちよかった?」

「あ、ぅ……ぇ、んっ、せ……」

「ふふふ……可愛い。ノゾム、私は買い物に行ってくるよ。妊娠しやすくなる美味しいご飯作ってあげる」

精力がつくだとかならまだ分かるが、妊娠確率が上がるってどういうことだ? 単に栄養があるとか……いや、考えるな。どうせ担任の勝手な思い込みだろう。

「いい子でお留守番してるんだよ」

担任は俺の頭を撫でて部屋を出ていった。早速チャンスだ、今のうちに逃げよう。

「ふぅっ、ふぅ、ぅぅ……」

身体が動かない。まぁ、買い物ならしばらく猶予はあるだろうから深呼吸でもして──担任が部屋に戻ってきた。まさか勘付いたのか?

「ノゾム、ちょっと指を…………ありがとう。それじゃ、いってきます」

担任は俺の左手の薬指に巻尺を巻き、数字をメモした。用事はそれだけのようだ。

「いっふぇ、らしゃ……」

「わぁ……! ねぇ、すっごく新婚さんみたいだったよね今っ! えへへへへ……すぐに戻るからね、ノゾム」

「ん……」

ちゅっと軽いキスに応え、体力の回復を静かに待つ。回復したら挿入されたままのバイブを抜く。

「んっ、ぁ、ああっ……イボイボやばいっ、ひぃっ……イくっ、またイくっ、やだぁっ、もぉイくのいやぁああっ!」

イボに腸壁を引っ掻かれ、前立腺を何度も弾かれ、仰け反りながらも気合いで引き抜いた。ドロドロに汚れたバイブが足の間に転がる頃にはカエルのように情けなく開脚しており、腰を中心にビクビクと痙攣していた。

「はぁっ……はぁっ……は、ぁっ……」

立てるようになるまで待ち、鞭の痕が痛む身体に比喩としての鞭を打ち、水を飲みにキッチンに向かった。

「んっ、ん、ん…………はぁーっ! はぁ、はぁ……」

麦茶を一杯飲んだだけでビールを一気飲みしたオッサンみたいな反応をしてしまった。自分のカッコ悪さに落ち込むくらいの余裕は出たらしい。

「………………薬指」

担任は何故、左手の薬指の太さを測ったのだろうなんて……考えなくても分かる、指輪を買う気なのだ。

「……俺が、欲しいとか言ったから」

添い遂げる気がないどころか今から逃げるつもりの俺に指輪を贈るなんて担任はバカだ。指輪一つで気を変えて逃げる気をなくし始めている俺はもっとバカだ。

「違う…………今のカッコじゃ出れないから、まずは……シャワーとか」

誰にでもなく言い訳しながらシャワーを浴びて、下着は見つからなかったのでスウェットの上下だけを着た。

「指輪……」

幽霊屋敷でそれとなくセンパイにねだった。その後センパイは別の男に指輪を渡そうとしていて、それは阻止したけれど俺にはくれなかった。

「…………指輪、欲しいなぁ」

どうして俺はこんなに指輪を欲しがっているのだろう。いつからそんな乙女趣味になったのだろう。
すぐに気変わりする自分が嫌いだ、優柔不断な自分が嫌いだ、自分では何も考えられなくて流されやすくて誰にでも同情して簡単に快楽に負けて……! 俺は俺が、大嫌いだ。

「……せんせぇ」

自分が自分を嫌っているから、誰かに平均以上の愛を注いでもらわないと人並みになれない。

「逃げない……から……愛してて…………センパイみたいに捨てないで……早く帰ってきてよ、寂しいよぉっ……」

ダイニングの椅子の上で蹲り、膝に額を押し付けてすすり泣く。

「はぁーっ………………クソ野郎、大嫌いだ、クソ……」

たったの数十分一人になっただけでバカみたいに泣いて独り言を言い出す俺が俺は心の底から大っ嫌いだ。



担任が帰ってこない。ダイニングに来てすぐに時計を見たが、その頃から長針が一周している。ベッドから起き上がれもしなかった時間はどれくらいだっただろう、買い物とはそんなに時間がかかることだろうか?

「……電話かけてみようかな」

だが、担任に「寂しがり屋さんだね」なんて喜ばれるのも癪だ。そんな強がりで何度も連絡しない選択肢を選んできたが、もうそろそろ寂しさが限界を迎える。

「………………クソっ」

スマホを手に取り、担任に電話を──家の固定電話が鳴った。

「……出ていいのかな」

一人暮らしの担任の家の電話に泊まっているだけの俺が出て大丈夫だろうか? 教え子を泊めているって……担任、逮捕されないか?

「んー………………も、もしもし……えっと、根野です」

鼻をつまんで声を変え、電話に出る。電話先の人物は落ち着いた声をしていた。

「病院……? え、ぁ……はい、はい……えっ? 交通事故……?」

語られた内容に頭が真っ白になっていく。電話先の人物が俺のことを担任の親戚だと思っている不思議な点にばかり意識が向かったりしてしまい、話をよく聞けなかった。

「え……と、すぐ行きますっ。あ、病院の名前なんでしたっけ、えとっ、住所お願いします……」

固定電話の横のメモに住所をほとんどひらがなで書き記し、通話が切れたらそれを破って持ち、ふらふらと玄関に向かう。

「せんせ……ひかれ、たって…………なんで、なんでっ!」

グレーのスウェット姿のまま裸足でスニーカーを履き、鍵もかけずにマンションを出た。
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