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家に泊めた教え子のために仕事を休んでみた

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朝起きてダイニングへ向かうと担任がブリッジをしながら電話をかけていた。

「は……い。昨日、病院へ行った時に……もらって、しまった……みたいで、体調が……はい、すいません……」

苦しそうな声を出して誰かとの通話を終えると元気な笑顔で立ち上がり、俺を席に座らせて至って普通の朝食を出してくれた。

「根野セン……あの、さっきの何?」

「仮病のコツ。変な体勢で話すと病気で苦しいのかなって感じの声が出るから」

高校教師が仮病で休むとかとんでもないな。

「……この飯は」

「何も入れてないよ」

爽やかに微笑む担任の左手の包帯は昨日と変わっていないように見えるし、右手にも傷はない。

「油性ペンある?」

「うん? あるけど」

俺は油性ペンを使って担任が左手に巻いた包帯の上にニッコリと笑う顔のマークを描いた。

「ほどくなよ、いいな。風呂とかで包帯外す時は俺に言うこと、また何か描かせること、いいな」

「…………うん」

担任は嬉しそうに口角を上げて左手の包帯に頬擦りした。

「月乃宮……ぁ、ノゾム」

俺の名前を呼んで気恥しそうに目を逸らす。その赤らんだ顔はとても過去に誘拐監禁を起こした者とは思えない。

「ノゾム、心配してくれてありがとう。でも、僕は君のためならどんな怪我をしたっていいんだよ」

「……俺が嫌なんだよ。根野センだって、俺が手首切ってたら心配するだろ? しない……?」

「そりゃするよ! 可愛い君に怪我なんて似合わない、絶対にダメだよ」

昨日ポットで殴ったくせに。前に首を絞めたくせに。

「…………俺、センセにそう思ってる」

説得できるかどうかの瀬戸際だ、緊張で自然と手が震えてしまう。担任の左手に震えたままの手を重ね、指の間にそっと指を入れる。

「センセ……俺、センセに…………俺っ、カナイにもう怪我して欲しくない! カナイ……」

「…………先生って呼んで」

「え? ぁ……センセ。怪我しないで欲しい……」

根野ねの かないが本名だから下の名前で呼んでやれば喜ぶかと思ったが、俺の予想は真逆だったらしい。先生呼びを好むなんてやっぱり変態だな。

「ありがとう……ごめんね。心のどこかできっと君のこと疑ってたんだ……僕なんかが大切に思われてるわけないって。あなたは……私を、俺をっ、僕を愛してくれるんだね。嬉しい……!」

抱き締められながら思う。これで妙なものを食べさせられることはなくなりそうだが、担任と離れにくくなったな──と。手っ取り早く精液が欲しいからと昨日担任に頼ったのが失敗だったかもしれない。

「……あのさ、根野セン」

いずれ別れるべき人なのは理解している。でも、最近彼の歪みや病みが改善されてきている気がする。だから今見捨てたら担任が本当に壊れてしまう気がして、一人で大丈夫なようになるまでは傍に居なければと思ってしまう。
なんていいように言ってみたけれど、俺がバカで優柔不断なだけかな。

「何? ノゾム……あっ、待って、宅配便来ちゃった」

こんな朝早くからなんて珍しい。そう思いながら朝食の最後の一口を食べ終え、食器を流し台へ運ぶ。

「……んっ」

する、と腰を撫でられたが、担任は玄関で宅配便の応対中だ。見えない手の仕業だろう。

「ぁ、ん、んんっ……」

下着の中でぬち、ぬちっ、と湿った音がする。愛撫を後回しにして穴を拡げているのだろう。

「抱か、れろって……? 分かった、分かってるからっ……そんなっ、弄らないでぇっ……!」

穴がほぐれていたらセックスの時にまた「自分でほぐしました」と説明しなければならない。

「じ、自分でやるっ……やるから、そこいじんないで……お願い」

ただ拡げられるだけでは物足りない。俺はキッチンに座り込んで下を脱ぎ、腰を浮かせて自ら尻穴をほじくった。

「ぁ……は、ぁっ……ぁんっ! ん、んんっ……!」

弱い部分を探っていると見えない手に乳首をつねられる。

「ぃひぃいいんっ! ぁ、あっ、ぁあっ、ぁ……!」

反り返って冷蔵庫で頭を打つ。足先だけを床につけて腰を浮かし、仰け反る俺は手を使わない変則的なブリッジのような姿勢になってしまっている。

「ん、ゃああっ、そんなっ、ぎゅうぎゅうしないれっ、もっと先っぽかりかりしてぇ……ひっ、ぁ、あぁっ、あぁああっ!?」

太い指の分厚い爪が乳頭を細かく引っ掻く。細かい要望を聞いてくれる見えない手に更に期待してしまう。

「んっ、くぅぅっ……なぁっ、ゆーれい、さんっ、達……?」

乳頭を責められると何故か陰茎の先端がむずむずする。妙な連動を躾けられてしまったらしい。

「こっちの先っぽも、かりかりしてぇ……ぁひぃいいんっ!? 出るっ、でりゅ、でるぅぅうっ!」

亀頭を太い指の腹で擦られてすぐに射精する。精液はほとんど俺の腹や胸に──つまりシャツの上にかかってしまった。

「ただいま、ノゾム。ごめんね、ちょっと手間取っちゃって……」

「はっ、はっ……ぁ? せん、せ」

たった今受け取ったばかりだろうダンボール箱が床に落ちる。

「ち、ちがう……せんせ、ちがう、これは」

「……何が違うの? いいんだよ、別に。ほら、立って……ちゃんとベッドでしようね」

担任にしがみついて立ち上がり、ガクガクと震える足を心配されながら歩き、バスタオルが二枚も敷かれたベッドに横たわる。

「先生ちょっとお掃除してくるから、いい子で待っていてね」

「ごめんなさい…………あ、あのさ、根野セン」

「次からタオル敷くかお風呂場で……なぁに?」

「…………はやく、戻ってきて欲しい」

早く精液を搾って怪異をなだめないと、苛立った見えない手に陵辱されてしまう。度が過ぎれば殺される。それだけを理由にしたお願いだ、決して俺自身は寂しいなんて思っていないはずだ。

「……うんっ、すぐに戻るよ!」

「ばいばーい…………はぁっ、いつ見てもキモい部屋」

自分の写真に囲まれるくらいなら汚い倉庫で犯された方がマシかもな。そんなことを考えながらベッドの上に仰向けになり、腰の下に敷かれたタオルに恥ずかしさを覚えて腕で目を覆う。

「…………はぁ、なんなんだよ……このクソビッチ。少しくらい我慢しろよ……んっ、ぁ、あぁっ……!」

腸壁の疼きに耐えられず、足の間に手を伸ばす。一人になってすぐに自慰の続きを始めた自分を蔑み、罵っても性欲は萎えない。

「ひっ、ぁ、ぁあっ……? ん、んん……届かない……ぅあっ、んん……ちがう、もっと奥……」

「ノゾム、ただいま。いい子で待ってたみたいだね」

担任はベッド脇に玩具などが入ったダンボール箱を置き、俺の隣に座った。

「せんせっ……せんせぇ、届かない、俺の手届かないよっ……せんせのちょーだい? 気持ちいいとこぐりぐりして……」

「もう……昨日から少し変だよ? とってもえっちな子になって、どうしたの?」

「…………嫌い?」

「まさか、すごく好きだよ、大好き、とっても好き、愛してるよ」

連続する愛の言葉を聞いて昨日の思い出がフラッシュバックする。

「好き……? ぁ……す、好きだから離れるなんてっ、別れるなんて言わないで、好きなら一緒に居てよっ」

「ん? 言ってないよ、そんなこと。俺はずーっと君と一緒に居るよ?」

「ほんと? ほんとに? 俺と居ると辛いって、俺の顔見るのも嫌だって……」

「…………僕そんなこと一言も言ってないはずだけど、まさか他の男に言われたとかじゃないよね。ねぇ、不安になってるだけなんだろ? そうなんだよね?」

「好きならなんで指輪くれないの? 指輪欲しいのに……なんで、俺にくれないんだよっ」

「………………指輪、欲しかったの? あぁ……そうか、ごめんね、指輪を渡してないから不安になってしまったんだね。私が悪かったよ、明日買ってくるから……ね? 泣かないで」

優しい声に慰められて正気に戻り、俺を見つめている瞳が恐ろしい三白眼でないことにようやく気付く。

「……明日、指輪あげるからね。今日は我慢してくれる?」

「ゆび、わ」

知らない少年から奪い取っても、車に轢かれかけてまで拾っても、手に入れられなかった指輪が明日になればもらえる? 

「あぁ……泣かないで。泣かないでよノゾム……分かった、今日の晩までには…………まさか嬉しくて泣いてるの? ふふ……そうだね、ちょっと笑ってるもんね。なんだ、ふふふっ……可愛いねぇノゾム」

誕生も存在も俺のためだと囁かれて、センパイが一番俺を想ってくれているのだと思っていた。でも彼は俺に指輪をくれなかった。あの男の愛情は口先だけだったのだろうか。あんなにも愛してくれたのは、全て一瞬のことだった。

「せんせぇ……せんせっ、俺のこと、ずっと好きでいてくれる?」

「当たり前だよ」

「捨てないで、絶対捨てないで……お願い」

「ずっと一緒だったら。疑り深い子だね」

人肌恋しさで狂ってしまう。ほんの一日も他人の体温から離れられない。いつ帰ってくるかも分からないレンを待てない。

「…………じゃあ、早く抱いて」

あんな雑に捨てるくらいなら、あの幽霊屋敷で殺してくれたらよかったのに。
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