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幼馴染に腕枕してもらってみた

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頭を撫でられる心地良さに目を閉じる。目を開けなくてもレンがどんな笑顔を浮かべているのか分かる。

「可愛いなぁ……ほら、ちょっと起きろ。後片付けしないとな」

「ぁ……ごめん、毎回毎回汚してばっかりで」

「いいよ、それだけ気持ちよくなれてるってことだろ? でも今度からはゴムでも持ってきてくれると嬉しいな」

明日は絶対に買ってこよう。

「あらかた片付いたな。そろそろ消灯だ、ちょっと隠れとけ」

看護師が来る間だけベッドの下に隠れるのにももう慣れた。服につく埃を最小限にする隠れ方も編み出した。

「おっけー、いいぞ、もち」

ベッド下から這い出て埃を払い、ベッドに潜り込む。

「なぁ……もち、腕枕して欲しいな」

「う、うんっ! もちろん……!」

向かい合ったレンの頭が二の腕に乗る。激しくなっていく鼓動が聞こえていないか心配しながら、抱きついてきたレンに応えて俺もレンを抱き締める。

「わ、わ、ぁあ……!」

肩幅が狭い。流石にミチには勝るがレンは小柄だ。触れ合えば触れ合うほどに庇護欲に溢れる。

「レン……レンだ、レンが居る……俺、今レンに腕枕してる、レン抱っこしてる……! なにこれ、夢……?」

「おい……落ち着けよ。そんなにうるさくちゃお嫁さん眠れないぞ」

「お嫁さんんんっ……!? 嫁っ、よめ……? 嫁……俺の嫁、レン……!」

「混乱してんなぁ……昔から婚約してたのに、今更なんなんだよ。ばかもち……俺があっさりしてるみたいじゃん」

俺の鼓動を探るようにレンが胸に頭を押し付けてくる。

「俺もお前みたいに可愛く素直に愛情表現できたらよかったのに。できない……ごめんな」

「え……い、いやっ、いやいやいやっ……可愛いよ、めちゃくちゃ可愛い、これ以上可愛くなられたら俺の心臓破裂しちゃう」

「そうか? ならよかった。大好きだよ、もち…………ふふふっ、お前の心臓めちゃくちゃ騒いでるな。騒いじゃダメだぞー? もう夜なんだからな」

レンは俺の胸元にちゅっと唇を触れさせた。俺はエサを奪われた瞬間のモルモットのように静止してしまう。

「レンっ……!」

ときめきに耐え切れず処理落ちを起こし、しばらくたって再起動を果たした脳が一番初めに気付いたのは勃起だった。

「レン、なぁレン……太腿触っていいんだよな?」

前髪に顔を擦り付けて匂いを嗅ぐが、レンは無反応だ。

「レン? レンー?」

肩を揺すっても無反応、眠っているようだ。レンは一度眠ったら何をしても起きない。

「はぁ……寝ちゃったか。ごめん、レン……ちょっとだけ」

レンの髪の匂いを嗅ぎながら腕枕をしていない方の手で陰茎を扱く。

「はぁっ、はぁっ……レン、レン、好き、大好き、愛してるっ……」

普段レンが使っているものとは違う石鹸の匂いに、普段通りのレンの匂い。非日常に混じる普遍的なものに愛おしさを覚える。

「ほんとにごめん……ちょっとだけにするから」

片手で少し苦戦しながらレンの太腿を少し露出させ、そこに亀頭を押し付ける。へこへこと情けなく腰を揺らしながらティッシュを数枚取り、射精に備える。

「あぁ……太腿、レンのふとももぉっ……むちむちしてて、すべすべで……はぁっ、さいこぉ」

先端をティッシュで覆ってカリ首を指でなぞり、寒気が背骨を登る快感に足をピンと伸ばした。

「はぁっ……出る、出るっ、レン、レンの中にっ……!」

レンの髪の毛を少しだけ口に含み、レンに中出しする妄想をして精液を吐き出した。実際に精液を受け止めたティッシュを捨て、自分とレンの服を戻して何事もなかったかのように振る舞う。

「ふーっ……おやすみ、レン……」

朝、看護師が来るのは何時頃だろう。とりあえず四時半に起きれば大丈夫だろうからアラームをセットしておこう、レンはアラームでは絶対に起きないから迷惑にもならない。

「ん?」

俺の二の腕を枕にしているレンに不意に疑問が生まれる。

「レン……チューブは?」

身体中に刺さっていた管はどこに行ったんだ? 点滴すらもない。内臓がどうとか言っていたのに普通に食事を取っていたし──どういうことなんだ?

「聞けないしなぁ……」

眠っているレンには何も聞けない。俺は疑問を忘れないようにスマホにメモし、レンを抱き締めて眠った。



アラームが鳴る。真っ暗闇の中スマホを操作し、アラームを止めたら通知を確認。担任から大量の着信が来ていたが、無視。ミチからは現在地と現状を詳しく聞くメッセージが並んでいた。

『今はレンとのことにだけ集中したい』

とだけ返信し、一応センパイのも確認。相変わらず既読すらついていない。
俺はスマホを捨てるように置いてレンを抱き締めた。



看護師が来るのはベッドの下でやり過ごし、窓から差し込む陽光で明るくなっていく部屋でレンが目を覚ますのを待つ。
外的要因でレンが睡眠を妨げられることはない。どんな轟音の中だろうと眠り、どれだけ揺さぶっても目を覚まさない。小学生の頃、林間学校のキャンプファイヤー中に眠った時は大騒ぎになったな。

「可愛いなぁ…………レン」

いつか、本当に目を覚まさなくなる。レンの身体を蝕んでいるのが怪異ではなく、未知の病魔ならレンは助けられない。

「そうだ、お兄さんに連絡しないと……」

スマホを掴んだ瞬間に扉が開き、俺はベッドの下に潜った。しかし入ってきたのがレンの父親だと分かったので出ていった。

「お前、昨日から居たのか?」

「はい、学校終わったらすぐに」

「そうか……学生はいいな、病院に隠れておくなんて無茶な真似ができる。俺は……仕事が終わる頃には面会時間は過ぎているし、行きしなに来たらレンはこうやって眠っている。思うんだ、レンと二度と話せないんじゃないかって。もちろん休日なら昼間に来れるからそんなことにはならない、でも……!」

俺なんかに弱みを見せるほど、父親は不安に押し潰されそうになっている。彼の不安は俺にはどうしようもない、俺は黙ってレンを見つめていた。

「可愛い寝顔だよな。ところ構わず寝るから苦労させられた。これからも苦労をかけられたかったな。さて、そろそろ行くか。一度家に帰らなくても平気か?」

「あ、はい、そのままで……ありがとうございます」

「構わない。お前も俺の息子だし、高校は通り道だからな」

昨日と同じようにレンの父親に学校まで送られた。車を見送った俺は校門とは反対側に足を向けた。
昨日何十人もの同学年の前でディルドオナニーをした俺が、今日普通に登校したらどうなる? レンの父親には悪いが今日はサボろう。

「あー……どうしよ。病院に戻ったら……レン、心配するよな」

ずっと傍に居てやりたいし、レンもそうして欲しそうだった。けれどやはり俺の心配もするだろう。

「はぁ…………公園でブランコ乗ってるリストラされたおっさんって、こんな気分なのかな」

どうやって時間を潰そう。制服じゃ目立つし家に帰ろうか?

「ぁ……センパイのとこ行こ」

センパイには音信不通の件に関して言いたいことがあるし、従兄とも話したい。通勤ラッシュを過ぎて空いた電車を乗り継ぎ、センパイの家に向かった。

「相変わらず空気悪いな……」

工場地帯の中心近く、センパイの家。インターホンを鳴らしても誰も居なかったので工場の方から回ろうとすると従業員らしき男性に見つかった。

「ちょっとちょっと、何君、何してんの」

「あ……あの、俺……國行センパイとお兄さんに用事があるんですけど」

「坊ちゃん達なら出かけてるよ」

そうだ、従兄はともかくセンパイは学校に居るかもしれない。昨日は休んでいたようだが、受験生がそう何日も休むのはよくない。

「そうですか……ありがとうございます、失礼します」

従兄に電話をかけながら工場地帯を抜けて駅へと戻る。

「ぅー…………出ない」

病院で出会った鈴の音のする幽霊、レンのこと、その二つを早く知らせたいのに──メッセージで送ろうかと文章に悩む俺の目は大男を見つけた。

「センパイ……?」

褐色肌の大男は高級ブランドの服に身を包み、駅前広場の柵に腰掛け、その膝に金髪の少年を座らせていた。

「何、あれ……誰?」

俺の特等席に座っている汚い染髪の少年、その耳や鼻にはピアスが伺える。ネックレスや指輪などシルバーアクセサリーも大量に着けたチャラい奴だ、センパイの好みだろう。
俺は駆け出したくなる衝動を抑え、広場の木の影に隠れながら二人に近付いて会話を盗み聞きした。

「…………それで? 今からどうだ?」

「どーしよっかなー、俺今彼氏いるんだよねー」

バカっぽい間延びした話し方だ。なんでセンパイはあんな奴を膝に乗せてやってるんだ。

「……俺に乗り換えないか?」

「んー……クニちゃん正直彼氏よりいい男なんだよねー、迷うなー」

「…………これはお近付きの印に」

「え? 何何? えっ……クロハの新作じゃん! マジ!? これくれんの? うっそマジで今すぐ彼氏と別れるクニちゃんと付き合う!」

センパイが少年に与えたものが気になって木の影から身を乗り出す。

「……今つけてやる」

「やったぁ! ん……? 何見てんだよお前」

センパイの後ろから近付いていくと少年に先に気付かれた。少年の視線を追ったセンパイがこちらを向き、三白眼が見開かれて更に恐ろしくなる。

「ゆび、わ……? なんで、なんでお前がつけるんだよっ!」

少年は俺を睨みながらセンパイの指がつまんだ指輪をはめた。俺は衝動を抑えることが出来ず、少年に掴みかかった。

「降りろよっ! どけ! ここ俺のっ! 俺のぉっ……センパイの膝は俺の! 指輪も返せ!」

引きずり下ろした少年の腹に跨り、指輪を奪うため少年を押さえつける俺を止めたのは、他でもないセンパイだった。
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