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後輩彼氏はすぐに居なくなる

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息苦しい。

「……月乃宮」

二の腕が、痛い。

「……どこに行ってた」

肋骨が、軋む。

「…………お前だけは、俺の傍から消えないでくれ」

抱き潰される。

「せ、せんぱ……苦し、ぃ、たいっ……」

太い腕に抱き締められて潰されそうだ、どうしてこんなことになっているんだ? 俺はただ、ミチが心配で見に行って、彼を駅まで送って帰ってきただけなのに。

「……母さんも、兄ちゃんも、消えたんだ。離れていった。お前もなのか? 嫌だ、嫌だ……月乃宮、傍に居てくれ」

あぁ、そうか……またトラウマを刺激してしまったのか。
起きたら隣で寝ていた人が居ない。普通なら先に目を覚ましたのだろうと思うだけのことが、センパイには痛いんだ。自分を捨てて逃げた母親や、叔父に売られて滅多に会えなくなった従兄に重なるんだ。

「ごめんなさい、センパイ……センパイよく寝てたから」

センパイは何も言わずにその場に膝立ちになり、俺を壁に押し付けて服を脱がそうとする。

「ちょ、ちょっとセンパイっ……!」

ジュースを落としてセンパイの手を掴む。潤んだ視線は床に落ちたジュースに向いている。

「…………ジュース? 買いに行っていたのか?」

冷たいだろうペットボトルを握り、センパイは少しずつ落ち着きを取り戻した。

「……そうか。ただ、ジュースを買いに行っただけ…………そんなので俺は……情けないな」

「そんな、センパイ……何も言わずに出てった俺も悪かったんですよ」

「…………ジュースを買いに行くくらい俺でも何も言わない。悪かったな。二本ある……片方は俺のだな?」

「ぁ、は、はい」

二本買っておいてよかった。いや、ミチが炭酸が苦手でよかった……と言うべきか。

「……ありがとう」

「あっ、ちょっ、センパイ! それ今落としてっ……!」

センパイが蓋を開けた瞬間、落としてしまったばかりの炭酸ジュースは噴水のようになって俺達を濡らした。

「せ、せんぱい……」

ジュースの匂いが漂う。センパイは俯いている。

「國行センパイ……?」

怒ったのだろうか。顔を覗き込もうとした瞬間、センパイは吹き出した。

「……ふっ、ははっ! ははははっ! そうだな、落としたばかりだった! 全く……馬鹿な真似をした、もったいない。びしょ濡れだな、ベタベタして気持ち悪い。本っ当に……ふふ、俺は、馬鹿だな」

常に無表情で寡黙なセンパイ。慣れてくれば何とか分かる程度の表情変化はあっても、こんな満面の笑顔見たことがない。

「…………ん、気が抜けてる。ただの甘い水だ、まずいな」

ペットボトルに半分程度残っていたジュースを飲み干し、ぐしょ濡れの前髪をかき上げて爽やかに笑う。なんだろう、夏って感じだ。

「センパイ、お風呂入りましょ」

「……あぁ、お前の身体は俺が洗おう」

空のペットボトルを床に置いたセンパイはぐしょ濡れのシャツの上から俺の身体をまさぐり、にぃと笑う。その笑顔もいつもより分かりやすい。

「センパイのえっち……じゃ、俺がセンパイの身体洗いますよ。この巨乳を!」

報復としてセンパイの胸を鷲掴みにする。濡れた服の不快な感触が楽しい。

「…………巨乳呼ばわりは流石に気持ち悪い」

「えっ、ぁ、すいません」

「………………なんてな。好きに呼べ」

「ふぇっ? ぁ、はいっ! 分かりましたわがままボディセンパイ!」

無言で睨まれた。
変な空気感のまま廊下を片付けることなく二人で浴室へ向かう。

「……俺はそんなに変わった体型か?」

「バッキバキに鍛えてるじゃないですか。そのはち切れんばかりの筋肉の色気は凄まじいですよ」

「…………きんにくの、いろけ」

センパイ、たまにカタコトになるな。俺のせいか?

「センパイ、どれかって言うとセクシー系だと思いますよ。褐色の肌とか、この筋肉とか、ちょっと目つき悪いとこも」

「……どれか? 他に何系がある?」

「え? えーっと、カワイイ系とかキレイ系とかカッコイイ系とか?」

「…………お前はカワイイ系だな。俺はカッコイイ系がいい」

「いいって言われても……いや俺カワイイ系じゃないですって! 可愛くないですもん」

可愛いと言うのはレンやミチのような中性的な美少年のことを言うのだ、俺は違う。

「……可愛いよ」

「あぅ……ずるい、かっこいい」

「…………俺はカッコイイ系だな?」

「溢れるえろすぅ……どっからどう見てもセクシー系です……」

センパイは不服そうな顔をしているが、今俺が悩殺されたのは爽やかな笑顔と色気の謎の同居のせいだ。

「……服、このまま洗濯機に入れていいか?」

「別にいいですよ。風呂入ってる間に回しときましょうか」

ジュースの匂いがする服を洗濯機に放り込み、洗剤を少々、スイッチオン。

「…………お前、洗濯とか出来るんだな」

「家事は一通り。っていうか洗濯って……今のは洗剤入れただけですよ。ほら、早く入りましょ。いくら夏でも風邪引いちゃいます」

センパイを浴室に押し込み、いつも広々使っている浴室を初めて狭いと思った。

「……広いな」

「まぁセンパイのとこよりは」

「…………改めて考えると、お前の家はそこそこな金持ちだな? 女手一つなんだろ?」

「父さんの保険金がすごかったらしいですよ。母さんも結構いい仕事してるみたいですけどね。っていうか、金持ちとかセンパイに言われたくないですよ。いっつもブランド物着てモンバ乗ってるくせに」

センパイはきょとんと首を傾げる。

「……ブランド物なんか着ていたか? もんば? って何だ?」

「あぁ、すいません。モンスターバイク……えっ、ブランド物でしょ? パチモンですか?」

センパイが数十万の上着を着ていたのを見て驚愕したのは記憶に新しい。

「…………俺の服はサイズがなかなか見つからなくてな、身長だけでなく筋肉のせいで合う服がなくて……自分で胸囲だとかを測って送ると、兄ちゃんが適当に見つけて送ってきてくれるんだ」

特注品の可能性出てきたな。洗濯機に放り込んで大丈夫だったのか? アレ。

「……ブランド物なのか? 高いのか? 兄ちゃんは安物だから気にするなって…………あのバイクも、中古品を洗っただけだと、安物だと」

「いや、あれどう見ても三桁いきますよ……カスタム入ってるし、三百超えは確実」

「……………………俺は、カニやマグロを獲らなければならない」

部屋にある小物だとかも高そうな物が多かった。本当に一つも値段を知らなかったのか、調べもしなかったのか、カタログとか読まないのか……色々と驚きだ。

「……いや、待て、待て月乃宮。兄ちゃんは毎月何十万も仕送りをくれるんだぞ? ほぼ毎月服も何着かくれる……兄ちゃん、月収いくらだ?」

「俺が知ってるわけないじゃないですか……センパイ聞いてないんですか?」

「…………聞いてないからお前に聞いたんだ。いくらだと思う?」

「進路の話で職業図鑑見る機会あって、お兄さん思い出してちょっとじっくり見たんですけど、社長秘書、年収四百万くらいでしたよ? 月収だと三十万と……三、四万?」

「……それじゃ俺の月収より下だ」

仕送りを月収呼ばわりするな。

「いい会社なら上がるんじゃないですかね、どこに勤めてるかは聞いてますか?」

「…………製薬会社? らしい」

従兄の見た目で薬関係って聞くと麻薬が思い浮かぶけど、そんな訳はない。オカルト関係の収入が別なら月百万はくだらないかもしれない、かなり危険な仕事だし。

「まぁ……今日帰ったら聞いてみればいいんじゃないですか?」

「………………泊めてくれないのか、明日休みなのに」

泊まっていく気だったのか。

「無理ですよ、母さん帰ってきますし」

「……あとで手土産を買ってこよう、それでいいだろ? 卒業後は一緒に暮らすんだからな」

センパイは俺の左手を握り、薬指にそっと口付けた。

「…………指輪はもう少し待ってくれ」

「ゆ、指輪? 指輪って……結婚指輪ですか?」

センパイはそうに決まっているだろうと言いたげな瞳で俺を見つめ、微笑み、抱き寄せた。

「……愛してる」

「ゃ、あの、でも……センパイ」

「…………嫌なのか」

肩を掴まれ、じっと睨まれる。慣れたつもりだったが三白眼は恐ろしく、目を逸らしてしまう。

「そんな先の話されても」

「……今の話だ、今お前は俺をどう思ってる? 俺はお前と一緒に生きたい、お前は?」

「だ、だからっ、そんな先のこと」

「………………お前がたとえ嫌がっていようと俺はお前を離さない。同じ気持ちになった方が楽だぞ?」

浴室用の椅子に腰を下ろしたセンパイは俺を引っ張り、膝の上に座らせた。

「……髪に甘い匂いが染み付いたな」

センパイは曇った鏡にシャワーで湯をかけた。水滴で歪んだ像は俺達の形をしている、センパイは俺の髪の匂いを嗅ぎながら鏡越しに俺を射抜くような目で見つめている。

「…………やはり、勝手に俺から離れたことは咎めるべきだな。お前は可愛いんだ、一人で居ればすぐ襲われる」

「そ、そんなことっ……」

自分の真っ赤な顔を見たくなくて俯いたが、センパイの左手に顎を掴まれて鏡を見させられる。右手は腰に巻き付き、いつの間にか硬く膨らんでいた巨根が尻に擦り付けられた。

「……襲われるんだよ、こんなふうにな」

「え? ゃ、待って、いきなりっ、ぃっ、ぁあああーっ!?」

ほぐすことなく巨根をねじ込まれた。だが、数時間前まで抱かれ、寝ている間もバイブを突っ込まれていた穴はほぐれ切っていて、簡単に飲み込んでしまう。

「ん、ぅうっ……ふと、いっ、ひぃんっ……ん、んんっ……ぁ、あっ、ごりごり、してっ、イくぅぅっ……!」

「…………そして襲われたお前はそうやって簡単にイって、相手を勘違いさせて粘着されるんだ。あの教師のようにな」

センパイは俺の腰を動かし、結腸の入口に亀頭をぐりぐりと擦り付けさせる。そうされると俺の腹はきゅんきゅんと疼いてセンパイを欲しがってしまう。

「……自分で見てみろ、その情けない雌の顔を」

だらしなくとろけた顔だ。口を半開きにして舌を突き出し、へっへっと犬のように浅い呼吸を繰り返し、とろけた瞳をどこかに向けている。

「…………お前の身体はもう男に抱かれるためのものに変わっている。どこもかしこも、男に触れられることを悦ぶ」

顎を支えるのをやめた太い指が乳首を摘む。

「……女の滑らかな指先に触れられるより、無骨な指に潰される方が好きだろ?」

「ひやぁああんっ! ぁっ、ゃあっ! ちくびっ、つぶれりゅっ……ぅあっ! ぁああっ、きもちぃっ、ちくび、ちくびすきぃっ! もっと、ぐりぐりぃっ!」

腰を支えるのをやめた手が陰茎を握る。

「…………女の柔らかい手に包まれるより、骨張った手に掴まれる方が好きだろ?」

「ん、ぁっ! あぁっ! ぁ、しこしこっ、しこしこもすきぃっ! ぁあーっ、ぁ、はぁっ、きもちぃ、すきっ、きもちぃいっ!」

陰茎を扱いてくれていた手が不意に下腹を押さえる。

「…………お前の身体はすっかり男好きだ。だが、この奥深くまでお前を犯せるのは俺だけだろう?」

極太の肉棒が結腸へ無理矢理入ってくる。

「ぁ、おっ……ぉ、んんっ! ん、ぁああっ! は、ぁんっ、きた、奥きたぁっ!」

「……他の誰に襲われたってお前は満足なんて出来やしない。だから、俺の傍から離れるな。お前は俺だけのものなんだ、いいな?」

「はひっ……しぇんぱぁいっ、おく、おくぐぽぐぽしてぇ……?」

「…………あぁ、腹の奥へ刻んでやるさ。俺のものだとな」

センパイは俺に挿入したまま立ち上がって俺の足を浮かし、手を鏡につけさせた。

「……俺のものになっている自分の顔をよく見て、一人で出歩くような真似をしないよう自覚を深めるんだな」

「ひゃ、いっ……ぁはっ、だらしないかおぉ……ぉんっ!? んっ、ぅっ、ぁあっ! ずぼずぼっ、ずぼずぼきたぁっ! ぁひんっ! ひぃいんっ! きもぢっ、ぎもぢぃいっ!」

唾液を垂らして尻穴の掘削を悦ぶ顔を間近で見て、俺の淫乱はもう治らないのだと深く理解した。
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