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起きたら後輩彼氏が居なくなってた

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目を覚ますとベッドの上に居た。マットレスだけの簡素なベッドにはセンパイも横たわっており、俺の腰の下にはバスタオルが二つ折りにして敷かれていた。

「ぁ、んんっ……ん、ぁ……」

尻穴はぶるぶると震える歪な棒で満たされていた。四つん這いになり、担任からもらったそのバイブの持ち手を握る。

「ん、んんっ……んっ、ぁああっ!」

その棒を抜くと同時に絶頂を迎え、ガクガクと足腰を震わせる。腕の力が抜けて猫が伸びをするような姿勢になってしまった。

「はぁ、はぁっ……」

栓を失った尻穴からどろどろと大量の精液が溢れてくる。太腿を伝う生温い精液の量は一発分ではもちろんない、センパイは俺が眠っている間に何発も出したようだ。

「ぁ、は……おふ、ろ……」

敷かれていたバスタオルを腰に巻き、よろよろと立ち上がって部屋を出た。

「はぁ……ふぅ…………ぁ、絆創膏……」

シャワーヘッドを壁にかけたまま湯を出し、頭から浴びていると絆創膏が剥がれていったのに気付く。粘つく乳輪を気にしていると水滴が乳首に触れ始める。

「ん、ふっ……」

耳に水滴が落ちる。胸を水滴が打つ。太腿をなぞって垂れていく。

「はぁっ、はぁっ……ぁ、ん、んんっ……」

シャワーを浴びるだけで心地いい。目を閉じて快楽にしばらく酔い、慣れてきたら湯を止めてボディソープを泡立てた。もちろん身体を洗うのにも喘ぎ声は漏れた、垂れてくる精液を掻き出す時なんて絶頂した。ついさっきまで寝ていたのに風呂に入っただけでクタクタだ。

「みず……」

バスタオルを体に巻いてびしょ濡れの身体で脱衣所を出て、キッチンへ。氷を浮かべた麦茶を飲んで一息ついたら部屋に戻って服を着た。

「センパイ……寝てる?」

ぐっすりと眠っているセンパイにタオルケットをかけるため、一度部屋を出て取りに行った。

「本当に……綺麗な褐色」

タオルケットをかける前にはだけたシャツを直そうと手を伸ばす。くっきりと割れた腹筋の溝をなぞり、シャツをめくって屈強な身体を眺める。

「すごい……」

ため息をつき、とてもではないが手に収まりきらない胸筋を鷲掴みにする。脱力しているセンパイの筋肉は見た目に反して柔らかい。

「おぉ…………はっ、何してんだ俺」

胸を揉みしだいて感嘆している場合ではない。正気に戻った俺はセンパイのシャツを下ろし、タオルケットをかけた。たった今まで揉んでいた胸と同じ色の頬を撫で、淡い色の唇に唇を触れさせた。

「本当に……何してんだろ、俺」

俺はこの先、どうしたいんだろう。どうすればいいんだろう。
振り向いてくれないレンを想い続けるのは苦しい。
何をするか分からない担任の機嫌を取り続けるのも苦しい。
一途に俺だけを想ってくれるミチを傷付け続けるのも苦しい。
想像以上の愛情を向けてくれるセンパイを裏切るのも苦しい。

「なんで……こんなことに」

レンのことは諦めるしかないだろう、振り向いてくれないのだから。
担任とは縁を切るべきだ、異常者からは離れるべきなんだ、けど俺が離れたらあの人は泣いてしまう。
ミチかセンパイか、どちらかを選ぶべきなんだ。でもどちらを選んでもどちらかを傷付けるし、センパイに至っては危害を加えてくる可能性も捨てきれない。
いっそのことハスミンを選ぶか? 彼女を紹介して黒髪に戻してしまえば母からの風当たりは緩むだろう。

「はぁーっ……とりあえず、ミチに電話かメッセを……」

判断を先送りにしてばかりだ。首塚にさえ手を出さなければと後悔してばかりだ。

「出ないな……」

ミチは電話に出ない。もう家に帰っただろうか、今日も蔑ろにしてしまったことを謝りたいのだが……いっそもっと冷たくして向こうから振ってもらおうか? いや、無理だ、ミチの恋慕は並ではないし、可哀想なあの子をこれ以上傷付けたくない。

「レンに電話……こっちも出ないのかよ」

隣だし、ちょっと聞いてこようか。センパイはぐっすり眠っているし、五分程度留守にするくらい平気だろう。
家を出て隣家のインターホンを鳴らす。誰も出ないので合鍵を使って侵入。二階のレンの部屋へ行くと、ぐっすりと眠る可愛い人が居た。

「こっちも寝てんのか……ん?」

綺麗な茶髪に鼓動が激しくなっていくのを感じつつ、薄手の毛布の盛り上がり方がおかしいのに気付いてめくってみる。

「ミチ? なんで……何して」

ミチはあの可愛い服を着替えて、髪もほどいて、レンの腕を枕に眠っていた。

「え……? 何、浮気? え……?」

俺の好きな人の腕の中で俺の彼氏が眠っている。何なんだこの状況、とりあえず二人とも可愛すぎるから写真撮っとこ。

「うわ、可愛い……可愛いが二つ……何だこれ」

ミチの前髪は可愛い目元を隠している。眠っているから目は閉じているだろうけど、せっかくだからめくって写真を撮ろうかな。

「……っ、けほっ、ぇほっ、げほっ……」

突然レンが咳をし出した。スマホをポケットに入れ、慌てて背をさする。幼い頃頼りにしていた背はこんなにも小さく弱々しい背だったのか。

「レン……? 大丈夫か? 風邪か?」

レンは一度寝たら何をしても起こせない。分かっていても話しかけてしまう。

「ぃっ……た、いっ……」

「レン?」

様子がおかしい。みぞおちの辺りを引っ掻いている。顔に脂汗が滲んでいる。

「……っ、たいっ! 痛いっ、痛、ぁっ……ゃ、めっ……痛いっ、やめてっ、痛いぃっ……!」

「レン? レンっ、どうしたんだ、レン!」

腹部を引っ掻き始めた。その力は強く、以前から似たようなことをしているらしく、めくれたシャツから覗く白い肌には赤い蚯蚓脹れが無数にあった。

「や、やめろっ、血が出るだろ!」

これ以上引っ掻いたら皮膚が剥けてしまう。そう判断した俺はレンの手を押さえた。

「痛いっ、痛い痛いっ、痛いぃっ! ぃやぁあっ!」

「ね、寝てるんだよな……? なんだよ、どこが痛いんだよ、腹か……?」

痛々しく赤くなった腹に視線を落とした次の瞬間、腹が内側から膨れた。まるで中に何かが住んでいるかのようにボコボコと小さな凸が蠢く。妊婦よりも激しい……SF映画でクリーチャーの苗床にされた人間と言ったところだろうか。

「な、何っ、なんだよこれ……レン、レン起きろ! これ説明しろ!」

肩を揺さぶって起こそうとするも、レンは苦しそうな声を漏らしたり咳き込んだりするだけだ。

「ん、ぅ……如月くん? また発作? 大丈夫……え? つ、つつっ、月乃宮くんっ!? な、なな、なんで!」

「こっちのセリフだよ! なんでミチがレンと……って言うか、レンどうしたんだよ! なんでこんな咳き込んで……」

いや、それよりも腹だ、腹の中に何かが──あれ? 何もない。

「き、きき、如月くん……今日体調悪いみたいで。でも家に誰も居ないから心配で、咳が出て寝付けなくて、眠りたそうで……だ、だから、背中をさすってあげてたんだけど……いつの間にか僕も寝ちゃってたんだ」

「体調悪いって……今、腹が……」

「腹? おなか? どうしたの?」

ミチはレンの腹が蠢いたところを見ていないのか。まさか俺の幻覚か? 少し前、俺に取り憑いた手首の怪異を半透明のレンが食う白昼夢を見たばかりだし……俺がおかしくなってきているだけかもしれない。

「いや…………なんでもない」

「き、きき、君はどうしてここに? ま、ままっ、まままさか如月くんと浮気に……!」

「ちげぇよ、んなわけねぇだろ。家から追い出したの謝りたくて……あと、ちゃんと家着いたかも心配で、電話かけたけどお前もレンも出ねぇし……だから、レンにお前がいつ家に出たたかだけでも聞いとこうと思って」

「ぼ、ぼぼっ、ぼぼぼっ、僕のこと聞きに来たの!? 僕のこと心配してくれたの!? 嬉しい! 嬉しいよぉっ……!」

ミチと話しながらレンの背をさするうち、レンの状態が落ち着いてきた。静かな寝息が戻ったレンの汗を軽く拭い、ミチの手を引いてベッドから出させた。

「なぁ……レン、風邪か?」

「ぁ、う、うん……くく、詳しくは聞いてないけど、そんな感じ」

ならやはり先程の腹がボコボコと蠢いていたのは幻覚か。風邪の症状でそんなもの聞いたことがない。

「そうか……ミチ、電車で来たんだよな? 帰るなら駅まで送るけど、どうする? まだここ居るか?」

「う、うぅん……如月は心配だけど、そそ、そろそろ帰らないとまずいよ……起こしてくれてありがとう」

俺が起こしたかったのはレンなのだが、まぁいいか。

「よし、じゃ、行こう」

荷物を持って靴を履いたミチと手を繋ぎ、駅までの道のりをゆっくりと歩く。

「ねぇ……つ、月乃宮くん。きき、君さ、形州に何されたの?」

「え……ぁー…………普通にセックスだけど」

「つ、つつっ、つつつ月乃宮君は僕の彼氏なんだからね!? もう手を出さないでよっ……て、形州に言ったら聞いてくれるかなぁ」

とりあえず殴られるだろうな。

「ミチ……頬骨折られる覚悟あるか?」

「あっ、ぁあっ、あるよ! それで形州が月乃宮君を諦めてくれるなら骨の一本や二百六本……!」

「二百六……全部じゃなかったかそれ」

「き、ききっ、君のためなら死んでもいい! ぁ、で、ででも僕が死んだら君は形州にいいように……ぁぅぅ」

ミチに嫌われるのは不可能だとよく分かった。

「なぁ、もしさ……もしもだぞ? いいか、もしもだからな? もし、俺が別れたいって言ったら」

「君の家の前で首切って死んでやる」

長い前髪の隙間から覗くつぶらな瞳は真っ直ぐに俺を見つめている。

「ほ、本気……だからね。君と付き合えないくらいなら死んだ方がマシだもん……」

「そう、か」

「ふ、ふふ、えへへへへ……月乃宮くんは冷たくなりきれない人だから、僕のこと絶対捨てられないよっ。捨てたら……君のトラウマになってやるから」

「もしも、だよ。別れるとか捨てるとか、そんな気ない。ごめんな」

もう駅に着いてしまった。ミチが切符を買う間、俺は自販機で炭酸ジュースを二本買った。

「ミチ、やるよ」

「ぁ……ご、ごごめん、僕……炭酸ダメなんだ」

ミチを連れて自販機に行き、ミチが選んだいちごミルクを買ってやった。

「あっ、ぁあっ、ありがとう!」

「いいよ、彼氏ならジュースくらい奢らなきゃな。今日はいいデート出来なかったし……本当、ごめんな。途中で追い出したりしちゃってさ。今度また何か美味いもん食いに行こう」

「えへっ、えへへへ……いいよぉ、そんな……僕は君と居るだけで全部いいんだ」

紙パックのいちごミルクをストローで吸いながら満面の笑みを浮かべるミチ、その顎に手を添え、ストローを下げさせ、唇を重ねた。

「外だから……ちょっとだけな。じゃ、また……明後日かな? 元気でな」

真っ赤になったミチはパクパクと口を開け、こくこくと頷く。

「ば、ぱばっ、ばば、ば、ばいばい!」

「あぁ、ばいばーい!」

大きく手を振りあって別れ、炭酸ジュースを飲みながら帰宅。玄関の鍵を閉めて数歩歩き、走ってきたセンパイに抱き締められた。
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