上 下
86 / 531

彼氏の上半身にたっぷり筆責めしてみた

しおりを挟む
堪えきれないといった様子で聞こえてきたミチの笑い声に嫌な予感を覚える。サディストの一面が顔を出しているのではないか……と、身体が期待と恐怖に震え上がる。

「ミ、ミチ……?」

「み、見ないでなんて言って……月乃宮くん、見られるの興奮してるくせに」

筆の持ち手側、硬く冷たいプラスチックの先端が裏筋を一瞬つついた。

「ひぅっ……!」

見えないからこそ妄想と興奮が加速する。今、俺のどこにも触れていないミチはどこに居るのだろう。

「……ここ、すっごく大きくなってるよ。血管浮いてる……ビクビクしてるよ。どんどん透明の溢れてくるよ、とろとろのに包まれてテカテカしてる」

加速する妄想はミチの位置に留まらない。詳細に説明されたせいで自分の性器の様子を瞼の裏に浮かべてしまう。グロテスクとも言える醜いそれの想像なんてしたくないのに、濡れたそれの様子が暗闇に描き出されてしまう。

「出てきてるとこ……先っちょの穴、ぱくぱくしてるよ。ここから出したい? 月乃宮くん……出したいの?」

説明しないで、観察しないで、そう頼みたい。けれど俺は羞恥心よりも本能に従ってしまう。

「……し、たいっ……出したいっ、出したいよミチっ、出させて……!」

何にも触れられていない陰茎が焦れったくて仕方ない。腰を振り、ぶるぶると陰茎を揺らし、はしたなくねだる。
そんな俺にミチは──

「ダメ」

──無慈悲に告げた。

「そ、んなぁっ……」

「筆でしていくから、それで気持ちよくなって欲しいんだ」

筆で絶頂させてやるということか? なんだ……射精させてもらえないのかと思った。

「……なんか、面白いね。月乃宮君……目隠してるのに表情が分かるよ」

平筆が唇を撫でる。輪郭を描くように、紅でも塗っているかのように、丁寧に撫でていく。

「月乃宮君……口元綺麗だよね。綺麗な唇、こんなのすぐにキスしたくなっちゃう」

キスしたいのかと気付き、くすぐったさを堪えて口を薄く開ける。

「気持ちいいことされる度にぱくぱくしてさ、あーっておっきく開いたり、ぅんって閉じたり食いしばったり……しゃぶって」

口内に侵入したのは舌ではなく指だった。おそらく左手の人差し指と中指だ。キスしたいのだろうなんて予想は俺の自惚れだったらしい。

「んっ……ん、ん……」

「……僕の指なんて美味しくないのに、赤ちゃんみたいにちゅーちゅーして……ふふっ、可愛い。月乃宮君好き、大好き、好きだよ……」

人差し指と中指をちゅうちゅうと吸い、舌ピアスを押し付けるように舐め回す。そうしているとようやくミチの指が動いた、二本の指でピアスを挟み、くりくりと優しく弄っている。

「ん、ちゅ……んんっ、ぅ……!」

「ベロにこんな大きな穴空けちゃって……痛くないの? もう塞がった? 空けてすぐは食べ物とか滲みたよね……よしよし」

ピアスホールの縁を指の腹で優しく撫でられる。指による舌への丁寧な愛撫が気持ちよくて、俺は機嫌を良くして更に二本の指を吸う。

「…………えへへ」

頬にミチの唇が触れた。ふにっと柔らかいそれに庇護欲を煽られる。

「縛られてくれて、目隠しもされてくれて……好き勝手していいって言ってくれたんだ。僕っ……月乃宮君に愛されてるよね? 嬉しい……!」

反対の頬に平筆が触れる。左手で口内を愛撫して、右手で筆を持ち、唇は可愛い言葉を紡いで──されるがままの俺と違ってミチは忙しいな。

「やっぱり視線がないとやりやすいね。どんな顔で感じてくれてるかは気になるけど、月乃宮くん気持ちいいとヘラヘラするから分かりやすいし……えへへっ」

「ん、ぅぅ……?」

「ヘラヘラしてるよ? ほっぺたも真っ赤……暑くない? 可愛いよ、リンゴみたい。そそ、そんなに美味しそうに赤くしてたら……た、たた、食べちゃうからっ!」

紅潮して僅かに敏感になった左頬を筆でくすぐられ、右頬をミチに吸われる。俺の頬をはむっと咥え、ちゅうーっと吸う様子はぜひ見たかった、きっと小動物らしい可愛さがあっただろう。

「ん……ぷはっ、えへへ……ご、ごめんね、ほっぺたびちゃびちゃだ」

右頬を濡らした唾液を舐め取り、ミチは俺の口内から指を抜き筆も離した。

「ちゃんと気持ちよくしてあげるからねっ」

比較的太めの筆が鎖骨を撫で、僅かな胸筋の谷間をなぞる。みぞおちで曲がって左胸の下をつぅーっと撫でられていく。

「す、すごいね月乃宮くんっ……左の乳首、右より膨らんでるよ」

「へ? い、言うなよそんなことぉっ……!」

「だって可愛いだもん」

ふーっと息を吹きかけられて左乳首が硬度を増す。ピンと勃起している感覚が左胸だけにある、右もしているとは思うが左ほどではないのだろう。

「可愛いピンク色の乳首がね、ちょっと赤み増してね、ぴんぴんに尖ってるんだよ? 可愛いよ」

「言うなぁっ……!」

筆の先端が胸の側面を撫でる。腋にも近いそこはくすぐったくて、俺は無意識のうちに背を反らす。

「普通の男の子の乳首……こんなふうに大きくは膨らまないよ。可愛い……あのね、乳輪って分かる? かたーくなった乳首の周りのピンク色のところね」

言及されると意識してしまい、乳輪にぽつぽつと存在する微かな突起が主張を始める。

「乳輪にはね、なんかぽこぽこ膨らんでるのがあるんだ。粒みたいなの。乳首候補だったのかなぁ……普段は乳輪に紛れちゃって見えないはずなんだけどね、月乃宮君は興奮するとここまで膨らませるんだよ」

俺の感覚は正しいようだ。筆で胸の平たい部分ばかり撫でられて、左胸ばかり焦らされて、もう乳輪ごと盛りあがってしまっている気さえする。

「ぅ……ミ、ミチぃ」

「何? 言わないで欲しいの? ダメだよ、君は自分のどこが可愛いのかちゃんと理解しないと。そんなだから先生や先輩に襲われちゃうんだ」

「乳首……いじって」

「…………そっ、そういう可愛いところがダメなんだよ! そうやってすぐ気持ちよくなりたがるからっ、脅されてても気持ちよくなっちゃうんだろっ……!」

筆が肌の上を走って乳輪に近付く。しかし、乳輪まであと数ミリのところをくるくると回り続ける。

「ぁっ……? ゃ、やだっ、ミチぃっ、乳首きてよっ」

「が、我慢覚えないといけないよ?」

筆は胸の端へと戻る。つぅーっと滑って乳首に向かってくる。このまま真っ直ぐ進めば乳首に触れただろうに、筆の先端は丸く曲がって乳首だけを避けた。

「ん、んぅぅっ……ぁっ!? な、なんでっ、なんで避けるの、やだぁっ、乳首、乳首気持ちぃの欲しいっ、ミチ、お願いっ……!」

「…………他の男に何かされた時も、そうやってすぐおねだりしちゃうんだよね」

「ミチ……? お、お願いっ……乳首焦らされるの、本当に、辛くて……むずむずするんだ、お願い、乳首触って……」

「……僕以外にもそうやって触って欲しがるんだよね」

筆は右胸に移動する。左と同じように乳輪にすら触れず、筆先だけで肌をくすぐっていく。微かな刺激を敏感ではないところに与えられるから、身体が快感を拾おうとしてどんどん敏感になっていく。

「ん、んぅっ……ふ、ぅぅっ……ミチっ、ミチぃっ! お願いっ、お願い、乳首なんかしてっ! つねってよっ、噛んでぇっ、もぉ胸変になるっ!」

「ねぇ、分かってよ、月乃宮くん可愛いんだ。可愛いからみんなイタズラするんだよ、そしたら君が簡単にその気になるから襲われちゃうんだ。可愛い君が悪いんだよ」

「俺可愛くないぃっ! 簡単にっ、そんな気になったりしてないっ! 俺悪くないっ、変態ばっかなのが悪いんだよぉっ!」

「……自分の可愛さ分かってないから襲われるんだよ! 月乃宮くん、可愛いよ……? すっごく可愛い。ほっぺた真っ赤……」

顔が熱いのは自分でもよく理解している。ミチに言われるのが恥ずかしくて縛られている腕で無理に頬を隠そうとする。

「もじもじしちゃって……可愛い。ね、月乃宮君、こんな可愛いピンク色の乳首、吸い付きたくなるに決まってるのに、ピアスなんかで穴空けて……どういうつもりなのさ」

「ど、どういうって……」

「可愛い乳首にピアスなんかつけたら、シャツの上からでも目立つでしょ。ピアスだって分かったら「あ、この子痛いの好きなのかなー」って「虐めたら喜ぶかなー」って思っちゃって、知らないおじさんとかに胸触られちゃうよ」

「そ、そんなことない……ミチが妄想しすぎなんだよ。ミチの方がよっぽど可愛い、俺よりミチの方が危ないだろ」

乳首ピアスが微かに動く。目隠しのせいで何も見えないが、筆先がピアスを引っ掛けて動かしているようだ。

「ぁ、はっ……ミチっ、そのままピアスひっぱってぇっ……ちょっと痛いの、して欲しい……」

「や、やっぱり痛いの好きなんだ……! ダメだよっ、我慢覚えて! これ以上襲われるの嫌でしょ?」

「やだぁっ! 我慢いやっ……ミチ、お願い、お願いっ、なんでもするからぁ!」

筆先がピアスから離れ、持ち上げられていたリング状のピアスが落ちて乳首を叩く。

「ひぅっ……!」

「………………なんでも? なんでもしてくれるの? 本当に?」

「う、うん……する、するからぁ……焦らさないで、めちゃくちゃにして欲しい……」

「……なんでもするんだね?」

「何して欲しい?」

無言が続く。ミチは確かにそこに居るのに、脇腹に触れている膝から体温が移ってくるのに、ミチはピクリとも動かない。

「ミチ……?」

「…………本当になんでもいい?」

数分間話さなかったミチの声は微かに震えていた。

「いい、本当になんでもする。だから、早く気持ちよくして……」

「……じゃあ、明後日から……休み時間、僕に欠かさず会いに来て」

なんだ、そんなことでいいのか。

「分かった」

「…………へ、へへっ、えへへへっ……月乃宮くん、おバカさん……今ちょっと気持ちよくしてもらうためだけに、こんなこと約束しちゃうなんて」

休み時間に会う約束くらいで喜ぶミチが可愛い。

「やっぱりナシとかダメだからねっ、じゃあ……乳首弄ったげるね」

筆先がとうとう乳首に触れる。思わず身体を跳ねさせ、ミチを驚かせてしまった。

「僕以外にこんなことさせちゃダメだよ……?」

筆先が乳首の根元をつつき回す。

「ゃ、あっ、はぁあっ……!」

「大丈夫だよね? 先生や先輩にはお尻使われてるだけだよね、こんなじっくり気持ちよくはしてくれないよね? だから僕が一番だよね?」

ピアスが入ったままのピアスホールの縁をくすぐられ、背を反らす。腰が浮いてしまう。

「気持ちよくしてあげるから僕に振り向いて……」

「ミチ……ぁっ、ぁあっ、は、ぁんっ……!」

筆先が乳頭を弾く。ピアスも揺らされて乳首がどんどん気持ちよくなっていく。ピンっと弾かれる度に甘い声を漏らしてしまう。

「ぁ、んんっ! は、ぁっ、ひぁっ!」

「……月乃宮くん、僕の名前呼んで」

耳元で吐息混じりに囁かれ、快感で霧がかかった頭に暗示のように言葉がこびりつく。

「ミチっ、ミチぃっ、ぁ、んっ……み、ちぃっ、みちっ、ミチ……!」

「……っ、嬉しい、月乃宮くん大好きっ! うんっと気持ちよくしてあげるねっ!」

左乳首を弾く筆の動きが速くなる。ピッピッピッ……と弾かれまくって左胸全体にビリビリとした快感が広がっていく。

「あっあぁあっ、ぁああっ! ミチっ、きもちぃっ、きもちぃいっ……つねって! 乳首つねってぇっ、イかせてぇっ!」

絶叫のようなおねだりにミチは応えてくれて、放置されていた右乳首を思い切りつねってくれた。

「ぁひぃいんっ!」

「わっ……! ぁ、い、いっぱい出たね……」

つねられた瞬間、電撃のような快楽が胸を痺れさせた。下腹に熱い液体を零された感覚がある、射精の快感もあった。

「あ、ぁ……は、へ……」

「ぅわ……口半開きだよ、月乃宮くん……涎まで垂れてる」

口の端を舐められ、キスするのかと口を開けて舌を突き出す。

「……目隠れててもえっちな顔は出来るんだね」

感心したような、呆れたような、そんな声。直後、右乳首をぎゅっと摘まれる。

「ひんっ!?」

「月乃宮くんが「イかせて」っておねだりしても焦らしてやるの想像してたんだけど……イかせちゃったから、イかせまくってあげるね」

ミチの指の間で尖りきった乳首がコリコリと転がされ、俺に甘えた声を上げさせる。

「あっ、ぁぁあっ! 乳首っ、乳首気持ちぃいっ……! はぁあんっ……イっちゃう、またイっちゃうぅっ……!」

「……こりこりしてて触るの楽しいよ。ピアスが中にあるのも分かる……えへへっ、そんなに気持ちいい? そんなに気持ちよさそうにしてくるなら……僕のこと好きになってくれてるよね。僕が気持ちよくしてあげてるんだから」

甘い声で囁かれながら乳首を弄り回され、二度目の絶頂に近付いていく。

「は、ぁああーっ……! イくっ、イくぅぅっ……!」

「月乃宮くん……好きだよ。月乃宮くん、月乃宮くん、月乃宮くん、大好き、好き……」

「ぁ、あっ! イくっ、乳首イくぅぅっ! ぁ、ひっ、ひぁぁあんっ!」

名前を呼ばれながらイかされて、頭の中でミチの声と快感が繋がるのを感じた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

風紀“副”委員長はギリギリモブです

BL / 連載中 24h.ポイント:56pt お気に入り:1,387

優しい彼の裏の顔は、、、。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:92pt お気に入り:40

黒豹の騎士団長様に美味しく食べられました

恋愛 / 完結 24h.ポイント:284pt お気に入り:515

恋愛は見ているだけで十分です

恋愛 / 完結 24h.ポイント:78pt お気に入り:784

異世界で魔法使いとなった俺はネットでお買い物して世界を救う

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:1,179

最愛を亡くした男は今度こそその手を離さない

BL / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:148

【完結】暗い海に灯りを点して

恋愛 / 完結 24h.ポイント:390pt お気に入り:597

聖女に巻き込まれた、愛されなかった彼女の話

恋愛 / 完結 24h.ポイント:220pt お気に入り:55

どこまでも続く執着 〜私を愛してくれたのは誰?〜

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:241pt お気に入り:85

魔族に転生したので魔族の頂点を目指したいと思います!

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:85pt お気に入り:439

処理中です...