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彼氏を縛って筆責めしてみた
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俺を責めてくれる気になったらしいミチを軽く煽り、ベッドに腰掛ける。ミチは案外Sっ気が強いから期待できる、自分がMだと認めたくはないが──多分そうなんだよなぁ。
「何してくれるんだ? ミチ」
体育倉庫でしゃぶらされたのはよかったな。俺が欲しいのは肉体的な痛みじゃなく、精神的なもの……辱めて欲しい。
「…………恥ずかしいことして欲しいなぁ」
スラックスを脱ぎ、下着を脱ぎ、靴下は履いたまま脚を開く。踵をベッドの縁に乗せて膝を立てる。自分から性器も尻穴も丸見えにしてしまう俺を辱める手段なんてあるだろうか──
「ぅ……や、やっぱ普通にセックスしようか」
──あるわ。今の言動は普通に恥ずかし過ぎた。
「つ、つつ、月乃宮君っ……僕、僕ね、前からしたかったプレイあるんだ」
「え……な、何? 言っとくけど血が出るのとスカトロは絶対断るからな」
「そそ、そんなレベル高いことしないよっ……っていうかそれ以外NGないのはどうかと思うよ!?」
それ以外NGないなんて誰も言ってないだろ。そんなにポンポン変なプレイが思い付かないだけだ。
「ど、道具持ってきてるから……見てもらっていい?」
「道具? まぁ……いいけど」
パンの耳をもらってるような経済状況なのに道具なんて揃えられるのか?
「ここ、こ、これなんだけど」
ミチが鞄から出したのは絵の具筆だ。平筆から細筆まで太さ様々四本セット。
「しょ、小学校の時のなんだっ、これ。小五の時に筆の毛を切られちゃって……せせ、先生に新品買ってもらったんだけど。その後絵の具の方盗まれてっ……か、描けなかったからっ、ふふ、古いけど新品だから、綺麗だよ!」
使用済みかどうかはそこまで気にしていない。むしろ今のエピソードの方が気になる。
「そ、それでねっ、この筆で……わっ、な、何?」
プレイを説明しようとするミチの頭を撫で、そっと抱き寄せる。
「…………これからは俺が守ってやるからな。誰かに虐められたら俺に言えよ」
俺には必殺技の「センパイに言いつけるぞ!」がある。
「……ありがとう」
「…………それで? その筆何に使うんだ? 俺に「正」でも描きたいのか?」
「せい……? せいって何?」
ミチは俺と違ってR18の漫画や画像に触れていないらしい。純粋ないい子だ。
「こ、この筆をっ、月乃宮君をナデナデするのに使うんだよっ!」
別に純粋じゃねぇなこいつ。結構高度なプレイじゃん。
「くすぐりか……あんまり気乗りしないな」
「く、くすぐらないよっ? 月乃宮君は敏感だからきっとちゃんと気持ちよくなれるよっ!」
腋や足の裏をくすぐられる訳じゃないのか、それなら大丈夫だ。
「じゃ、じゃあ月乃宮君っ、約束して」
「約束? あぁ、何だ?」
「ぜぜ、絶対に僕に触らないことっ! あ、あ、あとっ、自分でしないことっ!」
まさか筆で性感帯を撫でるつもりなのか? 焦れったそうだしあまり好きではないと思うが、ミチがしたいならさせてやりたい。
「ぁー……なら縛らないか?」
焦らされて自慰を耐えるのは俺には難しい。センパイや担任のように俺に力で勝っている相手ならまだしも、ミチのことは弾き飛ばしてしまいそうだ。
「あ、い、いいかもっ……でも、縛るものは持ってないよ」
「縛るものくらい俺ん家にあるだろ。探すからちょっと待ってくれ」
シャツと靴下だけの姿で部屋を探し、ベルトを何本も見つけた。
「これでどうだ? ちゃんと縛りたいならガムテでも持ってくるけど」
「は、肌荒れそうだよっ……ここ、これにしよう。月乃宮君、服脱いで座って」
「靴下は?」
「く、くく、靴下もっ!」
一糸まとわぬ姿になり、ミチの視線がピアスに注がれているのに羞恥心が膨らむ。
「……で、どこをどう縛る?」
「うーん……どうしよう? う、動かないで欲しいけど……全身やりたいし……」
「…………ミチの好きなようにしてくれ」
前髪を分けて瞳を見せているとミチの表情変化がよく分かる。コロコロと変わる子供っぽい表情はとても愛らしく、どんな頼みも聞いてやりたくなる。
「そ、それじゃ……あっ、ね、寝て寝て。仰向けでね」
ベッドの頭側の柵の両端にそれぞれ手首を縛り付けられる。
「……上で手縛るってのはありがちだけど、やっぱ何されても抵抗できない感強いな……腋見せちゃうし、めちゃくちゃ恥ずかしい」
「…………ありがち? 他の人にもされたの?」
口が滑った。だが、これでミチのSっ気が増して俺をめちゃくちゃにイかせまくってくれるかもしれない。
「あ、足伸ばしてっ……」
軽く開いてピンと伸ばした足をベッドの下側の柵に固定される。足首に巻かれたベルトは柵の両端から俺の足を離してくれそうにない。
「ギ、ギリギリだねっ、月乃宮君が背が高くてよかったよ……!」
手も足も伸ばして拘束された俺は、もう体を丸めて弱点を隠すことは出来ない。ミチに身体を好き勝手に弄られて何度も絶頂させられるのだ。
「ぁ……た、たた、勃ってきたねっ……動けなくされるの、好きなの?」
勃起し始めた性器も、膨らんでピアスを揺らす乳首も、呼吸で上下して目立つ臍ピアスも、何も隠せない。
「…………め、めめ、目隠し、は? 好き……?」
ミチは俺がクローゼットを漁っている時にこっそりと持ち出していたらしい俺のネクタイを広げた。
「目隠し……」
ネクタイで目隠しをされて身体をめちゃくちゃにされる、写真や動画も撮られるかもしれない。俺はミチがほどいてくれるまで手も足も動かせないし、何も見えない。ミチに全てを握られる。
「……ミチの好きなようにしてくれって言っただろ」
「ぁ、ぅ……ゃ、やだよっ! つつ、月乃宮君が嫌だなって思ってることしちゃったら……僕、僕、僕っ……!」
「ぁー……言葉足りなかったかな。俺、ミチに好き勝手されたいんだ。身動き取れないで、何も見えないで……ミチの好きなようにイかされまくって、ミチのものにされんの…………考えただけで」
硬く勃ち上がって揺れる陰茎から透明の蜜が零れる。
「……つ、つつ、月乃宮君って思ったより変態さんなんだねっ……他の人にも好きにさせてたのかなっ、そう思うとすごくイライラするけどっ……月乃宮君が可愛いから、このイライラは君を虐めるのに使うね」
ネクタイが目に乗せられる。頭を上げると頭の後ろでネクタイが縛られ、俺は身体の自由に加えて視覚まで奪われた。
「ミチ……俺が嫌だって言っても絶対やめないでくれ」
「え……? わ、分かった! 絶対やめないっ……ぁ、あ、後から怒らないでねっ?」
絶頂させられまくると「もう嫌だ」と言ってしまうだろう、そこで止められたくない。失神するまでイかされたい。
「怒らないって……ひぁっ!?」
突然陰茎を握られて思わず変な声が漏れる。
「つ、月乃宮君……? き、君の反応で手を止めたりしないよっ、そそ、それがいいんだよね?」
頷きながら目隠しの怖さを再確認する。ミチが次にどこに触れるのか、どう触れるのか、全く分からない。ミチがどこに立っているかすらも分からない。未知は恐怖だ、そして興奮の種だ。
「ぁ……そ、そうだ、手じゃなくて、筆でするんだった」
小さな呟きと共にミチの足音が離れる。すぐに戻ってきて、おそらく平筆だろうものを俺の頬に触れさせる。
「んっ……」
見えない。怖い。楽しみ。
「ぁ、ふっ……くすぐったい」
こめかみ辺りの顔と髪の境目を筆先で辿られ、くすぐったさに息が漏れる。
「……っ、んん……!」
顔にかかるミチの吐息、嗅ぎとる如月家の洗剤の匂い、耳の付け根をくすぐる筆、目隠しをされた俺はそれらを鋭くなったその他の感覚器官で拾い集める。
「み、ちぃっ……耳は、そんなっ……!」
耳はどうしてもくすぐったくて首を曲げて抵抗してしまう。しかし、ミチは俺の顎を掴んで横を向かせて固定した。首だけの力なら俺はミチに負けるらしい。
「ダ、ダメだよっ! きき、君は僕に逆らっちゃダメっ!」
筆を持ち替える音が聞こえ、おそらく一番細い筆が耳の中をくすぐる。ピアスに筆の毛ではない部分が触れてカチャカチャと音が鳴る。
「み、みっ……やだぁっ……」
「い、嫌だって言ってもやめないでって言ったのは君だからねっ? ゃ、やめない……よ?」
ミチは俺の様子を伺うような声を出しながら耳の穴の奥へ筆を突っ込む。カサカサと耳の奥深くをくすぐられ、あまりのくすぐったさに頭をめちゃくちゃに振りたくなる。けれど今動いたらもっと奥に筆が刺さってしまいそうな恐怖もあって動けない。
「ん、んぅっ、ぅっ……ひ、ぃああっ……!」
ピンと伸ばした足は曲げることも、振り回すことも許されない。指先をふるふると震わせるのが限界だ。
「……ねぇ、ピアス外していい?」
耳から筆が離れ、ミチの唇が耳の縁に触れながら言葉を紡ぐ。
「ミチの、好きにっ……して」
「は、はっ、外すね?」
慣れない指先が震えながら俺のピアスを外していく。
「机置いておくね」
ミチの体温が一瞬離れ、すぐに戻ってくる。
「ピ、ピアス、いっぱいついてたね。耳、こんなに穴だらけにして……」
筆の穂先が耳たぶの穴をつつく。
「ここは、まだいいけど……こことか」
穂先はコンクと呼ばれる位置に空けたピアスホールをつつく。耳の下側の軟骨部分を穿いたものだ。
「こ、こ、ここ、硬いとこだよっ……? ほ、骨があるんだよ。なな、軟骨っていう柔らかいのだけど……」
ピアスホールを穂先で弄りながらミチは呼吸を荒くしていく。
「ここ、こっちも……!」
次はヘリックス、耳の端のカールした部分に空けた穴。こちらも軟骨に穴が空いていて、ミチからすると憤慨ものらしい。
「ひっ……ん、んんっ……ミチっ、穴の中だめ……敏感になってる」
「ここなんて、もうっ……!」
最後にインダストリアル、耳の上側を長い棒状のピアスで穿く部位。これももちろん軟骨で、ミチは執拗に穴の内側を筆先でつついてくる。
「ぁ、あぁっ……みみっ、みみ、だめぇっ……!」
「み、耳、すごく敏感なんだね……勃ってるし、透明のすっごく溢れてきてる……」
「ぁ……や、やだ、見ないでミチ、お願い……見ないで」
陰茎の様子を話される羞恥心に耐えかねて身をよじる。もっと恥ずかしいこともされてきたはずなのに、自分は目隠しをされているのにミチには観察され放題な今の状況がどんどん恥ずかしくなってきた。
「………………ふ、ふふっ、ふふふ……」
堪えきれなかったといった様子で聞こえてきた笑い声に、俺は嫌な予感を覚えつつも期待を隠せず腰をくねらせた。
「何してくれるんだ? ミチ」
体育倉庫でしゃぶらされたのはよかったな。俺が欲しいのは肉体的な痛みじゃなく、精神的なもの……辱めて欲しい。
「…………恥ずかしいことして欲しいなぁ」
スラックスを脱ぎ、下着を脱ぎ、靴下は履いたまま脚を開く。踵をベッドの縁に乗せて膝を立てる。自分から性器も尻穴も丸見えにしてしまう俺を辱める手段なんてあるだろうか──
「ぅ……や、やっぱ普通にセックスしようか」
──あるわ。今の言動は普通に恥ずかし過ぎた。
「つ、つつ、月乃宮君っ……僕、僕ね、前からしたかったプレイあるんだ」
「え……な、何? 言っとくけど血が出るのとスカトロは絶対断るからな」
「そそ、そんなレベル高いことしないよっ……っていうかそれ以外NGないのはどうかと思うよ!?」
それ以外NGないなんて誰も言ってないだろ。そんなにポンポン変なプレイが思い付かないだけだ。
「ど、道具持ってきてるから……見てもらっていい?」
「道具? まぁ……いいけど」
パンの耳をもらってるような経済状況なのに道具なんて揃えられるのか?
「ここ、こ、これなんだけど」
ミチが鞄から出したのは絵の具筆だ。平筆から細筆まで太さ様々四本セット。
「しょ、小学校の時のなんだっ、これ。小五の時に筆の毛を切られちゃって……せせ、先生に新品買ってもらったんだけど。その後絵の具の方盗まれてっ……か、描けなかったからっ、ふふ、古いけど新品だから、綺麗だよ!」
使用済みかどうかはそこまで気にしていない。むしろ今のエピソードの方が気になる。
「そ、それでねっ、この筆で……わっ、な、何?」
プレイを説明しようとするミチの頭を撫で、そっと抱き寄せる。
「…………これからは俺が守ってやるからな。誰かに虐められたら俺に言えよ」
俺には必殺技の「センパイに言いつけるぞ!」がある。
「……ありがとう」
「…………それで? その筆何に使うんだ? 俺に「正」でも描きたいのか?」
「せい……? せいって何?」
ミチは俺と違ってR18の漫画や画像に触れていないらしい。純粋ないい子だ。
「こ、この筆をっ、月乃宮君をナデナデするのに使うんだよっ!」
別に純粋じゃねぇなこいつ。結構高度なプレイじゃん。
「くすぐりか……あんまり気乗りしないな」
「く、くすぐらないよっ? 月乃宮君は敏感だからきっとちゃんと気持ちよくなれるよっ!」
腋や足の裏をくすぐられる訳じゃないのか、それなら大丈夫だ。
「じゃ、じゃあ月乃宮君っ、約束して」
「約束? あぁ、何だ?」
「ぜぜ、絶対に僕に触らないことっ! あ、あ、あとっ、自分でしないことっ!」
まさか筆で性感帯を撫でるつもりなのか? 焦れったそうだしあまり好きではないと思うが、ミチがしたいならさせてやりたい。
「ぁー……なら縛らないか?」
焦らされて自慰を耐えるのは俺には難しい。センパイや担任のように俺に力で勝っている相手ならまだしも、ミチのことは弾き飛ばしてしまいそうだ。
「あ、い、いいかもっ……でも、縛るものは持ってないよ」
「縛るものくらい俺ん家にあるだろ。探すからちょっと待ってくれ」
シャツと靴下だけの姿で部屋を探し、ベルトを何本も見つけた。
「これでどうだ? ちゃんと縛りたいならガムテでも持ってくるけど」
「は、肌荒れそうだよっ……ここ、これにしよう。月乃宮君、服脱いで座って」
「靴下は?」
「く、くく、靴下もっ!」
一糸まとわぬ姿になり、ミチの視線がピアスに注がれているのに羞恥心が膨らむ。
「……で、どこをどう縛る?」
「うーん……どうしよう? う、動かないで欲しいけど……全身やりたいし……」
「…………ミチの好きなようにしてくれ」
前髪を分けて瞳を見せているとミチの表情変化がよく分かる。コロコロと変わる子供っぽい表情はとても愛らしく、どんな頼みも聞いてやりたくなる。
「そ、それじゃ……あっ、ね、寝て寝て。仰向けでね」
ベッドの頭側の柵の両端にそれぞれ手首を縛り付けられる。
「……上で手縛るってのはありがちだけど、やっぱ何されても抵抗できない感強いな……腋見せちゃうし、めちゃくちゃ恥ずかしい」
「…………ありがち? 他の人にもされたの?」
口が滑った。だが、これでミチのSっ気が増して俺をめちゃくちゃにイかせまくってくれるかもしれない。
「あ、足伸ばしてっ……」
軽く開いてピンと伸ばした足をベッドの下側の柵に固定される。足首に巻かれたベルトは柵の両端から俺の足を離してくれそうにない。
「ギ、ギリギリだねっ、月乃宮君が背が高くてよかったよ……!」
手も足も伸ばして拘束された俺は、もう体を丸めて弱点を隠すことは出来ない。ミチに身体を好き勝手に弄られて何度も絶頂させられるのだ。
「ぁ……た、たた、勃ってきたねっ……動けなくされるの、好きなの?」
勃起し始めた性器も、膨らんでピアスを揺らす乳首も、呼吸で上下して目立つ臍ピアスも、何も隠せない。
「…………め、めめ、目隠し、は? 好き……?」
ミチは俺がクローゼットを漁っている時にこっそりと持ち出していたらしい俺のネクタイを広げた。
「目隠し……」
ネクタイで目隠しをされて身体をめちゃくちゃにされる、写真や動画も撮られるかもしれない。俺はミチがほどいてくれるまで手も足も動かせないし、何も見えない。ミチに全てを握られる。
「……ミチの好きなようにしてくれって言っただろ」
「ぁ、ぅ……ゃ、やだよっ! つつ、月乃宮君が嫌だなって思ってることしちゃったら……僕、僕、僕っ……!」
「ぁー……言葉足りなかったかな。俺、ミチに好き勝手されたいんだ。身動き取れないで、何も見えないで……ミチの好きなようにイかされまくって、ミチのものにされんの…………考えただけで」
硬く勃ち上がって揺れる陰茎から透明の蜜が零れる。
「……つ、つつ、月乃宮君って思ったより変態さんなんだねっ……他の人にも好きにさせてたのかなっ、そう思うとすごくイライラするけどっ……月乃宮君が可愛いから、このイライラは君を虐めるのに使うね」
ネクタイが目に乗せられる。頭を上げると頭の後ろでネクタイが縛られ、俺は身体の自由に加えて視覚まで奪われた。
「ミチ……俺が嫌だって言っても絶対やめないでくれ」
「え……? わ、分かった! 絶対やめないっ……ぁ、あ、後から怒らないでねっ?」
絶頂させられまくると「もう嫌だ」と言ってしまうだろう、そこで止められたくない。失神するまでイかされたい。
「怒らないって……ひぁっ!?」
突然陰茎を握られて思わず変な声が漏れる。
「つ、月乃宮君……? き、君の反応で手を止めたりしないよっ、そそ、それがいいんだよね?」
頷きながら目隠しの怖さを再確認する。ミチが次にどこに触れるのか、どう触れるのか、全く分からない。ミチがどこに立っているかすらも分からない。未知は恐怖だ、そして興奮の種だ。
「ぁ……そ、そうだ、手じゃなくて、筆でするんだった」
小さな呟きと共にミチの足音が離れる。すぐに戻ってきて、おそらく平筆だろうものを俺の頬に触れさせる。
「んっ……」
見えない。怖い。楽しみ。
「ぁ、ふっ……くすぐったい」
こめかみ辺りの顔と髪の境目を筆先で辿られ、くすぐったさに息が漏れる。
「……っ、んん……!」
顔にかかるミチの吐息、嗅ぎとる如月家の洗剤の匂い、耳の付け根をくすぐる筆、目隠しをされた俺はそれらを鋭くなったその他の感覚器官で拾い集める。
「み、ちぃっ……耳は、そんなっ……!」
耳はどうしてもくすぐったくて首を曲げて抵抗してしまう。しかし、ミチは俺の顎を掴んで横を向かせて固定した。首だけの力なら俺はミチに負けるらしい。
「ダ、ダメだよっ! きき、君は僕に逆らっちゃダメっ!」
筆を持ち替える音が聞こえ、おそらく一番細い筆が耳の中をくすぐる。ピアスに筆の毛ではない部分が触れてカチャカチャと音が鳴る。
「み、みっ……やだぁっ……」
「い、嫌だって言ってもやめないでって言ったのは君だからねっ? ゃ、やめない……よ?」
ミチは俺の様子を伺うような声を出しながら耳の穴の奥へ筆を突っ込む。カサカサと耳の奥深くをくすぐられ、あまりのくすぐったさに頭をめちゃくちゃに振りたくなる。けれど今動いたらもっと奥に筆が刺さってしまいそうな恐怖もあって動けない。
「ん、んぅっ、ぅっ……ひ、ぃああっ……!」
ピンと伸ばした足は曲げることも、振り回すことも許されない。指先をふるふると震わせるのが限界だ。
「……ねぇ、ピアス外していい?」
耳から筆が離れ、ミチの唇が耳の縁に触れながら言葉を紡ぐ。
「ミチの、好きにっ……して」
「は、はっ、外すね?」
慣れない指先が震えながら俺のピアスを外していく。
「机置いておくね」
ミチの体温が一瞬離れ、すぐに戻ってくる。
「ピ、ピアス、いっぱいついてたね。耳、こんなに穴だらけにして……」
筆の穂先が耳たぶの穴をつつく。
「ここは、まだいいけど……こことか」
穂先はコンクと呼ばれる位置に空けたピアスホールをつつく。耳の下側の軟骨部分を穿いたものだ。
「こ、こ、ここ、硬いとこだよっ……? ほ、骨があるんだよ。なな、軟骨っていう柔らかいのだけど……」
ピアスホールを穂先で弄りながらミチは呼吸を荒くしていく。
「ここ、こっちも……!」
次はヘリックス、耳の端のカールした部分に空けた穴。こちらも軟骨に穴が空いていて、ミチからすると憤慨ものらしい。
「ひっ……ん、んんっ……ミチっ、穴の中だめ……敏感になってる」
「ここなんて、もうっ……!」
最後にインダストリアル、耳の上側を長い棒状のピアスで穿く部位。これももちろん軟骨で、ミチは執拗に穴の内側を筆先でつついてくる。
「ぁ、あぁっ……みみっ、みみ、だめぇっ……!」
「み、耳、すごく敏感なんだね……勃ってるし、透明のすっごく溢れてきてる……」
「ぁ……や、やだ、見ないでミチ、お願い……見ないで」
陰茎の様子を話される羞恥心に耐えかねて身をよじる。もっと恥ずかしいこともされてきたはずなのに、自分は目隠しをされているのにミチには観察され放題な今の状況がどんどん恥ずかしくなってきた。
「………………ふ、ふふっ、ふふふ……」
堪えきれなかったといった様子で聞こえてきた笑い声に、俺は嫌な予感を覚えつつも期待を隠せず腰をくねらせた。
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