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帰ろうとした後輩を捕まえてみた

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明日はミチと約束がある。だからセンパイが寝ている間に家に帰ろうとしていたが、目を覚ました彼に見つかってしまった。

「セ、センパイ……」

眠そうな顔をしているセンパイは俺の腕を強く掴む。

「……帰ろうとしていたな? トイレやコンビニ、寝ぼけたなんて言い訳が通用すると思うなよ」

鋭い瞳に睨まれて観念した俺は大人しくセンパイに引きずられた。センパイは俺を乱暴にベッドに転がすとベッド下の収納を探った。

「な、何……するんですか、センパイ」

センパイの手には赤い縄がある。彼は容易に俺の手を掴まえ、手首を縛った。

「…………もう我慢したくない」

「は、はい……そりゃ、今まで我慢させてきちゃったの、申し訳ないと思ってますし……俺も我慢しないで欲しいですけど」

両手首を縛った縄はベッドの頭側の柵に結ばれ、俺は頭の上から手を下ろせなくなる。センパイは俺の太腿を跨いで座っているから足をばたつかせることも出来ない。抵抗を封じた俺の服を脱がし、センパイは歪んだ笑みを浮かべる。

「……もう俺は我慢しない。お前は俺のものだ。俺に愛され、俺を愛する、お前はそれだけでいい」

シャツのボタンを外され、肌着を捲られ、顕になった胸を鷲掴みにして揉みしだかれる。

「ひっ……ぅ、ぁ……! や、やだ、センパイっ、ほどいて……」

「…………俺から逃げる気だろ? ダメだ」

こんな状況でも簡単に感じてしまう身体が嫌だ。ピンと勃った乳首を弾き、センパイはまたベッドの下を探る。

「……お前は考え過ぎるきらいがある。だから気分の浮き沈みが激しいんだ。色々と不安になることを考えてしまうのは辛いだろ? 俺がそんな頭壊してやる。俺から逃げるのもその頭が考えてることだしな」

「ひ……ゃ、やだ、やめてくださいっ……」

「…………怖いか? 大丈夫、痛いことなんて何もない。気持ちいいだけだ。イくのは好きだろ? よかったな、壊す手段はイかせることだ。遠慮せず喜べ」

昼間に買ったばかりのクリップ型のローターが両乳首に取り付けられる。バチンと挟まれただけで痛くて、気持ちよくて、下腹が疼き出す。

「ぃああっ! ゃ、だぁっ、センパイっ、やだ、外してくださいっ!」

「……俺の指と口の方が好きなのは分かってる。悪いな、我慢してくれ……今までの俺みたいにな」

コードの先のリモコンをセンパイが操作すると乳首を挟んだクリップが震え出す。

「あっ、ぁああっ! ぃやあぁああっ!? 乳首っ、乳首やだぁっ、おかしくなるっ、胸変になるぅっ!」

「……すぐによくなる。お前は何度かイかせると簡単に正気を手放す。そして幸せそうに笑うんだ。悩みを全て忘れているんだろうな……あの状態を保たせてやる。大丈夫だ、月乃宮……安心しろ。俺がお前を徹底的に壊して、ずっと笑わせてやるからな」

「ぃ、や……あっ!? ぁああっ! やらぁああっ! そっちやらっ、やぁああっ!」

卵型のローターが亀頭に押し付けられる。こちらも昼間買ったばかりのものだ。

「やらぁあっ! イくっ、イっちゃうっ、やぁあっ! こんなっ、オモチャでっ……やぁあっ、イくぅぅっ!」

情けなく精液を吐き出し、射精直後でも構わずに最強の振動で責め立てられて絶叫しながら、不意に思う。
センパイに壊してもらえば俺はもう何も考えずに済んで、本当に幸せになれるんじゃないか? と……ようやく生きる苦痛から解放されるんじゃないか、と。

「イくっ、イくぅぅっ……! ぁあぁああっ!」

でも、そんなふうに開き直ってしまったら、ミチも担任もセンパイさえも喜ばせられない。俺だけが救われたって意味がない。

「やぁあっ! やらぁっ……イかせないでっ、もぉイかせないでぇっ! 壊れるっ、ほんとにごわれぢゃぅがらぁあぁーっ!」

壊れずに耐え切らなければ。明日はミチとデートの約束があるのだから。

「……言ってるだろ。壊すんだ」

「そんなっ、そんなのやらぁあっ! せんぱいっ、ゆるじでぇっ! ごめんなざいっ、逃げないっ、逃げないかりゃああっ!」

「……逃げないなら、このままでいいだろ」

「やらぁあっ! ほどいてっ、手ぇほどいてよぉっ! ぁああっ! もぉやぁっ、イくのやらぁあっ!」

両乳首をそれぞれ挟んだクリップ型のローター、乳首を穿いているピアス、内側からも外側からも硬いものに責められて、その上振動させられ、本当に乳首がどうにかなってしまいそうだ。

「…………泣くほどイイか? 可愛いな」

「やぁあっ、ぁああぁーっ!? あぁっ、ぁ、んむぅっ!? ん、んぅっ、んんーっ!」

少しでも快楽を逃がそうと大声で叫ぶ。大きく開いた口をセンパイの唇に塞がれる。唇を唇に噛まれて、ピアスのある舌を弄ばれて、唾液を飲まされて──蹂躙するようなキスが嬉しくてたまらなくて、自然と嬉しそうに蕩けた顔をセンパイに見られてしまう。

「…………本当に可愛いよ、月乃宮」

卵型のローターが臍ピアスに押し付けられる。ピアスを通じて下腹が震え、腸壁が男根をねだってうごめく。

「あぁああっ! やぁっ、ゃ、おへそやだぁああっ!」

「……俺のことが好きなら、ずっと俺の傍に居てくれ。俺もお前が好きだ、愛してる」

臍の中にねじ込むようにローターを動かしながら、センパイは俺の頬や耳にキスしながら愛を囁く。嬉しいのに、応えたいのに、口に来てくれない。

「國行ぃー、今日の晩飯何がいい?」

扉が蹴り開けられると同時にセンパイはローターの電源を切り、慌ててベッドを降りた。

「……に、兄ちゃん。取り込み中だ、聞けば分かるだろ。あと、扉は手で開けてくれと何度言ったら……」

「月乃宮様ぁー、晩飯何がいいですか?」

「お、お兄さんっ! お兄さん、これほどいてください! 助けて……!」

従兄は虚ろな三白眼を見開き、すぐに細めてセンパイを睨む。

「國行、同意のない拘束が一番ダメだぞ」

センパイは目を逸らしている。

「まぁM的にはイヤイヤ言ってるとこを無理矢理ってのが滾るとこだし、本当に嫌かどうかの見極めって難しいと思うけどさ……第三者に言うレベルの嫌がり方は完全アウト」

従兄はセンパイの机からハサミを取ると俺の腕を縛っている縄を切ってしまった。

「やっぱり國行に縄渡すのは早まったかな……」

手は自由になったが、上手く動けない。胸は快楽の余韻で痺れ、足は震え、尻穴は挿入されたがって蜜を垂らしている。それでも壁伝いに部屋から出ようとするが、センパイが扉にもたれる。

「………………行かないでくれ」

そっぽを向いたままそう言った。

「センパイ……」

手を引くとセンパイは膝から崩れ落ち、俺に抱きついて俺の腹に顔をうずめた。

「……頼む。俺を、捨てないで」

そんなふうにされたら、俺はもう彼の頭を抱き締めることしか出来なくなる。

「セ、センパイ……そんな、大げさですよ。俺……今日は家に帰りたかっただけなんです。明日はちょっと用事があるので……」

「……他の奴に会うのか? 男か? 女か?」

鋭い。

「帰るにしても泊まるにしても晩飯食うかどうかだけ先言ってもらってもいいですか?」

「あ、遠慮します……」

「……何とか説得する。兄ちゃん、月乃宮の分も頼む」

「センパイ、困ります……あの、家の用事なんですよ。その…………ほ、法事、なんです」

どうせただ家の中でセックスするだけなのに法事を嘘に使うなんて、俺は罰当たりな奴だ。怪異に取り憑かれるわけだ。

「……法事」

「は、はい……」

「…………俺が嫌になったんじゃないのか? お前に好きだって言う俺が、お前はやっぱり嫌で……恋人になるなんて言ったのは俺が逆上すると思ったからで、俺が寝ている間に逃げようとしたんじゃ……ない、のか?」

背や腰を大きな手が這い回る。シャツを掴み損ねて引っ掻いている。

「そっ、そんなわけないじゃないですか! 俺は、俺はセンパイが俺のこと好きって言ってくれたの、本当に嬉しかったんです……! セックス中に演技なんて出来るわけないじゃないですか、俺センパイ好きです……」

「…………本当に? 本当に……俺を、捨てないのか?」

「そんなことしませんよ……どうしてそんなふうに思っちゃうんですか」

センパイは俺の腹に顔を押し付けていて、彼の表情は分からない。だが、シャツが濡れていくのは分かる。センパイが鼻を鳴らして泣いているのは分かる。

「國行センパイ……俺はセンパイのこと捨てたりしませんよ、出来ませんよそんなこと……捨てられるとしたら俺の方でしょ」

センパイは髪すらも太く力強い。そんな彼がたくましい腕で俺にすがりついて大きな身体で駄々をこねているのが酷く愛らしく見える。

「センパイ、俺は……俺は、センパイのお母さんとは違いますよ」

驚いたように顔を上げ、潤んだ三白眼に俺を映す。

「…………買い物に行くと言って、帰ってこなかったんだ」

「俺は月曜にまたセンパイに会うつもりですよ」

「…………見つけ出して会いに行ったら……近寄るなと、まるで俺を化け物みたいに……」

「俺は次会う時にはセンパイの胸に飛び込んでやります」

俺を抱き締める腕の力が緩んだので少し屈み、涙を拭いながら額に唇を触れさせた。

「……本当に? 本当に……俺の前から居なくならないのか? また俺の傍に戻ってきてくれるのか?」

「当然ですよ」

不安げだった表情に笑顔が戻る。

「………………信じる。月曜日だな。朝、家まで迎えに行くぞ」

「はい、来てください」

「……明日、電話かけてもいいか?」

「すぐには出られないかもしれませんけど、時間見つけて折り返しますね」

「……………………愛してる」

「はい、俺もです」

力強く抱き締められ、俺も腕を回す。どちらともなく唇を重ねて、ため息をつきながら従兄が部屋を出ていったのにも気付かずに舌を絡ませあった。

「ん、んっ……くにゆき、んぅっ……せんぱ、ぃ、んんっ……」

舌ピアスで媚びながら大きな舌に蹂躙され、ずくずくと下腹の疼きが痛いくらいになった頃に口が離れた。

「…………家まで送る」

そう言って爽やかに微笑むセンパイに、とてもではないが「その前に一度抱いて」なんて言えなかった。
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