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後輩、を……

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センパイに誘われて行ったディスカウントショップで俺が数ヶ月前から好きになった裏アカ女子のハスミンと出会った。
ハスミンは俺のイメージとは違って暗い変わった子だったが、写真以上に可愛らしくて心臓が破裂しそうだった。しかもダメ元で告白したらOKがもらえてしまった、今日は最高の日だ。

「……月乃宮、どっちがいい?」

センパイの元に戻ると二つの玩具を見せられた。クリップ型のローターと卵型のローターだ。

「……クリップ型は使い道は狭いが、お前はきっと気に入る」

周囲に人が居ないことを確認したセンパイは大きな手で俺の胸を撫でる。制服の上から少し触れられただけなのに俺の呼吸は荒くなり、ピアスつきの乳首をつままれると声が漏れた。

「ぁっ……!」

「……卵型はどこにでも使える。挟めはしないが、お前の色んなところを責められる」

胸から手が離れ、腰を撫で、臍を軽く押し、股間をトンっと叩く。

「…………どっちがいい?」

「ぁ、えっと……センパイが選んでくださいっ、俺はオナホなんですから」

「……分かった」

上手く誤魔化せた。センパイは二つのローターを持って十八禁コーナーに戻る、あのコーナーに専用のレジがあるようだ。

「今の人、二メートルくらいある?」

「あぁ、センパイは二メートル四センチ……ってハスミンさんっ!? な、なんで……」

「出口の方行かなかったから、ちょっと気になって……ふぅん、学校サボって彼氏とデート中に女の子ナンパしたんだ」

「な、なんでサボってるって……い、いや、サボってない、学校帰りです! それに彼氏じゃない! 学校のセンパイだから!」

ハスミンは優しげなタレ目でじとっと俺を見つめる。俺の嘘を見破る時のレンの仕草によく似ている。

「ただのセンパイに玩具選ばされたり身体触られたりするんだ」

見られていたのか。ならもう誤魔化しようがない。

「セフレ……です。で、でも俺、ハスミンさんのこと本当に好きなんです」

「別に君の気持ち疑ってる訳じゃないよ、私のこと好きなのは本気だって分かってる」

「そうですか……よかった。あの、センパイ三年生なので、センパイとの関係は半年くらいで終わりますから」

今すぐ縁を切ると言った方がよかったか? いや、ここは正直に話すべきだ、何故か彼女には嘘が見破られる気がする。レンに似ているからだろうか。

「他には彼氏居ないの?」

「え……? ぁ、その……居ます。ごめんなさい」

「それでも幸せになれないの?」

俺が本当に好きなのはレンだけだ。しかも霊に取り憑かれているし、その影響は生死に関わるもの。幸せになんてなれっこない。

「そんな顔しないで、絶対幸せにしてあげる」

「ありがとうございます……なんか、逆って感じしません? 俺がハスミンさんを幸せにしますよ」

「私はいい」

何かを諦めたような寂しい微笑み。悲しい美しさに俺の心臓は鷲掴みにされた、彼女に幸せな笑顔を取り戻したいと心から願った。

「お、俺はハスミンさんが幸せそうに笑うところを見ていたいです! そんな悲しそうな顔しないでください……」

ハスミンはじっと俺を見つめ、心の底から幸せそうに微笑んだ。

「これでいい?」

演技なのか? 表情を誤魔化すのが上手いだなんて困る。

「…………月乃宮、何してる」

ぽんっと肩を叩かれて思わず叫んでしまった。周囲の視線まで集めてしまい、血の気が引いたばかりなのに顔が熱くなる。

「……お前、月乃宮の何だ」

「私は彼の願望から生まれたの」

「…………電波女、月乃宮は俺のものだ」

「じゃあ幸せにしてあげて。そしたら私は消えるから。ばいばーい」

ハスミンはヒラヒラと手を振って去っていく。

「……茶髪。そんなに女がいいのか? 女の何がそんなにいい!」

「セ、センパイ? 落ち着いてください、痛いですっ……」

両肩を強く掴まれて揺さぶられ、腕を上げられずに抵抗もできずただ痛みに耐える。

「……俺はお前を守ってやれる、俺はお前が失神するくらいのセックスができる、俺はお前を捨てたりしない……なのになんでっ! なんで女なんか見るんだ! 俺を見ろ、俺だけ見てろ! お前は俺のものだ!」

「いっ、痛いですっ、痛いですって……!」

「……っ、月乃宮…………悪い」

俺の肩から手を離し、早足で店を出る。慌てて追いかけてヘルメットを被り、バイクに跨ったセンパイにしがみついた。

走行中に話なんて出来るわけもなく、行先を聞くことも希望することも出来ず、空気の悪い工場地帯を抜けてセンパイの自宅までやってきてしまった。今日来る気はなかったのに、明日はミチと約束があるのに……明日までに帰してもらえるだろうか。

「………………月乃宮」

ヘルメットを脱ぐとバイクを停め終わったセンパイが俺を睨んだ。

「…………お前、いつか結婚するのか? 子供を作るのか? 俺に抱かれてあれだけ乱れるくせに、平気で子供の運動会見に行ったりするんだろ」

「センパイ……どうしたんですか。あの女の子は本当に何でもありませんよ」

あと半年で終わる関係なのに、どうして将来の話なんかするんだ? 俺がもし結婚しても子供を作っても、センパイには関係ないのに。

「……女なんてやめておけ、裏切られるだけだ」

「センパイ女性経験ないでしょ?」

「…………あの女は俺を捨てた。庇ってやったのに俺を連れて行ってくれなかった。俺の知らない男と一緒に逃げて、俺なんて忘れて新しい子供の運動会楽しそうに見てたんだ、俺のなんて一度も見にこなかったのに」

元カノではなさそうだ、まさか母親か?

「……頑張って見つけたのに。俺の顔見て嫌そうにして、私の子供に近寄るなって……俺も息子なのに。あの女を庇ったから俺は殴られたのに。あの女っ……!」

「センパイ、國行センパイ……ごめんなさい。トラウマ刺激しちゃったんですね……本当にごめんなさい。センパイ、家入りましょ? 暑いですから……」

太い腕を背負うようにセンパイを引っ張って、センパイのポケットを探って家の鍵を出す。中に入るとちょうど廊下を歩いていたセンパイの父親と目が合った。

「く、國行……」

怯えた声で名前を呼ばれたセンパイは俺を振り払って父親に飛びかかった。的確に顎を捉えて殴り倒し、馬乗りになってめちゃくちゃに拳を振るい、鈍い音を繰り返し響かせた。

「セ、センパイっ! やめてくださいセンパイ! そんなに殴ったら死んじゃいますよ!」

俺の力ではセンパイを止めるなんて不可能だ。焦りで回らない頭を使わなければと更に焦っていると、ダイニングから従兄が出てきた。

「國行、やめとけ」

「…………兄ちゃん」

センパイはピタリと止まったが、廊下には歯が何本か散らばっているしセンパイの手は血まみれだ。

「セ、センパイ……やめましょう? ね? ほら、立って」

冷静になったのかセンパイは俺の話を聞いてくれた。恐る恐る手を引いてみると着いてきた。

「月乃宮様、國行に手洗わせてください」

「は、はいっ」

「よろしくでーす…………おい、起きろ。てめぇの歯片付けろ。三秒以内に起きなきゃ残り全部折るぞ」

センパイを洗面所に連れていき、手を洗わせ、血が流れたら部屋に連れていった。

「センパイ……大丈夫ですか?」

ベッドに座らせたセンパイの前に立つと無言で抱き締められた。腹に顔を押し付けられて臍ピアスの違和感が膨らみ、性欲が顔を出す。

「國行センパイ、これ落ち着くんですか? なら好きなだけしてください」

短い黒髪を撫でると腹に押し付けられた顔がぐりっと動き、高い鼻の感触に昂ってしまう。

「…………月乃宮、肩、平気か?」

「あ、はい、もう何ともありません」

「………………悪かった。所詮俺はあの男の息子だ」

「気にしないでください、センパイは俺に怪我させたことはないじゃないですか。センパイのガタイから考えたら逆にすごいですよ、怒ってても加減してるんですからセンパイは優しいんです」

センパイは俺を抱き締めたままベッドに寝転がる。まず仰向けになって俺を上に乗せ、寝返りを打って二人共横向きに寝る。

「……月乃宮、お前は俺のものだよな?」

「はい……センパイのものです」

きっとストレス解消のためにも捌け口が必要なのだろう、それが俺だ。少しでもセンパイの心が楽になるなら俺はいくらでも身を任せる。

「…………この世で最も嫌いな男の血が半分、この世で最も嫌いな女の血が半分……この皮膚の下に山ほど流れてる」

俺のポロシャツを脱がすセンパイの胸元を撫でると彼はそう呟いた。

「………………最低最悪のハイブリッドだ」

かける言葉が見つけられない。スラックスを脱がす手を助けるため、無言のまま腰を浮かせる。

「……お前は俺の目が好きだったな、俺も好きだ。この世で最も尊敬する人に瓜二つなんだ」

センパイの父親の目はセンパイに似ていない。きっと祖父が三白眼で、センパイと従兄に隔世遺伝したのだろう。

「…………生まれて初めて庇われたんだ。あの人だけが俺のために怒ってくれた。なのに、親父はあの人を……兄ちゃんを売ったんだ」

従兄の瞳とセンパイの瞳は全然違う。造形は同じなのだが、従兄の目は虚ろで感情を感じさせない。けれどセンパイの目にはちゃんと表情がある。

「……そして、ちゃんと俺を好きだと言ってくれたのはお前が初めてだ」

「へっ? 元カレいっぱい居るんじゃ……」

「…………俺が怖くて従ってただけだ。お前は違うだろ?」

怖くて従っている部分もあるが、それだけではない。

「……だから、お前は絶対他の男にも女にも渡さない。お前だけは俺のものだ、絶対に他の奴には触れさせない……俺のものだ、俺のもの、俺だけのもの……」

中途半端な裸になった身体を抱き締められ、優しいキスをされ、不安になる。
もしかしてセンパイは俺が好きなんじゃないか? と──もし、もしそうなら、俺は今までセンパイをどれだけ傷付けたか分からない。

「…………俺はお前のことだけを考えている。だからお前も俺だけを見ていてくれ、月乃宮」

見た目に反して繊細な心を持つこの人の好意を、一方的に存在自体を繰り返し否定した。

「せん、ぱい……俺、センパイに酷いこと言いませんでした?」

「………………何も」

「センパイっ、俺のせいで傷付いたことありますよね……?」

返事をせずに俺の首筋にキスをして、優しく微笑んで俺の身体をまさぐる。敏感に育てられた身体を跳ねさせながらも俺の心はセックスどころじゃないと喚いていた。

「セ、センパイっ……センパイは俺のこと好きなんですよね?」

「…………バカを言うな、お前はオナホだ」

「オナホに今みたいな話します!? オナホが女の子と話してただけであんな取り乱します!? 嘘つかないでくださいよっ、俺のこと好きなんでしょ!? 今の言葉、まるでプロポーズでっ……好きじゃなきゃ、好きじゃなきゃそんなことっ……!」

ガバッと起き上がったセンパイは歯を食いしばり、乱暴に俺を仰向けにして覆いかぶさり、冷たい目で睨みつけた。

「……調子に乗るな。自惚れもいいところだ。お前はただのオナホだ」

「だ、だったら……だったら、なんで今日デートしてくれたんですか? なんでオナホが自分のこと好きかどうかそんなに気にするんですかっ?」

「…………黙れ」

ベルトを外す音が聞こえる。力強い手に足を開かされる。

「や……やだっ、センパイ、やめて……今抱かないで、ちゃんと話したい……」

「………………オナホと話すことなんてあると思うか?」

冷酷な視線だ、昼食中に感じていた温かみのある視線とは違う。

「ゃ、やだ……あっ! ぁ、あぁっ……ゃあぁああっ!? ぁ、あぐっ、ぁ、ああっ……い、たいっ……くるし……ゃ、あぁ……」

結腸まで一息で無理矢理ねじ込まれ、普段の挿入がいかに気を遣われたものだったか思い知る。

「せん、ぱい……やめてっ、せんぱぁい……」

センパイも辛そうな顔をしている。

「おねがい……ちゃんと、話してください。センパイの気持ち、教えてくださいっ……ぁ、まって、やだっ」

頭の下から枕が抜かれ、顔の上に置かれる。センパイは枕を押さえ付けているようで引っ張ってもズレもしない。

「せんっ、んんーっ! ん、んゔぅっ!? ゔ、ぅうぅううーっ!」

力任せな掘削が始まり、俺はくぐもった絶叫を響かせた。
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