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オシャレして彼氏とお家デートしてみた
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日が沈んでいく真っ最中の街を走るバイク。センパイの後ろに乗った俺には夕日なんて見えやしない。
「……月乃宮、見えるか? 空が赤い」
ぴったりと引っ付いた背に響く低い声に安心する。眠気すら覚える穏やかな心地と、エンジンの振動ですら発情してしまう淫乱な身体が同居する。
「…………着いたぞ」
俺の家に着いて、降りて、フルフェイスのヘルメットをセンパイに返す。ぺたんとなってしまっているだろうカッコ悪い髪を撫でられ、目を閉じる。
「……月曜日、迎えに来る。居てくれるんだな?」
「はい」
「…………お前はあの女とは違う。信じてる……月乃宮、いや、ノゾム」
すっかり日も落ちて、暗闇に紛れるように抱き締め合う。センパイの匂いを肺に取り込んで、バイクに乗る前から酷かった下腹の疼きがもはや痛みに変わる。
「センパイっ……センパイ、國行センパイ」
「……ん?」
抱いて。たった三文字の音が出てこずただセンパイを呼ぶ。優しく首を傾げたセンパイは俺の顎に手を添えた。
「…………キスか?」
違うけれど頷くと唇が重なる。舌を絡ませる幸福感は俺の足の力を奪い、センパイの腕に俺を支えさせてしまった。
「す、すいません……」
「……キスだけで腰砕けか? 可愛いな、月乃宮……愛してる」
また唇が重なる──ヒールの音が聞こえて、俺は慌ててセンパイの胸を押した。意外なことにセンパイはすぐにキスを終わらせてくれたけれど、間に合わなかった。
「ノゾム……? 何してんの」
「母さん……えっと……な、なんでもない」
「は? いや、誰よ、その大男」
キスしているところを母に見られてしまった。言い訳が思い付かず、ただ焦ってばかりいるとセンパイが一歩前に出た。背の高い彼に怯えているらしい母は一歩下がった。
「……はじめまして。形州 國行と申します。ノゾム君と同じ高校の三年生で、彼と真剣に交際させていただいています」
「え? あ、あぁ……そうですか、ご丁寧に……どうも」
母は困惑しながらも少し警戒を解き、一瞬俺を睨んだ。
「えぇと……ノゾムのことは好きにしてくださって構いませんけど、あまり……家の前でそういうことは」
「…………以後気を付けます」
気まずい空気が漂う。俺はそっとセンパイの傍を離れ、家に入りたいと静かに主張した。母はそれに気付いて便乗し、センパイを見つめたまま玄関に足を向ける。
「…………では、お母様、私はこれで」
静かな意思を察したセンパイは深々と頭を下げる。母はようやくセンパイから視線を外して玄関扉を開けた。扉を閉じてしばらくするとバイクの音が遠ざかっていった。母は覗き窓から外を見ていて、センパイが離れたと見ると俺の頬を思いっきり叩いた。
「なんなのあの大男。あんな犯罪者ヅラしてるくせに妙に丁寧で、気持ち悪い……」
無視して靴を脱ぐと胸ぐらを掴まれる。
「交際って……本当に付き合ってんの? 男と?」
何も言わずに俯いているとまた頭を叩かれる。
「返事しなさいよ。あんな誰が見てるか分からない道端で、家の前で、男とキスしてるってどういう神経してんの? また私が子育て失敗してるって、これだから片親はってバカにされるのよ? 何考えてんの?」
「知らねぇよ……お前の世間体なんか考えたことねぇよ」
また叩かれた。両頬が痛い。
「よりにもよってあんな犯罪者ヅラと……あんなイカついバイク乗ってる犯罪者ヅラが真剣交際なんてありえない。遊ばれてるだけよ、きっと仲間内で賭けてるのね、あの一年の生意気な金髪落とせるかーって」
「お前の昔話に興味ねぇよ」
突き飛ばされた。靴も脱げていたし、どこも掴まれていなかったので急いで自室に走った。扉の前に腰を下ろし、深いため息をつく。
「センパイの家泊まってけばよかったかな、朝送ってもらえばよかった…………おなかすいた」
扉の前に寝転がり、くぅくぅ鳴る腹を撫でる。臍ピアスに指が擦れてセンパイの愛撫を思い出す。
「センパイ、何食べてるんだろ……お兄さん料理美味いんだよな、食べてくればよかったなぁ」
腹の虫をなだめているうちにまた身体が抱かれたがる、センパイの顔を思い出したせいか腸壁が疼き始める。どうせ母が眠るまでは食事も風呂もお預けだ、なら時間潰しにバイブで遊ぼう。
「絶対漏らすし……コンドームつけとこ」
担任に渡されたイボだらけのバイブに唾液を垂らし、ベッドに上体を預けて床に膝をつき、腰を突き出す。
「んっ……あっ、ぁあっ! はぁんっ……すごいっ、イボイボ……ぁ、あっ、しゅごっ……こりこり、するっ……」
イボの一つ一つが腸壁にくい込み、ひだを弾く。身体を跳ねさせながら全て挿入し、胸をときめかせながらスイッチを入れた。
「あっ……! ぁ、あぁっ! あぁああっ! しゅごいっ、ぶるぶるっ、ひぃいんっ……! ぁあああっ……おなかっ、おなかぐじゅぐじゅになりゅぅぅっ……!」
もう性器ではないなんて言い訳は出来なくなった淫らな穴を血の通わない玩具に掻き回されて射精し、コンドームの中に精液を溜めていく。その日は日付が変わるまで絶頂を繰り返した。
翌朝、母が出社して俺も朝食を食べて、シャワーを浴びてからしばらくしてインターホンが鳴った。何も考えず覗き窓を使うこともなく玄関扉を開けた。
「つ、つつ、月乃宮くん……お、おはよっ。もうこんにちはかな……?」
「ミチ……えっ? ミ、ミチ?」
扉を開けると愛らしい少女のような美少年が立っていた。
「ミチ……だよな? え、何……どうしたんだよその格好」
長さがバラバラの髪の中から長いものを探し出し、なんとか結んだピッグテール。前髪に分け目を作り、いつも隠しているつぶらな瞳を出して、潤ませて、可愛らしく俺を見上げる。
ぶかっとした白いパーカーに、パーカーの裾に隠れそうなホットパンツ。黒のニーハイソックス。僅かな隙間の太腿に劣情を煽られる。
「き、ききっ、如月君に相談したんだっ。お、おお、お家デートっ……何着てけばいいかなって。そそ、そしたら、家に寄れって言われて、ふ、ふふ、服っ……貸してもらった。お姉さんのだって……」
よく似合っている。可愛らしい。けど、分からないことがある。
「なんでレンに相談したんだよ」
ミチはレンを恋敵だと思っているはずだ、そんな相手に頼るだろうか。
「ほ、ほほ、他に連絡先知ってる人居なかったしっ……き、君は如月君のこと好きだから、如月君に牽制みたいなのしたかったんだ。ぼ、僕っ、如月君に言ってやったんだよ! 月乃宮君にすっごいセックスを期待されてるんだって……!」
「……言ってるだろ、俺はレンのこと好きだけど、レンの方は全然だって」
「ほ、本当だよねっ。僕のコーデこんなに真剣にしてくれたんだから……き、君、脈ナシ確定だよっ! か、かか、かわいそ……」
最大のライバルに不戦勝、ミチとしては嬉しいだろう。けれど、俺は失恋しているのだからそんなふうに喜ばれると腹が立つ。
「ヘラヘラしやがって……人の失恋がそんなに面白いかよ」
慌てて謝ってくるだろうと予想して、少し拗ねてみる。
「面白いに決まってるよ。だって、これで、君は僕だけのものなんだから」
ミチは服に合わないボロ靴を履いたまま、玄関に立ったまま、いつも以上に低い位置から俺に抱きついてきた。
「大好きだよ……月乃宮君」
「ミチっ……!」
やばい、可愛い。顔が可愛いのは知っていたが、ここまで可愛いとは知らなかった。なにこの美少女。やばい、やばい、やばい、押し倒したい。
「ふふっ……そんな顔しないで月乃宮君。如月君は君に振り向いてくれないけど、僕はずーっと君だけを見てるよ」
前髪で顔を隠しているのはもったいないと思っていたが、俺が間違っていた、隠していて大正解だ。こんな可愛い顔丸出しにされてたら俺の心臓がもたないし、イジメっ子グループに即日集団レイプだ。
「つ、月乃宮君……? 如月君に想われてなかったのがそんなにショック? しし、嫉妬しちゃうなぁっ……! ね、上がっていいよね」
靴を脱いで小さな足を俺と同じ位置に上げる。それでもミチの頭は俺の肩辺りだ。間近に来た可愛い顔に思わず後ずさり、壁を背にしてずるずると座り込む。
「ち、近寄るな……」
「へっ……? ひ、ひひっ、酷いよ月乃宮くんっ! そりゃ僕はちょっと卑怯な手を使ったけど、ででっ、でも! どうせ君の恋は叶わないんだからっ……!」
伸ばした足の上にミチが跨る。鼻先が触れ合うような距離に来て、まんまるの瞳が潤んでいる愛らしさに心臓が本当に止まりそうになる。
「近寄るなってば可愛いんだよお前! キュン死するわ! ときめきで死ぬ! 頼むから寄るな、ちょっとずつ慣らすからもうちょい離れろ!」
「へ……? な、何言ってるの……?」
「首傾げるなよ可愛いな! あぁもう一挙一動が可愛いっ……ちょ、ちょっとマジで、離れて……」
困惑した顔も可愛い。困惑していながらもミチは立ち上がり、俺から一歩離れた。俺も立ち上がって目を閉じ、深呼吸をし、改めてミチを見つめた。
「はぁーっ……ピッグテール最高かよ。可愛い以外に意味のない無駄結び大好き」
「え? ぁ、か、可愛い? 本当……!? ありがとうっ、やっぱり月乃宮君は二つ結び好きなんだね」
結ばなくても邪魔にならない長さなのに、ミチの長さがバラバラな黒髪は二つ結びにされている。もちろん結べない長さの髪の方が多いから、普段のミチに触覚が生えているような感じだ。
「ちょっと触っていい? あっ……すかすか。プードルかよっ……! 何この細さ、守りてぇ……!」
「ふぇっ!? そそ、そんな急に……えへへ、月乃宮君にぎゅってされるの好き……」
ぶかぶかの白いパーカーの上から抱き締めると、もふもふの犬に触れた時のような驚きがある。中身が細い、か弱い、可愛い。
「屈むぞ……ぁー、あー……はい天才。大きめのパーカーにホットパンツ隠れてパッと見ノーパンスタイル最高。そして絶対領域マジ絶対領域。太腿、太腿ぉ……細いな。もうちょいムチムチしてる方が好きかも」
「え? ちょ、ちょっと……下は恥ずかしいからっ、ぁ、ああ、あんまり見ないでっ!」
俺の奇行に怯えているのか内股になってしまっているミチの前に屈み、ホットパンツとニーハイソックスの隙間を凝視する。
「このニーハイ 肉乗るに肉乗ってる感じが最高なんだよなぁ!」
「ひっ……!?」
きゅっと太腿を締め付けるニーハイソックス、キツめのゴムによって太腿に段差が出来ている。しかしミチは痩身のため、ハスミンのような俺好みのむちっとした太腿ではないのが残念だ。
「段差愛おしい……太腿、太腿ぉっ……ふとももぉ…………ミ、ミチ? ちょっと頼み聞いてくれ、一生のお願いだ」
「あ、やっと話通じる……お願い? うん、月乃宮君の頼みならなんだって……何?」
「この太腿段差のとこで素股させてくれ」
「え……? えっと、素股って何?」
「知らないのか? えーっと……俺のを、太腿で挟んで、しこしこ」
「えっ、ぁ、ゃ、で、でで、でもっ、これ如月君のお姉さんのらしいしっ……今日帰る時に寄って返すつもりだしっ……ぅ、でも、月乃宮君がこんなに僕に……」
悩んでいるミチも愛おしい。股間が痛い。もう勝手に挟ませようかな……流石にダメか。
「はぁ……分かったよ、我慢する。じゃあ脱いで素股させてくれ。もうちょい堪能してから……」
ミチの太腿と太腿の間に鼻をねじ込む。額に触れる膨らみもたまらない、美少女のような彼のホットパンツの中に雄として優秀過ぎる巨根があるかと思うとゾクゾクする……ん? なんか上から発信音聞こえるぞ?
「ぁ、も、ももっ、もももも…………きき、如月君っ! 元気そうでよかった……あのね、靴下、月乃宮君が靴下を精液でベタベタにしたいって……そ、そうっ、太腿のところ! 素股したいって。えっと、弁償するから……え? 汚していいの? お姉さんもう取りに来ない? そっか……ありがとう」
ピッ、と電話を切った音と共にミチは満面の笑みで俺を見下ろす。
「如月君優しいね!」
素股の許可が降りた歓喜を表現すればいいのか、レンに性癖がバレた挙句プレイ内容まで語られた悲しみを表現すればいいのか、俺はもう考えたくもない。
「……月乃宮、見えるか? 空が赤い」
ぴったりと引っ付いた背に響く低い声に安心する。眠気すら覚える穏やかな心地と、エンジンの振動ですら発情してしまう淫乱な身体が同居する。
「…………着いたぞ」
俺の家に着いて、降りて、フルフェイスのヘルメットをセンパイに返す。ぺたんとなってしまっているだろうカッコ悪い髪を撫でられ、目を閉じる。
「……月曜日、迎えに来る。居てくれるんだな?」
「はい」
「…………お前はあの女とは違う。信じてる……月乃宮、いや、ノゾム」
すっかり日も落ちて、暗闇に紛れるように抱き締め合う。センパイの匂いを肺に取り込んで、バイクに乗る前から酷かった下腹の疼きがもはや痛みに変わる。
「センパイっ……センパイ、國行センパイ」
「……ん?」
抱いて。たった三文字の音が出てこずただセンパイを呼ぶ。優しく首を傾げたセンパイは俺の顎に手を添えた。
「…………キスか?」
違うけれど頷くと唇が重なる。舌を絡ませる幸福感は俺の足の力を奪い、センパイの腕に俺を支えさせてしまった。
「す、すいません……」
「……キスだけで腰砕けか? 可愛いな、月乃宮……愛してる」
また唇が重なる──ヒールの音が聞こえて、俺は慌ててセンパイの胸を押した。意外なことにセンパイはすぐにキスを終わらせてくれたけれど、間に合わなかった。
「ノゾム……? 何してんの」
「母さん……えっと……な、なんでもない」
「は? いや、誰よ、その大男」
キスしているところを母に見られてしまった。言い訳が思い付かず、ただ焦ってばかりいるとセンパイが一歩前に出た。背の高い彼に怯えているらしい母は一歩下がった。
「……はじめまして。形州 國行と申します。ノゾム君と同じ高校の三年生で、彼と真剣に交際させていただいています」
「え? あ、あぁ……そうですか、ご丁寧に……どうも」
母は困惑しながらも少し警戒を解き、一瞬俺を睨んだ。
「えぇと……ノゾムのことは好きにしてくださって構いませんけど、あまり……家の前でそういうことは」
「…………以後気を付けます」
気まずい空気が漂う。俺はそっとセンパイの傍を離れ、家に入りたいと静かに主張した。母はそれに気付いて便乗し、センパイを見つめたまま玄関に足を向ける。
「…………では、お母様、私はこれで」
静かな意思を察したセンパイは深々と頭を下げる。母はようやくセンパイから視線を外して玄関扉を開けた。扉を閉じてしばらくするとバイクの音が遠ざかっていった。母は覗き窓から外を見ていて、センパイが離れたと見ると俺の頬を思いっきり叩いた。
「なんなのあの大男。あんな犯罪者ヅラしてるくせに妙に丁寧で、気持ち悪い……」
無視して靴を脱ぐと胸ぐらを掴まれる。
「交際って……本当に付き合ってんの? 男と?」
何も言わずに俯いているとまた頭を叩かれる。
「返事しなさいよ。あんな誰が見てるか分からない道端で、家の前で、男とキスしてるってどういう神経してんの? また私が子育て失敗してるって、これだから片親はってバカにされるのよ? 何考えてんの?」
「知らねぇよ……お前の世間体なんか考えたことねぇよ」
また叩かれた。両頬が痛い。
「よりにもよってあんな犯罪者ヅラと……あんなイカついバイク乗ってる犯罪者ヅラが真剣交際なんてありえない。遊ばれてるだけよ、きっと仲間内で賭けてるのね、あの一年の生意気な金髪落とせるかーって」
「お前の昔話に興味ねぇよ」
突き飛ばされた。靴も脱げていたし、どこも掴まれていなかったので急いで自室に走った。扉の前に腰を下ろし、深いため息をつく。
「センパイの家泊まってけばよかったかな、朝送ってもらえばよかった…………おなかすいた」
扉の前に寝転がり、くぅくぅ鳴る腹を撫でる。臍ピアスに指が擦れてセンパイの愛撫を思い出す。
「センパイ、何食べてるんだろ……お兄さん料理美味いんだよな、食べてくればよかったなぁ」
腹の虫をなだめているうちにまた身体が抱かれたがる、センパイの顔を思い出したせいか腸壁が疼き始める。どうせ母が眠るまでは食事も風呂もお預けだ、なら時間潰しにバイブで遊ぼう。
「絶対漏らすし……コンドームつけとこ」
担任に渡されたイボだらけのバイブに唾液を垂らし、ベッドに上体を預けて床に膝をつき、腰を突き出す。
「んっ……あっ、ぁあっ! はぁんっ……すごいっ、イボイボ……ぁ、あっ、しゅごっ……こりこり、するっ……」
イボの一つ一つが腸壁にくい込み、ひだを弾く。身体を跳ねさせながら全て挿入し、胸をときめかせながらスイッチを入れた。
「あっ……! ぁ、あぁっ! あぁああっ! しゅごいっ、ぶるぶるっ、ひぃいんっ……! ぁあああっ……おなかっ、おなかぐじゅぐじゅになりゅぅぅっ……!」
もう性器ではないなんて言い訳は出来なくなった淫らな穴を血の通わない玩具に掻き回されて射精し、コンドームの中に精液を溜めていく。その日は日付が変わるまで絶頂を繰り返した。
翌朝、母が出社して俺も朝食を食べて、シャワーを浴びてからしばらくしてインターホンが鳴った。何も考えず覗き窓を使うこともなく玄関扉を開けた。
「つ、つつ、月乃宮くん……お、おはよっ。もうこんにちはかな……?」
「ミチ……えっ? ミ、ミチ?」
扉を開けると愛らしい少女のような美少年が立っていた。
「ミチ……だよな? え、何……どうしたんだよその格好」
長さがバラバラの髪の中から長いものを探し出し、なんとか結んだピッグテール。前髪に分け目を作り、いつも隠しているつぶらな瞳を出して、潤ませて、可愛らしく俺を見上げる。
ぶかっとした白いパーカーに、パーカーの裾に隠れそうなホットパンツ。黒のニーハイソックス。僅かな隙間の太腿に劣情を煽られる。
「き、ききっ、如月君に相談したんだっ。お、おお、お家デートっ……何着てけばいいかなって。そそ、そしたら、家に寄れって言われて、ふ、ふふ、服っ……貸してもらった。お姉さんのだって……」
よく似合っている。可愛らしい。けど、分からないことがある。
「なんでレンに相談したんだよ」
ミチはレンを恋敵だと思っているはずだ、そんな相手に頼るだろうか。
「ほ、ほほ、他に連絡先知ってる人居なかったしっ……き、君は如月君のこと好きだから、如月君に牽制みたいなのしたかったんだ。ぼ、僕っ、如月君に言ってやったんだよ! 月乃宮君にすっごいセックスを期待されてるんだって……!」
「……言ってるだろ、俺はレンのこと好きだけど、レンの方は全然だって」
「ほ、本当だよねっ。僕のコーデこんなに真剣にしてくれたんだから……き、君、脈ナシ確定だよっ! か、かか、かわいそ……」
最大のライバルに不戦勝、ミチとしては嬉しいだろう。けれど、俺は失恋しているのだからそんなふうに喜ばれると腹が立つ。
「ヘラヘラしやがって……人の失恋がそんなに面白いかよ」
慌てて謝ってくるだろうと予想して、少し拗ねてみる。
「面白いに決まってるよ。だって、これで、君は僕だけのものなんだから」
ミチは服に合わないボロ靴を履いたまま、玄関に立ったまま、いつも以上に低い位置から俺に抱きついてきた。
「大好きだよ……月乃宮君」
「ミチっ……!」
やばい、可愛い。顔が可愛いのは知っていたが、ここまで可愛いとは知らなかった。なにこの美少女。やばい、やばい、やばい、押し倒したい。
「ふふっ……そんな顔しないで月乃宮君。如月君は君に振り向いてくれないけど、僕はずーっと君だけを見てるよ」
前髪で顔を隠しているのはもったいないと思っていたが、俺が間違っていた、隠していて大正解だ。こんな可愛い顔丸出しにされてたら俺の心臓がもたないし、イジメっ子グループに即日集団レイプだ。
「つ、月乃宮君……? 如月君に想われてなかったのがそんなにショック? しし、嫉妬しちゃうなぁっ……! ね、上がっていいよね」
靴を脱いで小さな足を俺と同じ位置に上げる。それでもミチの頭は俺の肩辺りだ。間近に来た可愛い顔に思わず後ずさり、壁を背にしてずるずると座り込む。
「ち、近寄るな……」
「へっ……? ひ、ひひっ、酷いよ月乃宮くんっ! そりゃ僕はちょっと卑怯な手を使ったけど、ででっ、でも! どうせ君の恋は叶わないんだからっ……!」
伸ばした足の上にミチが跨る。鼻先が触れ合うような距離に来て、まんまるの瞳が潤んでいる愛らしさに心臓が本当に止まりそうになる。
「近寄るなってば可愛いんだよお前! キュン死するわ! ときめきで死ぬ! 頼むから寄るな、ちょっとずつ慣らすからもうちょい離れろ!」
「へ……? な、何言ってるの……?」
「首傾げるなよ可愛いな! あぁもう一挙一動が可愛いっ……ちょ、ちょっとマジで、離れて……」
困惑した顔も可愛い。困惑していながらもミチは立ち上がり、俺から一歩離れた。俺も立ち上がって目を閉じ、深呼吸をし、改めてミチを見つめた。
「はぁーっ……ピッグテール最高かよ。可愛い以外に意味のない無駄結び大好き」
「え? ぁ、か、可愛い? 本当……!? ありがとうっ、やっぱり月乃宮君は二つ結び好きなんだね」
結ばなくても邪魔にならない長さなのに、ミチの長さがバラバラな黒髪は二つ結びにされている。もちろん結べない長さの髪の方が多いから、普段のミチに触覚が生えているような感じだ。
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「屈むぞ……ぁー、あー……はい天才。大きめのパーカーにホットパンツ隠れてパッと見ノーパンスタイル最高。そして絶対領域マジ絶対領域。太腿、太腿ぉ……細いな。もうちょいムチムチしてる方が好きかも」
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俺の奇行に怯えているのか内股になってしまっているミチの前に屈み、ホットパンツとニーハイソックスの隙間を凝視する。
「このニーハイ 肉乗るに肉乗ってる感じが最高なんだよなぁ!」
「ひっ……!?」
きゅっと太腿を締め付けるニーハイソックス、キツめのゴムによって太腿に段差が出来ている。しかしミチは痩身のため、ハスミンのような俺好みのむちっとした太腿ではないのが残念だ。
「段差愛おしい……太腿、太腿ぉっ……ふとももぉ…………ミ、ミチ? ちょっと頼み聞いてくれ、一生のお願いだ」
「あ、やっと話通じる……お願い? うん、月乃宮君の頼みならなんだって……何?」
「この太腿段差のとこで素股させてくれ」
「え……? えっと、素股って何?」
「知らないのか? えーっと……俺のを、太腿で挟んで、しこしこ」
「えっ、ぁ、ゃ、で、でで、でもっ、これ如月君のお姉さんのらしいしっ……今日帰る時に寄って返すつもりだしっ……ぅ、でも、月乃宮君がこんなに僕に……」
悩んでいるミチも愛おしい。股間が痛い。もう勝手に挟ませようかな……流石にダメか。
「はぁ……分かったよ、我慢する。じゃあ脱いで素股させてくれ。もうちょい堪能してから……」
ミチの太腿と太腿の間に鼻をねじ込む。額に触れる膨らみもたまらない、美少女のような彼のホットパンツの中に雄として優秀過ぎる巨根があるかと思うとゾクゾクする……ん? なんか上から発信音聞こえるぞ?
「ぁ、も、ももっ、もももも…………きき、如月君っ! 元気そうでよかった……あのね、靴下、月乃宮君が靴下を精液でベタベタにしたいって……そ、そうっ、太腿のところ! 素股したいって。えっと、弁償するから……え? 汚していいの? お姉さんもう取りに来ない? そっか……ありがとう」
ピッ、と電話を切った音と共にミチは満面の笑みで俺を見下ろす。
「如月君優しいね!」
素股の許可が降りた歓喜を表現すればいいのか、レンに性癖がバレた挙句プレイ内容まで語られた悲しみを表現すればいいのか、俺はもう考えたくもない。
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