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後輩の前で怒られてしまった

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一眠りを終え、俺はセンパイと風呂に向かった。

「二人で入るには狭くないですか?」

「……俺は後で入る。お前の中に入れた分をまだ出してないからな……俺が責任を持って掻き出す」

「ぁ……はい」

「……出さないと腹が痛くなるらしいからな」

俺は全裸で浴室に入り、四つん這いになり開け放った扉の外へ尻を突き出す。センパイは服を着たまま脱衣場で膝立ちになり、俺の尻穴に中指と薬指を挿入した。

「ひぁっ……! ぁ、あぁっ、んっ、んぁあっ!」

骨太のごつごつとした指は奥に放たれた精液を掻き出すのではなく、俺の前立腺を責めた。

「しぇんっ、ぱぁいっ! これっ、ほんとに、掻き出してますっ……?」

「……あぁ」

快感が欲しくてぷくっと腸壁に突き出した前立腺をごりごりと指先で抉られ、俺はセンパイには見えないのに舌を突き出して悦んだ。

「ぁひっ、ひ、ひぃんっ! 嘘っ、だぁっ……いいとこっ、こりこりしてるぅっ! しぇんぱいぃっ、まじめ、にぃっ……!」

「……指じゃ届かないみたいだな」

「んぁあっ! ぁ、はぁっ……」

指が抜け、絶頂寸前で止められたことに不満を覚えつつも、いつまでも続けられなくてよかったと安堵する。

「…………もっと奥まで届くもので掻き出してやるからな」

「え……? ぁひぃいんっ!? ぁ、あっ、ぁああっ! しぇんぱっ、こりぇっ! こりぇっ、らめぇえっ!」

腰を掴まれたかと思えば浴室から下半身を引きずり出され、陰茎で激しく掘削される。

「……精液を掻き出してるだけだ、何がダメなんだ?」

「ちがっ……こりぇっ、せっくしゅうっ! 奥っ、ぐりぐりぃっ、ひぃっいっ……!」

「…………セックス、好きだろう?」

「んぁっ! ぁ、あっ……しゅきっ、せっくしゅっ、しゅきぃっ! おなかしあわしぇっ……ぁああっ、イくぅぅっ!」

腸内の弱点を余すとこなくえぐられて、幸せを感じながら絶頂を迎えた。センパイは俺の絶頂を確かめると勃起したままの陰茎を抜き、俺の腕を掴んで引っ張り起こした。

「しぇん、ぱい……?」

浴室と脱衣場の境目に座らされ、センパイが自分の陰茎を扱くのを眺める。大きな手が巨根を扱くのは俺の自慰とはスケールが違って、なんだかじっと見ていられた。

「……月乃宮、口を開けろ」

「ぁー……」

言われた通りに口を開けると舌を摘んで引っ張り出され、舌の腹に乗せるようにたっぷりと射精された。

「ん、む……」

「……風呂を出るまで咀嚼してろ。上がったら口の中を確認するからな。飲むなよ」

「んーぅ」

「…………返事か? それは。あぁ、いい返事だ。お前の言った通りうちの風呂は狭いからな、一人で入れ」

一人になるのはまだ少し怖い。けれど、センパイの精液を口の中に入れていれば何にも襲われない気がした。


髪も身体も完璧に綺麗にし、浴室を出る。

「……上がったか」

スマホ片手にセンパイは俺を待っていた。俺は言われる前に口を開け、たっぷりと咀嚼した精液を見せた。

「…………流石だ。よく出来たな、月乃宮……偉いよ。飲んでいい」

ごくりと飲み込むとセンパイはキスをしてくれた。嬉しくなって笑っているともう一度してくれた。

「えへへへ……くーにゆーきせーんぱーい」

濡れた身体のまま抱きつき、怒られるかと後から気付いたがセンパイは優しく見下ろして頭を撫でてくれた。

「……よしよし。俺は今から風呂だ、先に夕飯を食べてろ」

「センパイ待たなくていいんですか?」

「…………構わない。疲れただろ?」

「まぁ……センパイのおかげで」

ぽんぽんと頭を撫でられ、着替えらしいトレーナーを渡される。俺が身体を拭いている間にセンパイは服を脱ぎ、浴室に入った。


髪を乾かし終え、気遣いに甘えて夕飯を食べようとダイニングキッチンに向かうと、物陰からセンパイの従兄がぬっと顔を出した。

「ひぃっ……!? び、びっくりさせないでくださいよ!」

「驚きました? それは申し訳ない」

感情のない謝罪だ、流石社会人。そんな悪態を心の中でつきながらコップに麦茶を入れる。

「あの、國行センパイに先に食ってろって言われたんですけど」

「今醤油につけてますよ、揚げますか?」

「お兄さんが作ってくれるんですか? ありがとうございます、お願いします」

従兄はエプロンをつけると一口大に切った鶏肉に生地をつけて揚げていく。

「唐揚げじゃないんですか?」

「天ぷらですよ。とり天ですとり天」

「鳥の天ぷらですか……食べたことないです」

「なんか知らないんですけど地元出てから滅多に食べなくなっちゃったんですよねー、不思議ー」

郷土料理なのかな?

「あの……お兄さん、ミチ、どうでした?」

「あぁ、取り込まれかけてたんですけど……ま、何とかなりましたよ」

「そうなんですか……! よかった、ありがとうございます」

安堵して椅子に座り、天ぷらの完成を待つ。暇潰しにスマホを見るとミチからの不在着信とメッセージが何件もあった、要約すると「扉をずっと誰かが叩いている音がして怖かった」と……やはりバールで殴っていたのだろうか。

「それより月乃宮様、あなた……なんでもするって約束しましたよね? 病院で。忘れたとは言わせませんよ」

切れ長の三白眼が俺を見つめる。獲物を捕らえる獣のような鋭い視線に身が強ばる。

「な、何すればいいんですか?」

「何させられると思ってます?」

「え……? あ、あの……」

やはりセックスだろうか。従兄は俺に興味がないと思っていたが、俺はなんでもすると言ってしまったのだからセックスを要求するに決まっている。

「セ、セックス……ですよね」

「頭ん中そればっかりですか? まるで中坊ですね」

鼻で笑われた。

「ち、違うんですか? 言われた時からずっとそういうことだと思ってたんですけど」

「俺があなたを抱きたがるとお思いで? 自惚れが酷いですね」

どうしてそこまで言われなきゃいけないんだ?

「ほ、本当にドSですね……早く何すればいいか言ってくださいよ」

「付き合ってください」

「は……?」

付き合って? 恋人になれと? 一度で済むセックスの方がマシだ。従兄は俺のことをセンパイの彼氏だと思っているんだろう? どうして従弟の彼氏を取ろうとするんだ。やっぱり頭おかしいんだこの人。

「この地域の怪異が首塚の怪異に反応して活性化してまして、俺に除霊依頼が来てるんですけど、幽霊って必ず現れてくれるものじゃないんですよね。でも霊媒体質と化してる月乃宮様が居ると楽に済みそうだなぁっと。だから月乃宮様、俺の仕事に付き合ってください」

「紛らわしい言い方しないでくださいよっ!」

従兄は虚ろな目をしたまま笑っている。わざと変な言い方をして俺をからかっているんだ。

「それ、廃墟とか行くんですよね……ぅぅ、やっぱり、その……いえ、分かりました。行きます」

センパイが風呂から出るまではまだ時間がありそうだ。色々聞いておこう。

「あの……病院にいた時、なんでバール持ってたんですか?」

「バールは勝利をもたらすんですよ。約束された勝利のエクスカリバールって言うでしょう? それに俺も男の子ですからね、手に馴染む長物が好きなんですよ。月乃宮様も長い棒が好きでしょう?」

「え……? いえ、別に……」

「男についてる長い棒が大好きなんでしょう?」

「ド下ネタのドセクハラぁっ!」

なんなんだこの人。いい人なのかダメな人なのか何なのか全く分からない。

「はぁ……ぁ、そうだ、これ聞き方あってるか分からないんですけど、お兄さん……どういう人なんですか? 名前も、仕事も……よく分からないんです」

「ミステリアスって魅力じゃないですか?」

「恐怖ですよ……」

センパイに似ているからまだ話せているが、ヤクザのような見た目と腰の低さのギャップも怖い。一番怖いのは目だ、ニコニコ笑っていても目は一切笑っておらず、俺の方を向いていてもどこを見ているか分からないほど虚ろなんだ、怖すぎる。

「真名って分かります? 怪異や幽霊に名前知られるのってそれだけでリスクなんですよ。名前を呼ばれて返事をするのがトリガーになる現象なんていくらでもありますからね、ひょうたんに吸い込まれるやつとかは知ってるでしょ?」

ひょうたん……西遊記だっけ?

「だから名前は教えません。仕事は社長秘書です。社長の裏家業がオカルト関係なので、俺は社長に霊感分けてもらって使いっ走りやってんですよ」

「大変……ですね」

従兄は富豪の養子に出されたんだっけ? センパイには売られたようなものだと聞いている。両親が死んで、親戚に売られて、危険な仕事を押し付けられて──可哀想な人だ。

「そうですね、大変なんですよ……ふふっ、社長にしんどいことやらされてるんです……! 毎日トヘトヘになるまでこき使われてっ……!」

「ヘトヘト……? ですよね?」

「ふ、ふふ……やばい、揚げ物って油はねて痛いんですけど、社長のこと考えてたら全裸でやりたくなってきた……! 脱いでいいですか?」

「俺、あなたが分かりません! ダメです危ないです!」

「もう一人前揚がったんですけどね。どーぞ、おあがりください」

またからかわれたのだろうか……? 困惑する俺の前に大皿に盛られたキャベツととり天、ご飯と味噌汁が並べられる。

「わ……! 美味しそう、定食みたい、ご馳走ですね! いただきまーす!」

普段の生活では食べない品数に気分が高まる。早速とり天をタレに絡めて食べ、思わず頬を押さえる。

「美味しい……! お味噌汁……こっちも美味しい!」

味噌汁を飲んだのはいつぶりだろう、最後はきっと小学校の給食だったから……少なくとも四年ぶり?しなしなになってないキャベツも数年ぶりだ。

「はぁっ……お口が幸せです」

「リアクションいいですねー」

従兄は俺の反応が世辞だと思っているのだろうか。

「…………上がったぞ」

タンクトップに短パン、頭にタオルを被せたセンパイが隣に座る。胸筋が気になってセンパイの方を向くと、彼も俺を見つめていた。

「……とり天か」

「はい、初めて食べました。ぁ、センパイの分まだまだかかりそうですし、俺の分どうぞ」

「…………いいのか」

「はい、センパイの揚がったら返してください」

箸の持ち手をセンパイに向けたが、センパイは無言で口を開けた。

「もぉ……」

大きな口に一切れ入れてやる。俺が入れてやったとり天をもぐもぐ食べているセンパイはどこか幼く見えた。

「ね、美味しいでしょ」

「…………俺は唐揚げの方が好きだ」

「そ、そうですか……」

「……副菜はなしか? 味噌汁……随分具が少ないな。キャベツの切り方も荒い。タレは……市販品か。珍しく手を抜いてるな」

意外と食事にうるさいんだな。焦げていても無言で完食しそうなのに。

「しゃあしぃな! お前何でんいいっち言うたやろ! 食いてぇんあるんなら先言えちゃ! 文句あるんなら食いな!」

従兄が怒った。どこの方言なんだろう、西の方だとは思うけど。

「……別に食べたくないなんて言ってない」

「あぁ!?」

「…………食べたい、です。俺の分もお願いします」

身長二メートル超えのセンパイが何故か小さく見える。

「ごめんなさいが聞こえんかった」

「……ごめんなさい。食べさせてください」

「よし、食えちゃ」

少し乱暴にセンパイの分が配膳される。センパイは落ち込んだままモソモソと食事を進める。
気まずい空気の中俺は完食し、それを告げようと手を合わせたその時、小鉢が食卓に並び始める。

「切り干し大根、ジャコのあえもん、こいもの煮物、ほうれん草のおひたし……ほらよ副菜だ、満足かよ國行」

「…………あぁ」

「あぁ!?」

「……満足です、ありがとうございます、生意気言ってごめんなさい」

センパイが負けている……喧嘩無敗のセンパイのこんな情けない姿を見られるのは俺だけだろうなと思うと胸が温かくなる。

「よし、食え。月乃宮様もどーぞー、ぁ、とり天まだ揚げれますよー?」

「ぁ、お願いします……」

「はぁーい」

副菜もどれも美味しい。自然と笑顔になってしまう。

「……兄ちゃん、俺ももう少し欲しい」

「あぁ?」

「…………もう二切れ、いただきたい……です」

「はぁーいお兄ちゃん可愛い従弟のために頑張っちゃう!」

「……お願いします」

センパイを見上げると目を逸らされた。情けない姿を見られたのが恥ずかしいのかな、二メートル越えの大男が可愛く思えるなんて俺もいよいよだな。
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