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帰ったら後輩が迫ってきたので抱いてみた
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センパイの部屋は当然無人、扉を閉めれば無音、ベッドに寝転がればセンパイの匂いに包まれる。
「んっ……」
きゅん、と疼く下腹。
「ぅぅ…………この変態」
ベッドに居るのは危険だ、床に座って待とう。
スマホを充電しながら適当な音楽をかけ、暇つぶしになる物を探した俺の手はベッドの下に伸びた。
「なんかある。まさかエロ本……? センパイ何読むんだろ」
手に当たった本を引っ張り出してみると、どーんと「不良受け特集」の文字があり、金髪にピアスの不良少年が制服をはだけさせているイラストが表紙の雑誌だった。
「うん……読みたくはないな」
お気に入りの話があるのか付箋がついている。読みたくはないが、好奇心はある。
「後輩調教……」
タイトルを少し読んで本を閉じ、ベッドの下に戻した。薄っぺらい本が手に触れたので同人誌か何かだろうと思って出してみると、大学のパンフレットだった。
「センパイ大学行く気あるんだ……」
センパイの第一志望だろう大学、そこはかなり有名なところで学費も高い。パンフレットを開くとメモが落ちた。学費を計算した跡だ。従兄から振り込まれている生活費もいつか返したいと思っているようで、従兄の学費を出すという申し出を断るつもりだともあった。
「…………センパイ」
大切に貯めていただろう金をギャンブルに使った彼の父親に腹が立った。
「センパイ……その割に私服ブランド物ばっかなんだよな」
部屋を見渡してみればブランド物の鞄がいくつか目についた。少し緩んでいた涙腺が引き締まった。
センパイの人柄がよく分からない。
パンフレットをベッドの下に戻し、床に寝転がってクッションを枕に仮眠を取る。どれだけ眠っただろう、扉を叩く音で目を覚ました。
「はーい……ぁ、お兄さん」
「お昼食べません?」
もうそんな時間か。出来れば従兄の誘いには乗りたくないが、断るのも怖くて頷くとダイニングキッチンに着れてこられた。
「お兄さんが料理するんですか?」
「料理ってほどのものでもありませんけどね」
そう言いながら彼は手際よく準備を進めていく。ホットケーキミックスに牛乳に卵……ん? 何、おやつ?
「座って待っててください」
「あ、はい……すいません」
手元を覗いていたらやんわり怒られた。大人しく座って待って十数分後、フルーツが盛られたパンケーキが目の前に置かれた。
「コーヒーと紅茶どっちにします?」
「あ、コーヒーで……ありがとうございます、何から何まで」
イチゴにキウイにオレンジにブルベリーに……俺の大好きなホイップクリームも。素晴らしい。
「ふわっふわ……! めちゃくちゃ美味しいです! すごいですねお兄さん……なんか以外です、強面な方なので……あ、すいません」
きっと従兄は普段は優しいけれど気分を害したら何をするか分からないタイプの人だ。
「いえいえ、お気になさらず」
「あの……お金、大丈夫そうですか?」
「はい、違法賭博場でドブったらしいので、そこ潰して金回収してくるよう部下に言いつけました」
違法ってそれヤクザじゃ……やっぱり怖いなぁこの人。
「……あ、すいません電話です。失礼しますね」
「あ、お構いなく……」
従兄はスマホを出すと少し横を向き、電話に出た。
「もしもし犬です、どうなさったんです社長。はい、近所に従弟の家があるのでそこに……え? 首塚? 近くに? はい……壊れて? なるほど、それが原因ですか……流石社長、海外からでも正確な霊視……えぇ、はい、分かりました、調べておきます。はい、失礼します」
首塚? 今、首塚と言ったか? 従兄はもう電話を切ったし少し聞いてみよう。
「あの、首塚って……」
「あ、知ってます? 地元じゃ有名ってやつですか。あの首塚、壊されてたらしいんですよね」
「どうしてそれでお兄さんに連絡が?」
「うちの会社オカルトもやってるんで……なんて、冗談ですよ」
本当に冗談なのか? 相談するべきじゃないのか? この見えない手をどうにかしてもらえるチャンスかもしれない。いや、彼が霊能者なら俺が取り憑かれていると分かるはず……いやいや、初対面で数珠を渡してきたのはそういう意味だろう。
「実は俺……む、昔から、幽霊とかよく見てて……でも追っ払うとかできなくて、その、対処法みたいなの教えてもらえませんか?」
これなら俺が首塚を壊したとはバレずに相談できる。彼に悪事を告白するのは怖い。
「見えてるって気付かれなきゃ何もしてこない、それが原則です。既に霊障がある場合は……まぁ、幽霊も元は人間ですからね、いきなり殴ってくるような奴にはビビって近寄りません。当たらないって分かってても全力で殴りに行くと大抵は逃げます」
「あ、あの……それってまさか、さっきの?」
「あなたが気付いてるか分からなかったので、虫って言いましたけど……分かってるなら言いますよ、そうです、しぶとい執拗いのがいっぱい」
「ぁ……あっ、み、見えてるんですね!? 俺今まで一人で怖くてっ……!」
「手持ちの御札があるのでこれをどうぞ」
想像以上に真摯に相談に乗ってくれた彼は鞄から俺には読めない文字が書かれた紙を取り出した。俺がそれを受け取った瞬間、数百年の時を越したかのようにボロボロに崩れ落ちた。
「ぁー……手遅れかぁ。成長し過ぎてるな。月乃宮様、餌やりました?」
バンッ! と机に手形がつく。赤黒い液体……血なのか? 誰の?
「ひ、ひぃっ……」
扉が勢いよく閉まり、バンバンと強く叩く音と共に壁や床や天井に手形が現れる。
「ひっ……!? い、今までこんなのなかった! ちょっと体触られるくらいで……!」
「刺激しちゃいましたねー、いや失敗失敗……まさかここまで成長してたとは」
「お、お兄さんっ……何とかなるんですかこれ!」
「俺霊感ゼロなんですよねー、社長の家系がすごいってだけで」
「ならなんで笑ってられるんですか!」
俺が立ち上がって慌てているのに対し、彼は椅子に腰かけたままだった。しかし彼もとうとう立ち上がり、不意に手を叩いた。その一発だけの拍手の音が部屋に響くと、扉が勢いよく開き、部屋中を埋め尽くしていた手形が消え去った。
「……す、すごいじゃないですか。なんだ、もう……霊感ゼロとか言って」
「いや、俺は元々ゼロですよ。社長に注いでもらってるのを使ってるだけです。霊能者は発電できる人間で、俺はそういう人に充電してもらってる感じですね」
「なるほど……? 除霊しちゃったんですよね?」
「この部屋から追っ払っただけですよ。俺にあんなもんの除霊なんか無理無理」
そう言いながら彼は鞄から御札を全て出し、俺に渡した。今度はボロボロにはならなかった。ついでとでも言わんばかりに両手に数珠を巻かれる。
「まぁこんだけあれば何時間か持つだろうから……國行が帰ってくるまで耐えましょうか」
「え……センパイ、もしかしてすごい人なんですか?」
「いや、ヘビースモーカーだからってだけです。タバコ嫌いなんですよ幽霊って。あと幽霊ってエロいの嫌がるから……タバコ吸われながら抱かれといてください」
エロいの嫌がる? そんなバカな、積極的にヤらせてくるんだぞ?
「色情霊……って、聞いたことあるんですけど」
「あぁ、そういうのはエロいことしたいだけの霊なんでヤってりゃ今回みたいな真似はしてきませんよ。っていうかこんな真似するの、色情霊なわけありませんし」
「…………で、でも」
「狐、って分かります? 彼ら、化ける時は美女なんですよ。オスもメスも。男の精気が欲しいんですね。だからまぁ……そっち系のエロお化けだとしても、除霊するまではヤるのが安牌です。成長はしちゃいますけど、既に俺にはどうしようもないんで……社長を呼ぶにも海外出張中ですから、とりあえずお化けの機嫌取っといて目先の危険を避けとくしかありませんねー」
「そんなぁ……」
握りしめた御札を見れば、端の方から黒ずんでいた。
お祓いしようとしたから怒って怖い霊現象を起こしている、幽霊の願い通りに男に抱かれて機嫌を取らなければならない……でも、センパイが帰ってくるまで何時間ある? 幽霊は何時間待ってくれる?
「あの、お兄さん」
「なんです?」
従兄はセンパイによく似ているし、なんならセンパイ以上に男の色気がある。丁寧な人だし、きっとセンパイのように優しくしてくれる。
「お兄さんが俺を抱くってのはありですか?」
期待半分不安半分で尋ねてみた。
「なしです」
キッパリ断られた。なんだろうこの敗北感。
「物理的にも生理的にも無理です」
「そこまで言わなくても……ごめんなさい、変なこと言って」
敗北感を抱えたまま黒ずんで崩れていく御札を見つめてセンパイを待つこと数時間、バイクの音が聞こえた。
「センパイっ……!」
残った御札は二枚と半分だったが、ダイニングを一歩出た瞬間に全てボロボロに崩れ去った。両手首に巻いていた数珠も弾け飛ぶ、糸が切れるなんでものじゃない、石が砕け散った。恐怖に駆られて走り、外へ出てヘルメットを脱いでいるセンパイの腕に抱きつく。
「……月乃宮? どうして……」
「抱いて! センパイっ、早く、早く抱いて……!」
薄手のコートを脱ぎ捨てて全裸になり、外だということも忘れてセンパイのベルトに手をかけた。
「……おい、月乃宮……ここ、外……」
まだ戸惑っているセンパイをその気にさせるため、上を向いて舌を突き出した。舌ピアスに僅かに反応した性器を引っ張り出し、口に含む。
「……月乃宮、離せ。中に入れ」
ピアスがカリ首に引っかかるようにしてやるとセンパイは俺に注意するのをやめ、頭を撫でた。
「ん、んっ……せんぱい、國行せんぱいの、おっきくて……口、疲れます。別のところでしゃぶらせてください」
十分に勃起したら口を離して頬擦りしながらねだる。立てと言葉なく合図され、バイクのシートに手をつき、腰を突き出す。
「は、早く……早く、入れて……あぁんっ! んっ、やぁっ……ちがうっ、これ指っ……指じゃないっ、もっと太いのぉっ!」
「……太いからほぐすんだろ」
「朝抱かれたばっかりなんだから大丈夫っ! お願いだから早く入れてぇっ!」
「………………朝、抱かれた?」
大きな手に腰を掴まれ、きゅんきゅんと下腹が疼く。その疼きや震えを押さえつけるように太く長く硬い肉の棒が挿入された。
「ひぁあんっ! んっ、んぅ……くにゆきせんぱい……早く突いて、ぐちゃぐちゃにして……ぁあんっ! ぁ、あっ……!」
無言のまま激しく俺を揺さぶるセンパイの荒い吐息が耳にかかり、俺はすぐに絶頂を迎えてしまった。
「んっ……」
きゅん、と疼く下腹。
「ぅぅ…………この変態」
ベッドに居るのは危険だ、床に座って待とう。
スマホを充電しながら適当な音楽をかけ、暇つぶしになる物を探した俺の手はベッドの下に伸びた。
「なんかある。まさかエロ本……? センパイ何読むんだろ」
手に当たった本を引っ張り出してみると、どーんと「不良受け特集」の文字があり、金髪にピアスの不良少年が制服をはだけさせているイラストが表紙の雑誌だった。
「うん……読みたくはないな」
お気に入りの話があるのか付箋がついている。読みたくはないが、好奇心はある。
「後輩調教……」
タイトルを少し読んで本を閉じ、ベッドの下に戻した。薄っぺらい本が手に触れたので同人誌か何かだろうと思って出してみると、大学のパンフレットだった。
「センパイ大学行く気あるんだ……」
センパイの第一志望だろう大学、そこはかなり有名なところで学費も高い。パンフレットを開くとメモが落ちた。学費を計算した跡だ。従兄から振り込まれている生活費もいつか返したいと思っているようで、従兄の学費を出すという申し出を断るつもりだともあった。
「…………センパイ」
大切に貯めていただろう金をギャンブルに使った彼の父親に腹が立った。
「センパイ……その割に私服ブランド物ばっかなんだよな」
部屋を見渡してみればブランド物の鞄がいくつか目についた。少し緩んでいた涙腺が引き締まった。
センパイの人柄がよく分からない。
パンフレットをベッドの下に戻し、床に寝転がってクッションを枕に仮眠を取る。どれだけ眠っただろう、扉を叩く音で目を覚ました。
「はーい……ぁ、お兄さん」
「お昼食べません?」
もうそんな時間か。出来れば従兄の誘いには乗りたくないが、断るのも怖くて頷くとダイニングキッチンに着れてこられた。
「お兄さんが料理するんですか?」
「料理ってほどのものでもありませんけどね」
そう言いながら彼は手際よく準備を進めていく。ホットケーキミックスに牛乳に卵……ん? 何、おやつ?
「座って待っててください」
「あ、はい……すいません」
手元を覗いていたらやんわり怒られた。大人しく座って待って十数分後、フルーツが盛られたパンケーキが目の前に置かれた。
「コーヒーと紅茶どっちにします?」
「あ、コーヒーで……ありがとうございます、何から何まで」
イチゴにキウイにオレンジにブルベリーに……俺の大好きなホイップクリームも。素晴らしい。
「ふわっふわ……! めちゃくちゃ美味しいです! すごいですねお兄さん……なんか以外です、強面な方なので……あ、すいません」
きっと従兄は普段は優しいけれど気分を害したら何をするか分からないタイプの人だ。
「いえいえ、お気になさらず」
「あの……お金、大丈夫そうですか?」
「はい、違法賭博場でドブったらしいので、そこ潰して金回収してくるよう部下に言いつけました」
違法ってそれヤクザじゃ……やっぱり怖いなぁこの人。
「……あ、すいません電話です。失礼しますね」
「あ、お構いなく……」
従兄はスマホを出すと少し横を向き、電話に出た。
「もしもし犬です、どうなさったんです社長。はい、近所に従弟の家があるのでそこに……え? 首塚? 近くに? はい……壊れて? なるほど、それが原因ですか……流石社長、海外からでも正確な霊視……えぇ、はい、分かりました、調べておきます。はい、失礼します」
首塚? 今、首塚と言ったか? 従兄はもう電話を切ったし少し聞いてみよう。
「あの、首塚って……」
「あ、知ってます? 地元じゃ有名ってやつですか。あの首塚、壊されてたらしいんですよね」
「どうしてそれでお兄さんに連絡が?」
「うちの会社オカルトもやってるんで……なんて、冗談ですよ」
本当に冗談なのか? 相談するべきじゃないのか? この見えない手をどうにかしてもらえるチャンスかもしれない。いや、彼が霊能者なら俺が取り憑かれていると分かるはず……いやいや、初対面で数珠を渡してきたのはそういう意味だろう。
「実は俺……む、昔から、幽霊とかよく見てて……でも追っ払うとかできなくて、その、対処法みたいなの教えてもらえませんか?」
これなら俺が首塚を壊したとはバレずに相談できる。彼に悪事を告白するのは怖い。
「見えてるって気付かれなきゃ何もしてこない、それが原則です。既に霊障がある場合は……まぁ、幽霊も元は人間ですからね、いきなり殴ってくるような奴にはビビって近寄りません。当たらないって分かってても全力で殴りに行くと大抵は逃げます」
「あ、あの……それってまさか、さっきの?」
「あなたが気付いてるか分からなかったので、虫って言いましたけど……分かってるなら言いますよ、そうです、しぶとい執拗いのがいっぱい」
「ぁ……あっ、み、見えてるんですね!? 俺今まで一人で怖くてっ……!」
「手持ちの御札があるのでこれをどうぞ」
想像以上に真摯に相談に乗ってくれた彼は鞄から俺には読めない文字が書かれた紙を取り出した。俺がそれを受け取った瞬間、数百年の時を越したかのようにボロボロに崩れ落ちた。
「ぁー……手遅れかぁ。成長し過ぎてるな。月乃宮様、餌やりました?」
バンッ! と机に手形がつく。赤黒い液体……血なのか? 誰の?
「ひ、ひぃっ……」
扉が勢いよく閉まり、バンバンと強く叩く音と共に壁や床や天井に手形が現れる。
「ひっ……!? い、今までこんなのなかった! ちょっと体触られるくらいで……!」
「刺激しちゃいましたねー、いや失敗失敗……まさかここまで成長してたとは」
「お、お兄さんっ……何とかなるんですかこれ!」
「俺霊感ゼロなんですよねー、社長の家系がすごいってだけで」
「ならなんで笑ってられるんですか!」
俺が立ち上がって慌てているのに対し、彼は椅子に腰かけたままだった。しかし彼もとうとう立ち上がり、不意に手を叩いた。その一発だけの拍手の音が部屋に響くと、扉が勢いよく開き、部屋中を埋め尽くしていた手形が消え去った。
「……す、すごいじゃないですか。なんだ、もう……霊感ゼロとか言って」
「いや、俺は元々ゼロですよ。社長に注いでもらってるのを使ってるだけです。霊能者は発電できる人間で、俺はそういう人に充電してもらってる感じですね」
「なるほど……? 除霊しちゃったんですよね?」
「この部屋から追っ払っただけですよ。俺にあんなもんの除霊なんか無理無理」
そう言いながら彼は鞄から御札を全て出し、俺に渡した。今度はボロボロにはならなかった。ついでとでも言わんばかりに両手に数珠を巻かれる。
「まぁこんだけあれば何時間か持つだろうから……國行が帰ってくるまで耐えましょうか」
「え……センパイ、もしかしてすごい人なんですか?」
「いや、ヘビースモーカーだからってだけです。タバコ嫌いなんですよ幽霊って。あと幽霊ってエロいの嫌がるから……タバコ吸われながら抱かれといてください」
エロいの嫌がる? そんなバカな、積極的にヤらせてくるんだぞ?
「色情霊……って、聞いたことあるんですけど」
「あぁ、そういうのはエロいことしたいだけの霊なんでヤってりゃ今回みたいな真似はしてきませんよ。っていうかこんな真似するの、色情霊なわけありませんし」
「…………で、でも」
「狐、って分かります? 彼ら、化ける時は美女なんですよ。オスもメスも。男の精気が欲しいんですね。だからまぁ……そっち系のエロお化けだとしても、除霊するまではヤるのが安牌です。成長はしちゃいますけど、既に俺にはどうしようもないんで……社長を呼ぶにも海外出張中ですから、とりあえずお化けの機嫌取っといて目先の危険を避けとくしかありませんねー」
「そんなぁ……」
握りしめた御札を見れば、端の方から黒ずんでいた。
お祓いしようとしたから怒って怖い霊現象を起こしている、幽霊の願い通りに男に抱かれて機嫌を取らなければならない……でも、センパイが帰ってくるまで何時間ある? 幽霊は何時間待ってくれる?
「あの、お兄さん」
「なんです?」
従兄はセンパイによく似ているし、なんならセンパイ以上に男の色気がある。丁寧な人だし、きっとセンパイのように優しくしてくれる。
「お兄さんが俺を抱くってのはありですか?」
期待半分不安半分で尋ねてみた。
「なしです」
キッパリ断られた。なんだろうこの敗北感。
「物理的にも生理的にも無理です」
「そこまで言わなくても……ごめんなさい、変なこと言って」
敗北感を抱えたまま黒ずんで崩れていく御札を見つめてセンパイを待つこと数時間、バイクの音が聞こえた。
「センパイっ……!」
残った御札は二枚と半分だったが、ダイニングを一歩出た瞬間に全てボロボロに崩れ去った。両手首に巻いていた数珠も弾け飛ぶ、糸が切れるなんでものじゃない、石が砕け散った。恐怖に駆られて走り、外へ出てヘルメットを脱いでいるセンパイの腕に抱きつく。
「……月乃宮? どうして……」
「抱いて! センパイっ、早く、早く抱いて……!」
薄手のコートを脱ぎ捨てて全裸になり、外だということも忘れてセンパイのベルトに手をかけた。
「……おい、月乃宮……ここ、外……」
まだ戸惑っているセンパイをその気にさせるため、上を向いて舌を突き出した。舌ピアスに僅かに反応した性器を引っ張り出し、口に含む。
「……月乃宮、離せ。中に入れ」
ピアスがカリ首に引っかかるようにしてやるとセンパイは俺に注意するのをやめ、頭を撫でた。
「ん、んっ……せんぱい、國行せんぱいの、おっきくて……口、疲れます。別のところでしゃぶらせてください」
十分に勃起したら口を離して頬擦りしながらねだる。立てと言葉なく合図され、バイクのシートに手をつき、腰を突き出す。
「は、早く……早く、入れて……あぁんっ! んっ、やぁっ……ちがうっ、これ指っ……指じゃないっ、もっと太いのぉっ!」
「……太いからほぐすんだろ」
「朝抱かれたばっかりなんだから大丈夫っ! お願いだから早く入れてぇっ!」
「………………朝、抱かれた?」
大きな手に腰を掴まれ、きゅんきゅんと下腹が疼く。その疼きや震えを押さえつけるように太く長く硬い肉の棒が挿入された。
「ひぁあんっ! んっ、んぅ……くにゆきせんぱい……早く突いて、ぐちゃぐちゃにして……ぁあんっ! ぁ、あっ……!」
無言のまま激しく俺を揺さぶるセンパイの荒い吐息が耳にかかり、俺はすぐに絶頂を迎えてしまった。
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