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彼氏が幼馴染とイチャついてたから修羅場ってみた

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保健室のベッドで好きな子と二人きり。しかもその好きな子に腕枕をしてもらえて、尻を揉むのも許可されている。
こんなのもう迫るしかないじゃないか。

「レン……」

「ん?」

「…………そろそろ戻らないと、授業……やばくないか? お前は俺と違って優等生なんだからさ」

「あー、そうだな……一人で大丈夫か?」

頷くとレンはベッドから抜け出した。

「何かあったらメッセ送れよ」

レンは保健室から出ていった。これでよかった、レンが添い寝してくれたのも尻を揉んでも怒らなかったのも、俺を親友だと思っているからだ。俺の恋心を知れば気持ち悪がって怯えるのは目に見えている。

「どーせっ、レンとは、でき、なっ、ぁああっ! で、きっ……ないっ……んだよっ、そんなっ、怒るなっ、あぁっ、ぁ、あっ!」

せっかくのチャンスを逃したことを叱るように見えない手が俺を責め立てる。ベッドの上で猫が伸びをするように尻を突き出させ、バイブを激しく抜き挿しし、尻や太腿に平手打ちを食らわせる。

「ぁんっ! あ、痛いっ、やぁっ、ゃあんっ! やだってば……痛いっ!」

誰もいない保健室で一人、幽霊に叩かれて喘いでいると扉が開く音が聞こえた。職員会議が終わって保健医が戻ったのだろう。ちょうどよく見えない手が消えたので俺は慌ててうつ伏せになった。

「月乃宮、一時間目サボる気か?」

「ぁ、えっと、俺っ……ひっ!? ぅぅっ……!」

せっかく見えない手が消えたのにバイブの振動が始まってしまった。先程レンの目の前で絶頂した時よりは弱い。さっきのが大で、これが中なのだろう。

「ん……? まさか本当に体調不良か? 疑って悪かったな、ゆっくり休め」

「んっ……やっぱり、疑ってたのかよっ……クソ教師っ!」

「疑われるような生活態度のお前が悪い。腹痛いならトイレ行けよ、じゃ」

カーテンが閉じられ、保健医はその向こうで別の仕事を始める。

「ふぅっ、ぅうっ……せーふ」

俺は今一つの疑問を抱いている。見えない手が保健医の前で俺をあられもない格好にせず、消えたことについてだ。

「んっ、んぅっ……ぅぅ……根野のクソ野郎……」

見えない手の目的は俺を男に抱かせること、その予想はきっと当たっている。けれど保健医を俺に誘わせることはなかった。
まさか、既婚者だからか? いや、同性を躊躇なく抱ける性的嗜好と、場所を考えず抱ける壊れた倫理観の持ち主を選別しているのか?

「はぁっ、はぁっ……ならっ、レン……いける? いやっ……そん、な……」

電車で痴漢は「何かに引っ張られた」と話していた。痴漢を見えない手が探して連れてきたのだ。センパイも出会った時は似たようなことを言っていた。センパイの父親も明らかに幽霊にお膳立てされていた。
俺を抱ける相手の目の前でのみ、俺は見えない手に襲われる──という仮定。それが正しいとすれば、レンの目の前で何度も襲われてきたということは、まさか……レンとセックスできるのか?

「そんなっ……レン、は……ちがっ、ぁ……レン……!」

レンの姿を思い描いていたら射精してしまった。ちょうどバイブも止まった。見えない手は現れない。
今度レンを誘ってみるか? いや、仮定が間違っていたら取り返しがつかない。安全策を取ろう、レンには関わらない……これでレンの心身は安全だ。

「はぁ……クソ、どろどろじゃねぇか」

ベルトを緩めて下着の中を確認する。白く粘ついた液体で汚れている。俺はベッドを這い出て保健医の元へ行った。

「せんせー……といれぇー……」

「先生はトイレじゃありません」

俺はトイレみたいなもんですけどね、はははー……とか言ったらウケるかな。ウケるわけないか。

「トイレ行きたい」

「勝手に行ってこい」

替えの下着は一応持っているのだが、鞄に入れてある。教室に戻るまではノーパンで過ごすしかない。

「ん……ぅっ、ぁ、ああっ……はぁっ、はぁっ、クソ教師……」

バイブを抜き、尻穴から垂れてくる液体を拭う。電源を切り、改めて眺めて「よくこんな歪で大きなものが自分の中に入っていたな」と感心し、同時に怖くなる。

「これどうしよ」

一応水道で洗ったが、持ち歩ける見た目ではない。ポケットに入るサイズでもないし……服の中に隠して持ち歩くしかないか。

「ただいまー、寝まーす」

ポロシャツの中に隠したバイブをシャツの上から手で押さえ、保健室に戻る。保険医は俺の方を見ることもなく、バイブの存在はバレなかった。
一安心してベッドに戻り、目を閉じた。一時間目の終わりを告げるチャイムで目を覚まし、教室に戻るか思案する。

「授業出ないとヤバいな……バイブ抜いたし行けるか……」

見えない手が襲ってきたら授業中に喘がされてしまう。しかし、これまでは大声を上げるほど教室で触られたことはなかったし、先程の仮定が正しければ教室で裸にされることはないはずだ。
ぐるぐると悩んでいると突然カーテンが開く。

「もち、見舞いに来たぞー」

反射的に毛布を頭まで被ったが、すぐにレンだと気付いて顔を出した。

「大丈夫か? 二時間目出られそうか?」

「ちょっとしんどくてさ……迷ってる」

「またギリギリまで添い寝してやるよ」

レンが来た途端、見えない手が活発的になる。前立腺をトントンと叩いてくる。

「んっ……ん、ん……」

妙に刺激が弱い。俺を焦らし、俺の意思でレンを誘わせるつもりか?

「よしよし、昔っから甘えん坊さんだなぁ、もちは」

そういえば昔は怖い番組を見たあとはレンの家に押しかけて一緒に寝てくれと喚いたっけ。同い年の男のくせに妙に面倒見のいい彼は、俺の母親代わりだったのかもしれない……別に俺の母が母親の役目を果たしていないとか、そういう訳でもないけど。

「つ、つつ……月乃宮君っ、倒れたって聞いて……え?」

再びカーテンが開き、今度はミチがベッドの横に立った。レンに抱き締められている俺を見て硬直している。

「あれ、えっと……矢見だっけ? 何か用?」

「き、ききっ、き、如月君っ!? どど、どうしてっ、そそそんなっ……!」

「あー、変な勘違いすんなよ? もち……ノゾムさ、昔から何かあると俺に抱きついて寝るんだよ」

レンの起き上がりながらの説明も聞かず、ミチはレンの胸ぐらを掴んでベッドから引きずり落とした。

「でっ、でで、出てけ! つ、月乃宮君はっ……ぼぼっ、僕のだ!」

「レンっ!? どけっ、バカ! レン、レンっ、大丈夫か?」

俺を抱き締めようとするミチを突き飛ばし、ベッドから落とされたレンを助け起こす。頭を打ったりはしていないようだ。

「え……つ、つつっ、月乃宮君……? ぼ、ぼ僕が浮気? ううっ、嘘だ、嘘だぁっ……」

「ミチ、ちょっと話聞いてくれ」

「いっ、いい、言い訳なんか聞きたくない!」

ミチは頭皮を引っ掻いてボサボサの黒髪を更に乱す。ぐしゃぐしゃになった髪から涙を溢れさせるつぶらな瞳が覗き、俺の胸を締め付ける。

「もち……なんなんだよコイツ」

「ぼ、ぼっ、僕は月乃宮の彼氏だ! ど、ど土曜はデートして、セセ、セックスもしてっ、キスもいっぱいしてっ、外でフェラもしてくれてっ」

「ミチ! マジでやめてくれよっ……!」

どうしよう、俺が男を恋愛対象にしていると思われたら、先程レンの尻を触りまくっていたのがそういう意味だと取られかねない。いや……そういう意味なんだけどさぁ!

「…………本当に付き合ってんの? ふーん」

「レ、レン……違う、聞いてくれ」

「や、別にいいと思うぞ? おめでとさん。あ、矢見、俺ただの幼馴染だから安心しろよ」

何? その反応の薄さ。さっきまで自分の尻を揉んでいた幼馴染が同性愛者だったんだぞ? 嫉妬してくれるなんて夢の見過ぎだったけれど、そんなに無反応でいられるのか? そんなに俺に興味がないのか?

「ほほ、本当に……?」

レンは深いため息をついた後、お得意の穏やかな微笑みを作った。中性的な美少年のその笑顔は見る者から敵対心を奪う。

「…………つ、つつ、月乃宮君っ……キス、して。き、ききっ、如月君の前でっ、証明して!」

「ふざけんなよ……」

「いいじゃん、してやれよ。矢見メンタル弱そうだしさ、彼氏なら安心させてやんなきゃ」

「レンっ……」

俺はレンが好きなんだ。なのにレンはやっぱり俺を友達としか思っていないんだ。胸が痛い、泣きたい。

「つ、つっ、月乃宮君……ぼ、僕が、浮気なの……?」

俺が悪いのか? 好きな人がいるのに告白を受け入れたから、惚れさせてみろなんてふんぞり返っていたから……あぁ、自業自得か。俺は最低な男だ。

「…………ぁ、うっ、う、嬉しいっ……! つつ、月乃宮君っ、だいすきっ!」

唇同士を少し触れさせただけで涙を浮かべて喜ぶ矢見は可愛らしい。きっと一途だ、浮気なんてしない。

「……おめでとさん」

でも俺はやっぱりレンが好きなんだ。
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