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落ちこぼれの教え子に手を出してみた
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肩を揺さぶられて起こされる。目の前にタンクトップ姿のセンパイがいる。
「センパイ……? おはようございます。どこ行ってたんですか? いつ戻ってきたんですか、俺結構遅くまで起きてたんですよ」
床に座って眠ったはずなのにベッドにいる、バスタオルを巻いていただけのはずなのにぶかぶかのトレーナーを着ている……センパイがしてくれたのか?
「……パンか米どっちがいい」
「相変わらず俺の話は聞かないんですね……パンでお願いします」
アンパンを渡された。
「すいません、俺あんこダメなんです」
クリームパンが投げられる。
「クリームパンは大好きです、ありがとうございます」
見慣れないパッケージだ。早速開けて食べてみるといつも食べているコンビニのものとは違ってクリームがたっぷり入っている。
「美味しいです!」
「……舌ピアス気を付けろよ」
ホイップクリームを舌で味わいたいが、ほどほどにしておこう。
「……今日、学校は? サボるか?」
「行きます、成績悪いんで出席はしないと……あ、ここから近い駅ってどこですか?」
「…………俺と二人乗りは嫌か?」
「い、いえ全然……また送ってくれるんですか? ありがとうございます」
不意に頭を撫でられる。センパイの顔をじっと観察すると微かに口角が上がっていた。俺が口元を見つめていたのを勘違いしたのかクリームパンを離した隙に短いキスをされる。
「…………甘いな」
俺の唇から移ったクリームを舐め取り、更に口角を上げる。高一にもなって口元を汚していたなんて恥ずかしい。
「……顔が赤いぞ、本当に可愛いヤツだ」
センパイは俺の頬を歯を触れさせずに甘噛みし、ポロシャツを持って部屋を出ていった。
「ごちそうさまでしたー……」
クリームパンを食べたら洗濯してくれたらしい制服に着替え、部屋を出る。そういえば鞄がないな、レンの家に置いてきたっけ?
「センパーイ、センパイ……?」
センパイはリビングで着物姿の若い男と話していた。褐色肌に三白眼、犯罪者っぽい悪人面──センパイよりは小柄で細身だが十二分に体格がいい、顔立ちは違うが目元はセンパイそっくりだ。
「拗ねるなよ國行ぃ、ごめんってば。ほら、ピザ買ってやるから、な? ご機嫌戻して欲しいなー?」
「…………到着日がズレるなら連絡して欲しい」
「いやそれがさぁ? 聞いてくれよ國行ぃ。ここに来るまでに車が三台エンスト、タクシー二台事故、歩いてたらトラック突っ込んでくるし、工事現場の足場崩れるし、濃霧出たから泊まったらそのホテルが火事になるし、ようやく着いたと思ったら叔父がボコボコにされてたし……」
嘘くさい話をしている彼は駅で俺を痴漢から助けてくれた男だ、あの着物に合わない首輪風チョーカーは間違いようがない。話の切れ目を狙って改めて礼を言わなければ。
「……そういえば地域ニュースの通知がすごかったな」
「肋骨ヒビだってよ? やるなら怪我させない程度にしとけよな」
センパイがスマホに視線を下げた。今が切れ目だ。リビングに入ると男がこちらを向く。虚ろな瞳に言いようのない恐怖を覚え、恩人に対してあるまじき行為だが目を逸らしてセンパイの背に隠れた。
「後ろの子、新しい彼氏? 回転率すごいな、似たような子ばっかなのに」
男が俺を見ようと回り込んできたが、センパイも一緒に体を回して俺を隠した。
「あ、あのっ……俺、昨日駅で会った者です。助けもらって……ありがとうございました! でも、もらった数珠壊れちゃって、なくしちゃって、ごめんなさい……それと俺は彼氏ではないです」
「……会っていたのか。何があったんだ」
面倒だが痴漢されたことを話さなければと口を開いたが、男が俺より先に説明を始めた。
「ふらふらしてたから電車降りるの手伝わせてもらったんですよね? 座らせて、水買ったりして……そうですよね?」
「へ……? あ、はいっ……」
嘘をついた? なんで? つい肯定してしまったけれど……まぁいいか。
「……そうか。やはり家まで送ればよかったな。ヤり過ぎて足腰立たなくなったんだ、ありがとう」
「ちょっ……! ヤり過ぎたとか言わないでくださいよぉ…………ぁんっ、や、やめてください!」
センパイの前に回り込んで抗議するとズボンの上から尻を鷲掴みにされ、不意打ちに思わず声が漏れた。
「ふーん…………どんどんヤってやれよ、朝昼晩一回ずつ」
「は……!? あ、あなたも何言ってるんですか!?」
おふざけだろうと思い込んで大声を上げたが、男の顔は真剣そのものだった。
「……言われなくてもヤる。それじゃあ兄ちゃん、またな」
センパイは男に手を振ると学生鞄とバイクのキーを持ってリビングを出た。センパイの後を追う前に男に挨拶しておかなければ。男の方を向いた瞬間、バンっと肩を叩かれた。
「痛っ! な、なんですか……?」
そういう挨拶をするタイプの人間なのか? 困惑していると今度は頭を叩かれた。
「全然取れねぇ……執拗いなこれ」
舌打ちをし、また手を振り上げる。しかし、その手は戻ってきたセンパイが掴んで止めてくれた。
「……何してる」
「虫がいたんだよ。蚊取り線香でも焚いとけ」
「………………本当に?」
「お兄ちゃんを疑うのか?」
二人の大男はしばらく睨み合っていたが、俺が「学校に遅れる」と呟くと二人同時に目を逸らした。センパイは何も言わずに俺の腕を掴み、駐車場に向かった。
「…………月乃宮、痛くないか?」
「へ? あぁ、大丈夫ですよ」
本当に虫がいたのだろうか? 虫が「全然取れない」はおかしい気がする。
「あの人誰なんですか?」
「……何年か前に親父が売った従兄。仕送りしてくれてる、親父に渡しちゃギャンブルに使うって俺の口座に……バイクも買ってくれた」
「へぇ……いい人なんですね」
バイクに跨ってセンパイの腰に腕を回す。信号に引っかかることなくすぐに学校に到着した。遅い上に痴漢される電車なんてもう二度と乗りたくない。
「…………お前、髪ぺったんこだな」
「えっマジですか!? ヘルメット被ったからですよね? 嫌だなー、ワックス欲しい……」
「……それはそれで可愛いぞ」
「や、やめてくださいよ……クソダサいでしょ」
下駄箱までは雑談をし、それぞれの教室に向かう。席には俺の鞄が既に置いてあった。レンを見つめると微笑みを返された。
「……………………かわいい」
学校では話さない仲になったことを喜ぶ日が来るとは思わなかった。今話しかけられたらときめきで心臓が止まりそうだ。
「ふぅ…………ん? ひっ……!? ぁっ……ぐ、ぅ……!」
突然、電撃のような快感が下腹から身体中に広がっていく。まさか幽霊が皮膚や筋肉をすり抜けて前立腺を揉みしだいているのか? ダメだ、死ぬ、意識が朦朧としてきた。射精を実感して「最悪」という感想を抱いたのを最後に意識を闇に落とした。
「はっ……!? ぁ、あぐっ……ぅ、ああっ……!」
目を覚ますと保健室のベッドで寝ていたが、まだ前立腺を責められている。腰が勝手にガクガクと揺れて精液が溢れる。
「イっ……! んんんんーっ! ぅ、ゔっ……ぁ、イっ、ぐぅうぅううっ!」
手に噛み付いて声を押さえる。だがそれも限界だと悟った瞬間チャイムが鳴り、俺は口から手を離した。
「は、ぁ……はぁっ……なんなんだよ……なんで今日は、こんな……どうしたんだよ、なんか不満あるなら喋れよ……」
チャイムが鳴り終わると同時に見えない手は消えた。前立腺はまだじんわりと快楽を持ち、俺の身体は痙攣していた。
「月乃宮ー? 月乃宮、起きてるか、入るぞ」
休み時間になってしばらくし、カーテンを開けたのは保険医ではなく担任の根野だった。
「根野セン……?」
「今日は保健の先生がいなくてな……熱はなかったから寝かせておいたんだ、具合はどうだ?」
くせっ毛をそのままにしたナチュラルなマッシュヘア、ふわっとした黒髪の印象通りの優しい新任で、特に女子からの人気が高い。しかし俺はメガネで隠した蛇のような視線が気に入らない。
「悪い。もうちょい寝る」
毛布を頭の上まで被ったがすぐに捲られた。
「なんだよ!」
「頭を温めちゃダメだ、肩までにしなさい」
毛布を整えられた。サボり宣言を注意しないのか? 新任だから生徒の嘘を見抜けないのか。メガネの向こうの瞳は心配そうに俺を見つめている。
「ん……? 月乃宮、ピアス増やしたな? ダメだって言ってるだろう、外しなさい」
まだ異物感や痛みがあるから耳を下敷きにして眠れない。俺は仕方なく起き上がり、担任を睨んだ。
「昨日開けたばっかなんだよ、ファーストピアスすぐに外したら膿む。根野センは俺の耳がグズグズになってもいいわけ?」
「……仕方ないな」
やはり新任の彼は甘い、生徒指導のゴリラなら無理矢理外しているだろう。
「ピアスなんか何がいいんだ、痛くないのか? 別にそこまでカッコよくもない」
「知らねぇよ俺の趣味じゃな……ぁ、いやっ、カッコイイだろ……ピアス」
「…………月乃宮の趣味じゃないのか?」
まずい、口を滑らせた。幽霊のせいだ、絶頂のし過ぎで頭が働いていない。
「誰の趣味だ? 無理矢理開けさせられたのか? 傷害だぞ……誰だ、言いなさい」
「自分で開けたんだよ! とっとと授業行きやがれ!」
「今日の二時間目は担当がないんだ、誰なのか言うまで帰らないぞ」
手荒な真似をしないのは分かっている、居座るなら相手をしなければいい。俺はベッドに寝転がって目を閉じた。
「……月乃宮。悩みがあるなら先生に言っていいぞ」
「うるせぇ、寝るんだよ、黙れ」
今の俺が相談するべきなのは凄腕の霊能者だけだ。
「月乃宮、先生な……変な噂を聞いたんだ。お前が、その、男を相手に売春してるって」
「はぁ!?」
臍ピアスの違和感が大きくなるにも関わらず俺は腹筋を使って飛び起きた。
「もちろん信じてない、ただ確認はしておきたい」
「してるわけねぇだろんなこと!」
事実無根だ。どうしてそんな噂が出たんだ? 輪姦した連中が流したのか? それとも駅のトイレに連れ込まれそうになっていたのが見られていた?
「そう……だよな、ごめんな……月乃宮は先生が好きなんだもんな。他の男に身体を許したりしないよな」
「…………は?」
「隠さなくていいぞ、分かってる。毎日毎日先生に怒られるの分かっててピアスつけてきて、先生の気を引きたいんだよな。じっと見てくるし、最近なんてもじもじしてるし、先生に告白しようか迷ってたんだよな」
何を言っているんだ? コイツ……気持ち悪い。ピアスは常につけるものだ、じっと見てるんじゃなく睨んでいるんだ、もじもじしてるって……見えない手に体をまさぐられている時のことか?
「放課後いつまでも残ってたりもしたよな、先生に話しかけようとしてたんだろう? でも勇気が出なかったんだな」
母と顔を合わせたくなくて帰りたくないのに、不良仲間との都合がつかず遊べなかっただけだ。
「…………先生は月乃宮の気持ちに応えるよ」
今の今まで静止画のように動かなかったくせに、担任は爬虫類のような瞬発力を見せた。イカれた思考回路を晒されて混乱したのもあって肩を掴まれてキスをされるまで動けなかった。
「センパイ……? おはようございます。どこ行ってたんですか? いつ戻ってきたんですか、俺結構遅くまで起きてたんですよ」
床に座って眠ったはずなのにベッドにいる、バスタオルを巻いていただけのはずなのにぶかぶかのトレーナーを着ている……センパイがしてくれたのか?
「……パンか米どっちがいい」
「相変わらず俺の話は聞かないんですね……パンでお願いします」
アンパンを渡された。
「すいません、俺あんこダメなんです」
クリームパンが投げられる。
「クリームパンは大好きです、ありがとうございます」
見慣れないパッケージだ。早速開けて食べてみるといつも食べているコンビニのものとは違ってクリームがたっぷり入っている。
「美味しいです!」
「……舌ピアス気を付けろよ」
ホイップクリームを舌で味わいたいが、ほどほどにしておこう。
「……今日、学校は? サボるか?」
「行きます、成績悪いんで出席はしないと……あ、ここから近い駅ってどこですか?」
「…………俺と二人乗りは嫌か?」
「い、いえ全然……また送ってくれるんですか? ありがとうございます」
不意に頭を撫でられる。センパイの顔をじっと観察すると微かに口角が上がっていた。俺が口元を見つめていたのを勘違いしたのかクリームパンを離した隙に短いキスをされる。
「…………甘いな」
俺の唇から移ったクリームを舐め取り、更に口角を上げる。高一にもなって口元を汚していたなんて恥ずかしい。
「……顔が赤いぞ、本当に可愛いヤツだ」
センパイは俺の頬を歯を触れさせずに甘噛みし、ポロシャツを持って部屋を出ていった。
「ごちそうさまでしたー……」
クリームパンを食べたら洗濯してくれたらしい制服に着替え、部屋を出る。そういえば鞄がないな、レンの家に置いてきたっけ?
「センパーイ、センパイ……?」
センパイはリビングで着物姿の若い男と話していた。褐色肌に三白眼、犯罪者っぽい悪人面──センパイよりは小柄で細身だが十二分に体格がいい、顔立ちは違うが目元はセンパイそっくりだ。
「拗ねるなよ國行ぃ、ごめんってば。ほら、ピザ買ってやるから、な? ご機嫌戻して欲しいなー?」
「…………到着日がズレるなら連絡して欲しい」
「いやそれがさぁ? 聞いてくれよ國行ぃ。ここに来るまでに車が三台エンスト、タクシー二台事故、歩いてたらトラック突っ込んでくるし、工事現場の足場崩れるし、濃霧出たから泊まったらそのホテルが火事になるし、ようやく着いたと思ったら叔父がボコボコにされてたし……」
嘘くさい話をしている彼は駅で俺を痴漢から助けてくれた男だ、あの着物に合わない首輪風チョーカーは間違いようがない。話の切れ目を狙って改めて礼を言わなければ。
「……そういえば地域ニュースの通知がすごかったな」
「肋骨ヒビだってよ? やるなら怪我させない程度にしとけよな」
センパイがスマホに視線を下げた。今が切れ目だ。リビングに入ると男がこちらを向く。虚ろな瞳に言いようのない恐怖を覚え、恩人に対してあるまじき行為だが目を逸らしてセンパイの背に隠れた。
「後ろの子、新しい彼氏? 回転率すごいな、似たような子ばっかなのに」
男が俺を見ようと回り込んできたが、センパイも一緒に体を回して俺を隠した。
「あ、あのっ……俺、昨日駅で会った者です。助けもらって……ありがとうございました! でも、もらった数珠壊れちゃって、なくしちゃって、ごめんなさい……それと俺は彼氏ではないです」
「……会っていたのか。何があったんだ」
面倒だが痴漢されたことを話さなければと口を開いたが、男が俺より先に説明を始めた。
「ふらふらしてたから電車降りるの手伝わせてもらったんですよね? 座らせて、水買ったりして……そうですよね?」
「へ……? あ、はいっ……」
嘘をついた? なんで? つい肯定してしまったけれど……まぁいいか。
「……そうか。やはり家まで送ればよかったな。ヤり過ぎて足腰立たなくなったんだ、ありがとう」
「ちょっ……! ヤり過ぎたとか言わないでくださいよぉ…………ぁんっ、や、やめてください!」
センパイの前に回り込んで抗議するとズボンの上から尻を鷲掴みにされ、不意打ちに思わず声が漏れた。
「ふーん…………どんどんヤってやれよ、朝昼晩一回ずつ」
「は……!? あ、あなたも何言ってるんですか!?」
おふざけだろうと思い込んで大声を上げたが、男の顔は真剣そのものだった。
「……言われなくてもヤる。それじゃあ兄ちゃん、またな」
センパイは男に手を振ると学生鞄とバイクのキーを持ってリビングを出た。センパイの後を追う前に男に挨拶しておかなければ。男の方を向いた瞬間、バンっと肩を叩かれた。
「痛っ! な、なんですか……?」
そういう挨拶をするタイプの人間なのか? 困惑していると今度は頭を叩かれた。
「全然取れねぇ……執拗いなこれ」
舌打ちをし、また手を振り上げる。しかし、その手は戻ってきたセンパイが掴んで止めてくれた。
「……何してる」
「虫がいたんだよ。蚊取り線香でも焚いとけ」
「………………本当に?」
「お兄ちゃんを疑うのか?」
二人の大男はしばらく睨み合っていたが、俺が「学校に遅れる」と呟くと二人同時に目を逸らした。センパイは何も言わずに俺の腕を掴み、駐車場に向かった。
「…………月乃宮、痛くないか?」
「へ? あぁ、大丈夫ですよ」
本当に虫がいたのだろうか? 虫が「全然取れない」はおかしい気がする。
「あの人誰なんですか?」
「……何年か前に親父が売った従兄。仕送りしてくれてる、親父に渡しちゃギャンブルに使うって俺の口座に……バイクも買ってくれた」
「へぇ……いい人なんですね」
バイクに跨ってセンパイの腰に腕を回す。信号に引っかかることなくすぐに学校に到着した。遅い上に痴漢される電車なんてもう二度と乗りたくない。
「…………お前、髪ぺったんこだな」
「えっマジですか!? ヘルメット被ったからですよね? 嫌だなー、ワックス欲しい……」
「……それはそれで可愛いぞ」
「や、やめてくださいよ……クソダサいでしょ」
下駄箱までは雑談をし、それぞれの教室に向かう。席には俺の鞄が既に置いてあった。レンを見つめると微笑みを返された。
「……………………かわいい」
学校では話さない仲になったことを喜ぶ日が来るとは思わなかった。今話しかけられたらときめきで心臓が止まりそうだ。
「ふぅ…………ん? ひっ……!? ぁっ……ぐ、ぅ……!」
突然、電撃のような快感が下腹から身体中に広がっていく。まさか幽霊が皮膚や筋肉をすり抜けて前立腺を揉みしだいているのか? ダメだ、死ぬ、意識が朦朧としてきた。射精を実感して「最悪」という感想を抱いたのを最後に意識を闇に落とした。
「はっ……!? ぁ、あぐっ……ぅ、ああっ……!」
目を覚ますと保健室のベッドで寝ていたが、まだ前立腺を責められている。腰が勝手にガクガクと揺れて精液が溢れる。
「イっ……! んんんんーっ! ぅ、ゔっ……ぁ、イっ、ぐぅうぅううっ!」
手に噛み付いて声を押さえる。だがそれも限界だと悟った瞬間チャイムが鳴り、俺は口から手を離した。
「は、ぁ……はぁっ……なんなんだよ……なんで今日は、こんな……どうしたんだよ、なんか不満あるなら喋れよ……」
チャイムが鳴り終わると同時に見えない手は消えた。前立腺はまだじんわりと快楽を持ち、俺の身体は痙攣していた。
「月乃宮ー? 月乃宮、起きてるか、入るぞ」
休み時間になってしばらくし、カーテンを開けたのは保険医ではなく担任の根野だった。
「根野セン……?」
「今日は保健の先生がいなくてな……熱はなかったから寝かせておいたんだ、具合はどうだ?」
くせっ毛をそのままにしたナチュラルなマッシュヘア、ふわっとした黒髪の印象通りの優しい新任で、特に女子からの人気が高い。しかし俺はメガネで隠した蛇のような視線が気に入らない。
「悪い。もうちょい寝る」
毛布を頭の上まで被ったがすぐに捲られた。
「なんだよ!」
「頭を温めちゃダメだ、肩までにしなさい」
毛布を整えられた。サボり宣言を注意しないのか? 新任だから生徒の嘘を見抜けないのか。メガネの向こうの瞳は心配そうに俺を見つめている。
「ん……? 月乃宮、ピアス増やしたな? ダメだって言ってるだろう、外しなさい」
まだ異物感や痛みがあるから耳を下敷きにして眠れない。俺は仕方なく起き上がり、担任を睨んだ。
「昨日開けたばっかなんだよ、ファーストピアスすぐに外したら膿む。根野センは俺の耳がグズグズになってもいいわけ?」
「……仕方ないな」
やはり新任の彼は甘い、生徒指導のゴリラなら無理矢理外しているだろう。
「ピアスなんか何がいいんだ、痛くないのか? 別にそこまでカッコよくもない」
「知らねぇよ俺の趣味じゃな……ぁ、いやっ、カッコイイだろ……ピアス」
「…………月乃宮の趣味じゃないのか?」
まずい、口を滑らせた。幽霊のせいだ、絶頂のし過ぎで頭が働いていない。
「誰の趣味だ? 無理矢理開けさせられたのか? 傷害だぞ……誰だ、言いなさい」
「自分で開けたんだよ! とっとと授業行きやがれ!」
「今日の二時間目は担当がないんだ、誰なのか言うまで帰らないぞ」
手荒な真似をしないのは分かっている、居座るなら相手をしなければいい。俺はベッドに寝転がって目を閉じた。
「……月乃宮。悩みがあるなら先生に言っていいぞ」
「うるせぇ、寝るんだよ、黙れ」
今の俺が相談するべきなのは凄腕の霊能者だけだ。
「月乃宮、先生な……変な噂を聞いたんだ。お前が、その、男を相手に売春してるって」
「はぁ!?」
臍ピアスの違和感が大きくなるにも関わらず俺は腹筋を使って飛び起きた。
「もちろん信じてない、ただ確認はしておきたい」
「してるわけねぇだろんなこと!」
事実無根だ。どうしてそんな噂が出たんだ? 輪姦した連中が流したのか? それとも駅のトイレに連れ込まれそうになっていたのが見られていた?
「そう……だよな、ごめんな……月乃宮は先生が好きなんだもんな。他の男に身体を許したりしないよな」
「…………は?」
「隠さなくていいぞ、分かってる。毎日毎日先生に怒られるの分かっててピアスつけてきて、先生の気を引きたいんだよな。じっと見てくるし、最近なんてもじもじしてるし、先生に告白しようか迷ってたんだよな」
何を言っているんだ? コイツ……気持ち悪い。ピアスは常につけるものだ、じっと見てるんじゃなく睨んでいるんだ、もじもじしてるって……見えない手に体をまさぐられている時のことか?
「放課後いつまでも残ってたりもしたよな、先生に話しかけようとしてたんだろう? でも勇気が出なかったんだな」
母と顔を合わせたくなくて帰りたくないのに、不良仲間との都合がつかず遊べなかっただけだ。
「…………先生は月乃宮の気持ちに応えるよ」
今の今まで静止画のように動かなかったくせに、担任は爬虫類のような瞬発力を見せた。イカれた思考回路を晒されて混乱したのもあって肩を掴まれてキスをされるまで動けなかった。
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