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豪華な朝餉
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シンヤと共に朝支度を整えた。シンヤは浴衣のまま朝食を食べに行きたがったが、慣れていないせいかすぐにはだけるしそれでなくてもセクシー過ぎて僕が正気ではいられないので、私服に着替えさせた。
「気合入れて選んだ服とはいえ、浴衣の方がよかったなーって気持ちが強いよ、やっぱり」
「シンヤくんすぐはだけるじゃないか」
「なで肩なのかな?」
「見た感じそうでもないけど……僕みたいなのをなで肩って言うんだよ、でも僕はそんなにはだけないし。帯の結び方とかが悪かったんじゃない?」
納得していなさそうな顔をしていたが反論はなく、僕も普段着に着替えてシンヤと共に部屋を出た。
「朝ごはんどんなのかなぁ」
「えっとね、確か……」
「あ、待って言わないで、楽しみ取っておきたいから」
部屋から広間まで何分もかからないのに? こういうところが可愛いんだよなと心の中でうんうん頷いていると、隣の部屋の扉が開いた。
「準備出来たか。ヒロ、シンヤくん、朝は裏の小川で採れたてピチピチの魚だぞ~? 楽しみだなぁ」
「魚……ぁ、はい、楽しみですね」
「……父さんのバカ」
「母さんヒロが反抗期だ!」
父は家で着ているような薄いTシャツとハーフパンツというだらしない格好だが、母は浴衣に羽織という旅館らしい出で立ちだ。
「おれ……ぁ、僕のことまで旅行に連れてきてくださって、本当にありがとうございます」
「いいんだいいんだ、シンヤくんは将来的には息子になるんだからな」
父とシンヤの会話を聞いてこの旅行が父の発案だったことを思い出し、その恩で先程のシンヤの楽しみを潰した罪は帳消しになるなとため息をついた。
「……父さん、さっきのバカ取り消すよ」
「おっ、反抗期は終わりか? ははは、根性のないヤツだなぁ」
「ナメられる原因はそういうところなのよ、あなた」
「え? どういうところだ?」
ため息をついた母は足を早め、少し前を歩いている僕達に並んだ。
「シンヤくん、部屋についてるお風呂入った?」
「はい、昨日の夜に」
「そう、私は朝にももう一回入ったんだけどね、すっごい景色がいいのよ~。暗くなってからじゃ見えないから、朝か昼に入っておいた方がいいと思うの」
「そうなんですか? 確かに昨日は真っ暗で……ありがとうございます。ヒロくん、聞いた? 朝ごはんの後一緒に入ろっ♡ あ、昼間ちょっと出かけてから夕方に入るのもいいかなぁ」
昼前に入ろうが、夕方に入ろうが、シンヤと一緒に居る限り僕は彼のことばかり見てしまって景色を楽しめないだろうということは分かる。
「朝ごはん……! 鮎の塩焼きだってさヒロくん、鮎って内臓も苦くないんだよね」
「草食だから……だったかな? 茶碗蒸しもあるよシンヤくん、松茸入りだって」
「お吸い物もある……俺こういう豪華めな和食初めて♡ ヒロくんと居ると初めてなことばっかりだなぁ……♡」
シンヤはただ純粋に事実を語っているだけだ、初めてという言葉に惑わされるな僕。
「見てヒロくん、この黒豆おっきい♡ おっきくない?」
「そ、そう……? 豆にサイズ差とかあるのかな」
「絶対おっきいよ」
「あんまりおっきいおっきい連呼しないでよ……」
「なんで?」
「僕が思春期男子だからだよ……!」
父が笑いを堪え切れずに吹き出した。もう旅行に連れてきてくれた恩では帳消しに出来ないほどのムカつきだ。僕は再び少ない語彙で無理矢理父に悪口を言い、反抗期呼ばわりを受けた。
「気合入れて選んだ服とはいえ、浴衣の方がよかったなーって気持ちが強いよ、やっぱり」
「シンヤくんすぐはだけるじゃないか」
「なで肩なのかな?」
「見た感じそうでもないけど……僕みたいなのをなで肩って言うんだよ、でも僕はそんなにはだけないし。帯の結び方とかが悪かったんじゃない?」
納得していなさそうな顔をしていたが反論はなく、僕も普段着に着替えてシンヤと共に部屋を出た。
「朝ごはんどんなのかなぁ」
「えっとね、確か……」
「あ、待って言わないで、楽しみ取っておきたいから」
部屋から広間まで何分もかからないのに? こういうところが可愛いんだよなと心の中でうんうん頷いていると、隣の部屋の扉が開いた。
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「魚……ぁ、はい、楽しみですね」
「……父さんのバカ」
「母さんヒロが反抗期だ!」
父は家で着ているような薄いTシャツとハーフパンツというだらしない格好だが、母は浴衣に羽織という旅館らしい出で立ちだ。
「おれ……ぁ、僕のことまで旅行に連れてきてくださって、本当にありがとうございます」
「いいんだいいんだ、シンヤくんは将来的には息子になるんだからな」
父とシンヤの会話を聞いてこの旅行が父の発案だったことを思い出し、その恩で先程のシンヤの楽しみを潰した罪は帳消しになるなとため息をついた。
「……父さん、さっきのバカ取り消すよ」
「おっ、反抗期は終わりか? ははは、根性のないヤツだなぁ」
「ナメられる原因はそういうところなのよ、あなた」
「え? どういうところだ?」
ため息をついた母は足を早め、少し前を歩いている僕達に並んだ。
「シンヤくん、部屋についてるお風呂入った?」
「はい、昨日の夜に」
「そう、私は朝にももう一回入ったんだけどね、すっごい景色がいいのよ~。暗くなってからじゃ見えないから、朝か昼に入っておいた方がいいと思うの」
「そうなんですか? 確かに昨日は真っ暗で……ありがとうございます。ヒロくん、聞いた? 朝ごはんの後一緒に入ろっ♡ あ、昼間ちょっと出かけてから夕方に入るのもいいかなぁ」
昼前に入ろうが、夕方に入ろうが、シンヤと一緒に居る限り僕は彼のことばかり見てしまって景色を楽しめないだろうということは分かる。
「朝ごはん……! 鮎の塩焼きだってさヒロくん、鮎って内臓も苦くないんだよね」
「草食だから……だったかな? 茶碗蒸しもあるよシンヤくん、松茸入りだって」
「お吸い物もある……俺こういう豪華めな和食初めて♡ ヒロくんと居ると初めてなことばっかりだなぁ……♡」
シンヤはただ純粋に事実を語っているだけだ、初めてという言葉に惑わされるな僕。
「見てヒロくん、この黒豆おっきい♡ おっきくない?」
「そ、そう……? 豆にサイズ差とかあるのかな」
「絶対おっきいよ」
「あんまりおっきいおっきい連呼しないでよ……」
「なんで?」
「僕が思春期男子だからだよ……!」
父が笑いを堪え切れずに吹き出した。もう旅行に連れてきてくれた恩では帳消しに出来ないほどのムカつきだ。僕は再び少ない語彙で無理矢理父に悪口を言い、反抗期呼ばわりを受けた。
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