陰キャな僕がエセヤンキーに攻略された話

ムーン

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ファミレスも初めて

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シンヤを含めた四人での家族旅行、その道中の少々高級なファミレスへ。プレイ中のルドーを席に置き、駐車場に出て伸びをする。

「ファミレス久しぶりだなー。シンヤくんは? ファミレス来たことある?」

「覚えはないなぁ……ヒロくんと居ると初めてが増えて楽しい♡」

何のいやらしさもない、むしろ癒されるべき微笑みなのに僕はシンヤの口から出た「初めて」という言葉に内心悶えていた。

「……結構高い」

メニュー表を見たシンヤの小さな呟きを聞き、僕は父の足を軽く蹴った。

「おっ……? あぁ……値段は気にしなくていいぞシンヤくん、好きなもの頼みなさい」

「で、でも……」

「将来の息子には、お腹いっぱい好きなもの食べて欲しいんだよ」

「……! ありがとうございます」

シンヤは最安の品を探すのをやめ、僕に顔を寄せて何を頼むのかの相談を持ちかけてくれた。僕達はハンバーグとサイコロステーキをそれぞれ注文し、半分こしようと決めた。

「いやぁいいなぁ半分こ……なぁ、半分こ……」

「私、これにしようかな」

「激辛じゃないか……! さては分けてくれる気がないな?」

両親のじゃれ合いは恥ずかしいものだが、シンヤは羨望の眼差しを向けているようだった。僕はそっと机の下のシンヤの太腿の上に手を置き、手を繋ごうと無言で誘った。

「……ヒロくん♡」

シンヤの手が僕の手に重なる。歳に合わない純粋で愛らしい笑顔が向けられる。

「…………ふふ」

僕も思わず笑顔になってしまった。



約束通り食事を半分ずつ交換し、楽しい時間を過ごした。途中からシンヤは照れながらも僕の両親のことをお義父さんお義母さんと呼んでいたから、きっと僕達は周りの人には兄弟に見えただろう。

「美味しかったぁ……♡ ごちそうさまです、お義父さん」

僕の兄弟と言うにはシンヤは美形過ぎるとは思うけれど、僕は顔半分を隠しているし、十分そう見えるだろう。

「ヒロくん、ルドー続きやろ♡」

「あ、うん……でもシンヤくん、今度はやりながら色々話そうね」

腹ごしらえを終えた僕達は再び車に乗り込み、ボードゲームを再開した。先程はシンヤがゲームに集中し過ぎて会話にならなかったから、今回こそ会話を楽しみたい。

「駒二個目~」

「……あのさ、シンヤくん……温泉って、どう?」

「入ったことない……あ、温泉の素お風呂に入れたことあるよ。気持ちよかったぁ♡」

「そっか。えっと……大浴場の他に部屋にも露天風呂ついてるらしいから、一緒に入ろうね」

「天然温泉? 楽しみ♡」

風呂を上がったら上等な布団の上で、シンヤと──と買ったばかりのコンドームを思い浮かべ、一人勝手に顔を赤くした。
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