上 下
254 / 298

ファッションショー

しおりを挟む
目を隠していた前髪を横分けにされて視界が開けた。目付きがとても悪い僕は目を隠していないと不良に絡まれたり、女子に泣かれたり、教師に平常点を下げられたりしてしまう。産まれてこの方、この目でいい目に遭った記憶がない。

「ヒロくんに似合いそうな服は~♡」

「……あのさ、シンヤくん。僕……目出してていいのかな。僕ほら、目付き悪いだろ、だから……出さない方が、いいんじゃないかな」

シンヤの愛が異常なまでに深いのは理解し、実感もしている。けれど、それでも、過去の経験が開けた視界に怯えさせる。

「え? 俺ヒロくんの目好きだよ♡ 怖いけど、だからカッコイイ……って言うのかな、とにかく好き♡ ちっちゃいのに怖い目してるって可愛さもあるし……♡」

低身長な僕の目付きが悪いのは嫌な方のギャップだと思う、印象がマイナスになるはずだ。それなのにシンヤは「好き♡」と微笑んでくれる。

「それよりヒロくん♡ 着替えよっか♡」

「う、うん……ぁ、自分で着替えられるから」

僕の服を脱がそうとしたシンヤを離れさせ、彼に背を向けて服を脱ぐ。渡された服はシンヤが以前着ていたこともあるオシャレな服だ、しかし丈が足り過ぎている。

「ちょっと大きいね、裾折ろっか」

ぶかっとしたデニムの裾を折られるという子供のような扱いを受けると、僕の頬はすぐ真っ赤になった。

「ん、可愛い♡ ポーズ取ってヒロくん♡」

肩幅が足りないから襟ぐりが広くなり過ぎて不格好だ。肩にあるはずの縫い目が二の腕まで落ちている。それなのにウエストにはさほど余裕がない、デニムの方もそうだ。

「ヒロくんっ♡ ピースピース♡ こっち向いてニコッてして♡」

着せられていると分かりやすい今の僕を写真に残すなんて馬鹿げている。こんなの罰ゲームでしかない。

「ぴ、ぴーす……」

でもシンヤはきっと本心から僕を「可愛い♡」と評し、素直な気持ちで自分の服を着せたはずだ。ひねくれた考え方でシンヤを裏切りたくはない。

「可愛い~♡♡ 最高だよヒロくん♡ 足にもちょっと動き付けてみよっか♡」

僕はその後、次々にポーズを取らされた。座っているものや寝転がっているものまで。褒めながら写真を撮るシンヤに次第に乗せられ、服を変える頃にはすっかりモデル気分でポーズを考えるようになった。

「次これ?」

「うん♡ 着ておいて♡」

撮った写真の確認をしているシンヤの隣で次の服に着替える。これは部屋着のようだ、元々ゆったりとしている服のようで襟ぐりから肩が出てしまう。まぁそれはそれでセクシーだ、シンヤは喜んでくれるだろう。

「はぁ……♡ ぶかぶかの服着せられてるヒロくん可愛い……♡ 襲いたぁい♡♡」

「…………シンヤくん」

「着れた?」

「着れたは着れたんだけどさ、シンヤくん。シンヤくんは僕にオシャレな服着て欲しいんじゃないの? 自分の服着せて彼シャツ萌えするのが本当の目的なの?」

彼シャツという言葉に首を傾げたシンヤに、自分より小柄な恋人に自分の服を着せて二人の体格差を明確にし、小柄な恋人への庇護欲や支配欲を湧かせる行為だと雑に説明した。

「うーん……俺はねぇ、ヒロくんが俺の服着たら可愛いだろうなって思っただけだよ。ヒロくんのちっちゃさ強調しようとか、ヒロくんを辱めようとか、そういう計算はなかったなぁ……結果的にそうなったかもだけど」

やはりシンヤは純粋だった。シンヤと接していると自分がどれだけひねくれた人間かが強調されてしまうな。

「そっか」

「……俺の服着るの、嫌?」

「ううん。ねぇ、ポーズ、部屋着だからなんかリラックスしてるようなのの方がいいかな?」

「ヒロくん……! うんっ♡♡」

萌えられたって辱められたっていいじゃないか、それでシンヤが可愛い笑顔を見せてくれるなら。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

変態村♂〜俺、やられます!〜

ゆきみまんじゅう
BL
地図から消えた村。 そこに肝試しに行った翔馬たち男3人。 暗闇から聞こえる不気味な足音、遠くから聞こえる笑い声。 必死に逃げる翔馬たちを救った村人に案内され、ある村へたどり着く。 その村は男しかおらず、翔馬たちが異変に気づく頃には、すでに囚われの身になってしまう。 果たして翔馬たちは、抱かれてしまう前に、村から脱出できるのだろうか?

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

おとなのための保育所

あーる
BL
逆トイレトレーニングをしながらそこの先生になるために学ぶところ。 見た目はおとな 排泄は赤ちゃん(お漏らししたら泣いちゃう)

性的イジメ

ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。 作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。 全二話 毎週日曜日正午にUPされます。

バイト先のお客さんに電車で痴漢され続けてたDDの話

ルシーアンナ
BL
イケメンなのに痴漢常習な攻めと、戸惑いながらも無抵抗な受け。 大学生×大学生

童貞が建設会社に就職したらメスにされちゃった

なる
BL
主人公の高梨優(男)は18歳で高校卒業後、小さな建設会社に就職した。しかし、そこはおじさんばかりの職場だった。 ストレスや性欲が溜まったおじさん達は、優にエッチな視線を浴びせ…

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

高校生の僕は、大学生のお兄さんに捕まって責められる

天災
BL
 高校生の僕は、大学生のお兄さんに捕まって責められる。

処理中です...