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約束を守る辛さ
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爪を削った粉にまみれた指をウェットティッシュで拭われ、なんとなく爪先がスッキリした。
「ヒロくん足も可愛いね♡」
徹底的に僕の爪先を綺麗にしたシンヤは僕の足と恋人繋ぎを行った。足の感覚は鈍いが、足の指の間に入り込んだシンヤの指の骨の太さは分かる。
「あ、足が可愛いって何さ……」
「ちっちゃくて、すっごく可愛い♡」
「にぎにぎしないで……き、汚いって、あんまり触っちゃ……」
シルエットが細身なことと可愛い仕草や話し方に誤魔化されているが、シンヤは背も高いし肩幅も広いしっかりとした『男』だ。抱き締めたり脱いだり、今のように握られたりすると僕との差がハッキリと分かる。
「洗ってきてくれたんだろ? 俺が気付いてないって思ってた?」
「ぅ……いや、でも、足だし……」
「本当に可愛い……♡ 食べたい」
僕よりもずっと雄として優秀なシンヤに引け目のようなものを感じていると、シンヤが僕の足の指をパクッと咥えた。
「へっ……!? ちょっ、な、何してんのっ! もうっ! 汚いんだからねっ!?」
慌てて足を引き、急いで靴下を履く。シンヤに視線を戻すと彼は口元を押さえて俯いていた。
「え……ぁ、け、蹴っちゃった!? 嘘っ、ごめん……大丈夫?」
「んー……平気……」
「ほんと? 見せて? 唇切れてない?」
シンヤは口を見せようとしない、きっと怪我をしたのだ、僕に気を遣わせないようにと気を遣っているのだ──そう思い込んだ僕はシンヤの手首を掴んで引っ張った。
「見、せっ……てぇっ……!」
シンヤの力には勝てない。けれど引くわけには──シンヤが突然手を大きく外側に振り、力の弱い僕は彼の手首を離してしまった。そしてシンヤは無防備な僕の手を握り、抵抗を封じた上で唇を重ねた。
「…………びっくりした? 何ともないよ、痛くもない。ヒロくん足振るんじゃなくて引いてくれたからさ」
こんなイタズラ、シンヤらしくない。
「汚い汚いってさ、俺は可愛くて綺麗だと思ってるからヒロくんの足に触ってるのに……ちょっと拗ねちゃってた、ごめんねガキっぽくて」
らしくないからこそ、シンヤが心を開いてくれたような気がして嬉しい。
「心配してくれてありがと♡ 騙してごめんね?」
「ゃ……僕、が……急に動いたのが悪いんだし、君は口押さえてただけで……僕が勝手に勘違いしたんだ」
「……ヒロくん顔真っ赤♡」
「急にキスするからぁ! 今日はそういうことしないって言ったのに!」
キスだけならまだしも、挑発的な笑顔で顔が赤いことを指摘されては僕の愚息は昨日の約束を破ろうとしてしまう。
「だから舌入れなかったじゃん、さっきのはえっちなことじゃないよ♡」
きょとんとした顔だ。シンヤが僕を弄ぶような真似をするとは思っていないが、一から十まで天然なんてそんなバカなことがあってたまるか。
「引き続きえっちじゃないことしていこー♡ えっと……まず髪梳かせて欲しくて、その後俺の服着て♡ ヒロくん私服めちゃくちゃダサいからさ、普通の服着てるとこもっと見たい♡」
「サイズ合わないと思うけど……」
密着して髪の手入れ、シンヤの前で服を脱ぐ、これが「えっちなこと」じゃなくて何がそうなんだ? 僕が敏感過ぎるのか?
「前髪分けてやるー♡ わー目こわーい♡」
今日は随分はしゃいでいるな。そんなシンヤを前に我慢し続けるなんて……僕はどうしてあんな約束をしてしまったのだろう。
「ヒロくん足も可愛いね♡」
徹底的に僕の爪先を綺麗にしたシンヤは僕の足と恋人繋ぎを行った。足の感覚は鈍いが、足の指の間に入り込んだシンヤの指の骨の太さは分かる。
「あ、足が可愛いって何さ……」
「ちっちゃくて、すっごく可愛い♡」
「にぎにぎしないで……き、汚いって、あんまり触っちゃ……」
シルエットが細身なことと可愛い仕草や話し方に誤魔化されているが、シンヤは背も高いし肩幅も広いしっかりとした『男』だ。抱き締めたり脱いだり、今のように握られたりすると僕との差がハッキリと分かる。
「洗ってきてくれたんだろ? 俺が気付いてないって思ってた?」
「ぅ……いや、でも、足だし……」
「本当に可愛い……♡ 食べたい」
僕よりもずっと雄として優秀なシンヤに引け目のようなものを感じていると、シンヤが僕の足の指をパクッと咥えた。
「へっ……!? ちょっ、な、何してんのっ! もうっ! 汚いんだからねっ!?」
慌てて足を引き、急いで靴下を履く。シンヤに視線を戻すと彼は口元を押さえて俯いていた。
「え……ぁ、け、蹴っちゃった!? 嘘っ、ごめん……大丈夫?」
「んー……平気……」
「ほんと? 見せて? 唇切れてない?」
シンヤは口を見せようとしない、きっと怪我をしたのだ、僕に気を遣わせないようにと気を遣っているのだ──そう思い込んだ僕はシンヤの手首を掴んで引っ張った。
「見、せっ……てぇっ……!」
シンヤの力には勝てない。けれど引くわけには──シンヤが突然手を大きく外側に振り、力の弱い僕は彼の手首を離してしまった。そしてシンヤは無防備な僕の手を握り、抵抗を封じた上で唇を重ねた。
「…………びっくりした? 何ともないよ、痛くもない。ヒロくん足振るんじゃなくて引いてくれたからさ」
こんなイタズラ、シンヤらしくない。
「汚い汚いってさ、俺は可愛くて綺麗だと思ってるからヒロくんの足に触ってるのに……ちょっと拗ねちゃってた、ごめんねガキっぽくて」
らしくないからこそ、シンヤが心を開いてくれたような気がして嬉しい。
「心配してくれてありがと♡ 騙してごめんね?」
「ゃ……僕、が……急に動いたのが悪いんだし、君は口押さえてただけで……僕が勝手に勘違いしたんだ」
「……ヒロくん顔真っ赤♡」
「急にキスするからぁ! 今日はそういうことしないって言ったのに!」
キスだけならまだしも、挑発的な笑顔で顔が赤いことを指摘されては僕の愚息は昨日の約束を破ろうとしてしまう。
「だから舌入れなかったじゃん、さっきのはえっちなことじゃないよ♡」
きょとんとした顔だ。シンヤが僕を弄ぶような真似をするとは思っていないが、一から十まで天然なんてそんなバカなことがあってたまるか。
「引き続きえっちじゃないことしていこー♡ えっと……まず髪梳かせて欲しくて、その後俺の服着て♡ ヒロくん私服めちゃくちゃダサいからさ、普通の服着てるとこもっと見たい♡」
「サイズ合わないと思うけど……」
密着して髪の手入れ、シンヤの前で服を脱ぐ、これが「えっちなこと」じゃなくて何がそうなんだ? 僕が敏感過ぎるのか?
「前髪分けてやるー♡ わー目こわーい♡」
今日は随分はしゃいでいるな。そんなシンヤを前に我慢し続けるなんて……僕はどうしてあんな約束をしてしまったのだろう。
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