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病み上がりなのに

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キャスター付きの椅子の上で足をぷらぷらと揺らす。歳不相応、見た目にも不相応な仕草だ。なのに何故かシンヤらしくて愛らしい。

「どうしたのヒロくん、なんかさっきから……緊張? してる? なんか変だよ」

「え、そっ、そう? そんなことないと思うけど」

勃起に気付かれるのはまずい。体調が悪くても奉仕しようとするシンヤのことだ、治りつつある今なら尚更しゃぶろうとしてくれるだろう。まだそんなことさせられない。

「ずっと立ちっぱなしで疲れた?」

立ちっぱなしと言うか、勃ちっぱなしと言うか、なんて最低なダジャレ言えるものか。

「気付かなくてごめん。ヒロくんも座りたいよね」

「ぁ、いや、お構いなく……」

キャスター付きの椅子から降りたシンヤは僕の手を引いてベッドに向かった。そういう意図ではないと分かっているのに、僕の愚息は更に膨らむ。

「ふふ……朝からヒロくんと居られるなんて、超幸せ♡」

「う、うん……僕も、同じ気持ちだよ」

僕達はベッドに揃って腰を下ろした。太腿が触れ合っている。前かがみになっているから肩は触れないし、足の間で手を組んでいるから手も繋げない。

「……なんかぎこちないね」

スキンシップを急に減らして、目も合わせず話すのも下手になった僕を不審に思うのは、至極当然の思考回路だ。

「ヒロくん……?」

直前の気持ち悪い口説き文句のおかげでシンヤはまだ不安を覚えてはいないようだが、疑問は抱いている。顔を覗き込んできている。この視線が下を向けば勃起に気付かれてしまうと悟った僕は、シンヤの両手を握って目を合わせた。

「ヒ、ヒロくん……♡ どうしたの?」

これならシンヤの視線が僕の股間に向かうことはないし、シンヤが僕の愛情を疑うこともない。たった一つの問題は、この行為そのものが不自然で不審ということだ。

「えっと……好き、です」

「嬉しい♡ 俺も♡♡」

「愛してる……」

このままチビチビと愛を語って昼飯の時間までやり過ごそうか。いや、トイレを借りて抜いてくる方が確実だ、どうしてそれを早く思い付かなかったんだ。

 「あ、あのさシンヤくんっ、ちょっとトイレを……」

「ヒロくん勃ってる?」

「へっ?」

突然手を握って愛を囁き出したら不審に思って当然だ、不審に思ったら目を合わせられていても相手を観察するのは自然なことだ。どうして僕は目を合わせていたらシンヤからは外さないと思い込んでいたんだ。

「言い出せなくて変になってたんだ。可愛い♡ 遠慮しなくていいよ♡ 口でしてあげる……♡」

気付かれないようにと思うあまり、焦りで頭が上手く働かなくなっていたようだ。自分のポンコツっぷりにもうため息すら出ない。

「シ、シンヤくん……いや、あの、君は風邪引いてて」

「治ったよ?」

「病み上がりでそんなことっ、させられないよ……一人で抜いてくるからトイレにっ」

「だーめっ♡ 恋人と一緒に居るのに一人でなんて変だよヒロくん、ほら、出して♡」

ズボンの上から陰茎をカリカリと引っ掻かれて、無邪気さに淫らさが混じった小悪魔の微笑みに見つめられて、僕は諦めてしまった。
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