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我慢の触れ合い
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シンヤは両親が家に帰らなくても、母親が病気の心配をするどころか暴言を残して不倫しても、何も思わない。彼は僕のことでしか心を動かせないのだ。
「ごちそうさまー♡ 美味しかった♡」
それはとても嬉しくて、同時にとても悲しい。
「片付けておくから部屋戻ってて」
「え、でも」
「病み上がりなんだから水仕事はダメだよ」
シンヤを部屋に返し、食器を洗う。米粒一つ残さずに食べてくれるから洗いやすい。
「シンヤくんが使ってたお箸…………いやいや何考えてんだ僕。ダメだそんなこと、僕に風邪うつったらシンヤくん気にしちゃう……」
箸やコップの縁を舐め回したくなる衝動を抑え、食器洗いが終わったらシンヤの部屋に戻った。彼はベッドではなく勉強机の椅子に腰掛けており、キャスター付きのその椅子の上で退屈そうに足を揺らしていた。
「ヒロくんっ♡ おかえり♡」
「ただいま……?」
傍に寄るとシンヤはすぐに僕の手を掴み、自身の頬に押し付けた。温かく柔らかく心地いい感触に顔が緩む。
「冷たっ……お疲れ様、ヒロくん♡」
「ダメだよ、身体冷やしちゃ……」
「顔とか頭は冷やした方がいいんだろ?」
「あ、うん……まぁ」
シンヤはしばらく僕の手のひらに頬を擦り寄せて温めると、僕の手をひっくり返して手の甲も温め始めた。
「色々やってくれてありがとう♡ 俺、お返し、こんなことしか出来なくて……」
「ううん、すっごく嬉しい。ほっぺたで温めるって発想が可愛いし」
手の甲で優しく撫でてやるとシンヤは緩んだ笑顔を見せる。キスはダメだし、汗をかくような行為もダメだ。恋人としてのスキンシップはこれが限界かもしれない。
「ヒロくん大好き……♡」
「あ、ありがとう……僕も、その、大好き」
すべすべなシンヤの肌に触れていると、紅潮した顔を見ていると、油断しきった部屋着を見ていると、股間が熱くなる。
僕は少し前かがみになり、両手で頬を挟んでシンヤの顔を少し持ち上げた。
「えっと……」
話すことがなくなってしまった。
「あ、そうだヒロくん。休んでる間の授業、何やったか教えて」
「えっ? あ、あぁ……ごめん、ノートとか持ってきてなくて……明日持ってくるよ」
「ありがとう♡ 頼むよ♡」
「……君がいなくて寂しくて、君のことばっかり考えて、あんまり集中してないから……ちゃんとノート取れてるかどうかは……分かんない」
「俺のことばっかり……? あはっ♡ 嬉しい♡」
僕の一番の仕事は休んでいるシンヤのためにもしっかりとノートを取ることだった、教師にもそう言われた。それを満足に出来なかったのに、シンヤは笑ってくれる。
「はぁ……」
「ヒロくん? どうしたのため息ついて。ため息つくと幸せ逃げるって言うよ?」
シンヤが可愛すぎてため息しか出なくなってしまった。なんて言えない。少し気持ち悪いが口説き文句を思い付いたのでそれを言おう。
「じゃあ君に吸わせて君を幸せにする」
「ヒロくん……♡ でも俺、ヒロくんが幸せな方がいいな♡」
「君の幸せが僕との幸せなら、僕も幸せになるよ。まぁ……僕の幸せも君が幸せなことだから、どっちに幸せがあってもあんまり変わらないかも」
「……なんかややこしいね」
「だね。でも単純だよ。僕達は二人一緒じゃなきゃ幸せになれないし、二人一緒なら幸せなんだ」
「…………そうだね♡」
そう、二人一緒なら幸せなんだ。性的な接触なんて必要ない。だから愚息よ、頼むから落ち着いてくれ。シンヤに気付かれる前に。
「ごちそうさまー♡ 美味しかった♡」
それはとても嬉しくて、同時にとても悲しい。
「片付けておくから部屋戻ってて」
「え、でも」
「病み上がりなんだから水仕事はダメだよ」
シンヤを部屋に返し、食器を洗う。米粒一つ残さずに食べてくれるから洗いやすい。
「シンヤくんが使ってたお箸…………いやいや何考えてんだ僕。ダメだそんなこと、僕に風邪うつったらシンヤくん気にしちゃう……」
箸やコップの縁を舐め回したくなる衝動を抑え、食器洗いが終わったらシンヤの部屋に戻った。彼はベッドではなく勉強机の椅子に腰掛けており、キャスター付きのその椅子の上で退屈そうに足を揺らしていた。
「ヒロくんっ♡ おかえり♡」
「ただいま……?」
傍に寄るとシンヤはすぐに僕の手を掴み、自身の頬に押し付けた。温かく柔らかく心地いい感触に顔が緩む。
「冷たっ……お疲れ様、ヒロくん♡」
「ダメだよ、身体冷やしちゃ……」
「顔とか頭は冷やした方がいいんだろ?」
「あ、うん……まぁ」
シンヤはしばらく僕の手のひらに頬を擦り寄せて温めると、僕の手をひっくり返して手の甲も温め始めた。
「色々やってくれてありがとう♡ 俺、お返し、こんなことしか出来なくて……」
「ううん、すっごく嬉しい。ほっぺたで温めるって発想が可愛いし」
手の甲で優しく撫でてやるとシンヤは緩んだ笑顔を見せる。キスはダメだし、汗をかくような行為もダメだ。恋人としてのスキンシップはこれが限界かもしれない。
「ヒロくん大好き……♡」
「あ、ありがとう……僕も、その、大好き」
すべすべなシンヤの肌に触れていると、紅潮した顔を見ていると、油断しきった部屋着を見ていると、股間が熱くなる。
僕は少し前かがみになり、両手で頬を挟んでシンヤの顔を少し持ち上げた。
「えっと……」
話すことがなくなってしまった。
「あ、そうだヒロくん。休んでる間の授業、何やったか教えて」
「えっ? あ、あぁ……ごめん、ノートとか持ってきてなくて……明日持ってくるよ」
「ありがとう♡ 頼むよ♡」
「……君がいなくて寂しくて、君のことばっかり考えて、あんまり集中してないから……ちゃんとノート取れてるかどうかは……分かんない」
「俺のことばっかり……? あはっ♡ 嬉しい♡」
僕の一番の仕事は休んでいるシンヤのためにもしっかりとノートを取ることだった、教師にもそう言われた。それを満足に出来なかったのに、シンヤは笑ってくれる。
「はぁ……」
「ヒロくん? どうしたのため息ついて。ため息つくと幸せ逃げるって言うよ?」
シンヤが可愛すぎてため息しか出なくなってしまった。なんて言えない。少し気持ち悪いが口説き文句を思い付いたのでそれを言おう。
「じゃあ君に吸わせて君を幸せにする」
「ヒロくん……♡ でも俺、ヒロくんが幸せな方がいいな♡」
「君の幸せが僕との幸せなら、僕も幸せになるよ。まぁ……僕の幸せも君が幸せなことだから、どっちに幸せがあってもあんまり変わらないかも」
「……なんかややこしいね」
「だね。でも単純だよ。僕達は二人一緒じゃなきゃ幸せになれないし、二人一緒なら幸せなんだ」
「…………そうだね♡」
そう、二人一緒なら幸せなんだ。性的な接触なんて必要ない。だから愚息よ、頼むから落ち着いてくれ。シンヤに気付かれる前に。
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