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お母様にご挨拶
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土曜日の早朝。シンヤの家にやってきた僕はシンヤの母親らしき女性と遭遇してしまった。彼女はシンヤと目元がよく似ていたが、僕を見下す瞳はシンヤの優しい視線とは比べものにならないほど冷たい。
「シンヤの友達? こんな朝早くから遊びに来たの? 非常識な子……」
「あ、遊びに来たって言うか……その、看病しに来たんです!」
「看病……? シンヤどうかしたの?」
どうかしたの、だと? 朝に倒れて夕方頃まで床に横たわったままになるほど息子が弱ったのに、全く知らないのか? 今家から出てきたじゃないか、シンヤと顔くらい合わせただろ?
「シンヤくんっ、風邪引いてるんですよ? しっ……知らないん、ですか?」
親のくせに、たった今まで家に居たくせに、その二つの言葉は飲み込んだ。
「風邪!? 本当!?」
慌てた声に「知らなかっただけで息子を心配することは出来るのか」と安心してしまう。
「昨日、学校はどうしたの? まさか休んだんじゃないでしょうね」
「えっ? や、休みましたよ……風邪引いてるんですから」
「はぁ!? あぁ……いえ、あなたには関係ない……ごめんね。えっと……風邪ね、風邪、熱はどのくらい出たの?」
昨日計ったほぼ平熱を伝えるのはまずそうだと察知した僕は、計った中で一番高かった体温を答えた。
「たったそのくらいの熱で休んだの!? しかも休みの日に人を呼び付けて看病させてるの? 何、それ……いつからそんな子に」
「……たったそのくらいって、シンヤくん倒れてたんですよ!? 連絡つかないからって僕が来るまでずっと……! 一人きりで倒れてたんです!」
「だから何? 急に大声出さないでよ」
現実の人間の言葉で背筋が寒くなったのは初めてだ。
「そもそも風邪なんて体調管理が出来てない証拠よ。えっと、小宅くんだっけ。シンヤの看病させてごめんなさいね。今日は帰って」
「え……? で、でも……シンヤくんまだ完治してなくて、一人にするのは……」
「…………この間のテスト、シンヤったら百点取れなかったのよ。教師が遊びで難問を入れた訳でもない、ごく普通の問題を間違えてたの。友達なんて作ってるから」
確かにシンヤが成績を落としたのは僕のせいだ。だが、他人にそんなふうに言われると腹が立つ。
「ごめんなさいね小宅くん、あなたはきっといい子なんでしょうけど、うちのシンヤには合わないみたい。シンヤとはもう二度と関わらないでくれる?」
「は……?」
付き合ってますなんて報告しなくても、彼女が僕を拒絶するのはきっと決まっていたのだろう、シンヤの成績が下がった時に。
「あ、あぁ……はい、分かりました。同じクラスなので関係を断つのは難しいと思いますが、家には二度と来ませんし……学校での会話も極力避けます」
「……物分かりのいい子でよかった。あなたならきっともっといいお友達が見つかるから気を落とさないで。それじゃ、さよなら」
シンヤの家に背を向けて歩くと、シンヤの母親は家の前に停まっていた車の助手席に乗り込んだ。
「お待たせしました部長」
「いや……あの子供は?」
「息子の友達です。そんなことどうだっていいでしょう? ねぇ……」
こっそりと車の中を覗くと彼女は運転席の男と熱烈なキスをしていた。それが終わると車は発進し、僕は踵を返した。
「……シーンーヤーくーんっ! 来たよ~!」
自分の気持ちを上げるためにもあえて明るい声を上げ、彼の部屋へと駆け足で向かった。
「シンヤの友達? こんな朝早くから遊びに来たの? 非常識な子……」
「あ、遊びに来たって言うか……その、看病しに来たんです!」
「看病……? シンヤどうかしたの?」
どうかしたの、だと? 朝に倒れて夕方頃まで床に横たわったままになるほど息子が弱ったのに、全く知らないのか? 今家から出てきたじゃないか、シンヤと顔くらい合わせただろ?
「シンヤくんっ、風邪引いてるんですよ? しっ……知らないん、ですか?」
親のくせに、たった今まで家に居たくせに、その二つの言葉は飲み込んだ。
「風邪!? 本当!?」
慌てた声に「知らなかっただけで息子を心配することは出来るのか」と安心してしまう。
「昨日、学校はどうしたの? まさか休んだんじゃないでしょうね」
「えっ? や、休みましたよ……風邪引いてるんですから」
「はぁ!? あぁ……いえ、あなたには関係ない……ごめんね。えっと……風邪ね、風邪、熱はどのくらい出たの?」
昨日計ったほぼ平熱を伝えるのはまずそうだと察知した僕は、計った中で一番高かった体温を答えた。
「たったそのくらいの熱で休んだの!? しかも休みの日に人を呼び付けて看病させてるの? 何、それ……いつからそんな子に」
「……たったそのくらいって、シンヤくん倒れてたんですよ!? 連絡つかないからって僕が来るまでずっと……! 一人きりで倒れてたんです!」
「だから何? 急に大声出さないでよ」
現実の人間の言葉で背筋が寒くなったのは初めてだ。
「そもそも風邪なんて体調管理が出来てない証拠よ。えっと、小宅くんだっけ。シンヤの看病させてごめんなさいね。今日は帰って」
「え……? で、でも……シンヤくんまだ完治してなくて、一人にするのは……」
「…………この間のテスト、シンヤったら百点取れなかったのよ。教師が遊びで難問を入れた訳でもない、ごく普通の問題を間違えてたの。友達なんて作ってるから」
確かにシンヤが成績を落としたのは僕のせいだ。だが、他人にそんなふうに言われると腹が立つ。
「ごめんなさいね小宅くん、あなたはきっといい子なんでしょうけど、うちのシンヤには合わないみたい。シンヤとはもう二度と関わらないでくれる?」
「は……?」
付き合ってますなんて報告しなくても、彼女が僕を拒絶するのはきっと決まっていたのだろう、シンヤの成績が下がった時に。
「あ、あぁ……はい、分かりました。同じクラスなので関係を断つのは難しいと思いますが、家には二度と来ませんし……学校での会話も極力避けます」
「……物分かりのいい子でよかった。あなたならきっともっといいお友達が見つかるから気を落とさないで。それじゃ、さよなら」
シンヤの家に背を向けて歩くと、シンヤの母親は家の前に停まっていた車の助手席に乗り込んだ。
「お待たせしました部長」
「いや……あの子供は?」
「息子の友達です。そんなことどうだっていいでしょう? ねぇ……」
こっそりと車の中を覗くと彼女は運転席の男と熱烈なキスをしていた。それが終わると車は発進し、僕は踵を返した。
「……シーンーヤーくーんっ! 来たよ~!」
自分の気持ちを上げるためにもあえて明るい声を上げ、彼の部屋へと駆け足で向かった。
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