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病み上がりだから
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風邪は治ったようだが今日は学校を休ませ、放課後シンヤの家に行って刺激の弱い料理を作った。しばらく辛いものや熱いものは控えて喉を休ませろと伝えると、過保護だと笑われてしまった。
「もー……ヒロくんそんなに心配性だった? でも、ありがとうヒロくん♡ 心配してくれるの嬉しい……♡」
「シンヤくんが好きだから心配になるんだよ」
「もぉ……♡ 相変わらず口が上手いよ♡ 俺は好きしか言えないのに……ずるいなぁ♡」
「……シンヤくんの方がよっぽど僕を上手く褒めてくれるよ」
まだ感染の可能性はあるからシンヤへのキスは額に行う。シンヤの額には熱冷ましのシートの匂いが移っていた。
「シンヤくん前髪上げてるのもいいね」
「本当っ? どっちが好き?」
「どっちも好き」
「困るよ……ちょっとくらい差ない?」
「ない」
僕の即答にシンヤは目を丸くした。
「もっと自惚れて」
「難しいよ……」
「……僕今日はそろそろ帰るよ、明日も朝から来るつもりなんだけどいいよね? ご飯何が食べたい?」
「遠慮させてくれないんだよね? じゃあ……卵焼き食べたいな。味噌汁も欲しいよ。今朝と同じがいい」
「焼き魚とか主菜を一品増やそうと思ってるんだけど」
「ヒロくんにおまかせ、とか言ったら困る?」
困るけれど、嬉しい困らされ方だ。シンヤには首を横に振って問題ないと伝え、帰りにスーパーに寄るからその時安かった物にする……なんて軽口も叩いた。
「じゃあ、また明日ね、シンヤくん」
「うん……♡ ばいばい」
微笑み合って別れた日の翌朝、僕はシンヤの家に行く準備をしていた。
「今日もこんな朝早くから行くの?」
「うん、シンヤくん風邪引いてるから看病してるって言っただろ?」
「……まだ治らないの?」
「もうほとんど治ってるよ。でも心配だから早く会いたいんだ」
眉尻を下げていた母は正直な僕を笑い、気を付けてと笑顔で送り出してくれた。僕が風邪を引いたら母が看病してくれるのだろう、倒れたりしていたら父がベッドまで運んでくれるのだろう、そう思うとシンヤが不幸に思えた。
「……勝手に憐れんじゃダメだ」
少なくとも昨日、シンヤは幸せそうに微笑んでいた。両親の対応が悪いからって不幸な子だと憐れむのはシンヤに失礼だ、彼は僕さえ居れば幸せだと言ってくれるのだから。
「…………重いなぁ」
シンヤの幸不幸は僕次第。責任重大だ。
シンヤの朝食の食材を片手に彼の家へ到着。家の前に停まっている車に不信感を抱きつつ、玄関扉に手をかける──
「……え?」
──僕が引く前に中から押し開けられた。開けたのはスーツ姿の美女だ、シンヤではない。しかし、どことなくシンヤに似ている気がする。
「…………あなた、誰? うちに何の用?」
「えっ? ぁ……シンヤくんのお母さんですか? 僕、シンヤくんと…………友達やらせてもらってます、小宅と言います」
友達だと言うのは心苦しい。けれど、僕の両親のように僕達の愛を理解してくれるとは限らない。とりあえずは嘘をついていいと僕は思っている。
下げた頭をゆっくりと上げてシンヤの母親らしき女性の顔を見上げると、ゾッとするほど冷たい目で見下されていた。
「もー……ヒロくんそんなに心配性だった? でも、ありがとうヒロくん♡ 心配してくれるの嬉しい……♡」
「シンヤくんが好きだから心配になるんだよ」
「もぉ……♡ 相変わらず口が上手いよ♡ 俺は好きしか言えないのに……ずるいなぁ♡」
「……シンヤくんの方がよっぽど僕を上手く褒めてくれるよ」
まだ感染の可能性はあるからシンヤへのキスは額に行う。シンヤの額には熱冷ましのシートの匂いが移っていた。
「シンヤくん前髪上げてるのもいいね」
「本当っ? どっちが好き?」
「どっちも好き」
「困るよ……ちょっとくらい差ない?」
「ない」
僕の即答にシンヤは目を丸くした。
「もっと自惚れて」
「難しいよ……」
「……僕今日はそろそろ帰るよ、明日も朝から来るつもりなんだけどいいよね? ご飯何が食べたい?」
「遠慮させてくれないんだよね? じゃあ……卵焼き食べたいな。味噌汁も欲しいよ。今朝と同じがいい」
「焼き魚とか主菜を一品増やそうと思ってるんだけど」
「ヒロくんにおまかせ、とか言ったら困る?」
困るけれど、嬉しい困らされ方だ。シンヤには首を横に振って問題ないと伝え、帰りにスーパーに寄るからその時安かった物にする……なんて軽口も叩いた。
「じゃあ、また明日ね、シンヤくん」
「うん……♡ ばいばい」
微笑み合って別れた日の翌朝、僕はシンヤの家に行く準備をしていた。
「今日もこんな朝早くから行くの?」
「うん、シンヤくん風邪引いてるから看病してるって言っただろ?」
「……まだ治らないの?」
「もうほとんど治ってるよ。でも心配だから早く会いたいんだ」
眉尻を下げていた母は正直な僕を笑い、気を付けてと笑顔で送り出してくれた。僕が風邪を引いたら母が看病してくれるのだろう、倒れたりしていたら父がベッドまで運んでくれるのだろう、そう思うとシンヤが不幸に思えた。
「……勝手に憐れんじゃダメだ」
少なくとも昨日、シンヤは幸せそうに微笑んでいた。両親の対応が悪いからって不幸な子だと憐れむのはシンヤに失礼だ、彼は僕さえ居れば幸せだと言ってくれるのだから。
「…………重いなぁ」
シンヤの幸不幸は僕次第。責任重大だ。
シンヤの朝食の食材を片手に彼の家へ到着。家の前に停まっている車に不信感を抱きつつ、玄関扉に手をかける──
「……え?」
──僕が引く前に中から押し開けられた。開けたのはスーツ姿の美女だ、シンヤではない。しかし、どことなくシンヤに似ている気がする。
「…………あなた、誰? うちに何の用?」
「えっ? ぁ……シンヤくんのお母さんですか? 僕、シンヤくんと…………友達やらせてもらってます、小宅と言います」
友達だと言うのは心苦しい。けれど、僕の両親のように僕達の愛を理解してくれるとは限らない。とりあえずは嘘をついていいと僕は思っている。
下げた頭をゆっくりと上げてシンヤの母親らしき女性の顔を見上げると、ゾッとするほど冷たい目で見下されていた。
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