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放課後の看病
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シンヤの居ない学校は酷く退屈だ。いつもは隣の席のシンヤを見て授業のつまらなさを紛らわせるのに、今日は空席。空席なんて見ても寂しさが加速するだけだ。
「早く終わらないかな……」
授業の終わりを待つ時間はいつもよりも長い気がした。
放課後、僕は足取り軽く学校を後にした。スーパーで夕飯の食材を買い、シンヤの家へスキップで向かった。
「合鍵……ふふっ……シーンーヤーくーんっ、お邪魔しまーすっ」
正式に合鍵をもらった嬉しさに身も心も弾ませてシンヤの私室へまっしぐら。
「シンヤくんっ、起きてる?」
シンヤはベッドの上で大人しく眠っていた。ベッド脇に置いた椅子にはお粥を入れた器と味噌汁を入れたお椀が重ねられていた。その横には氷嚢だった水入りのビニール袋や、役目を終えた氷枕が置かれている。
「シンヤくん……息、朝よりは落ち着いてるな……よくなってきたのかな」
スーパーの袋を一旦床に置き、なんで僕はこれをキッチンに運ばなかったんだろうと一瞬疑問に思う。すぐにシンヤの様子を見ることに意識を切り替える。
「シンヤくん、シンヤくん起きて」
熱冷ましのシートを額に貼って、火照った顔ながらも穏やかな表情で眠っていたシンヤの肩を叩いて起こす。目を開けた彼は僕を見つけるとふにゃりと笑った。
「ひろ、くん……♡」
「おはようシンヤくん。具合どう? まず熱計ろっか」
「ん……♡」
パジャマをはだけさせて腋に体温計を挟む。体温計が羨ましいな、僕のも挟んで欲しいな、なんて分別を知らない性欲は表に出さず、シンヤの頭を撫でて待った。
「ヒロくん……俺ね、ヒロくんの夢見た」
「どんな夢?」
熱を出した時の夢はハチャメチャなイメージがあるけれど、知っている人間が出たのなら普通の夢なのかな?
「ヒロくんとね、街歩いてた……ヒロくんは、ぎゅーって俺の手握ってくれてた」
この間のデートまがいの行為で周りの目を気にしてシンヤの手を繋げなかったことを思い出し、夢に見るほどシンヤが手を繋いで欲しがっていたのかと思うと胸が痛んだ。
「横断歩道、信号変わるの待ってて……青になって、渡ってたら車じゃなくてダルマがすぐ傍で止まって」
「ダ、ダルマ?」
熱を出した時の夢っぽくなってきたな。
「うん、赤くて丸いヤツ……ダルマがね、じっと俺を見てくるんだ。前通ると目が動くんだよ……あの黒いまんまるの怖い目が」
「怖……悪夢じゃん」
「ううん……♡ 怖がってたらヒロくんが肩ぽんぽん叩いて落ち着かせてくれたんだ……♡ 目が覚めたら、やっぱりヒロくんが肩叩いてて、俺のことじっと見てて……♡」
睡眠中の些細なことで夢の内容が微妙に変化するのはよくあることだ。だが、この連動は嬉しいな。
「そっか、じゃああんまり寂しくなかったかな? 晩ご飯どうしよう、もう食べる?」
「ん……もう少し、ヒロくんの顔見てたいな♡ ヒロくんの話聞かせて♡ 今日学校どうだった? 確か、今日は情報の授業あったよね。パソコン弄るの楽しいからアレ好きなんだけどなぁ……」
シンヤは週に一度の情報科の授業を逃したのが悔しいらしい。
「今日は架空のチラシ作ったよ。僕は上手く出来た。そういえばシンヤくんパソコンは持ってないんだね」
「うん……」
「欲しい?」
「別に……やることないし」
「そっか。もし使ってみたいなら僕持ってるから家に来ないかなーって思ったんだけど」
「なんかすごく使ってみたくなってきた」
キリッと顔を整えたシンヤを笑いながら、そんなに僕が好きなのかと嬉しく思う。また二人で遊ぶためにも早く治さなければと話し、乾いていた熱冷ましのシートを貼り替えてやった。
「早く終わらないかな……」
授業の終わりを待つ時間はいつもよりも長い気がした。
放課後、僕は足取り軽く学校を後にした。スーパーで夕飯の食材を買い、シンヤの家へスキップで向かった。
「合鍵……ふふっ……シーンーヤーくーんっ、お邪魔しまーすっ」
正式に合鍵をもらった嬉しさに身も心も弾ませてシンヤの私室へまっしぐら。
「シンヤくんっ、起きてる?」
シンヤはベッドの上で大人しく眠っていた。ベッド脇に置いた椅子にはお粥を入れた器と味噌汁を入れたお椀が重ねられていた。その横には氷嚢だった水入りのビニール袋や、役目を終えた氷枕が置かれている。
「シンヤくん……息、朝よりは落ち着いてるな……よくなってきたのかな」
スーパーの袋を一旦床に置き、なんで僕はこれをキッチンに運ばなかったんだろうと一瞬疑問に思う。すぐにシンヤの様子を見ることに意識を切り替える。
「シンヤくん、シンヤくん起きて」
熱冷ましのシートを額に貼って、火照った顔ながらも穏やかな表情で眠っていたシンヤの肩を叩いて起こす。目を開けた彼は僕を見つけるとふにゃりと笑った。
「ひろ、くん……♡」
「おはようシンヤくん。具合どう? まず熱計ろっか」
「ん……♡」
パジャマをはだけさせて腋に体温計を挟む。体温計が羨ましいな、僕のも挟んで欲しいな、なんて分別を知らない性欲は表に出さず、シンヤの頭を撫でて待った。
「ヒロくん……俺ね、ヒロくんの夢見た」
「どんな夢?」
熱を出した時の夢はハチャメチャなイメージがあるけれど、知っている人間が出たのなら普通の夢なのかな?
「ヒロくんとね、街歩いてた……ヒロくんは、ぎゅーって俺の手握ってくれてた」
この間のデートまがいの行為で周りの目を気にしてシンヤの手を繋げなかったことを思い出し、夢に見るほどシンヤが手を繋いで欲しがっていたのかと思うと胸が痛んだ。
「横断歩道、信号変わるの待ってて……青になって、渡ってたら車じゃなくてダルマがすぐ傍で止まって」
「ダ、ダルマ?」
熱を出した時の夢っぽくなってきたな。
「うん、赤くて丸いヤツ……ダルマがね、じっと俺を見てくるんだ。前通ると目が動くんだよ……あの黒いまんまるの怖い目が」
「怖……悪夢じゃん」
「ううん……♡ 怖がってたらヒロくんが肩ぽんぽん叩いて落ち着かせてくれたんだ……♡ 目が覚めたら、やっぱりヒロくんが肩叩いてて、俺のことじっと見てて……♡」
睡眠中の些細なことで夢の内容が微妙に変化するのはよくあることだ。だが、この連動は嬉しいな。
「そっか、じゃああんまり寂しくなかったかな? 晩ご飯どうしよう、もう食べる?」
「ん……もう少し、ヒロくんの顔見てたいな♡ ヒロくんの話聞かせて♡ 今日学校どうだった? 確か、今日は情報の授業あったよね。パソコン弄るの楽しいからアレ好きなんだけどなぁ……」
シンヤは週に一度の情報科の授業を逃したのが悔しいらしい。
「今日は架空のチラシ作ったよ。僕は上手く出来た。そういえばシンヤくんパソコンは持ってないんだね」
「うん……」
「欲しい?」
「別に……やることないし」
「そっか。もし使ってみたいなら僕持ってるから家に来ないかなーって思ったんだけど」
「なんかすごく使ってみたくなってきた」
キリッと顔を整えたシンヤを笑いながら、そんなに僕が好きなのかと嬉しく思う。また二人で遊ぶためにも早く治さなければと話し、乾いていた熱冷ましのシートを貼り替えてやった。
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