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看病の始まり
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担任は病院の行き帰りの面倒を見てくれた後、まだ仕事が残っているからと学校に戻った。僕に早く家に帰るよう言いつけて。
「けほっ、けほっ……ぅう……喉痛い。ヒロくん、俺声変じゃない?」
「可愛いよ」
「ヒロくん……♡」
いつもより掠れた声のシンヤはマスクをつけており、元気がないのも相まってさらに声が聞こえにくい。
「ヒロくん、先生の言う通り早く帰った方がいいよ。雨酷くなるかもしれないし」
「いつももう少しここに居るじゃん。せめて夕飯作らせて」
「ヒロくん……ありがとう。優しい彼氏を持てて俺幸せだよ♡」
感涙のシンヤの額にキスをしてベッドに寝かせ、夕飯を作るため一人でキッチンに向かった。
「味は薄い方がいいかな……」
完成した卵粥に氷を二つ入れ、シンヤの私室へ運ぶ。ベッドの隣に椅子を運び、そこに座って盆を膝に乗せ、盆に乗せた卵粥をレンゲで掻き混ぜる。
「……うん、冷めてきた。ヒロくん、お粥できたよ」
「ありがとう……♡」
レンゲに掬った卵粥に唇をちょんと触れさせると、卵粥は体温近くまで冷めていた。これなら口や喉を火傷せずに食べられるだろう。
「あーん」
「食べさせてくれるの? 嬉しい……♡ ヒロくん大好き♡ あーん……♡」
「……美味しい?」
目を閉じてぱくっと僕の手から卵粥を食べたシンヤはまるで雛鳥のようだった。
「美味しい……♡」
「よかった。朝、ちょっと早めに来て朝と……あと、昼のお弁当も作るよ。学校終わったら夕飯作りに来る。いい?」
「……いいの? ヒロくん……面倒じゃない?」
「まさか。恋人の看病を面倒がるわけないよ。ちょっと申し訳ないけど……嬉しいんだ、僕」
醜い喜びを漏らすとシンヤは目を丸くして首を傾げた。男子高校生には似合わないはずの可愛い仕草が、シンヤにはよく似合う。
「…………なんで嬉しいの? ヒロくん、迷惑かけられてるのに」
「……君は、僕以外に頼れる人がいないだろ?」
「うん……いないけど、それが何?」
「君の孤独が嬉しいんだ……君の心には僕しか存在しないんだ。僕は風邪を引いたら母さんが看病してくれるけれど、君は倒れたって僕が来るまで誰にも起こしてもらえない」
シンヤの顔が僅かに曇る。
「嬉しいよシンヤくん。君は僕がいないとダメなんだ。それを実感できるのが幸せなんだ。僕の手からご飯を食べる君がとても可愛い!」
シンヤは照れくさそうに微笑む。
「氷枕も氷嚢も用意してあげるし、服を脱がして汗を拭いてあげる。胸をとんとんして寝かしつけてあげる。僕にたくさん世話させて、シンヤくん。君にもっと頼られたいんだ、甘えられたいんだよ!」
顔を真っ赤にしてもじもじしているシンヤの口に卵粥を運ぶ。
「それに熱を出してる君はとても可愛いんだ! デフォルトで顔が赤いし、目が潤んでるしとろんとしてる、動きが鈍いし笑顔にも力がないし……可哀想で可愛いよシンヤくんっ!」
「ヒロくん……♡ よく分かったから、もうやめて……♡ 恥ずかしい♡」
「……まだまだ行くよ! いいかい? シンヤくんはね──」
「もぉ……♡」
僕はシンヤが卵粥を完食するまで彼の魅力を語り続け、彼に幸せそうに嫌がられ続けた。
「けほっ、けほっ……ぅう……喉痛い。ヒロくん、俺声変じゃない?」
「可愛いよ」
「ヒロくん……♡」
いつもより掠れた声のシンヤはマスクをつけており、元気がないのも相まってさらに声が聞こえにくい。
「ヒロくん、先生の言う通り早く帰った方がいいよ。雨酷くなるかもしれないし」
「いつももう少しここに居るじゃん。せめて夕飯作らせて」
「ヒロくん……ありがとう。優しい彼氏を持てて俺幸せだよ♡」
感涙のシンヤの額にキスをしてベッドに寝かせ、夕飯を作るため一人でキッチンに向かった。
「味は薄い方がいいかな……」
完成した卵粥に氷を二つ入れ、シンヤの私室へ運ぶ。ベッドの隣に椅子を運び、そこに座って盆を膝に乗せ、盆に乗せた卵粥をレンゲで掻き混ぜる。
「……うん、冷めてきた。ヒロくん、お粥できたよ」
「ありがとう……♡」
レンゲに掬った卵粥に唇をちょんと触れさせると、卵粥は体温近くまで冷めていた。これなら口や喉を火傷せずに食べられるだろう。
「あーん」
「食べさせてくれるの? 嬉しい……♡ ヒロくん大好き♡ あーん……♡」
「……美味しい?」
目を閉じてぱくっと僕の手から卵粥を食べたシンヤはまるで雛鳥のようだった。
「美味しい……♡」
「よかった。朝、ちょっと早めに来て朝と……あと、昼のお弁当も作るよ。学校終わったら夕飯作りに来る。いい?」
「……いいの? ヒロくん……面倒じゃない?」
「まさか。恋人の看病を面倒がるわけないよ。ちょっと申し訳ないけど……嬉しいんだ、僕」
醜い喜びを漏らすとシンヤは目を丸くして首を傾げた。男子高校生には似合わないはずの可愛い仕草が、シンヤにはよく似合う。
「…………なんで嬉しいの? ヒロくん、迷惑かけられてるのに」
「……君は、僕以外に頼れる人がいないだろ?」
「うん……いないけど、それが何?」
「君の孤独が嬉しいんだ……君の心には僕しか存在しないんだ。僕は風邪を引いたら母さんが看病してくれるけれど、君は倒れたって僕が来るまで誰にも起こしてもらえない」
シンヤの顔が僅かに曇る。
「嬉しいよシンヤくん。君は僕がいないとダメなんだ。それを実感できるのが幸せなんだ。僕の手からご飯を食べる君がとても可愛い!」
シンヤは照れくさそうに微笑む。
「氷枕も氷嚢も用意してあげるし、服を脱がして汗を拭いてあげる。胸をとんとんして寝かしつけてあげる。僕にたくさん世話させて、シンヤくん。君にもっと頼られたいんだ、甘えられたいんだよ!」
顔を真っ赤にしてもじもじしているシンヤの口に卵粥を運ぶ。
「それに熱を出してる君はとても可愛いんだ! デフォルトで顔が赤いし、目が潤んでるしとろんとしてる、動きが鈍いし笑顔にも力がないし……可哀想で可愛いよシンヤくんっ!」
「ヒロくん……♡ よく分かったから、もうやめて……♡ 恥ずかしい♡」
「……まだまだ行くよ! いいかい? シンヤくんはね──」
「もぉ……♡」
僕はシンヤが卵粥を完食するまで彼の魅力を語り続け、彼に幸せそうに嫌がられ続けた。
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