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本当の梅雨の洗礼
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雨の日の翌日、僕はいつも通りに家を出た。今日はちゃんと折りたたみ傘を持っている、制服のズボンは結局乾かなかったから今日はジャージだ。
「行ってきまーす」
湿った空気とアスファルト。今は晴れているが、夜中の間ずっと降っていた雨は未だ側溝を増水させている。
「あれ、シンヤくん……?」
いつもシンヤが待ってくれている駅に着いたが、彼の姿が見えない。眩しい金髪でなくなったとはいえ、朝の駅で立ち止まっている制服姿の少年は目立つからすぐに見つけられるはずだ。
「居ない……」
彼がよくもたれている自販機の影。居るところを見たことはないが柱の影などを探したが、シンヤは居ない。電話をかけてみようか。
「…………出ない。どうしよ、遅刻しちゃうよ……シンヤくん」
何度かけてみても出ない。僕は学校に一人で向かう旨をメッセージで送信し、後ろ髪を引かれながらも電車に乗った。
遅刻ギリギリで学校に着いた。シンヤの机には鞄すらない。僕はホームルームが始まるまでずっとシンヤに電話をかけ続けた。
「あー……小宅、ちょっと」
「はい」
ホームルーム終了後、担任に廊下に呼び出された。
「吉良から何か聞いてないか?」
「シンヤくんどうかしたんですか?」
「連絡がないんだよ。何度か電話したんだが、誰も出ないんだ」
「……今朝、待ち合わせ場所に来てませんでした。僕も何度も電話しましたよ」
「吉良が無断欠席とは考えにくいよなぁ」
学年主任など誤解したままの者も居るが、担任はシンヤが優等生だとちゃんと分かってくれている。
「学校はともかく、僕の電話には出てくれるはずです」
「そうかもしれないが……そうだな、とは言えないな。立場上」
「…………シンヤくん、事故とかに遭ってませんよね?」
「どうだろうな、もしそうなら病院か警察から学校に連絡が入ると思うが……まぁ、もうしばらく待つか」
シンヤは真面目な子だ、生徒手帳を持ち歩いている。交通事故で緊急搬送……なんてことになっていても連絡は入るだろう。
「事故じゃなくて事件だったら? 誘拐とかだったら……そうですよ、シンヤくん可愛いからっ、変態に連れ去られたんだ! 通報してください!」
「ま、待て待て……事件の可能性はともかくとして、大多数の人間は吉良を可愛いとは思わない」
「あんなに可愛いのに……?」
「…………昨日、何か言ってなかったか? たとえばほら、法事とか。ご両親にも連絡がつかないし、そういった可能性も高いと思うんだ」
昨日、風呂場で……あぁダメだ、シンヤの裸体を今思い出すな。
「小宅? 顔が赤いぞ、大丈夫か?」
「きっ、昨日はシンヤくんと相合傘で帰って……車に水かけられちゃって、シンヤくんの家に寄って着替えとシャワーを……あ、制服は結局乾かなくて」
「あぁ……それでジャージなんだな」
「でも、別に……明日休むとかは、何も」
「……そうか。職員室に戻ったらもう一度電話してみるよ。心配だろうが、小宅は勉強に集中しなさい。吉良のためにも綺麗にノートを取らなきゃな」
「はい……」
事故や事件の可能性を考えてしまった今、もう平気な顔をしていられない。けれど学校を抜け出してシンヤを探しに行く──なんて行動力は僕にはない。僕はただ、椅子に座って授業を聞き流しながら不安で脂汗をかくことしか出来ない。
「行ってきまーす」
湿った空気とアスファルト。今は晴れているが、夜中の間ずっと降っていた雨は未だ側溝を増水させている。
「あれ、シンヤくん……?」
いつもシンヤが待ってくれている駅に着いたが、彼の姿が見えない。眩しい金髪でなくなったとはいえ、朝の駅で立ち止まっている制服姿の少年は目立つからすぐに見つけられるはずだ。
「居ない……」
彼がよくもたれている自販機の影。居るところを見たことはないが柱の影などを探したが、シンヤは居ない。電話をかけてみようか。
「…………出ない。どうしよ、遅刻しちゃうよ……シンヤくん」
何度かけてみても出ない。僕は学校に一人で向かう旨をメッセージで送信し、後ろ髪を引かれながらも電車に乗った。
遅刻ギリギリで学校に着いた。シンヤの机には鞄すらない。僕はホームルームが始まるまでずっとシンヤに電話をかけ続けた。
「あー……小宅、ちょっと」
「はい」
ホームルーム終了後、担任に廊下に呼び出された。
「吉良から何か聞いてないか?」
「シンヤくんどうかしたんですか?」
「連絡がないんだよ。何度か電話したんだが、誰も出ないんだ」
「……今朝、待ち合わせ場所に来てませんでした。僕も何度も電話しましたよ」
「吉良が無断欠席とは考えにくいよなぁ」
学年主任など誤解したままの者も居るが、担任はシンヤが優等生だとちゃんと分かってくれている。
「学校はともかく、僕の電話には出てくれるはずです」
「そうかもしれないが……そうだな、とは言えないな。立場上」
「…………シンヤくん、事故とかに遭ってませんよね?」
「どうだろうな、もしそうなら病院か警察から学校に連絡が入ると思うが……まぁ、もうしばらく待つか」
シンヤは真面目な子だ、生徒手帳を持ち歩いている。交通事故で緊急搬送……なんてことになっていても連絡は入るだろう。
「事故じゃなくて事件だったら? 誘拐とかだったら……そうですよ、シンヤくん可愛いからっ、変態に連れ去られたんだ! 通報してください!」
「ま、待て待て……事件の可能性はともかくとして、大多数の人間は吉良を可愛いとは思わない」
「あんなに可愛いのに……?」
「…………昨日、何か言ってなかったか? たとえばほら、法事とか。ご両親にも連絡がつかないし、そういった可能性も高いと思うんだ」
昨日、風呂場で……あぁダメだ、シンヤの裸体を今思い出すな。
「小宅? 顔が赤いぞ、大丈夫か?」
「きっ、昨日はシンヤくんと相合傘で帰って……車に水かけられちゃって、シンヤくんの家に寄って着替えとシャワーを……あ、制服は結局乾かなくて」
「あぁ……それでジャージなんだな」
「でも、別に……明日休むとかは、何も」
「……そうか。職員室に戻ったらもう一度電話してみるよ。心配だろうが、小宅は勉強に集中しなさい。吉良のためにも綺麗にノートを取らなきゃな」
「はい……」
事故や事件の可能性を考えてしまった今、もう平気な顔をしていられない。けれど学校を抜け出してシンヤを探しに行く──なんて行動力は僕にはない。僕はただ、椅子に座って授業を聞き流しながら不安で脂汗をかくことしか出来ない。
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