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正直なところ
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漫画を一冊買って本屋を出ると早速、次はどこへ行こうかという問題が浮かんだ。この辺りは詳しくないが、本屋の前から駄菓子屋やゲームセンターが見える。高校生らしいデートならここは──
「ヒロくん、帰る?」
「へっ? いや、帰らないよ。えっと……ゲーセン行かない? この辺なら前みたいに絡まれないと思うし」
「……うん」
ショッピングモール内のゲームセンターで僕達は不良に絡まれ、シンヤは暴力を受けた。しかしそもそも人が少ない場所なら不良もいないだろう、そう考えた僕はヤンキー受けが好きなくせに不良の習性を理解していなかった。人が少ないゲームセンターなんて不良の巣窟だ。
「ごめん駄菓子屋行こっか」
「うん……?」
入口から中の様子が見えてしまった。早足で駄菓子屋へと逃げ込み、それぞれ三十円程度の駄菓子を購入。駄菓子屋の前にしゃがんでもそもそと食べた。
「こういうのもたまに食べると美味しいね」
「……うん」
ろくなことが出来ていないけれど、それでもシンヤとデートしているという事実が僕を楽しませる。さて次はどこへ行こう、商店街を回ってみるか、散歩するだけでもきっと楽しいだろう。
「ごちそうさま」
「俺もごちそうさま……ヒロくん、帰る?」
「まだまだ帰らないよ。ほらっ、行こ」
「…………うん」
駄菓子のゴミを捨てたら散歩開始だ、商店街の店を入口から覗きつつ他愛ない話に花を咲かせる。
「あ、小宅あった。吉良はあるかな……」
「そんな珍しい苗字じゃないし、あるよ」
「シンヤくんも探してよ~」
「……ここ」
「み、見つけてたんだ……言ってよ、もう」
百均のハンココーナーはついつい足が止まってしまう。それだけでなく、くだらないストラップ何かにも目を奪われる。百均は時間と金にとって危険地帯だ。
「部活を模したストラップって一定の人気あるよね」
「……何か買う?」
「いやいや僕達帰宅部だし」
「そう……帰る?」
「帰らないよ。次はどこに……」
ストラップからシンヤの顔へと視線を移し、言葉が止まる。僕は楽しくなってきたところだけれど、シンヤは暗い顔をしていた。そういえば先程からずっと返答の声も暗かった気がする、どうしてすぐに気付けなかったんだ? このデート、シンヤは少しも楽しんでいない。
「えっと……シンヤくん、帰りたいの? 僕に気遣わず正直に言って?」
「……帰りたい」
「そ、そっか……じゃあ帰ろうか。君が楽しめないと意味ないし……うん、帰ろう、僕もそろそろ疲れてきてたんだ、帰ろう……」
「…………うん」
何故だ。昨日母が見ていた深夜番組では体ばかり求める男はフラれると、お家デートばかりでもフラれると、外をぶらつくだけのデートでも彼女は喜ぶと、そう紹介していたのに。
「……あのさ、シンヤくん。デート……正直どうだった?」
「…………行かなきゃよかった、って感じかな。時間と三十円無駄にした……ヒロくんは目当ての本買えてよかったね、それで帰ればよかった」
そんなに楽しくなかったのか。
「えっ、ぁ……そ、そうなんだ。何が嫌だったとかあるかな、今回の反省を、今後のデートに活かしたい……」
「……ヒロくんにひっつけないし、ヒロくんと目合わないし、別にヒロくんも楽しそうな顔してないし、ヒロくんとの話もいつもと違ってそんなに面白くなかったし」
「ま、待って待って……分かった、分かったよ……もう分かった」
シンヤはデートに向いていない。僕もだ。僕達はきっと揃ってインドア派なんだ。今後の外出は施設の魅力に頼れる場所にしよう。
「…………家でヒロくんとベタベタしたい。周りの目気にしなきゃダメなら周りに誰もいない家がいい」
「そうだよね、ごめんね……ほら、お家ついたよ。入ろ」
「……うん」
吉良宅に入って玄関を閉めた瞬間、シンヤは鍵をかけるのも後回しにして僕に抱きついた。酷く落ち込んだ彼を慰めながら思う、今日のデートは大失敗だったな……と。
「ヒロくん、帰る?」
「へっ? いや、帰らないよ。えっと……ゲーセン行かない? この辺なら前みたいに絡まれないと思うし」
「……うん」
ショッピングモール内のゲームセンターで僕達は不良に絡まれ、シンヤは暴力を受けた。しかしそもそも人が少ない場所なら不良もいないだろう、そう考えた僕はヤンキー受けが好きなくせに不良の習性を理解していなかった。人が少ないゲームセンターなんて不良の巣窟だ。
「ごめん駄菓子屋行こっか」
「うん……?」
入口から中の様子が見えてしまった。早足で駄菓子屋へと逃げ込み、それぞれ三十円程度の駄菓子を購入。駄菓子屋の前にしゃがんでもそもそと食べた。
「こういうのもたまに食べると美味しいね」
「……うん」
ろくなことが出来ていないけれど、それでもシンヤとデートしているという事実が僕を楽しませる。さて次はどこへ行こう、商店街を回ってみるか、散歩するだけでもきっと楽しいだろう。
「ごちそうさま」
「俺もごちそうさま……ヒロくん、帰る?」
「まだまだ帰らないよ。ほらっ、行こ」
「…………うん」
駄菓子のゴミを捨てたら散歩開始だ、商店街の店を入口から覗きつつ他愛ない話に花を咲かせる。
「あ、小宅あった。吉良はあるかな……」
「そんな珍しい苗字じゃないし、あるよ」
「シンヤくんも探してよ~」
「……ここ」
「み、見つけてたんだ……言ってよ、もう」
百均のハンココーナーはついつい足が止まってしまう。それだけでなく、くだらないストラップ何かにも目を奪われる。百均は時間と金にとって危険地帯だ。
「部活を模したストラップって一定の人気あるよね」
「……何か買う?」
「いやいや僕達帰宅部だし」
「そう……帰る?」
「帰らないよ。次はどこに……」
ストラップからシンヤの顔へと視線を移し、言葉が止まる。僕は楽しくなってきたところだけれど、シンヤは暗い顔をしていた。そういえば先程からずっと返答の声も暗かった気がする、どうしてすぐに気付けなかったんだ? このデート、シンヤは少しも楽しんでいない。
「えっと……シンヤくん、帰りたいの? 僕に気遣わず正直に言って?」
「……帰りたい」
「そ、そっか……じゃあ帰ろうか。君が楽しめないと意味ないし……うん、帰ろう、僕もそろそろ疲れてきてたんだ、帰ろう……」
「…………うん」
何故だ。昨日母が見ていた深夜番組では体ばかり求める男はフラれると、お家デートばかりでもフラれると、外をぶらつくだけのデートでも彼女は喜ぶと、そう紹介していたのに。
「……あのさ、シンヤくん。デート……正直どうだった?」
「…………行かなきゃよかった、って感じかな。時間と三十円無駄にした……ヒロくんは目当ての本買えてよかったね、それで帰ればよかった」
そんなに楽しくなかったのか。
「えっ、ぁ……そ、そうなんだ。何が嫌だったとかあるかな、今回の反省を、今後のデートに活かしたい……」
「……ヒロくんにひっつけないし、ヒロくんと目合わないし、別にヒロくんも楽しそうな顔してないし、ヒロくんとの話もいつもと違ってそんなに面白くなかったし」
「ま、待って待って……分かった、分かったよ……もう分かった」
シンヤはデートに向いていない。僕もだ。僕達はきっと揃ってインドア派なんだ。今後の外出は施設の魅力に頼れる場所にしよう。
「…………家でヒロくんとベタベタしたい。周りの目気にしなきゃダメなら周りに誰もいない家がいい」
「そうだよね、ごめんね……ほら、お家ついたよ。入ろ」
「……うん」
吉良宅に入って玄関を閉めた瞬間、シンヤは鍵をかけるのも後回しにして僕に抱きついた。酷く落ち込んだ彼を慰めながら思う、今日のデートは大失敗だったな……と。
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