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かわいいそう
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授業が身に入らない。まぁ、いつものことだ。授業が始まって五分ほど経ったが、勃ったままだ。
「……はぁ」
座っていてバレないうちに萎えて欲しい。シンヤはもじもじしたりしているかなと隣を見れば、ノートにペンを走らせていた。いい走りだ。
「僕だけかよぉ……」
いや、違う。シンヤは恋だけを頑張っている僕とは違う、恋のために勉強も頑張っているんだ。僕は勉強なんてしなくたって恋に支障はない、勉強する方が支障が出る。でもシンヤは違う。
「…………可愛いなぁ」
健気なシンヤを見て、思う。可愛いの語源は可哀想と同じという話は、きっと真実なのだと。
「……っ、ヒロくん、しーっ……! もぉ……♡」
可哀想な境遇で、可哀想な性格で、可哀想で可愛いシンヤ。憐れむ優越感も、慈しむ楽しさも、彼を幸せにするという人生の目標も与えてくれたシンヤ。
僕の独り言で顔を真っ赤にする君はきっと、僕と同じように昼休みに発生したムラムラを引きずっているんだろう。表に出さないよう授業に集中しようと頑張っているだけだ。
「はぁ……」
可愛すぎてため息が漏れる。トントン、と机を指で叩かれる。叩いたのはその他大勢のクラスメイト、その手は俺が気付いたことに気付くと、黒板を指した。
「……小宅、問四、答えなさい」
「へっ? あっ、ぁー……えーっと、問四? な、何ページですか?」
「はぁ……テストの点も芳しくなかったんだから、少しは授業に集中したまえ。次の席替え、君の場所は考えるように言っておく。えぇと……このクラスの担任は誰だったかな」
「そんな殺生な、シンヤくん眺めないと授業なんかやってられないのに……!」
席替えはいつやるのだろうか? 不幸は秒読みだ。呆れられて問四を答えなくてもよくなった俺は座り直して頭を抱えた。結果、担任に陳情するという手段に出た。
「お願いしますっ、シンヤくんと多少離れてもいいので、せめて僕が後ろ側でシンヤくんを見れるようにしてください。授業中ボーッとしてるならまだしも、後ろ向いてたら平常点がなくなっちゃいます!」
「……見ない、という選択肢はないのか……席替えはクジ引きでやる、視力以外の理由で手は加えない、譲歩できるのはここまでだ」
「自分の運命力を信じろってことですね……! 席替えまでガチャ引かずに運貯めます」
最近、他人と話すのに前ほど緊張しなくなってきた。きっとシンヤのおかげだ、彼だけが好きだから、他のヤツらがどうでもよくなって、人見知りが軽くなった。
「ヒロくん……そろそろ帰ろうよ。俺も俺達は席離れた方がいいと思う、ヒロくんがずっと俺見てくれるの嬉しいけど……♡ それでヒロくんの成績下がるの嫌だし」
「吉良、小宅に勉強教えてやってくれないか。頭のいい人が好きとか言っときゃやる気出すだろ」
「受け持ちの生徒を何だと思ってるんですか」
「…………ヒロくん、俺彼氏にはテストで六十点以上取って欲しいかな」
「先生、今度職員室に分からないところの質問しに行きますね」
「あ、あぁ……単純だな」
まぁ今のはちょっとしたボケだ。さて、バレないカンニング方法でも考えるかな。六十点分くらいのカンニングペーパーなら小さく済むだろう。
「……はぁ」
座っていてバレないうちに萎えて欲しい。シンヤはもじもじしたりしているかなと隣を見れば、ノートにペンを走らせていた。いい走りだ。
「僕だけかよぉ……」
いや、違う。シンヤは恋だけを頑張っている僕とは違う、恋のために勉強も頑張っているんだ。僕は勉強なんてしなくたって恋に支障はない、勉強する方が支障が出る。でもシンヤは違う。
「…………可愛いなぁ」
健気なシンヤを見て、思う。可愛いの語源は可哀想と同じという話は、きっと真実なのだと。
「……っ、ヒロくん、しーっ……! もぉ……♡」
可哀想な境遇で、可哀想な性格で、可哀想で可愛いシンヤ。憐れむ優越感も、慈しむ楽しさも、彼を幸せにするという人生の目標も与えてくれたシンヤ。
僕の独り言で顔を真っ赤にする君はきっと、僕と同じように昼休みに発生したムラムラを引きずっているんだろう。表に出さないよう授業に集中しようと頑張っているだけだ。
「はぁ……」
可愛すぎてため息が漏れる。トントン、と机を指で叩かれる。叩いたのはその他大勢のクラスメイト、その手は俺が気付いたことに気付くと、黒板を指した。
「……小宅、問四、答えなさい」
「へっ? あっ、ぁー……えーっと、問四? な、何ページですか?」
「はぁ……テストの点も芳しくなかったんだから、少しは授業に集中したまえ。次の席替え、君の場所は考えるように言っておく。えぇと……このクラスの担任は誰だったかな」
「そんな殺生な、シンヤくん眺めないと授業なんかやってられないのに……!」
席替えはいつやるのだろうか? 不幸は秒読みだ。呆れられて問四を答えなくてもよくなった俺は座り直して頭を抱えた。結果、担任に陳情するという手段に出た。
「お願いしますっ、シンヤくんと多少離れてもいいので、せめて僕が後ろ側でシンヤくんを見れるようにしてください。授業中ボーッとしてるならまだしも、後ろ向いてたら平常点がなくなっちゃいます!」
「……見ない、という選択肢はないのか……席替えはクジ引きでやる、視力以外の理由で手は加えない、譲歩できるのはここまでだ」
「自分の運命力を信じろってことですね……! 席替えまでガチャ引かずに運貯めます」
最近、他人と話すのに前ほど緊張しなくなってきた。きっとシンヤのおかげだ、彼だけが好きだから、他のヤツらがどうでもよくなって、人見知りが軽くなった。
「ヒロくん……そろそろ帰ろうよ。俺も俺達は席離れた方がいいと思う、ヒロくんがずっと俺見てくれるの嬉しいけど……♡ それでヒロくんの成績下がるの嫌だし」
「吉良、小宅に勉強教えてやってくれないか。頭のいい人が好きとか言っときゃやる気出すだろ」
「受け持ちの生徒を何だと思ってるんですか」
「…………ヒロくん、俺彼氏にはテストで六十点以上取って欲しいかな」
「先生、今度職員室に分からないところの質問しに行きますね」
「あ、あぁ……単純だな」
まぁ今のはちょっとしたボケだ。さて、バレないカンニング方法でも考えるかな。六十点分くらいのカンニングペーパーなら小さく済むだろう。
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