陰キャな僕がエセヤンキーに攻略された話

ムーン

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昼休みになったらもう止まらない

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二時間の授業が終わった瞬間、僕は一人で教室を飛び出した。周囲の視線も笑い声も話し声も何も認識したくなかった、自分に関係ないものだろうと自分への嘲笑だと受け取ってしまう僕にとって人の多いところは何よりも嫌なものだ。

「……っ、はぁ、はぁ……クソ、このクソ陰キャ、心弱すぎるんだよっ……!」

トイレの個室で自分を責める。シンヤのように周りを気にしないでいられる強さが欲しい、陽キャ共のような自己肯定感が欲しい、その他大勢のように空気でいたい、僕の願いは何も叶わない。だがそれも仕方ない、シンヤという最高の恋人ができた反動だ。

「さっきのウケたよな」

一人きりだったトイレに人が入ってきた。耳を塞いでも声は聞こえる、手は耳栓として弱い。

「小宅だっけ? 意外とボケてるよな」

僕の思い込みではなく、僕の話をしている。最悪だ、休み時間中どころか授業が始まっても教室に帰りたくない。

「あの何か詩みたいな感じで吉良口説いたのかな」

「うわそれ聞きたい」

「な。でもな……小宅に話しかけんのキツくね?」

そんな話を盗み聞きしてしまっている僕の現状の方がキツいが?

「……吉良怖ぇもんなー」

「ま、機会があったらだな」

水の流れる音の後、足音が離れていった。僕は個室を出ながらため息をつき、トイレですべきことは何もしていないが一応手を洗った。

「……アイツら手ぇ洗えよ」

あるべき水音が一つ少なかったのを思い出して悪態をつき、教室に戻った。

「ヒロくんおかえり♡ 長かったね、お腹痛いの?」

教室に入るとすぐにシンヤが駆け寄り、僕の腹をさすった。

「い、いや、平気……」

「そう? よかった♡」

ニコニコと笑っているシンヤには怖いところなんて一つもないと僕は思う。やはり不良らしい見た目だろうか? それともちょっとタガが外れているところを感じ取られているのか?

「……ま、いいや」

侮られてイジメられるよりは、恐れられて避けられた方がマシだろう。僕はシンヤへの独占欲混じりの結論を出し、席に着いた。




二時間目の事件が堪えたのか授業中にシンヤが下着を見せてくることはなく、しかし僕はムラムラもモヤモヤもしっぱなしで授業には集中出来なかった。

「ヒロくん、行こ♡」

昼休みはいつも通り階段を一番上まで上り、屋上への扉の前でイチャつく。

「ヒロくん……♡ 俺のこと好きにして♡」

「……っ、そんなセリフ言っちゃダメだよシンヤくん……めちゃくちゃにしちゃうよ?」

わきわきと下品に両手を動かしながら、じりじりとシンヤに迫る。僕は「やだぁヒロくんったらえっち」みたいな古臭いリアクションを想定していたのだが、シンヤは無言で顔を赤らめてシャツのボタンを外し始めた。

「…………めちゃくちゃにして♡」

ボタンを全て外し終わると厚手の肌着をめくり上げ、ようやく口を開いた。

「シンヤくんっ……!」

「ぁんっ♡ ヒロくんがっつきすぎ♡ 好き♡」

壁にトンっと優しく押し付け、血走った目でシンヤの下着を観察する。黒いレースにはほつれ一つなく、シンヤの白い肌を飾り立てている。

「はやく触って……♡」

乳首を隠す布の部分。三角形に似た布のその中心はぷくんと膨らんでいた。
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