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君の内側

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頬の内側は柔らかい。上顎と下顎は硬い。喉の方へ進んで粘膜に触れれば頬の内側以上に柔らかい、柔らかいというよりぶよぶよしている。全てに共通するのは濡れているということ。

「ん♡ んん……♡ ふ♡ うぅ……♡」

温かく濡れた体内を僕に触られて苦しそうに涙を滲ませ、恍惚とした笑顔を浮かべる。そんなシンヤに欲情しないなんて不可能だ。

「ん……♡」

頬や顎に垂れた唾液と、目尻に滲んだ涙を舌で拭ってやった。シンヤが何か聞きたそうに僕を見つめていたので、微笑んで言った。

「美味しいよ」

満足げに目を細めて笑う。そんなシンヤの舌をつまむ。

「んん……♡」

「君は本当に可愛い……しかも、めちゃくちゃエロい。君はよく僕に好かれたのは夢みたいだって言うけどさ、僕の方こそ夢みたいだよ。見た目ドストライクで性格最高なエロ可愛い彼氏……大富豪が一兆円積んでも手に入らないよ」

「んぅ……?」

「金で買えるような人はさ、見た目がよくってもシンヤくんみたいに天然入った愛らしさはないし、純粋さが溢れてるのにエロ可愛いなんて……君だけだよ」

それに君はお金次第で僕を捨てたりしないだろう? 自惚れた質問を彼の耳元で囁く。彼の口から指を抜いて回答を待つ。

「うん……♡ ヒロくんが借金作ったら俺体売るもん♡」

僕、絶対借金しない。

「肺と、腎臓と、玉と……目? 後……二つある臓器って何があったかなぁ」

体売るって売春じゃなくて臓器売買の方かよ、そんなこともっとさせたくない。どっちも絶対にさせないけれど。

「……ううん、ヒロくんのためなら俺、たくさん保険かけて死ぬ♡」

「僕絶対衣食住には困らないようになってみせる!」

「うん♡ 俺もヒロくんと出来るだけ一緒にいたいし♡」

「同じ棺桶に入ろうね……!」

「うん♡」

そこは「墓ならギリギリ出来るかもしれないけど棺桶は無理だろ」とツッコミが欲しかった。

「灰になってヒロくんと一つに……えへへ♡ 最高のセックスだね♡ 楽しみ♡」

「楽しみって……普通のセックスも出来てないのに」

「ヒロくんが早く抱いてくんないから……知らないよ? 俺が明日死んでも」

「怖いこと言わないでよ」

半笑いで返しながらも僕はシンヤを失った自分を想像してしまった。

「……絶対、後追いするよ。僕」

もしも明日シンヤが交通事故が何かで亡くなってしまったら、僕はきっと泣けない。泣くことも出来ず、現実感も持てないまま数日過ごして、死を理解したら後を追う。そんな気がする。

「えっ、やだ、俺が死んでもヒロくんには生きてて欲しい」

「……無理。僕、もう君なしじゃ無理。だから自分のこと大切にしてね」

「うん……」

「…………シンヤくんはさ、もし僕が死んだらどうする?」

後追い自殺をすると即答するのだろう、そう予想していた。

「んー……ヒロくんのお葬式に出て、火葬場でこっそり棺桶入って、灰になってヒロくんに混ざる♡」

シンヤの回答は予想の斜め上。

「そ、そっか……まぁ、死なないよ。うん……それにほとんど一緒に居るんだから、事故なんかなら一緒に死んじゃうだろうし」

「おっきい車に一緒に轢かれたらヒロくんとひとつになれるかな?」

「……そんなに僕と混ざりたいの?」

「早く抱いて欲しいだけ♡」

狂気的な愛情表現かと思っていたが、ズレたセックスアピールだったのか。

「特別な日にしたいから、何か考えておくね」

「待ってる♡」

僕も早くシンヤを抱きたいとは思っているが、上手く出来る自信がないのと彼を大切にしたいので踏ん切りがつかない。誰かに相談する訳にもいかないし……難しいな。
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