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小学生からプロポーズに
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僕はシンヤの作文を参考にすることなく、自分の力だけで自分の作文を完成させた。はっきり言って小学校三年生レベルだ、シンヤのラブレターとどっちがマシだろう。
「書けた? おめでとうヒロくん♡」
「うん……自分の作文能力の低さを改めて感じたよ」
「読ませて♡」
「えぇ……恥ずかしいな。うん、いいよ」
シンヤの方から見せてきたとはいえ、僕は彼の作文を読んだのだ。なら彼に僕の作文を読ませるべきだ。
「ヒロくん字きれー♡」
途中まではニコニコと笑いながら僕の作文を読んでいたシンヤだったが、何故か怪訝な顔になり、最後には残念そうな顔になった。
「シンヤくん……? どうしたの? 確かに下手くそな作文だけど、そんな顔しなくても」
「…………俺のこと書いてくれてない」
「えっ……?」
そんなバカな、捻挫をした僕を助けてくれたシンヤの話で原稿用紙の半分くらい使ったぞ?
「か、書いてるよ。よく読んで。ほら、捻挫をした僕を手助けしてくれたクラスメイト……」
「……クラスメイト」
「う、うん……こういう作文って名前出さないものだと思ってるんだよ僕は。シンヤくんって書くよりクラスメイトの方が文字数稼げるし」
作文を書く時は文字数のことしか考えない、それが学生の多数意見ではないだろうか。
「ふーん……階段などで息を合わせたことで、信頼関係が生まれ、友情を育むことが出来ました。ってさ、どういう意味? 俺の話? 友情? 俺と友情?」
立ち上がったシンヤは僕の二の腕を掴んで真正面から僕と見つめ合い、額をごつっと押し当てた。
「ヒロくん、ヒロくんにとって俺は何?」
「か、彼氏……」
「だよね♡ じゃあ書き直して♡ 信頼が深まりはしたけど信頼関係が初めて生まれたわけじゃないよね? 育んだのは友情じゃないよね? ダメだよ嘘ついちゃ。ほら早く書き直して」
優しい手つきで消しゴムを握らされ、シンヤの圧に負けた僕は作文を書き直した。
「捻挫をした僕を助けてくれたのは、愛しのシンヤくん。彼の献身的な姿勢には生涯のパートナーになって欲しいという願望を抱かざるを得なかった…………最高っ♡♡ 俺めちゃくちゃ嬉しいよヒロくん♡♡ この作文撮っていい?」
「う、うん……」
「ありがと♡♡」
僕の作文を撮影するシンヤのはしゃぎっぷりとは裏腹に、僕は家に帰ってから作文を再び書き直そうと決めていた。恋人関係はバレているから作文からバレる心配が……なんて理由ではない、宿泊学習に関係のない話になってしまったのはよくないという至極真っ当な理由だ。
「はぁ……♡ 嬉しい♡ 生涯のパートナー♡♡ 嬉しい♡♡♡」
少しばかりの騒ぎを起こし、珍しい組み合わせの恋人関係にある僕達には、他の生徒よりも正しさが必要になる。
同性愛者は常識がないだとか、知能が低いだとか、そんなことを言わせないためだ。何を愛するかとその本人の性格は関係ないと理解できない者は多い、身の安全と平穏な生活のためには多数のバカに目をつけられない工夫が必要だ。
「ヒロくん……♡ これ、プロポーズって受け取っていいんだよね?」
「ダメだよ」
「ぇ……」
「……プロポーズはもっとちゃんとやる」
「ヒロくぅんっ……♡♡♡」
あぁでも、こんなにもシンヤが喜んでくれた作文を消すのは嫌だな。それもどうでもいいバカのためになんて。
「それって……♡ そういうことだよね♡ する気あるんだもんね♡ 俺のこと……♡♡」
「……僕にはシンヤくんしかいないよ」
大切なシンヤを守るためだ、やはりある程度の体裁は保たなければならない。あぁ……面倒臭いし馬鹿らしい。
「書けた? おめでとうヒロくん♡」
「うん……自分の作文能力の低さを改めて感じたよ」
「読ませて♡」
「えぇ……恥ずかしいな。うん、いいよ」
シンヤの方から見せてきたとはいえ、僕は彼の作文を読んだのだ。なら彼に僕の作文を読ませるべきだ。
「ヒロくん字きれー♡」
途中まではニコニコと笑いながら僕の作文を読んでいたシンヤだったが、何故か怪訝な顔になり、最後には残念そうな顔になった。
「シンヤくん……? どうしたの? 確かに下手くそな作文だけど、そんな顔しなくても」
「…………俺のこと書いてくれてない」
「えっ……?」
そんなバカな、捻挫をした僕を助けてくれたシンヤの話で原稿用紙の半分くらい使ったぞ?
「か、書いてるよ。よく読んで。ほら、捻挫をした僕を手助けしてくれたクラスメイト……」
「……クラスメイト」
「う、うん……こういう作文って名前出さないものだと思ってるんだよ僕は。シンヤくんって書くよりクラスメイトの方が文字数稼げるし」
作文を書く時は文字数のことしか考えない、それが学生の多数意見ではないだろうか。
「ふーん……階段などで息を合わせたことで、信頼関係が生まれ、友情を育むことが出来ました。ってさ、どういう意味? 俺の話? 友情? 俺と友情?」
立ち上がったシンヤは僕の二の腕を掴んで真正面から僕と見つめ合い、額をごつっと押し当てた。
「ヒロくん、ヒロくんにとって俺は何?」
「か、彼氏……」
「だよね♡ じゃあ書き直して♡ 信頼が深まりはしたけど信頼関係が初めて生まれたわけじゃないよね? 育んだのは友情じゃないよね? ダメだよ嘘ついちゃ。ほら早く書き直して」
優しい手つきで消しゴムを握らされ、シンヤの圧に負けた僕は作文を書き直した。
「捻挫をした僕を助けてくれたのは、愛しのシンヤくん。彼の献身的な姿勢には生涯のパートナーになって欲しいという願望を抱かざるを得なかった…………最高っ♡♡ 俺めちゃくちゃ嬉しいよヒロくん♡♡ この作文撮っていい?」
「う、うん……」
「ありがと♡♡」
僕の作文を撮影するシンヤのはしゃぎっぷりとは裏腹に、僕は家に帰ってから作文を再び書き直そうと決めていた。恋人関係はバレているから作文からバレる心配が……なんて理由ではない、宿泊学習に関係のない話になってしまったのはよくないという至極真っ当な理由だ。
「はぁ……♡ 嬉しい♡ 生涯のパートナー♡♡ 嬉しい♡♡♡」
少しばかりの騒ぎを起こし、珍しい組み合わせの恋人関係にある僕達には、他の生徒よりも正しさが必要になる。
同性愛者は常識がないだとか、知能が低いだとか、そんなことを言わせないためだ。何を愛するかとその本人の性格は関係ないと理解できない者は多い、身の安全と平穏な生活のためには多数のバカに目をつけられない工夫が必要だ。
「ヒロくん……♡ これ、プロポーズって受け取っていいんだよね?」
「ダメだよ」
「ぇ……」
「……プロポーズはもっとちゃんとやる」
「ヒロくぅんっ……♡♡♡」
あぁでも、こんなにもシンヤが喜んでくれた作文を消すのは嫌だな。それもどうでもいいバカのためになんて。
「それって……♡ そういうことだよね♡ する気あるんだもんね♡ 俺のこと……♡♡」
「……僕にはシンヤくんしかいないよ」
大切なシンヤを守るためだ、やはりある程度の体裁は保たなければならない。あぁ……面倒臭いし馬鹿らしい。
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