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陰キャはともかくとして
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シンヤを置いてトイレを出た僕は素早く自らの布団に潜り込んだ。寝たフリを試してみたが陽キャ共は何故か話しかけてきた。
「なー、小宅、起きてる?」
寝たフリを続けてもよかったが、バレていた時が怖い。僕は仕方なく返事をした。
「布団出してくれてあんがとな」
押し入れから布団を出し、広げはせずに置いておいた。それでも礼を言うなんて割と出来た奴なのかもしれない……まぁ僕よりマシなのは当たり前だが。
「吉良は?」
「居ない? ト、トイレじゃないかな」
「ふーん……なぁ、マジで吉良と付き合ってんの?」
一番されたくなかった質問が来た。
恋人関係を隠し続けるのは確かにシンヤに失礼だし、事実シンヤを傷付けてしまった。
だが、恋人関係を晒したら周囲の人間にシンヤが傷付けられるかもしれない。僕はそれが嫌だったんだ、それをちゃんと説明してしまえば食堂でのキスなんて必要なかったかもしれない。
いや、周囲の目を気にするという概念をシンヤが理解してくれるだろうか? 今この後悔は必要だったか? 早く返事をしないと機嫌を損ねる、損ねたら──
「なぁ、聞いてんだけど、返事は……」
「俺のヒロくんに話しかけないでくれないかな」
「あ……? あぁ、吉良」
「早く俺のヒロくんから離れてくれないかな」
真後ろに立っていたらしい彼が離れると入れ替わりにシンヤらしき気配が近寄った。
「……なぁ、お前らマジで付き合ってんの?」
「うん」
尋ねた者以外の嘲笑が微かに聞こえた。恐れていたことが起こった。純真なシンヤにそんな感情見せないでくれ。
「だからヒロくんに話しかけないでね、近寄らないで。俺のだから。ヒロくんに俺以外の人間は必要ない。あぁ俺にもヒロくん以外の人間は必要ないから俺にも出来れば話しかけないで、でもヒロくんに用事あるなら俺に話して、ヒロくんには絶対に話しかけないで近寄らないで俺のだから」
僕と話している時とは違う、冷たいトーンの早口に陽キャ共の嘲笑は止まる。
「…………ぁ、あのさ、なんで付き合ってんの?」
「それは必要な質問?」
「必要……だな。聞いてこいって言われたからさ」
一号室の陽キャ上位グループの連中か、所詮コイツらは下位グループ。特に今シンヤと話している彼は最下位なのだろう、扱いはほぼパシリだ。
「誰に?」
彼が呟いた名前は僕の予想通り、クラスカースト最上位の男子生徒の名だった。
「誰それ、知らない」
「は? ゃ……クラスメイトだろ」
「おやすみ」
シンヤは一方的に会話を切って僕の隣の布団に寝転がり、僕の布団に侵入してきた。僕よりも高い身長を利用して僕を背後から抱き締める。
「シンヤくん……あんな態度取っちゃダメだよ、クラスメイトとは仲良くしないと……特にあの人達とは上手くやらないと、いじめられちゃうよ」
「……いくらヒロくんのお願いでもそれはやだ。俺、ヒロくん以外見ないし話さない……ヒロくんそうして欲しいって言ったじゃん♡」
「それは、理想の話で……」
「ね♡ ヒロくん本当はそうして欲しいんじゃん♡ 俺はヒロくん一筋だから大丈夫だよ♡」
やばい……話、通じなくなってる。
僕の機嫌を伺って健気にしていたから空気が読める子だと思っていたが、僕以外の人間を全く気にしていないシンヤは読もうともしない。
「ヒロくん大好き♡」
悪口や陰口を気にしなさそうなのはいいのだが、イジメがエスカレートしたらどうしよう? いや、その時こそシンヤがヒーローと信じている僕の出番なのか。気が重いな。
「なー、小宅、起きてる?」
寝たフリを続けてもよかったが、バレていた時が怖い。僕は仕方なく返事をした。
「布団出してくれてあんがとな」
押し入れから布団を出し、広げはせずに置いておいた。それでも礼を言うなんて割と出来た奴なのかもしれない……まぁ僕よりマシなのは当たり前だが。
「吉良は?」
「居ない? ト、トイレじゃないかな」
「ふーん……なぁ、マジで吉良と付き合ってんの?」
一番されたくなかった質問が来た。
恋人関係を隠し続けるのは確かにシンヤに失礼だし、事実シンヤを傷付けてしまった。
だが、恋人関係を晒したら周囲の人間にシンヤが傷付けられるかもしれない。僕はそれが嫌だったんだ、それをちゃんと説明してしまえば食堂でのキスなんて必要なかったかもしれない。
いや、周囲の目を気にするという概念をシンヤが理解してくれるだろうか? 今この後悔は必要だったか? 早く返事をしないと機嫌を損ねる、損ねたら──
「なぁ、聞いてんだけど、返事は……」
「俺のヒロくんに話しかけないでくれないかな」
「あ……? あぁ、吉良」
「早く俺のヒロくんから離れてくれないかな」
真後ろに立っていたらしい彼が離れると入れ替わりにシンヤらしき気配が近寄った。
「……なぁ、お前らマジで付き合ってんの?」
「うん」
尋ねた者以外の嘲笑が微かに聞こえた。恐れていたことが起こった。純真なシンヤにそんな感情見せないでくれ。
「だからヒロくんに話しかけないでね、近寄らないで。俺のだから。ヒロくんに俺以外の人間は必要ない。あぁ俺にもヒロくん以外の人間は必要ないから俺にも出来れば話しかけないで、でもヒロくんに用事あるなら俺に話して、ヒロくんには絶対に話しかけないで近寄らないで俺のだから」
僕と話している時とは違う、冷たいトーンの早口に陽キャ共の嘲笑は止まる。
「…………ぁ、あのさ、なんで付き合ってんの?」
「それは必要な質問?」
「必要……だな。聞いてこいって言われたからさ」
一号室の陽キャ上位グループの連中か、所詮コイツらは下位グループ。特に今シンヤと話している彼は最下位なのだろう、扱いはほぼパシリだ。
「誰に?」
彼が呟いた名前は僕の予想通り、クラスカースト最上位の男子生徒の名だった。
「誰それ、知らない」
「は? ゃ……クラスメイトだろ」
「おやすみ」
シンヤは一方的に会話を切って僕の隣の布団に寝転がり、僕の布団に侵入してきた。僕よりも高い身長を利用して僕を背後から抱き締める。
「シンヤくん……あんな態度取っちゃダメだよ、クラスメイトとは仲良くしないと……特にあの人達とは上手くやらないと、いじめられちゃうよ」
「……いくらヒロくんのお願いでもそれはやだ。俺、ヒロくん以外見ないし話さない……ヒロくんそうして欲しいって言ったじゃん♡」
「それは、理想の話で……」
「ね♡ ヒロくん本当はそうして欲しいんじゃん♡ 俺はヒロくん一筋だから大丈夫だよ♡」
やばい……話、通じなくなってる。
僕の機嫌を伺って健気にしていたから空気が読める子だと思っていたが、僕以外の人間を全く気にしていないシンヤは読もうともしない。
「ヒロくん大好き♡」
悪口や陰口を気にしなさそうなのはいいのだが、イジメがエスカレートしたらどうしよう? いや、その時こそシンヤがヒーローと信じている僕の出番なのか。気が重いな。
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